12 / 64
第1章 異世界へ、そしてダンジョンへ
10.街を満喫しようか
しおりを挟む
「セシリアちゃん、セシリアちゃん。もう起きてよ」
「どうした?」
「どうしたじゃないよ、昼だよもう。お腹すいたよ~」
時計を見ると昼になっていた。
「ごめん、ごめん。昨日遅かったからつい寝過ぎた」
「たまには、商業街でご飯食べようよ」
昨日買い出しに行ったところか。
彼処でご飯も悪くないな。
「いいな、それ。準備するから少し待ってくれ」
「分かったよ」
カリスはもう着替えて準備ができていた。
俺はクローゼットから服を出す。
この世界に来てから約1週間。
特に女性のとしての過ごし方が難しい。
服の着方についてもそうだが、カリスに色々教えてもらい何とかやっている状況だ。
服を着た俺は次に髪を梳かした。
昨日からやっと一人でできるようになってきた。
髪は長いと洗うのも大変で、朝整えるのも一苦労だ。
準備が一通り終わり、カリスに声を掛ける。
「準備できた。待たせて悪かったな」
「早く行こう、お腹空いて倒れそうだよ」
俺たちは宿を小走り気味で商業街に向かった。
「何を食べるんだ?」
「そうねー何にしようかな、肉にする?」
「肉でいいぞ。おすすめの店はあるのか」
この世界は結構普通に肉がおいしい。
前行った高級店みたいなところだと尚更、柔らかくて脂もしつこくなく、スパイシーで美味い。
「あるよ、私に付いてきて」
カリスは付いてくるように言うと、足取りが更に軽くなり跳ねるように進んで行く。
余程楽しみなようだ。
◇
「ここだよ」
店を見ると、冒険s……ではなく攻略組の人が来そうなTHE大衆向けの料理屋という感じだ。
「早速、入ろうか」
「うん」
店に入ると
「いらっしゃい!カリスの嬢ちゃん、今日はお友達と一緒か?」
「そうよ、今日はお友達と一緒よ!」
とても誇らしげに胸を張って言っている。
嬉しいことだ。
「そちらのお嬢ちゃんのお名前は?」
「セシリアといいます」
「そうか、セシリア嬢ちゃんか。よろしくな!」
「よ、よろしくお願いします」
店の人が出迎えてくれた。
とても楽しそうな店だ。
俺たちは席に案内された。
「ここの常連なのか?」
「多いときは週に3、4回は来てたよ。だから、常連かどうかで言えば常連だと思うよ」
「おすすめはある?」
「何を選んでも外れはないから何でもいいと思うよ」
店に貼ってあるメニュー表を見る。
たくさんあってどれにすればいいかもう、よくわからないので近くにあったメニューの≪日替わりステーキ≫にした。
「ボクは≪日替わりステーキ≫にしたけど、カリスは?」
「私は、≪熟成稀少部位のステーキ≫にした。前来たときこんなの無かったからこれにしたんだ」
俺たちは店員さんに注文をした。
暫くすると、料理は届いた。
「な、なんか私のお肉、滅茶苦茶少ないんですけど」
そりゃ、大衆向けの店だから低コストに抑えるためだからしょうがないだろう。
俺のはというと、ステーキと人参、玉ねぎ、ポテトが入った、THE定番だ。
カリスに、この街にはどんな娯楽があるのか訊くとサーカスがあるらしい。
明日辺りに行ってみるか。
喋りながらも、気づくとお腹が空いていた俺たちはすぐに平らげていた。
会計を済ませて次の店へ向かう。
◇
「カリスはどこに行きたいんだ?」
「どうしようかな………。そうだ、図書館に行かない?図書館に行けばその、セシリアちゃんの言ってた魔法のことが載ってる本があるかもしれないし」
俺の言った本はあるかはわからないが、この世界の常識や歴史を知れていいだろう。
「いいな、それ。案内してくれるか」
「うん、案内するよ」
商業街を出て、少し歩くと目立つ大きな建物が見えてきた。
「久しぶりに来たよ。1年ぶりくらいかな」
