今世こそは幸せな結婚を目指します! ~前世を思い出した元聖女は生まれ変わった魔王様に溺愛される~

乙原ゆん

文字の大きさ
42 / 46

42.王宮へ

しおりを挟む
 領地でのお茶会が無事に終わり、社交界シーズンが近づいてきた。
 夜会などで忙しくなる前に、お互いの両親への挨拶も必要だからと、社交界が始まる少し前に王都へと入った。
 ノエル様は王宮の自室は返上しているそうで、王都に来た際は貴族街にあるお屋敷で過ごされているそうだ。私もそちらに滞在している。

 王宮に到着後、私の生家である伯爵家への挨拶は無事に終わり、今日はいよいよノエル様のご両親とお会いする日だ。
 お伺いを立てたところ、午後のお茶の時間にと呼ばれているので、朝から仕度を調えてもらい今は王宮に向かう馬車の中にいる。
 ドレスは、メゾン・エトワールで作ってもらったもののうち、まだ袖を通していない方を着用している。

 最初に婚約をすっ飛ばして婚姻を結んでしまったから、どういう印象を持たれているか不安でもある。
 緊張している私の内心を察してか、ノエル様が手を握ってくれた。
 ノエル様の手は温かく、ほっとする温度だ。
 馬車の中、王宮に着くまでずっと手を握ってもらっていた。

 王宮に到着すると王宮の奥の、明らかにプライベートなエリアのサロンへと通される。
 そう待つこと無く、国王陛下夫妻がやってこられた。

「よく参ったね。顔を上げてくれるかな」

 カーテシーの姿勢をただすと、優しげな笑みを浮かべた国王陛下と王妃様がいらっしゃる。
 髪の色はお二人が金髪に対して、ノエル様は黒色だが、紫色の瞳はお父上ゆずりのようだ。顔立ちはお母上に似ていらっしゃるので、色味が多少違っても血のつながりが感じられる。

「父上、母上、妻のシャルロットです」
「お初にお目にかかります。ヴィアール伯爵が娘、シャルロットと申します。国王陛下、王妃殿下におかれましては、本日はご機嫌麗しく存じます」

 ノエル様の紹介に続けると、お二人は頷いてくれた。

「今日は私的な場だ。楽にしてほしい」

 顔を上げると、お二人に椅子を勧められた。
 お茶とお菓子をいただきつつ、陛下が言う。

「この度は、お会いする機会を作っていただきありがとうございました」
「いや。息子の結婚相手に私達も会ってみたかったからな。息子が突然、婚約をしたい相手がいると言い出した時は驚いたよ。ご令嬢は、すぐに結婚となってしまったが、後悔はないのだろうか」

 陛下の言葉は、息子を心配する父親のものだった。

「この結婚には感謝しかありません。ノエル様は、私にとても真摯に向き合ってくださいます。それに、辺境の地の民に寄り添われるお姿を、とても尊敬しています。私もそんなノエル様のことをお側で支えたいと思っています」
「……そうか。ノエル、よい方を迎えたな」

 当たり前だというように、ノエル様は頷く。
 そうしたところで、王妃殿下が続けられる。

「ノエルをもらってくれてありがとう」

 その言葉に、私は慌てて頭を下げる。

「えっ、いえっ、私の方こそ、ノエル様との結婚を許していただき感謝しております。あの、どうか、シャルロットとお呼びください」
「では、お言葉に甘えようかね」

 陛下は、続ける。

「息子は、今までどんな婚約の話にも一度として頷いたことはなかったんだ。もう結婚を諦めていたのだが、ある日、突然結婚をしたいお嬢さんがいると言い出して、緊急通信まで使って婚約の申し込みを頼んでくるものだから驚いたよ。婚姻が早かったのにも驚いたが、むしろ早くまとまってよかったかもしれんな」
「あら、私は逃げられる前に早く結婚をしなさいと言うつもりでしたのよ」

 陛下の言葉に王妃様が庇うように言ってくれて、私はほっとする。

「しかし、婚姻の自由の代わりに、王家で持て余していた辺境を引き受けるといったノエルが結婚とは――。長く生きてみるものだ。シャルロットさん、息子のことを、よろしく頼む」
「こちらこそ、ノエル様のような方と結婚できて、この上なく幸せです。このご縁、大切にいたします」

 陛下は頷くと、時計を見る。

「晩餐に、二人を招待しよう。他の息子達夫婦も来る予定だ。私達はもう行くが、侍従が呼びに来るまで好きに過ごしなさい」
「ノエル、私の庭の花が見頃です。シャルロットさんに案内してあげるといいわ」
「ありがとうございます」
「では、また後で」

 そうして、王妃様の許可を得た者しか立ち入れない庭を案内してもらった後、晩餐までいただいてから私達は王宮を辞去したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?

榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」 “偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。 地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。 終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。 そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。 けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。 「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」 全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。 すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく―― これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。

悪女として処刑されたはずが、処刑前に戻っていたので処刑を回避するために頑張ります!

