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28.判断がつかない出来事
数日後。
王太子妃教育を受けるため王宮へ向かうと、宮殿内はどことなく閑散としていた。
「いつもより人が少ないようですが、何かあったのですか?」
私は案内をしてくれている女官のコリンヌに尋ねた。
「魔術師団と騎士団の合同訓練が行われるため、常駐していた騎士と魔術師の一部が遠征に出ているので、それだと思います」
「合同訓練、ですか?」
一度目、この時期にそんなことあっただろうか。
考えてみても思い当たることはない。
「何でも、急に決まったという話ですよ」
コリンヌもそれ以上は知らされていないようだった。
人の減った広間を横切り、授業を受ける部屋へと向かった。
王宮内の変化は関係なく、普段通りの授業を受けた。帰ろうとしたところでマティアス殿下からの御茶のお誘いを受けた。
約束はしていなかったはずだが、お断りできるはずもない。私は案内を持ってきた侍女の案内で指定された部屋へと向かった。
殿下は既にいらしており、私は膝を折って挨拶を行う。
「本日はお誘い頂き、ありがとうございます」
「来てくれて嬉しいよ。ジュリアの顔を見ておきたくてね」
「楽にして、こちらに」
顔を上げると、数日前に会ったはずの殿下は少しやつれているようだった。目元にはうっすらとクマが浮かび、疲労の色が隠せていない。
従者が引いた椅子に座ると、淹れ立てのお茶が置かれ、殿下のカップも新しい物へと入れ替えられる。殿下が口にされてから、私もいただく。
甘い花の匂いとバニラの香りが合わさっていて、とても美味しい。
殿下はカップを置くと、口を開いた。
「王宮内の人が減っていて、驚いただろう?」
「はい。騎士団と魔術師団で合同遠征に出られていると伺いました」
「表向きはね。隣国がこちらの国に興味を持っているようでね。国境が少し賑やかな事になりそうなんだ」
有事の際に即座に対応できるよう、合同訓練という名目で遠征に見せかけた牽制を取るということのようだ。
「……私が伺ってよろしいのですか?」
「既にラバール侯爵もご存じだし、問題ないよ。口外は控えて欲しいけれどね」
頷くと、殿下は視線を落とす。
「それで、私も忙しくなりそうなんだ。年内には落ち着くと聞いているが、それまでは今までのように会う時間を作れなくなると思う。ジュリアも、心得て置いて欲しい」
「……かしこまりました」
頷いた後、少し考えて続ける。
「私に、何か出来ることはありますか?」
「そうだね……」
殿下は少し考えて首を振った。
「今は特にないかな。必要があればその時は声を掛けるよ。それまでは今まで通り王太子妃教育を進めていて欲しい。上に居る者がいつも通りの日常を送っていることも大事だからね」
「はい」
殿下はカップの残りを飲み干すと、私にはゆっくりしていくよう言い置いて出て行かれた。
侍女が殿下の分のカップを下げ、私に新しいお茶を運んでくる。それを口にしながら、今回の件について私は考えを巡らせた。
この出来事が一度目の私の記憶にないのは、単純に私に知らされなかったからだろうか。それとも、今回新しく起きたことなのだろうか。後者なら、時戻りの魔術を使った術者が誰か、手がかりがつかめるかもしれない。
お茶を飲み終えた私は、期待を胸に王宮を後にした。
しかし、その後、時間を掛けて調べたにも関わらず、重要な情報は集まらなかった。知ることが出来たのは広く周知された内容だけ。遠征に向かった人らの名簿もなんとか手に入れたけれど、人数が多すぎて手がかりを掴むどころではなかった。
その上、筆頭魔術師も遠征に同行していて、遠征が終わるまではクロード様の話を聞くこともできず、殿下の言う通りに、王太子妃教育を受ける位しか出来ることはなかった。
遠征は当初の期間を超えて長引き、状況が落ち着いたのは、私達が学園への入学時期を迎える春の手前のことだった。