「誰でも入れる感じか?」
「ダンジョンの攻略組のカードがあるよね?それを見せれば入れるよ」
どうやら、入っても大丈夫なようだ。
中に入って係りの人にカードを提示して入る。
本はとても多くて目当てのものを探すだけでも大変そうだ。
「セシリアちゃんは、何読むの?」
「歴史について、かな」
「魔法覚えるときたくさん調べたっていってなかったけ?」
意外に俺の話を覚えている。
覚えてくれるのは嬉しいことだが、嘘なので毎回隠すとなると辛いな。
「地域によって違うみたいだから、この辺の歴史も調べようと思ってさ、読むことにした」
「勉強熱心だね、私はそういうの苦手だから他のコーナーに行ってるから日が落ちる少し前にここで待ち合わせね」
「わかった」
ここで一旦カリスと別れ目的の本を探す。
俺は幾つか本を手に取り、読んだ。
これ等の本は全て歴史についてだ。
どんなことが載っているのだろうかと楽しみにしながら読む。
印刷技術がないこの世界では本はとても価値が高いそんなものが何故ここにあるのだろう。
読めていることだし、気にしても仕方がないと割り切り、ページを捲り読んでいく。
気が付くと外は赤く染まり始めていた。
俺は、もとの場所に本を返していく。
その作業が終わると、待ち合わせしていたところに急いで戻る。
流石に走るのは駄目なので気持ち早めだ。
向かっている途中、カリスと会う。
「おう、カリス。本は終わったか?」
「私も戻ってたところだよ」
そのまま、図書館を後にすると夕飯について考える。
「夕飯はどうするか?」
「出来ればセシリアちゃんのが、食べたいけど食材買ったり作ったりで大変だから、外で済ませましょ」
「また、案内頼めるか」
「勿論。肉じゃなくて魚料理が出てくるおすすめの店に行くよ」
この世界の魚料理は果たしてどんな味だろうか。
見たことはあるが、食べたことは無いので楽しみだな。
このあたりは確か海から30キロ離れるっていう話か。
海か川魚のどっちが出てくるだろう。
両方あったらどっちも食べてみたいがそんなに食べれる気がしないのでどちらかにしよう。
そもそも、魚の名前だけで川か海も分からないんだった。
普通に余計なことを考えずに味を楽しむとしようか。
そんな期待を胸にカリスの後を付いて行く。
「カリス、何読んでたんだ?」
「え、言わないと駄目?」
何故そこで拒否をするんだ。
前みたいな演技?ここでそれをする意味はなんだ。
気になるから訊こう。
「言って欲しい」
「何で?」
「知りたいから」
「どうして知りたいの?」
頑なに言わない必要があることなのか?
余計気になる。
「隠そうとして余計気になるから」
「ちょ、ちょっと何それ?酷くないそれは」
「だって、本当に隠さないといけないなら他の本を言えばいいのに。もう、それ訊いてって言ってるようなものだぞ」
「そんな言い方しないで欲しいよ………。本当に言いたくなかっただけだし。聞いても笑わない?」
「別に何を読んでも自由だからな」
「そ、その絵本を、読んで……る」
深い意味は本当に無かったのかな、カリスの見た目の年齢的にはまだ読んでいても凄い変という訳でも無いと思うけど。
「概ね予想通りだから、笑わないぞ」
「それ、私を馬鹿にしてるでしょ!字が多いのが嫌いなだけで、普通の本も頑張れば読めるよ!」
これ以上は、面倒なので何となく謝る。
「なんか、すいませんでした」
「いきなり、何で謝るの?」
「気分かな」
「意味分からないこと言わないでよ……。さっき言ってたところは、ここの店だよ」
本の話しもひと段落がつき、ふと周りを確認し、俺も目的の店を発見する。
如何にも高級そうな感じが漂っていて怖いな。俺、そんなに金持ってないし、テーブルマナーとか無いに等しいぞ?