ゆずこしょう
恋愛
「フランチェスカ。お前を処刑する。精々あの世で悔いるが良い。」 特に何かした記憶は無いのにいつの間にか悪女としてのレッテルを貼られ処刑されたフランチェスカ・アマレッティ侯爵令嬢(18) 最後に見た光景は自分の婚約者であったはずのオルテンシア・パネットーネ王太子(23)と親友だったはずのカルミア・パンナコッタ(19)が寄り添っている姿だった。 そしてカルミアの口が動く。 「サヨナラ。かわいそうなフランチェスカ。」 オルテンシア王太子に見えないように笑った顔はまさしく悪女のようだった。 「生まれ変わるなら、自由気ままな猫になりたいわ。」 この物語は猫になりたいと願ったフランチェスカが本当に猫になって戻ってきてしまった物語である。

王太子妃(仮)でしたが、聞いたこともない予言のせいで追放されました。ですから、今さら呼び戻されても困ります。

實藤圭
ファンタジー
王太子妃候補として、真摯に王子リオネルを愛し、支えてきたクラリス。 だが、王太子妃となるための儀式、婚礼の儀の当日、リオネルと聖女ミラによって、突如断罪され、婚約を破棄されてしまう。 原因は、教会に古くから伝わる「神託」に書かれた“災いの象徴”とは、まさにクラリスのことを指している予言であるとして告発されたためであった。 地位も名誉も奪われ、クラリスは、一人辺境へと身を寄せ、心静かに暮らしていくのだが…… これは、すべてを失った王太子妃(仮)が、己の誇りと歩みを取り戻し、歪められた“真実”と向き合うため、立ち上がる物語。

婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています

みゅー
恋愛
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は舞踏会で、ある男爵令嬢から突然『悪役令嬢』として断罪されてしまう。 そして身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王太子殿下には婚約の破棄を言い渡された。 それでもアレクサンドラは、いつか無実を証明できる日が来ると信じて屈辱に耐えていた。 だが、無情にもそれを証明するまもなく男爵令嬢の手にかかり最悪の最期を迎えることになった。 ところが目覚めると自室のベッドの上におり、断罪されたはずの舞踏会から1週間前に戻っていた。 アレクサンドラにとって断罪される日まではたったの一週間しか残されていない。   こうして、その一週間でアレクサンドラは自身の身の潔白を証明するため奮闘することになるのだが……。 甘めな話になるのは20話以降です。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

さこの
恋愛
 ある日婚約者の伯爵令息に王宮に呼び出されました。そのあと婚約破棄をされてその立会人はなんと第二王子殿下でした。婚約破棄の理由は性格の不一致と言うことです。  その後なぜが第二王子殿下によく話しかけられるようになりました。え?殿下と私に婚約の話が?  婚約破棄をされた時に立会いをされていた第二王子と婚約なんて無理です。婚約破棄の責任なんてとっていただかなくて結構ですから!  最後はハッピーエンドです。10万文字ちょっとの話になります(ご都合主義な所もあります)

「君の代わりはいくらでもいる」と言われたので、聖女をやめました。それで国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗
恋愛
聖女であるルルメアは、王国に辟易としていた。 国王も王子達も、部下を道具としか思っておらず、自国を発展させるために苛烈な業務を強いてくる王国に、彼女は疲れ果てていたのだ。 ある時、ルルメアは自身の直接の上司である第三王子に抗議することにした。 しかし、王子から返って来たのは、「嫌ならやめてもらっていい。君の代わりはいくらでもいる」という返答だけだ。 その言葉を聞いた時、ルルメアの中で何かの糸が切れた。 「それなら、やめさせてもらいます」それだけいって、彼女は王城を後にしたのだ。 その後、ルルメアは王国を出て行くことにした。これ以上、この悪辣な国にいても無駄だと思ったからだ。 こうして、ルルメアは隣国に移るのだった。 ルルメアが隣国に移ってからしばらくして、彼女の元にある知らせが届いた。 それは、彼の王国が自分がいなくなったことで、大変なことになっているという知らせである。 しかし、そんな知らせを受けても、彼女の心は動かなかった。自分には、関係がない。ルルメアは、そう結論付けるのだった。

「婚約破棄してくれてありがとう」って言ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました

ほーみ
恋愛
 アラン王太子の訪問から三日後。私の屋敷には、まるで王都中が興味津々とでも言わんばかりに、招かれざる客がひっきりなしに現れていた。 「ごきげんよう、レティシア様。少しだけお時間を――」 「申し訳ありません、ただいまお嬢様は“療養中”ですので」  メルの冷ややかな切り返しに、来客の顔が強ばるのを窓越しに見て、私はくすりと笑った。 (ふふ、いい気味)  婚約破棄された女に、ここまで関心を寄せるなんて皮肉な話だけど――貴族社会なんてそんなもの。誰かが落ちれば、その跡地を漁ろうと群がる。

処理中です...