29 / 65
二十九.生贄娘、砥青の師匠に会う
しおりを挟む
翌日、砥青の師匠であり、主でもある紫水がやってきた。
紫水は美しい紫水晶色の目と長い髪を持つ美しい大人の女性だった。
香世も、白麗と共に紫水を迎え入れ、挨拶を交わす。
「砥青が迷惑をかけたと聞いた。白麗とその奥方を危険な目に遭わせて申し訳なかった」
やってきて、挨拶をするなり頭を下げる紫水に、白麗と香世は首を振る。
「私も、砥青殿を危険な目に遭わせてしまった。申し訳ない。堕ち神は私を狙っていた。砥青殿は巻き込まれただけなのに」
「此度のことは白麗には防ぎようがなかっただろう」
「ひとまず砥青殿を診てもらえるか。私も手当はしているが、本職の目で診てもらった方がいい」
「わかった」
三人で砥青の寝ている所に向かう。
「砥青殿、入るぞ」
白麗がそう声をかけ襖を開けると、砥青は布団から起き上がったところだった。昨日より顔色もよくなっている。
砥青は私達を見て驚いたように目を丸くしていた。
どうやら紫水が来るとは聞いていなかったようだ。
「紫水様……、どうして」
「私が呼んだ」
白麗が言う。
「砥青、まずは診察をするぞ」
紫水は持ってきていた道具をいくつか取り出し、砥青の様子を診断している。
目の粘膜を見たり、舌の色を確認し、紫水はほっと息を吐いた。
「堕ち神の分身に宿主にされたと聞いていたが、瘴気の浄化が驚く程進んでいるな。この様子だと、神気の欠落以外は特に問題もないだろう」
紫水の言葉に、香世も白麗もほっと肩の力を抜いた。
「白麗には悪いが、砥青が動けるようになれば私の屋敷に一度連れて帰ろうと思う。悪いが、それまでここに滞在させてもらっていいだろうか」
「それはかまわんが」
「いえ。私なら、大丈夫です。師匠にそこまでご迷惑をかけるわけには」
白麗は頷いているが、砥青の方が驚いたように紫水を止めている。
「だが……」
「師匠の元には、毎日師匠の助けを必要とする患者様がいらっしゃいます。それを私のせいで師匠をここに留めるわけにはいきません」
「他の者が対応してくれておるから心配は不要。それに、今はお前も私の患者だ。愚か者め」
紫水に叱られ、砥青はしゅんと肩を落とす。
「ところで、白麗。砥青の瘴気をどうやってここまで綺麗に抜いたか、聞いてもいいだろうか?」
紫水の瞳が白麗を向き、砥青も頷く。
「そういえば、私も気になっておりました。瘴気というのは、一度その身に浴びてしまえば、神ですらその浄化は苦労すると聞いています。私も覚悟していたのですが、ここまで軽傷で収まるとは。あの薬草茶の効果ですか?」
「薬草茶とは?」
砥青の言葉に、紫水が目をきらめかせる。
「実物を飲みながらがいいだろう。楓、桜、準備を頼めるか」
二人が部屋を出た間に白麗が説明を始める。
「薬草茶は、香世の父君から香世が教わった物だそうだ。香世、説明を頼む」
白麗に促され、香世は口を開いた。
「材料は白麗様の庭の薬草を使っています」
使った薬草の名を続けると、紫水は「なるほど」と頷いていた。
「薬草の配合がいいのか……? 悔しいが、この組み合わせは今まで思いつかなかったな。奥方が作るからこそ、効果が出るということはないだろうか?」
「いや、香世が砥青殿に学んでいる間、私の眷属の楓と桜が同じ物を作ってくれていたが、そちらも変わらず効果はあった」
「ということは、やはり薬効の組み合わせか」
「師匠、ないとは思いますが、薬草が特別な物かもしれません」
「そうだな。屋敷に戻ったら、うちの薬草でも効果が出るか試してみよう」
「どの場所の薬草でも効果が変わらないとなれば、これはすごい発見だ」
紫水と砥青が盛り上がっている姿を見て、驚いている香世に白麗が満足げに頷いている。
香世は、そんな光景を信じられないような気持ちで見つめていた。
「父の作っていた薬草茶は、そんなにすごい物だったのですか……?」
「そうだな。瘴気の浄化を助ける薬は今まで存在しなかったから、この効果が広まれば救われる神も多いだろう」
