異世界でも働きたくないので、辺境貴族の末っ子としてもふもふと昼寝します

おまる

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第1部:ゆるふわスローライフの幕開け ~元社畜、もふもふと家族に溺愛される最高の異世界生活、始めました~

第6話:溺愛されまくり!?この甘やかし環境、ワンチャンあるぞ!ニート計画始動!

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「絶対に働かない」

 そう固く心に誓ったものの、具体的な戦略は何一つ思い浮かばないまま、数日が過ぎた。
 俺――ルークは、相変わらずベッドの上で過ごす時間が長かった。
 体調が優れないフリ、もとい、本当にまだ本調子ではないフリを続けている。

(下手に元気な姿を見せたら、すぐにでも『学ぶべきこと』とやらが始まってしまうかもしれないからな……)

 前世で培った『仮病スキル』が、こんなところで役立つとは思わなかった。
 もっとも、あの頃は本当に体調が悪くなることの方が多かったのだが。

 そんな俺の元へ、家族やメイドのマリーが代わる代わる様子を見に来てくれる。
 父ライオネルは、公務の合間を縫って、俺の好きな果物(この世界の果物はどれも瑞々しくて美味しい)を自ら剥いてくれたりする。

「ルーク、無理はしなくていいからな。ゆっくり治すんだぞ」

 その言葉には嘘偽りない優しさが溢れているように感じられる。

 母セレスティーナに至っては、俺が少しでも顔を顰めようものなら、

「まあ、ルーク!どこか痛むの?すぐに侍医を呼びましょう!」

 と、大騒ぎする始末だ。
 その度に、俺は必死に「大丈夫です、おかあさま」と弱々しく微笑んでみせるのだが、内心は冷や汗ものである。

(この世界の医療レベルがどの程度か分からないけど、下手に藪医者にかかって余計なことをされるのは勘弁だ……)

 長兄のアランは、難しい顔で書類の束を抱えながらも、俺の部屋を覗いては、

「ルーク、何か欲しいものはあるか?遠慮なく言うといい」

 と、やけに甲斐甲斐しい。
 その優しさは嬉しいが、彼の言う「欲しいもの」が、まさか『労働意欲』とかではないだろうな、と勘繰ってしまうのは、俺の心が汚れすぎているせいだろうか。

 次兄のベルトランは、相変わらず筋肉全開だ。

「ルーク!早く元気になって、一緒に鍛錬しようぜ!俺がとっておきの訓練メニューを考えてやるからな!」

 と、キラキラした目で言ってくる。
 俺は笑顔で頷きながらも、心の中では全力で「お断りします!」と叫んでいた。

 姉のセシルは、毎日新しい絵本を持ってきてくれたり、俺の好きな花の香りのポプリを枕元に置いてくれたりする。
 その細やかな気遣いは、本当にありがたい。

「ルークちゃんが元気がないと、お姉ちゃんも寂しいわ」

 そう言って悲しそうに眉を寄せる彼女を見ると、少しだけ罪悪感が芽生えそうになるが、そこは鋼の意志で押さえ込む。

 そして、メイドのマリーだ。
 彼女は、朝起きてから夜眠るまで、本当に甲斐甲斐しく俺の世話を焼いてくれる。
 食事の補助から着替えの手伝い、部屋の掃除に至るまで、文句一つ言わずに、常に笑顔を絶やさない。

「坊ちゃま、今日のおやつは、厨房に頼んで特別に作っていただいたんですよ。きっとお気に召すと思いますわ」

 そう言って差し出されるお菓子は、いつも絶品だ。

 そんな日々を数日送るうちに、俺の頭にある考えが浮かび始めた。

(あれ……? もしかして、俺……とんでもなく、甘やかされてないか……?)

 そうだ。
 父も母も、兄も姉も、そしてメイドのマリーも、皆が皆、俺に対して過保護なまでに優しい。
 俺が「働きたくない」オーラを全力で発している(つもり)にも関わらず、誰一人としてそれを咎めようとしない。
 むしろ、俺が何もしないことを当然のように受け入れ、さらに手厚く世話をしてくれている。

(これは……もしかして……『ワンチャン』あるんじゃないか……?)

 末っ子という立場。
 事故に遭って弱っている(ということにしている)現状。
 そして、この家族の異常なまでの溺愛っぷり。
 これらの要素を組み合わせれば、もしかしたら……。

(『クライネル家の何もできない(何もしない)可愛い末っ子』というポジションを確立すれば、合法的にニートライフを満喫できるのでは……!?)

 その考えに至った瞬間、俺の心に、久しぶりに希望の光が差し込んだような気がした。
 もちろん、油断は禁物だ。
 いつ「学ぶべきこと」や「剣の稽古」が本格的に始まるとも限らない。
 だが、少なくとも、この甘やかされ環境は、俺にとって大きなアドバンテージになるはずだ。

(よし……この路線でいこう……!)

 前世の社畜生活で培った『処世術(主に上司のご機嫌取りと責任回避)』を総動員し、この恵まれた環境を最大限に利用してやる。
 目指すは、完璧なる『愛されニート』だ。

 そう決意を新たにした俺の顔には、きっと、子供らしい無邪気な(そして計算高い)笑顔が浮かんでいたに違いない。
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