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42.王宮へ
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領地でのお茶会が無事に終わり、社交界シーズンが近づいてきた。
夜会などで忙しくなる前に、お互いの両親への挨拶も必要だからと、社交界が始まる少し前に王都へと入った。
ノエル様は王宮の自室は返上しているそうで、王都に来た際は貴族街にあるお屋敷で過ごされているそうだ。私もそちらに滞在している。
王宮に到着後、私の生家である伯爵家への挨拶は無事に終わり、今日はいよいよノエル様のご両親とお会いする日だ。
お伺いを立てたところ、午後のお茶の時間にと呼ばれているので、朝から仕度を調えてもらい今は王宮に向かう馬車の中にいる。
ドレスは、メゾン・エトワールで作ってもらったもののうち、まだ袖を通していない方を着用している。
最初に婚約をすっ飛ばして婚姻を結んでしまったから、どういう印象を持たれているか不安でもある。
緊張している私の内心を察してか、ノエル様が手を握ってくれた。
ノエル様の手は温かく、ほっとする温度だ。
馬車の中、王宮に着くまでずっと手を握ってもらっていた。
王宮に到着すると王宮の奥の、明らかにプライベートなエリアのサロンへと通される。
そう待つこと無く、国王陛下夫妻がやってこられた。
「よく参ったね。顔を上げてくれるかな」
カーテシーの姿勢をただすと、優しげな笑みを浮かべた国王陛下と王妃様がいらっしゃる。
髪の色はお二人が金髪に対して、ノエル様は黒色だが、紫色の瞳はお父上ゆずりのようだ。顔立ちはお母上に似ていらっしゃるので、色味が多少違っても血のつながりが感じられる。
「父上、母上、妻のシャルロットです」
「お初にお目にかかります。ヴィアール伯爵が娘、シャルロットと申します。国王陛下、王妃殿下におかれましては、本日はご機嫌麗しく存じます」
ノエル様の紹介に続けると、お二人は頷いてくれた。
「今日は私的な場だ。楽にしてほしい」
顔を上げると、お二人に椅子を勧められた。
お茶とお菓子をいただきつつ、陛下が言う。
「この度は、お会いする機会を作っていただきありがとうございました」
「いや。息子の結婚相手に私達も会ってみたかったからな。息子が突然、婚約をしたい相手がいると言い出した時は驚いたよ。ご令嬢は、すぐに結婚となってしまったが、後悔はないのだろうか」
陛下の言葉は、息子を心配する父親のものだった。
「この結婚には感謝しかありません。ノエル様は、私にとても真摯に向き合ってくださいます。それに、辺境の地の民に寄り添われるお姿を、とても尊敬しています。私もそんなノエル様のことをお側で支えたいと思っています」
「……そうか。ノエル、よい方を迎えたな」
当たり前だというように、ノエル様は頷く。
そうしたところで、王妃殿下が続けられる。
「ノエルをもらってくれてありがとう」
その言葉に、私は慌てて頭を下げる。
「えっ、いえっ、私の方こそ、ノエル様との結婚を許していただき感謝しております。あの、どうか、シャルロットとお呼びください」
「では、お言葉に甘えようかね」
陛下は、続ける。
「息子は、今までどんな婚約の話にも一度として頷いたことはなかったんだ。もう結婚を諦めていたのだが、ある日、突然結婚をしたいお嬢さんがいると言い出して、緊急通信まで使って婚約の申し込みを頼んでくるものだから驚いたよ。婚姻が早かったのにも驚いたが、むしろ早くまとまってよかったかもしれんな」
「あら、私は逃げられる前に早く結婚をしなさいと言うつもりでしたのよ」
陛下の言葉に王妃様が庇うように言ってくれて、私はほっとする。
「しかし、婚姻の自由の代わりに、王家で持て余していた辺境を引き受けるといったノエルが結婚とは――。長く生きてみるものだ。シャルロットさん、息子のことを、よろしく頼む」
「こちらこそ、ノエル様のような方と結婚できて、この上なく幸せです。このご縁、大切にいたします」
陛下は頷くと、時計を見る。
「晩餐に、二人を招待しよう。他の息子達夫婦も来る予定だ。私達はもう行くが、侍従が呼びに来るまで好きに過ごしなさい」
「ノエル、私の庭の花が見頃です。シャルロットさんに案内してあげるといいわ」
「ありがとうございます」
「では、また後で」
