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第3部:ゆるふわスローライフは守られるべき! ~ちょっぴり騒がしい、お客様と秘密のお手紙~
第60話:夜中の物音の正体は…『迷子の黒銀ベビーウルフ』!? モルだけが知っていた小さなSOS!
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アスターテ領のクライネル邸に、あの謎の『小さな来訪者』の影が忍び寄ってから、さらに数日が過ぎた静かな夜のことだった。
僕はいつものように、モルを抱きしめて深い眠りについていた。夢の中では、巨大な綿菓子の上でモルと跳ね回っている。実に平和だ。
しかし、その平和は、腕の中のモルの異変によって破られた。
僕の胸元で丸くなっていたモルが、突然もぞもぞと動き出し、そして「きゅぅん……きゅぅん……」と、か細く、そしてどこか悲しげな鳴き声を上げ始めたのだ。
その声には、いつもの甘えた響きはなく、何かを切実に訴えかけるような、緊迫したものが感じられた。
「んん……モル……? どうしたの……? お腹でもすいたの……?」
僕は眠い目をこすりながら、小さな声で問いかける。
だが、モルは僕の言葉に応えることなく、ベッドからぴょんと飛び降りると、ドアの方へ向かって「くぅん、くぅん!」と僕を促すように鳴き続けた。
その瞳は、暗闇の中でも潤んでいるように見え、ただならぬ気配を漂わせている。
(あれ……? モルの様子が、いつもと全然違う……。どこか、苦しそう……? それとも、誰かを助けたいのかな……?)
モルの必死な様子に、僕はさすがにただ事ではないと感じ、重い体を起こしてベッドから降りた。
僕が立ち上がると、モルは待ってましたとばかりに、先導するように部屋のドアへと駆け寄り、前足でカリカリとドアを引っ掻き始めた。
「わかったよ、モル。一緒に行こう。でも、静かにね?」
僕は小さな声で言い聞かせ、そっとドアを開けて廊下に出る。
モルは、僕がついてきているのを確認すると、迷いのない足取りで屋敷の奥へと進んでいった。その向かう先は……確か、数日前にモルが異常な反応を示した、あの古い書庫の方向だ。
深夜のクライネル邸は、静寂に包まれている。
僕とモルの小さな足音だけが、長い廊下に響いていた。
やがて書庫にたどり着くと、モルはあの時と同じように、奥まった本棚の足元の床の一点を、くんくんと嗅ぎ始めた。そして、僕の顔を見上げ、「きゅぅ……ふみゅん……!」と、助けを求めるような、切ない声を上げたのだ。
その時、偶然にも夜食を求めて厨房へ向かっていたらしいアラン兄様と、そしてなぜか「何か面白いことが起きているのでは?」と期待に満ちた目でついてきていたアルフレッドさん、レオナルドさんが、僕たちの姿を見つけて近づいてきた。
「ルーク? こんな夜中にどうしたんだい? モルも一緒か」
「これは……ルーク様、モル殿。また、この場所で何か……?」
アルフレッドさんは、以前モルが反応した場所であることを即座に思い出し、興味深そうに目を細める。
僕が「モルが、なんだかここをすごく気にしてて……誰か、助けてほしいみたいなんだよぉ」と説明すると、モルはそれを肯定するかのように、再び床の一点を前足でカリカリと引っ掻き始めた。
アラン兄様が懐中ランタンでその場所を照らし、アルフレッドさんが持参していた魔力探知機をかざす。
すると、以前よりもはっきりと、探知機の針が微弱ながらも「生命反応」と「封印された魔力の残滓」のようなものを示したのだ。
「やはり……! この下に何かある! しかも、生きている……! アラン殿、ここは……!」
アルフレッドさんの言葉に、アラン兄様も表情を引き締める。
そして、レオナルドさんが「おいおい、まさか本当に宝物でもあるのか?」と不謹慎な期待を口にしたその時だった。
カリカリ、カリ……。
床下から、微かに、何かを引っ掻くような音が聞こえてきたのだ。
そして、小さな、小さな、か細い鳴き声が……。
「……みぃ……くぅ……ん……」
それは、まるで生まれたばかりの子猫か、あるいはもっと小さな生き物の、助けを求める悲痛なSOSのように聞こえた。
一同が息をのむ。
アラン兄様が、慎重に、しかし力強く、モルが示していたあたりの石畳を数枚剥がすと、そこには、地下へと続く狭い隙間が現れた。
そして、その暗い隙間の奥から、一対の、怯えたように潤む金色の瞳が、こちらをじっと見つめていた。
懐中ランタンの光が、その小さな姿を照らし出す。
そこにいたのは、泥と埃にまみれ、見るからに弱々しく震えている、黒銀色の美しい毛並みを持つ、子狼のような生き物だった。
その大きさは、モルよりも一回り大きいくらいだろうか。しかし、その瞳には、野生動物特有の鋭さはなく、ただただ恐怖と、そしてほんの少しの助けを求める色が浮かんでいる。
「こ、これは……! 間違いない……『シルヴァン・ウルフ』の幼体だ! しかも、極めて稀少な黒銀の毛並み……! なぜこんな場所に、こんな状態で……!?」
アルフレッドさんが、驚愕と興奮の入り混じった声で叫ぶ。
レオナルドさんも、その神秘的で、しかしあまりにも儚げな姿に、思わず言葉を失っていた。
僕は、ただ、その小さくて震える生き物を見つめていた。
胸の奥が、きゅっと締め付けられるような、切ない気持ちになる。
「わぁ……ちっちゃくて……なんだか、とってもかわいそう……」
僕がぽつりとそう呟くと、モルはそっとその子狼に寄り添い、まるで「大丈夫だよ、怖くないよ」とでも言うように、優しく「きゅるる……」と鳴きかけた。
迷子の『もふもふベビー』との出会いは、こうして、深夜のクライネル邸の片隅で、静かに果たされたのだった。
僕はいつものように、モルを抱きしめて深い眠りについていた。夢の中では、巨大な綿菓子の上でモルと跳ね回っている。実に平和だ。
しかし、その平和は、腕の中のモルの異変によって破られた。
僕の胸元で丸くなっていたモルが、突然もぞもぞと動き出し、そして「きゅぅん……きゅぅん……」と、か細く、そしてどこか悲しげな鳴き声を上げ始めたのだ。
その声には、いつもの甘えた響きはなく、何かを切実に訴えかけるような、緊迫したものが感じられた。
「んん……モル……? どうしたの……? お腹でもすいたの……?」
僕は眠い目をこすりながら、小さな声で問いかける。
だが、モルは僕の言葉に応えることなく、ベッドからぴょんと飛び降りると、ドアの方へ向かって「くぅん、くぅん!」と僕を促すように鳴き続けた。
その瞳は、暗闇の中でも潤んでいるように見え、ただならぬ気配を漂わせている。
(あれ……? モルの様子が、いつもと全然違う……。どこか、苦しそう……? それとも、誰かを助けたいのかな……?)
