懐いていた後輩はどうやら俺のことが好きらしい

光野凜

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第8章

宝良Sid

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 ――中学の頃。
 俺は小さくて、サーブもスパイクも全然届かなかった。
 ボールはいつもネットに引っかかって、みんなの笑い声が刺さった。
 それでも、バレーが好きだった。
 でも“好き”だけじゃ続けられない現実に、何度もぶつかった。
 そんなとき、キャプテンの湊先輩がいた。
 コートの真ん中で、上を向いてトスを上げる姿が、綺麗だと思った。
 指先から放たれるボールが、まるで光の筋みたいに見えて。
 どんなときも仲間を信じてボールを託すその背中が、眩しかった。
 ――ああ、こういう人には悩みなんてないんだろうな。
 そう思ってた。
 俺が必死に届かない場所に、先輩は軽々と立ってる気がして。
 でもある日、練習後の体育館で声をかけられた。
「高良、焦んな。お前なら大丈夫だよ」
 不意に名前を呼ばれて、心臓が跳ねた。
 まともに話したこともなかったのに。
 たったそれだけの言葉が、まるで魔法みたいに胸に残った。
 湊先輩は覚えてないかもしれないけど、俺にとっては すごく嬉しい言葉だった。
 それから、先輩を目で追うようになった。
 湊先輩のことが知りたくて、話したくて、気づけば毎日のように声をかけていた。
 ――気づいたら、追いかけてた。
 高校も、先輩と同じ場所を選んだ。
 ただ、もう“尊敬”だけじゃなかった。
 高校に上がって、俺は知った。
 湊先輩が誰よりも早く来て、誰よりも遅くまで残って、チームの誰よりも努力していることを。
 この人の隣にいたい。
 触れたい、笑ってほしい、そんなふうに思うようになっていた。
 上を向いてトスを上げるその姿を見て、俺は何度も思った。
 誰よりも近く湊先輩の隣にいたい。俺があの人のトスを打ち続けたい。
 ――俺がバレーを続けたい理由は、いつの間にか、湊先輩になっていた。
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