「あの薬草茶が……」
まだ実感の湧かない香世に、白麗は言う。
「薬草茶の発見も確かに素晴らしいが、そもそもは香世が父君の知識を受け継ごうと学び覚えていなければ私達は助からなかった。香世のおかげだ」
白麗に褒められたことが意外で、香世は目を瞬く。
「そんな、私は、ただ覚えたように作っただけです」
「それでもだ」
そんなやり取りをしていたところで、楓と桜が盆に四人分の薬草茶を淹れて帰ってきた。
薬草茶だけではなく、お茶請けに甘い砂糖菓子が添えられている。
それぞれの前に並べられ、まずは白麗が口をつける。
「うむ。瘴気関係なく、この薬草茶は清涼感があってうまいな」
お茶に口を付けた紫水が驚いたように目を開く。
「ドクダミが入っていると聞いたが、あまり味はしないな。それに、浄化の効果も確かに感じる。砥青の飲んだ感想を聞かせて欲しい」
紫水の言葉に砥青は頷く。
「神力が持つ、浄化の力を強めるような効果を感じます」
「体内で瘴気と反発するような感じは?」
「そういえば、ありませんね」
「なるほど。患者に負担も少なそうだな。飲んだ者の浄化を強める効果なら、神力が低い者に飲ませた場合の効果も知りたいし――」
「紫水様……」
思考に入り込みかけた紫水を砥青が止め、はっとしたように紫水が白麗と香世を見た。
「申し訳ない。つい職業柄、悪い癖が出たようだ」
「構わない。二人が帰る時には薬草茶を多めに持たせようと思うが、それでいいか」
「差し支えなければ、作り方も教えて欲しいのだが」
紫水がすかさず言うと、白麗は頷き香世を見る。
「どうする? 香世が嫌なら断っても大丈夫だ」
「いえ。私も父の薬草茶が役に立つならばご協力したいです」
「なら、砥青殿の調子が戻るまで時間は何日かかかるだろう。その間に香世が教えるということでどうだろう」
「それで構いません」
「恩に着る」
そうして、約束を取り付け、香世と白麗は砥青のいる部屋を後にした。
紫水は美しい紫水晶色の目と長い髪を持つ美しい大人の女性だった。
香世も、白麗と共に紫水を迎え入れ、挨拶を交わす。
「砥青が迷惑をかけたと聞いた。白麗とその奥方を危険な目に遭わせて申し訳なかった」
やってきて、挨拶をするなり頭を下げる紫水に、白麗と香世は首を振る。
「私も、砥青殿を危険な目に遭わせてしまった。申し訳ない。堕ち神は私を狙っていた。砥青殿は巻き込まれただけなのに」
「此度のことは白麗には防ぎようがなかっただろう」
「ひとまず砥青殿を診てもらえるか。私も手当はしているが、本職の目で診てもらった方がいい」
「わかった」
三人で砥青の寝ている所に向かう。
「砥青殿、入るぞ」
白麗がそう声をかけ襖を開けると、砥青は布団から起き上がったところだった。昨日より顔色もよくなっている。
砥青は私達を見て驚いたように目を丸くしていた。
どうやら紫水が来るとは聞いていなかったようだ。
「紫水様……、どうして」
「私が呼んだ」
白麗が言う。
「砥青、まずは診察をするぞ」
紫水は持ってきていた道具をいくつか取り出し、砥青の様子を診断している。
目の粘膜を見たり、舌の色を確認し、紫水はほっと息を吐いた。
「堕ち神の分身に宿主にされたと聞いていたが、瘴気の浄化が驚く程進んでいるな。この様子だと、神気の欠落以外は特に問題もないだろう」
紫水の言葉に、香世も白麗もほっと肩の力を抜いた。
「白麗には悪いが、砥青が動けるようになれば私の屋敷に一度連れて帰ろうと思う。悪いが、それまでここに滞在させてもらっていいだろうか」
「それはかまわんが」
「いえ。私なら、大丈夫です。師匠にそこまでご迷惑をかけるわけには」
白麗は頷いているが、砥青の方が驚いたように紫水を止めている。
「だが……」
「師匠の元には、毎日師匠の助けを必要とする患者様がいらっしゃいます。それを私のせいで師匠をここに留めるわけにはいきません」
「他の者が対応してくれておるから心配は不要。それに、今はお前も私の患者だ。愚か者め」