そうして、王妃様の許可を得た者しか立ち入れない庭を案内してもらった後、晩餐までいただいてから私達は王宮を辞去したのだった。
夜会などで忙しくなる前に、お互いの両親への挨拶も必要だからと、社交界が始まる少し前に王都へと入った。
ノエル様は王宮の自室は返上しているそうで、王都に来た際は貴族街にあるお屋敷で過ごされているそうだ。私もそちらに滞在している。
王宮に到着後、私の生家である伯爵家への挨拶は無事に終わり、今日はいよいよノエル様のご両親とお会いする日だ。
お伺いを立てたところ、午後のお茶の時間にと呼ばれているので、朝から仕度を調えてもらい今は王宮に向かう馬車の中にいる。
ドレスは、メゾン・エトワールで作ってもらったもののうち、まだ袖を通していない方を着用している。
最初に婚約をすっ飛ばして婚姻を結んでしまったから、どういう印象を持たれているか不安でもある。
緊張している私の内心を察してか、ノエル様が手を握ってくれた。
ノエル様の手は温かく、ほっとする温度だ。
馬車の中、王宮に着くまでずっと手を握ってもらっていた。
王宮に到着すると王宮の奥の、明らかにプライベートなエリアのサロンへと通される。
そう待つこと無く、国王陛下夫妻がやってこられた。
「よく参ったね。顔を上げてくれるかな」
カーテシーの姿勢をただすと、優しげな笑みを浮かべた国王陛下と王妃様がいらっしゃる。
髪の色はお二人が金髪に対して、ノエル様は黒色だが、紫色の瞳はお父上ゆずりのようだ。顔立ちはお母上に似ていらっしゃるので、色味が多少違っても血のつながりが感じられる。
「父上、母上、妻のシャルロットです」
「お初にお目にかかります。ヴィアール伯爵が娘、シャルロットと申します。国王陛下、王妃殿下におかれましては、本日はご機嫌麗しく存じます」
ノエル様の紹介に続けると、お二人は頷いてくれた。
「今日は私的な場だ。楽にしてほしい」
顔を上げると、お二人に椅子を勧められた。
お茶とお菓子をいただきつつ、陛下が言う。
「この度は、お会いする機会を作っていただきありがとうございました」
「いや。息子の結婚相手に私達も会ってみたかったからな。息子が突然、婚約をしたい相手がいると言い出した時は驚いたよ。ご令嬢は、すぐに結婚となってしまったが、後悔はないのだろうか」
陛下の言葉は、息子を心配する父親のものだった。
「この結婚には感謝しかありません。ノエル様は、私にとても真摯に向き合ってくださいます。それに、辺境の地の民に寄り添われるお姿を、とても尊敬しています。私もそんなノエル様のことをお側で支えたいと思っています」
「……そうか。ノエル、よい方を迎えたな」
当たり前だというように、ノエル様は頷く。
そうしたところで、王妃殿下が続けられる。
「ノエルをもらってくれてありがとう」
その言葉に、私は慌てて頭を下げる。
「えっ、いえっ、私の方こそ、ノエル様との結婚を許していただき感謝しております。あの、どうか、シャルロットとお呼びください」
「では、お言葉に甘えようかね」
陛下は、続ける。
「息子は、今までどんな婚約の話にも一度として頷いたことはなかったんだ。もう結婚を諦めていたのだが、ある日、突然結婚をしたいお嬢さんがいると言い出して、緊急通信まで使って婚約の申し込みを頼んでくるものだから驚いたよ。婚姻が早かったのにも驚いたが、むしろ早くまとまってよかったかもしれんな」
「あら、私は逃げられる前に早く結婚をしなさいと言うつもりでしたのよ」
陛下の言葉に王妃様が庇うように言ってくれて、私はほっとする。
「しかし、婚姻の自由の代わりに、王家で持て余していた辺境を引き受けるといったノエルが結婚とは――。長く生きてみるものだ。シャルロットさん、息子のことを、よろしく頼む」
「こちらこそ、ノエル様のような方と結婚できて、この上なく幸せです。このご縁、大切にいたします」
陛下は頷くと、時計を見る。
「晩餐に、二人を招待しよう。他の息子達夫婦も来る予定だ。私達はもう行くが、侍従が呼びに来るまで好きに過ごしなさい」
「ノエル、私の庭の花が見頃です。シャルロットさんに案内してあげるといいわ」
「ありがとうございます」
「では、また後で」
そうして、王妃様の許可を得た者しか立ち入れない庭を案内してもらった後、晩餐までいただいてから私達は王宮を辞去したのだった。
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