モルの必死な様子に、僕はさすがにただ事ではないと感じ、重い体を起こしてベッドから降りた。
僕が立ち上がると、モルは待ってましたとばかりに、先導するように部屋のドアへと駆け寄り、前足でカリカリとドアを引っ掻き始めた。
「わかったよ、モル。一緒に行こう。でも、静かにね?」
僕は小さな声で言い聞かせ、そっとドアを開けて廊下に出る。
モルは、僕がついてきているのを確認すると、迷いのない足取りで屋敷の奥へと進んでいった。その向かう先は……確か、数日前にモルが異常な反応を示した、あの古い書庫の方向だ。
深夜のクライネル邸は、静寂に包まれている。
僕とモルの小さな足音だけが、長い廊下に響いていた。
やがて書庫にたどり着くと、モルはあの時と同じように、奥まった本棚の足元の床の一点を、くんくんと嗅ぎ始めた。そして、僕の顔を見上げ、「きゅぅ……ふみゅん……!」と、助けを求めるような、切ない声を上げたのだ。
その時、偶然にも夜食を求めて厨房へ向かっていたらしいアラン兄様と、そしてなぜか「何か面白いことが起きているのでは?」と期待に満ちた目でついてきていたアルフレッドさん、レオナルドさんが、僕たちの姿を見つけて近づいてきた。
「ルーク? こんな夜中にどうしたんだい? モルも一緒か」
「これは……ルーク様、モル殿。また、この場所で何か……?」
アルフレッドさんは、以前モルが反応した場所であることを即座に思い出し、興味深そうに目を細める。
僕が「モルが、なんだかここをすごく気にしてて……誰か、助けてほしいみたいなんだよぉ」と説明すると、モルはそれを肯定するかのように、再び床の一点を前足でカリカリと引っ掻き始めた。
アラン兄様が懐中ランタンでその場所を照らし、アルフレッドさんが持参していた魔力探知機をかざす。
すると、以前よりもはっきりと、探知機の針が微弱ながらも「生命反応」と「封印された魔力の残滓」のようなものを示したのだ。
「やはり……! この下に何かある! しかも、生きている……! アラン殿、ここは……!」
アルフレッドさんの言葉に、アラン兄様も表情を引き締める。
そして、レオナルドさんが「おいおい、まさか本当に宝物でもあるのか?」と不謹慎な期待を口にしたその時だった。
カリカリ、カリ……。
床下から、微かに、何かを引っ掻くような音が聞こえてきたのだ。
そして、小さな、小さな、か細い鳴き声が……。
「……みぃ……くぅ……ん……」
それは、まるで生まれたばかりの子猫か、あるいはもっと小さな生き物の、助けを求める悲痛なSOSのように聞こえた。
一同が息をのむ。
アラン兄様が、慎重に、しかし力強く、モルが示していたあたりの石畳を数枚剥がすと、そこには、地下へと続く狭い隙間が現れた。
そして、その暗い隙間の奥から、一対の、怯えたように潤む金色の瞳が、こちらをじっと見つめていた。
懐中ランタンの光が、その小さな姿を照らし出す。
そこにいたのは、泥と埃にまみれ、見るからに弱々しく震えている、黒銀色の美しい毛並みを持つ、子狼のような生き物だった。
その大きさは、モルよりも一回り大きいくらいだろうか。しかし、その瞳には、野生動物特有の鋭さはなく、ただただ恐怖と、そしてほんの少しの助けを求める色が浮かんでいる。
「こ、これは……! 間違いない……『シルヴァン・ウルフ』の幼体だ! しかも、極めて稀少な黒銀の毛並み……! なぜこんな場所に、こんな状態で……!?」
アルフレッドさんが、驚愕と興奮の入り混じった声で叫ぶ。
レオナルドさんも、その神秘的で、しかしあまりにも儚げな姿に、思わず言葉を失っていた。
僕は、ただ、その小さくて震える生き物を見つめていた。
胸の奥が、きゅっと締め付けられるような、切ない気持ちになる。
「わぁ……ちっちゃくて……なんだか、とってもかわいそう……」
僕がぽつりとそう呟くと、モルはそっとその子狼に寄り添い、まるで「大丈夫だよ、怖くないよ」とでも言うように、優しく「きゅるる……」と鳴きかけた。
迷子の『もふもふベビー』との出会いは、こうして、深夜のクライネル邸の片隅で、静かに果たされたのだった。
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