王太子妃教育を受けるため王宮へ向かうと、宮殿内はどことなく閑散としていた。
「いつもより人が少ないようですが、何かあったのですか?」
私は案内をしてくれている女官のコリンヌに尋ねた。
「魔術師団と騎士団の合同訓練が行われるため、常駐していた騎士と魔術師の一部が遠征に出ているので、それだと思います」
「合同訓練、ですか?」
一度目、この時期にそんなことあっただろうか。
考えてみても思い当たることはない。
「何でも、急に決まったという話ですよ」
コリンヌもそれ以上は知らされていないようだった。
人の減った広間を横切り、授業を受ける部屋へと向かった。
王宮内の変化は関係なく、普段通りの授業を受けた。帰ろうとしたところでマティアス殿下からの御茶のお誘いを受けた。
約束はしていなかったはずだが、お断りできるはずもない。私は案内を持ってきた侍女の案内で指定された部屋へと向かった。
殿下は既にいらしており、私は膝を折って挨拶を行う。
「本日はお誘い頂き、ありがとうございます」
「来てくれて嬉しいよ。ジュリアの顔を見ておきたくてね」
「楽にして、こちらに」
顔を上げると、数日前に会ったはずの殿下は少しやつれているようだった。目元にはうっすらとクマが浮かび、疲労の色が隠せていない。
従者が引いた椅子に座ると、淹れ立てのお茶が置かれ、殿下のカップも新しい物へと入れ替えられる。殿下が口にされてから、私もいただく。
甘い花の匂いとバニラの香りが合わさっていて、とても美味しい。
殿下はカップを置くと、口を開いた。
「王宮内の人が減っていて、驚いただろう?」
「はい。騎士団と魔術師団で合同遠征に出られていると伺いました」
「表向きはね。隣国がこちらの国に興味を持っているようでね。国境が少し賑やかな事になりそうなんだ」
有事の際に即座に対応できるよう、合同訓練という名目で遠征に見せかけた牽制を取るということのようだ。
「……私が伺ってよろしいのですか?」
「既にラバール侯爵もご存じだし、問題ないよ。口外は控えて欲しいけれどね」
頷くと、殿下は視線を落とす。
「それで、私も忙しくなりそうなんだ。年内には落ち着くと聞いているが、それまでは今までのように会う時間を作れなくなると思う。ジュリアも、心得て置いて欲しい」
「……かしこまりました」
頷いた後、少し考えて続ける。
「私に、何か出来ることはありますか?」
「そうだね……」
殿下は少し考えて首を振った。
「今は特にないかな。必要があればその時は声を掛けるよ。それまでは今まで通り王太子妃教育を進めていて欲しい。上に居る者がいつも通りの日常を送っていることも大事だからね」
「はい」
殿下はカップの残りを飲み干すと、私にはゆっくりしていくよう言い置いて出て行かれた。
侍女が殿下の分のカップを下げ、私に新しいお茶を運んでくる。それを口にしながら、今回の件について私は考えを巡らせた。
この出来事が一度目の私の記憶にないのは、単純に私に知らされなかったからだろうか。それとも、今回新しく起きたことなのだろうか。後者なら、時戻りの魔術を使った術者が誰か、手がかりがつかめるかもしれない。
お茶を飲み終えた私は、期待を胸に王宮を後にした。
しかし、その後、時間を掛けて調べたにも関わらず、重要な情報は集まらなかった。知ることが出来たのは広く周知された内容だけ。遠征に向かった人らの名簿もなんとか手に入れたけれど、人数が多すぎて手がかりを掴むどころではなかった。
その上、筆頭魔術師も遠征に同行していて、遠征が終わるまではクロード様の話を聞くこともできず、殿下の言う通りに、王太子妃教育を受ける位しか出来ることはなかった。
遠征は当初の期間を超えて長引き、状況が落ち着いたのは、私達が学園への入学時期を迎える春の手前のことだった。
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