カリスは特に気にかけた様子も無く平然と入っていくので俺も慌てて追いかけて、自分なりに店に入るときには堂々として入る。
「いらっしゃいませ。ディナーは御二人で宜しいですか?」
執事ぽい感じのダンディーな男性が出迎えてくれた。
「はい、2人です」
「では、席の方へ御案内致します」
男性に付いて行き席に座る。
「御注文が、御決まりでしたらこちらのものに御願いします。では、私はこれで」
高級料理店だな本当にカリスは来たことがあるのか?
俺は前世ではこんな店は無縁だから困るな。
「こんばんは。この度当店をご利用いただきまして誠にありがとうございます。今回この席を担当させ…………。」
長いのでもう、聞くのをやめて然り気無くメニューへと目を移す。
どれも高いな。確か利用料もあるんだよな。今、お金幾らあるんだ?!
慌てて確認すると15万メタルだった。
調子にのると、終わるパターンだな。まあ、こういう店はガツガツ食べる店でも無いから雰囲気に合わせて少しずつ食べればお腹もいっぱいなるだろう。
「カリスは決まったか?」
そんなお金のことをずっと考えていても楽しく無いので、気分を切り替えてカリスに話し掛ける。
「う、うん。決まったよ」
指を指したメニューはコースでも一番品数が少ないものだ。
俺は2番目に少ないのにする。
高級料理店は時価だから怖い。
「すいません、決まりました」
「御注文を御願い致します」
「このコースでお願いします」
「私は、このコースを」
「以上で宜しいですか?」
何とか注文は終わった。
「カリス、お金大丈夫なのか」
「今、12万メタル………。どうしよう、足りないかも」
俺たちもうこんなに無くなるとか金遣い荒すぎだな。
ヤバイな、二人合わせて27万メタルこの店をやり過ごせるだろうか心配だ。前世の感じだと普通に2人食事してで30万は聞いたことが無いが、それが通用するとも限らない。
俺たちは出てくる料理を見てその豪華さの余りどんどん不安は募りながら食べることとなった。
とても美味しくて俺が魔法で作るものより断然こっちの方が美味しいのだが、お金のことに気がいってしまうのが悲しい。
次は、お金のことを気にせず食べに来たいものだ。
最後のデザートまで食べた俺たちは、何をしていいのかよく分からないが取り敢えず会計に向かう。
果たして幾らだろうか。
レジに近づくにつれ、緊張が高まり心臓の鼓動が速くなってくる。
この世界で一番の緊張状態に陥ってしまう。
「今回のお代は」
((幾ら何だ、足りていてくれ))
「37,000メタルです」
良かった。
俺はカリスにいい店を紹介してくれたお礼に———
「今回はボクに払わせてくれ」
———と小さく言うと——
「40,000メタルで」
——袋の中からお金をだす。
「お釣りは3,000メタルです。本日はご利用いただきありがとうございます」
俺たちは緊張から解放され安堵のため息を漏らしながら宿に帰る。
もちろん、こんな時間にまともに帰ると前の俺みたいに面倒ごとに巻き込まれる可能性が高くなるので人気が少ないところで記憶転移で宿まで帰る。
街から宿に記憶転移で戻ってきた。もちろん、一瞬でだ。
「セシリアちゃん、何で夕食奢ってくれたの?」
「いろいろ街のこと教えてくれたお礼にだ」
カリスのおかげでこの街のことについて知ることが出来たのは事実だからな。
「逆に、私が街に行くのに付き合ってくれたから、払うのは私だったけど……、お金が足りない」
これ、どっちが払うか決めるのに普通に言うと何回も続くパターンか。
「但し、その代わりに明日も街を案内して欲しい」
「それは構わないけど、そんなことでいいの?」
「まだ、この街のことは全然知らないから勿論、これでいい」
「なら、明日も案内するよ!」
そんな、会話を交わし俺たちはベットに入る。
俺は、今日図書館で得た知識を整理する。
先ず、この世界は6つの国から成り立っている。
最北端に位置する【ノステルト王国】
最東端に位置する【カヘトリア王国】
最西端に位置する【ドルメリンス帝国】
最南端に位置する【ケレルノール諸国】
