異世界でも働きたくないので、辺境貴族の末っ子としてもふもふと昼寝します

おまる

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第2部:ゆるふわスローライフに新たな風? ~噂の真相と小さな来訪者たち~

第24話:春色ハーブティーサプライズ!無自覚チートで家族もメイドもメロメロ!

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 春の庭を探検していると、タム爺が管理しているハーブガーデンの一角で、見慣れない可愛らしい葉っぱを見つけた。
 柔らかそうな緑色の葉で、近づくと、ほんのりと爽やかな、それでいて甘いような香りがする。

「タム爺、これ、なあに?」

 俺が指さして尋ねると、タム爺はにっこり笑って教えてくれた。

「おお、坊ちゃま、よくお気づきになりましたな。それは『春告草はるつげそう』といって、この地方で春先にだけ芽を出すハーブの一種でございますよ。お茶にすると、とても良い香りがするのです」

「へえー、お茶にできるんだ!」

 その言葉に、俺の頭の中でピコーンと電球が灯った。
 美味しいお茶。それは、俺の『ゆるふわライフ』において、非常に重要な要素である。

(これを使えば、最高の春限定ハーブティーが作れるかもしれない……!)

 俺は早速、タム爺に頼んで、その『春告草』を少しだけ摘んでもらった。
 ついでに、ミントやカモミールといった、お馴染みのハーブもいくつか。
 もちろん、摘むのはタム爺と、後から合流した姉のセシルがほとんどで、俺は横で「あれも欲しいなー」「これもいい匂いだなー」と指示を出すだけだったが。

 バスケットいっぱいのハーブを抱え、俺は意気揚々と厨房へ向かった。
 マリーに手伝ってもらいながら、ハーブを丁寧に洗い、ティーポットに入れる。
 そして、熱々のお湯を注ぎ、蓋をして数分間蒸らす。
 ここまでは、普通の手順だ。
 だが、俺のハーブティーは、ここからが違う。

(よし、いくぞ……『生活魔法:至福の日常』発動……!)

 俺は、ティーポットにそっと手をかざし、心の中で強く念じた。

(春の陽気と、花の香りと、小鳥のさえずりと……とにかく、飲むと心がウキウキして、体がぽかぽかして、最高に幸せな気分になれるような……そんな、究極の春色ハーブティーになーれっ!)

 指先が、ジンジンと心地よく痺れる。
 ティーポットが、ほんの一瞬、淡い虹色の光を放ったような気がした。
 そして、次の瞬間。
 蓋の隙間から立ち上る湯気と共に、今まで嗅いだことのないような、芳醇で、甘美で、そしてどこまでも爽やかな香りが、厨房いっぱいに広がったのだ。

「ま、まあ……!なんて素晴らしい香りでしょう……!」

 マリーが、うっとりとした表情でため息を漏らす。
 俺も、その香りに思わず深呼吸してしまう。これは……間違いなく、大成功だ。

 早速、淹れたてのハーブティーをティーカップに注ぐと、その液体は、まるで春の陽光を溶かし込んだかのような、美しい黄金色に輝いていた。
 俺は、それを家族の待つ客間へと運んだ。

「皆さーん!僕が、とくせいのハーブティーを淹れてきましたよー!」

 俺がそう言うと、談笑していた父や母、兄姉たちが一斉にこちらを向いた。

「おや、ルーク。お手伝いかい?感心だね」

 父が目を細める。

「まあ、ルークちゃんが淹れてくれたの?嬉しいわ!」

 母と姉は、特に喜んでくれているようだ。
 俺は、得意満面で(内心はドキドキだが)一人一人にハーブティーを配った。

 最初に口をつけたのは、母セレスティーナだった。
 彼女は、カップから立ち上る香りを一嗅ぎしただけで、うっとりと目を閉じた。

「……なんて……なんて、素晴らしい香りなの……まるで、春の妖精が振りまいた魔法の香水のよう……」

 そして、一口飲むと、さらに表情がとろけるように緩んだ。

「おいしい……!口の中に、春の全てが詰まっているみたい……!それに、なんだか、体がぽかぽかして、心が軽くなるような……!」

 母の大絶賛に、他の家族も期待に満ちた表情でハーブティーを口にする。
 そして、次の瞬間。

「こ、これは……!?確かに、素晴らしい風味だ!」(父ライオネル)
「うむ、ただのハーブティーとは思えんな。何か特別なものでも入れたのか、ルーク?」(長兄アラン)
「おお!なんだか力が湧いてくるような気がするぜ!これなら訓練も捗りそうだ!」(次兄ベルトラン)
「ルークちゃん、これ、本当にあなたが淹れたの?お店で飲むどんなお茶よりも美味しいわ!」(姉セシル)

 口々に、称賛の言葉が飛び交う。
 その反応に、俺は満面の笑みを浮かべた。

(ふふふ……計画通り……!)

 このハーブティーは、その後、クライネル家の食卓に欠かせないものとなった。
 そして、その噂はメイドたちの間にもあっという間に広がり、「ルーク坊ちゃまの特製ハーブティーを飲むと、疲れが取れて幸せな気分になれる」と、密かなブームになったという。
 もちろん、そのハーブティーが、俺の『無自覚チート魔法』の産物であることなど、誰も気づいていないのだが。
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