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秘密の想い
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「さ、シネマにでも行こうか?」
ふいの祐也の問いかけに聖は顔を上げる
「どうせ西洋の映画でしょう?しかもナンセンスな…」
なんでもないように応える
「いいじゃないか、くだらない事も経験だよ?」
そうは言っても僕の人生は決まっているのだ…
祐也のような自由なんか…ない
この学生時代が唯一の自由 それに江戸川乱歩よりも遥かに人に言えない秘密があるから
考え事をしながらカフェの扉を開けると馬車が泥水を跳ねる
「おっと…」
不意に祐也に腕を引かれ身体が密着すると…ドキン…と心臓が高鳴る
「大丈夫だったか?」
ハッとして身体を離す 俯いたまま「はい」と返事をする
手が離れ 何事も無かったように先を歩く祐也の足元を見つめた
祐也に掴まれた腕にそっと触れる
自分とは違うガッシリとした手の感触がまだ残っていた…
「はぁ」深くため息をつく
そして 手を握りしめ秘密の想いを閉じ込めた。
シネマが終わったあと、聖は馬車で帰路に着くと
「お帰りなさいませ お坊ちゃま」
と執事の宇津木が礼儀正しく出迎える
聖を子供の頃から育ててくれた人物だ
「そろそろお坊ちゃまって言うの止めてくれないかな」
聖は恥ずかしそうに言う
「いいえ、大切な二階堂家のご子息様ですから」
宇津木は頑なな態度を崩さない
やれやれ といったふうに玄関フロアを進む
聖の屋敷は螺旋階段もある洋館だ
「あら?おかえりなさい聖ちゃん」
階段の上から母、有希子ね声がした
黒髪のボブヘアーに紫のワンピースと云うモダンスタイルの人物だ
「母上 ただいま」
母は上機嫌な笑みを浮かべている
あぁ…と思った
「今日はお父様と夕食よ」
嬉しそうに囁く。やっぱりそうか
仕事人間である父が帰ってくるなんて珍しかった
だが 父と母はとても仲が良かった…僕が気恥ずかしくなるほどに。
上流階級の当主と言えば妾を何人も囲うのが普通なのに聖の父、宗十郎は一途に母、有希子だけを愛していた
久しぶりの三人での食事に少し緊張する
「おかえりなさい父上」
宗十郎は髭をたくわえた厳つい雰囲気の男だったが 根はとても優しかった
「今日は良い商談が成立してな」
いつになく上機嫌の父は今日の仕事を自慢したいようだ
「どんな商談ですか?」
聖は聞いた
「英國の商談だ、近頃 中國や英國では日本の磁器が流行していてな」
「そうなんですね」
と相づちを打つ
「有田焼などが高く取引されているらしい」
有田焼と云えば佐賀の有名な焼き物である事くらい自分も知っている
「欧羅巴でも声価が高いからな…佐賀の会社に出資して貿易をしようと考えているんだよ」
宗十郎はとても満足そうだった
「大変でしょうね?」聖は頷く
ひとしきり仕事の話を終えると宗十郎は有希子と楽しげに会話を始める
「ふふっ」
聖は両親に気付かれないように笑みを零す
いつか自分達もこうなれたらいいな…と密かに思っていた
きっと叶わない夢
見目は母譲りだが性格や気質は父に似たのだろう、どんなに美しい少女が居たとしても心動かされる事はなく一途に祐也だけを想い続けている
だが聖はこの想いを告白する勇気など無かった
「きっと無理だから」そっと呟く
ただの夢、その時はそう思っていた。
ふいの祐也の問いかけに聖は顔を上げる
「どうせ西洋の映画でしょう?しかもナンセンスな…」
なんでもないように応える
「いいじゃないか、くだらない事も経験だよ?」
そうは言っても僕の人生は決まっているのだ…
祐也のような自由なんか…ない
この学生時代が唯一の自由 それに江戸川乱歩よりも遥かに人に言えない秘密があるから
考え事をしながらカフェの扉を開けると馬車が泥水を跳ねる
「おっと…」
不意に祐也に腕を引かれ身体が密着すると…ドキン…と心臓が高鳴る
「大丈夫だったか?」
ハッとして身体を離す 俯いたまま「はい」と返事をする
手が離れ 何事も無かったように先を歩く祐也の足元を見つめた
祐也に掴まれた腕にそっと触れる
自分とは違うガッシリとした手の感触がまだ残っていた…
「はぁ」深くため息をつく
そして 手を握りしめ秘密の想いを閉じ込めた。
シネマが終わったあと、聖は馬車で帰路に着くと
「お帰りなさいませ お坊ちゃま」
と執事の宇津木が礼儀正しく出迎える
聖を子供の頃から育ててくれた人物だ
「そろそろお坊ちゃまって言うの止めてくれないかな」
聖は恥ずかしそうに言う
「いいえ、大切な二階堂家のご子息様ですから」
宇津木は頑なな態度を崩さない
やれやれ といったふうに玄関フロアを進む
聖の屋敷は螺旋階段もある洋館だ
「あら?おかえりなさい聖ちゃん」
階段の上から母、有希子ね声がした
黒髪のボブヘアーに紫のワンピースと云うモダンスタイルの人物だ
「母上 ただいま」
母は上機嫌な笑みを浮かべている
あぁ…と思った
「今日はお父様と夕食よ」
嬉しそうに囁く。やっぱりそうか
仕事人間である父が帰ってくるなんて珍しかった
だが 父と母はとても仲が良かった…僕が気恥ずかしくなるほどに。
上流階級の当主と言えば妾を何人も囲うのが普通なのに聖の父、宗十郎は一途に母、有希子だけを愛していた
久しぶりの三人での食事に少し緊張する
「おかえりなさい父上」
宗十郎は髭をたくわえた厳つい雰囲気の男だったが 根はとても優しかった
「今日は良い商談が成立してな」
いつになく上機嫌の父は今日の仕事を自慢したいようだ
「どんな商談ですか?」
聖は聞いた
「英國の商談だ、近頃 中國や英國では日本の磁器が流行していてな」
「そうなんですね」
と相づちを打つ
「有田焼などが高く取引されているらしい」
有田焼と云えば佐賀の有名な焼き物である事くらい自分も知っている
「欧羅巴でも声価が高いからな…佐賀の会社に出資して貿易をしようと考えているんだよ」
宗十郎はとても満足そうだった
「大変でしょうね?」聖は頷く
ひとしきり仕事の話を終えると宗十郎は有希子と楽しげに会話を始める
「ふふっ」
聖は両親に気付かれないように笑みを零す
いつか自分達もこうなれたらいいな…と密かに思っていた
きっと叶わない夢
見目は母譲りだが性格や気質は父に似たのだろう、どんなに美しい少女が居たとしても心動かされる事はなく一途に祐也だけを想い続けている
だが聖はこの想いを告白する勇気など無かった
「きっと無理だから」そっと呟く
ただの夢、その時はそう思っていた。
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