鉱山地帯が沢山ある【アサーヘルティ王国】
平地が広がる【グリセトルス諸国】
この6つだ。
大きな戦争はここ数百年は起きていないらしい。
最後の戦争は、国境について揉めたらしい。
川の向こうまでが俺の国だから、この川も俺の国が使うみたいな感じになってしまったようだ。
結局、両国のものとなったみたいだが。
この世界では魔法は知られてないと思ったら、神話みたいな扱いだったが昔は魔法を使える者が居たらしい。
その頃は、魔法を使い戦争をしていたそうだ。
流石に、俺レベルの魔法使いはその文献には載っていなかったが一般人としては、魔法を使えるものと使えないものとはっきりと住居区域の線引きがされいたようだ。
簡単に言うと貴族と平民みたいな扱いだった。
しかし、そんな裕福な生活を送れていた魔法を使っていた者は徐々に姿を消すようになりいつしか居なくなってしまったようだ。
どこに行ったかや何故消えたかは詳しく書いていなかった。
仮説としては、戦争を避けるためどこかへ移ったという説や、魔法が使えるもの同士で争い死んでしまいそのことを公にしたくなくて、そのまま居なくなってしまったという説。
この2つが多かった。
俺的には、戦争を避けるためだと思うがもしかしたら全員が好戦的で殺し合い居なくなってしまったというのも可能性としてはあるがそこまで愚かだったようには、思えない。
ある日居なくなっていき、ついに誰も居なくなったとは不思議な話だな。
もしかしたら、何人かは居るかもしれないな。
というか、まだこの話は事実と決まったわけではなかった。
結果この話は昔としか書いておらず、いつのことかは分からなかった。
俺が前にカリスに魔法を何故使えるのかその場で考えた空想の本も強ち嘘では無かったようだ。
この世界は魔法に関しては謎が多いと思う。
今回の図書館での収穫は結構大きかったと思う。
連れていってくれたカリスに感謝だな。
さて、記憶の整理もここまでにして今日はもう寝るか………。
「どうした?」
「どうしたじゃないよ、昼だよもう。お腹すいたよ~」
時計を見ると昼になっていた。
「ごめん、ごめん。昨日遅かったからつい寝過ぎた」
「たまには、商業街でご飯食べようよ」
昨日買い出しに行ったところか。
彼処でご飯も悪くないな。
「いいな、それ。準備するから少し待ってくれ」
「分かったよ」
カリスはもう着替えて準備ができていた。
俺はクローゼットから服を出す。
この世界に来てから約1週間。
特に女性のとしての過ごし方が難しい。
服の着方についてもそうだが、カリスに色々教えてもらい何とかやっている状況だ。
服を着た俺は次に髪を梳かした。
昨日からやっと一人でできるようになってきた。
髪は長いと洗うのも大変で、朝整えるのも一苦労だ。
準備が一通り終わり、カリスに声を掛ける。
「準備できた。待たせて悪かったな」
「早く行こう、お腹空いて倒れそうだよ」
俺たちは宿を小走り気味で商業街に向かった。
「何を食べるんだ?」
「そうねー何にしようかな、肉にする?」
「肉でいいぞ。おすすめの店はあるのか」
この世界は結構普通に肉がおいしい。
前行った高級店みたいなところだと尚更、柔らかくて脂もしつこくなく、スパイシーで美味い。
「あるよ、私に付いてきて」
カリスは付いてくるように言うと、足取りが更に軽くなり跳ねるように進んで行く。
余程楽しみなようだ。
◇
「ここだよ」
店を見ると、冒険s……ではなく攻略組の人が来そうなTHE大衆向けの料理屋という感じだ。
「早速、入ろうか」
「うん」
店に入ると
「いらっしゃい!カリスの嬢ちゃん、今日はお友達と一緒か?」
「そうよ、今日はお友達と一緒よ!」
とても誇らしげに胸を張って言っている。
嬉しいことだ。
「そちらのお嬢ちゃんのお名前は?」
「セシリアといいます」
「そうか、セシリア嬢ちゃんか。よろしくな!」
「よ、よろしくお願いします」
店の人が出迎えてくれた。
とても楽しそうな店だ。
俺たちは席に案内された。
「ここの常連なのか?」
「多いときは週に3、4回は来てたよ。だから、常連かどうかで言えば常連だと思うよ」
「おすすめはある?」
「何を選んでも外れはないから何でもいいと思うよ」
店に貼ってあるメニュー表を見る。
たくさんあってどれにすればいいかもう、よくわからないので近くにあったメニューの≪日替わりステーキ≫にした。
「ボクは≪日替わりステーキ≫にしたけど、カリスは?」
「私は、≪熟成稀少部位のステーキ≫にした。前来たときこんなの無かったからこれにしたんだ」
俺たちは店員さんに注文をした。
暫くすると、料理は届いた。
「な、なんか私のお肉、滅茶苦茶少ないんですけど」
そりゃ、大衆向けの店だから低コストに抑えるためだからしょうがないだろう。
俺のはというと、ステーキと人参、玉ねぎ、ポテトが入った、THE定番だ。
カリスに、この街にはどんな娯楽があるのか訊くとサーカスがあるらしい。
明日辺りに行ってみるか。
喋りながらも、気づくとお腹が空いていた俺たちはすぐに平らげていた。
会計を済ませて次の店へ向かう。
◇
「カリスはどこに行きたいんだ?」
「どうしようかな………。そうだ、図書館に行かない?図書館に行けばその、セシリアちゃんの言ってた魔法のことが載ってる本があるかもしれないし」
俺の言った本はあるかはわからないが、この世界の常識や歴史を知れていいだろう。
「いいな、それ。案内してくれるか」
「うん、案内するよ」
商業街を出て、少し歩くと目立つ大きな建物が見えてきた。
「久しぶりに来たよ。1年ぶりくらいかな」
「誰でも入れる感じか?」
「ダンジョンの攻略組のカードがあるよね?それを見せれば入れるよ」
どうやら、入っても大丈夫なようだ。
中に入って係りの人にカードを提示して入る。
本はとても多くて目当てのものを探すだけでも大変そうだ。
「セシリアちゃんは、何読むの?」
「歴史について、かな」
「魔法覚えるときたくさん調べたっていってなかったけ?」
意外に俺の話を覚えている。
覚えてくれるのは嬉しいことだが、嘘なので毎回隠すとなると辛いな。
「地域によって違うみたいだから、この辺の歴史も調べようと思ってさ、読むことにした」
「勉強熱心だね、私はそういうの苦手だから他のコーナーに行ってるから日が落ちる少し前にここで待ち合わせね」
「わかった」
ここで一旦カリスと別れ目的の本を探す。
俺は幾つか本を手に取り、読んだ。
これ等の本は全て歴史についてだ。
どんなことが載っているのだろうかと楽しみにしながら読む。
印刷技術がないこの世界では本はとても価値が高いそんなものが何故ここにあるのだろう。
読めていることだし、気にしても仕方がないと割り切り、ページを捲り読んでいく。
気が付くと外は赤く染まり始めていた。
俺は、もとの場所に本を返していく。
その作業が終わると、待ち合わせしていたところに急いで戻る。
流石に走るのは駄目なので気持ち早めだ。
向かっている途中、カリスと会う。
「おう、カリス。本は終わったか?」
「私も戻ってたところだよ」
そのまま、図書館を後にすると夕飯について考える。
「夕飯はどうするか?」
「出来ればセシリアちゃんのが、食べたいけど食材買ったり作ったりで大変だから、外で済ませましょ」
「また、案内頼めるか」
「勿論。肉じゃなくて魚料理が出てくるおすすめの店に行くよ」
この世界の魚料理は果たしてどんな味だろうか。
見たことはあるが、食べたことは無いので楽しみだな。
このあたりは確か海から30キロ離れるっていう話か。
海か川魚のどっちが出てくるだろう。
両方あったらどっちも食べてみたいがそんなに食べれる気がしないのでどちらかにしよう。
そもそも、魚の名前だけで川か海も分からないんだった。
普通に余計なことを考えずに味を楽しむとしようか。
そんな期待を胸にカリスの後を付いて行く。
「カリス、何読んでたんだ?」
「え、言わないと駄目?」
何故そこで拒否をするんだ。
前みたいな演技?ここでそれをする意味はなんだ。
気になるから訊こう。
「言って欲しい」
「何で?」
「知りたいから」
「どうして知りたいの?」
頑なに言わない必要があることなのか?