紫水に叱られ、砥青はしゅんと肩を落とす。
「ところで、白麗。砥青の瘴気をどうやってここまで綺麗に抜いたか、聞いてもいいだろうか?」
紫水の瞳が白麗を向き、砥青も頷く。
「そういえば、私も気になっておりました。瘴気というのは、一度その身に浴びてしまえば、神ですらその浄化は苦労すると聞いています。私も覚悟していたのですが、ここまで軽傷で収まるとは。あの薬草茶の効果ですか?」
「薬草茶とは?」
砥青の言葉に、紫水が目をきらめかせる。
「実物を飲みながらがいいだろう。楓、桜、準備を頼めるか」
二人が部屋を出た間に白麗が説明を始める。
「薬草茶は、香世の父君から香世が教わった物だそうだ。香世、説明を頼む」
白麗に促され、香世は口を開いた。
「材料は白麗様の庭の薬草を使っています」
使った薬草の名を続けると、紫水は「なるほど」と頷いていた。
「薬草の配合がいいのか……? 悔しいが、この組み合わせは今まで思いつかなかったな。奥方が作るからこそ、効果が出るということはないだろうか?」
「いや、香世が砥青殿に学んでいる間、私の眷属の楓と桜が同じ物を作ってくれていたが、そちらも変わらず効果はあった」
「ということは、やはり薬効の組み合わせか」
「師匠、ないとは思いますが、薬草が特別な物かもしれません」
「そうだな。屋敷に戻ったら、うちの薬草でも効果が出るか試してみよう」
「どの場所の薬草でも効果が変わらないとなれば、これはすごい発見だ」
紫水と砥青が盛り上がっている姿を見て、驚いている香世に白麗が満足げに頷いている。
香世は、そんな光景を信じられないような気持ちで見つめていた。
「父の作っていた薬草茶は、そんなにすごい物だったのですか……?」
「そうだな。瘴気の浄化を助ける薬は今まで存在しなかったから、この効果が広まれば救われる神も多いだろう」
「あの薬草茶が……」
まだ実感の湧かない香世に、白麗は言う。
「薬草茶の発見も確かに素晴らしいが、そもそもは香世が父君の知識を受け継ごうと学び覚えていなければ私達は助からなかった。香世のおかげだ」
白麗に褒められたことが意外で、香世は目を瞬く。
「そんな、私は、ただ覚えたように作っただけです」
「それでもだ」
そんなやり取りをしていたところで、楓と桜が盆に四人分の薬草茶を淹れて帰ってきた。
薬草茶だけではなく、お茶請けに甘い砂糖菓子が添えられている。
それぞれの前に並べられ、まずは白麗が口をつける。
「うむ。瘴気関係なく、この薬草茶は清涼感があってうまいな」
お茶に口を付けた紫水が驚いたように目を開く。
「ドクダミが入っていると聞いたが、あまり味はしないな。それに、浄化の効果も確かに感じる。砥青の飲んだ感想を聞かせて欲しい」
紫水の言葉に砥青は頷く。
「神力が持つ、浄化の力を強めるような効果を感じます」
「体内で瘴気と反発するような感じは?」
「そういえば、ありませんね」
「なるほど。患者に負担も少なそうだな。飲んだ者の浄化を強める効果なら、神力が低い者に飲ませた場合の効果も知りたいし――」
「紫水様……」
思考に入り込みかけた紫水を砥青が止め、はっとしたように紫水が白麗と香世を見た。
「申し訳ない。つい職業柄、悪い癖が出たようだ」
「構わない。二人が帰る時には薬草茶を多めに持たせようと思うが、それでいいか」
「差し支えなければ、作り方も教えて欲しいのだが」
紫水がすかさず言うと、白麗は頷き香世を見る。
「どうする? 香世が嫌なら断っても大丈夫だ」
「いえ。私も父の薬草茶が役に立つならばご協力したいです」
「なら、砥青殿の調子が戻るまで時間は何日かかかるだろう。その間に香世が教えるということでどうだろう」
「それで構いません」
「恩に着る」
そうして、約束を取り付け、香世と白麗は砥青のいる部屋を後にした。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる