密室の恋愛

NEO ZONE

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暗転

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「見てみろよ 聖」
友人の狭山と云う学生が指さした先には この大學の高嶺の花といわれる上流階級の華族、結城 絵里がいた。
豊かな長い黒髪に紅い着物姿の絵里は父親からのプレゼントだという大きなダイヤモンドの首飾りを身につけている
そして取り巻きに囲まれ悠然と微笑んでいた
「いいよなぁ絵里お嬢様…」
「そう?」
「俺達には高嶺の花だよなぁ」
曖昧な返事に狭山は気にする風はなかった
聖は絵里には全く興味無かったが 祐也の事を悟られる訳にはいかず 何となく話を合わせている

だが、その時結城 絵里の視線は聖に向けられていたが 聖は気付く事なく友人達と会話を続けていた


しばらくたったある日、母が不安そうな顔で執事の宇津木と話をしていた。
「どうかしたんですか?母上」
僅かに違和感があった…
「なんでもないのよ…大人の事情だから…」
こういう時は大抵 父の仕事の事だ…時々こんな事があった、何時ものようにたいした事はないかもしれない。

だけど じわりと不安がよぎる

…違和感の正体が分かるはずもなく結局その時は見過ごしてしまった…

翌日、何事もなく何時もと同じように祐也と街に出かける。
映画の話、大學の勉強の話…どんな話も楽しかった
いつまで こうして居られるのだろう…

そう思った矢先「号外!号外!」
と慌てた様子で新聞が配られはじめた

ふっと気にかかり ソレを手に取った
「どれどれ?」
祐也が何気なく覗き込む
聖も記事を読んで目を疑った

『貿易船ムーンライト号、転覆事故!死者多数 アリー船長ノミタスカル』

強く新聞を握りしめた
「どうかしたのか?聖」祐也の声音が変わる
「これ父上が投資している会社の船だ…」
詳しい情報を得ようと新聞から目を離さずに応える
「本当か?ヤバいんじゃないのか?」
昨日の事を思い出し焦る。
母上は知っていた?でもそれなら僕にも言うはずだ いずれは分かる事なんだから…

嫌な予感がする

祐也との別れの挨拶もそこそこに帰路に着いた
程なく取引先の貿易商の株は大暴落、あわや倒産という所まで追い込まれ 僕は大學に行く事もできず憔悴した母を慰めるしかできなかった。

父が家財を売り払い、借金返済や従業員の給与支払いに奔走する中 聖にとって一番辛かったのは祐也な会えない事。
そんな事を言っている場合では無いのは分かっている…けれど何もできずに時間だけが過ぎていくのが辛い

考えを巡らせても聖には解決策などなかった

そのまま数週間が過ぎたある日、玄関の呼び鈴が"リーン"と響いた
借金を取り立てる連中は乱暴にドアを叩くのに一体誰だろう…そう思って階段の踊り場からそっと覗く

宇津木が対応する先にいたのは白髪の清雅な印象の初老の紳士だった。
見間違えでなければあの方は結城家の当主、結城 昌史だ
「結城様…申し訳ございません 只今 二階堂家は…」
宇津木がそこまで言った所で 待っていたとばかりに母が奥から出てくる

…結城家が支援してくれるのか?

そのままそっと会話を盗み聞きしていた
宇津木に伴われ父も出てくる

結城 昌史は父の顔を見るなり単刀直入に言った
「結城コンツェルンの傘下になれば救済すると約束しよう」
「本当ですか?」
宗十郎は歓喜の声を上げた
だが その条件は信じられないものだった
「我が娘の婿に 聖くんをいただきたいのだが?」

聖は頭が真っ白になった

「絵里はいたく聖くんを気に入っていてな」
絵里お嬢様が何故?
話をした事すらないのに…僕の気持ちなどお構い無しに話は進む
「それは良い縁談ね」
母の言葉に父も同意した

全てを天秤に掛けるには僕の気持ちなど当然軽いのだ
断れるはずなど…なかった

何も言えないまま数日後には絵里お嬢様と見合いをさせられ、強引に話が進んで行く
絵里の口から発せられるのは僕の容姿を褒める言葉ばかり
まるで欲しかった人形を手に入れた少女のようだ
彼女もまた僕の気持ちなどお構い無しなのだ

ふっと 自分の中で何かが壊れた気がした



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