余計気になる。
「隠そうとして余計気になるから」
「ちょ、ちょっと何それ?酷くないそれは」
「だって、本当に隠さないといけないなら他の本を言えばいいのに。もう、それ訊いてって言ってるようなものだぞ」
「そんな言い方しないで欲しいよ………。本当に言いたくなかっただけだし。聞いても笑わない?」
「別に何を読んでも自由だからな」
「そ、その絵本を、読んで……る」
深い意味は本当に無かったのかな、カリスの見た目の年齢的にはまだ読んでいても凄い変という訳でも無いと思うけど。
「概ね予想通りだから、笑わないぞ」
「それ、私を馬鹿にしてるでしょ!字が多いのが嫌いなだけで、普通の本も頑張れば読めるよ!」
これ以上は、面倒なので何となく謝る。
「なんか、すいませんでした」
「いきなり、何で謝るの?」
「気分かな」
「意味分からないこと言わないでよ……。さっき言ってたところは、ここの店だよ」
本の話しもひと段落がつき、ふと周りを確認し、俺も目的の店を発見する。
如何にも高級そうな感じが漂っていて怖いな。俺、そんなに金持ってないし、テーブルマナーとか無いに等しいぞ?
カリスは特に気にかけた様子も無く平然と入っていくので俺も慌てて追いかけて、自分なりに店に入るときには堂々として入る。
「いらっしゃいませ。ディナーは御二人で宜しいですか?」
執事ぽい感じのダンディーな男性が出迎えてくれた。
「はい、2人です」
「では、席の方へ御案内致します」
男性に付いて行き席に座る。
「御注文が、御決まりでしたらこちらのものに御願いします。では、私はこれで」
高級料理店だな本当にカリスは来たことがあるのか?
俺は前世ではこんな店は無縁だから困るな。
「こんばんは。この度当店をご利用いただきまして誠にありがとうございます。今回この席を担当させ…………。」
長いのでもう、聞くのをやめて然り気無くメニューへと目を移す。
どれも高いな。確か利用料もあるんだよな。今、お金幾らあるんだ?!
慌てて確認すると15万メタルだった。
調子にのると、終わるパターンだな。まあ、こういう店はガツガツ食べる店でも無いから雰囲気に合わせて少しずつ食べればお腹もいっぱいなるだろう。
「カリスは決まったか?」
そんなお金のことをずっと考えていても楽しく無いので、気分を切り替えてカリスに話し掛ける。
「う、うん。決まったよ」
指を指したメニューはコースでも一番品数が少ないものだ。
俺は2番目に少ないのにする。
高級料理店は時価だから怖い。
「すいません、決まりました」
「御注文を御願い致します」
「このコースでお願いします」
「私は、このコースを」
「以上で宜しいですか?」
何とか注文は終わった。
「カリス、お金大丈夫なのか」
「今、12万メタル………。どうしよう、足りないかも」
俺たちもうこんなに無くなるとか金遣い荒すぎだな。
ヤバイな、二人合わせて27万メタルこの店をやり過ごせるだろうか心配だ。前世の感じだと普通に2人食事してで30万は聞いたことが無いが、それが通用するとも限らない。
俺たちは出てくる料理を見てその豪華さの余りどんどん不安は募りながら食べることとなった。
とても美味しくて俺が魔法で作るものより断然こっちの方が美味しいのだが、お金のことに気がいってしまうのが悲しい。
次は、お金のことを気にせず食べに来たいものだ。
最後のデザートまで食べた俺たちは、何をしていいのかよく分からないが取り敢えず会計に向かう。
果たして幾らだろうか。
レジに近づくにつれ、緊張が高まり心臓の鼓動が速くなってくる。
この世界で一番の緊張状態に陥ってしまう。
「今回のお代は」
((幾ら何だ、足りていてくれ))
「37,000メタルです」
良かった。
俺はカリスにいい店を紹介してくれたお礼に———
「今回はボクに払わせてくれ」
———と小さく言うと——
「40,000メタルで」
——袋の中からお金をだす。
「お釣りは3,000メタルです。本日はご利用いただきありがとうございます」
俺たちは緊張から解放され安堵のため息を漏らしながら宿に帰る。
もちろん、こんな時間にまともに帰ると前の俺みたいに面倒ごとに巻き込まれる可能性が高くなるので人気が少ないところで記憶転移で宿まで帰る。
街から宿に記憶転移で戻ってきた。もちろん、一瞬でだ。
「セシリアちゃん、何で夕食奢ってくれたの?」
「いろいろ街のこと教えてくれたお礼にだ」
カリスのおかげでこの街のことについて知ることが出来たのは事実だからな。
「逆に、私が街に行くのに付き合ってくれたから、払うのは私だったけど……、お金が足りない」
これ、どっちが払うか決めるのに普通に言うと何回も続くパターンか。
「但し、その代わりに明日も街を案内して欲しい」
「それは構わないけど、そんなことでいいの?」
「まだ、この街のことは全然知らないから勿論、これでいい」
「なら、明日も案内するよ!」
そんな、会話を交わし俺たちはベットに入る。
俺は、今日図書館で得た知識を整理する。
先ず、この世界は6つの国から成り立っている。
最北端に位置する【ノステルト王国】
最東端に位置する【カヘトリア王国】
最西端に位置する【ドルメリンス帝国】
最南端に位置する【ケレルノール諸国】
鉱山地帯が沢山ある【アサーヘルティ王国】
平地が広がる【グリセトルス諸国】
この6つだ。
大きな戦争はここ数百年は起きていないらしい。
最後の戦争は、国境について揉めたらしい。
川の向こうまでが俺の国だから、この川も俺の国が使うみたいな感じになってしまったようだ。
結局、両国のものとなったみたいだが。
この世界では魔法は知られてないと思ったら、神話みたいな扱いだったが昔は魔法を使える者が居たらしい。
その頃は、魔法を使い戦争をしていたそうだ。
流石に、俺レベルの魔法使いはその文献には載っていなかったが一般人としては、魔法を使えるものと使えないものとはっきりと住居区域の線引きがされいたようだ。
簡単に言うと貴族と平民みたいな扱いだった。
しかし、そんな裕福な生活を送れていた魔法を使っていた者は徐々に姿を消すようになりいつしか居なくなってしまったようだ。
どこに行ったかや何故消えたかは詳しく書いていなかった。
仮説としては、戦争を避けるためどこかへ移ったという説や、魔法が使えるもの同士で争い死んでしまいそのことを公にしたくなくて、そのまま居なくなってしまったという説。
この2つが多かった。
俺的には、戦争を避けるためだと思うがもしかしたら全員が好戦的で殺し合い居なくなってしまったというのも可能性としてはあるがそこまで愚かだったようには、思えない。
ある日居なくなっていき、ついに誰も居なくなったとは不思議な話だな。
もしかしたら、何人かは居るかもしれないな。
というか、まだこの話は事実と決まったわけではなかった。
結果この話は昔としか書いておらず、いつのことかは分からなかった。
俺が前にカリスに魔法を何故使えるのかその場で考えた空想の本も強ち嘘では無かったようだ。
この世界は魔法に関しては謎が多いと思う。
今回の図書館での収穫は結構大きかったと思う。
連れていってくれたカリスに感謝だな。
さて、記憶の整理もここまでにして今日はもう寝るか………。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
124
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる