嘘つきは泥棒の始まり〜裏切りの代償〜

HARUKA

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第21章

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それから、律はよくマンションに来るようになった。

「どういうつもりなの?」

「香、誤解してる」

「してないよ。私の直感は外れたことない」

「じゃあ、彩葉に会ってみてくれ」

「律、なんでそんなに結婚にこだわるの? 怪しいよ。それに“彩葉”って呼び捨てしてるし。彩葉さんと結婚したいなら協力する。でも、私とは結婚しないから」

「……香の頭どうなってんだ? 弟くんも言ってたよな、香のトラウマはヤバいって」

「また和也? その話はやめて。律はどうしたいの? 本当に彩葉さんと結婚する気?」

「はあ……俺ってそんなに魅力ない?」

「ない。イケメンだな~とは思うけど、イケメンには女がいる。大和みたいなのはもう勘弁」

「だからさ、ちゃんと話を聞いてよ」

「聞いてるけど、何が言いたいのかサッパリ。もう疲れたし、早く帰って映画観たい」

「じゃあ、俺の話は香の部屋で聞いてくれ」

「話さない」

エレベーターに乗ろうとした瞬間、律が無理やり乗り込んできた。

「ちょっと、なんで入ってくるの?」

「話が進まないし、“興味ない”って言われてムカついた」

「……なんか、いつもと違うね。どうしたの?」

「香、お前って本当、悪い女だよ」

「それはこっちのセリフ。私を騙そうとしたのは律でしょ」

「もういい加減にしろ。俺は彩葉とは別れてる」

「……わかった。じゃあ部屋で話を聞く。でも何も作れないけどいい?」

「構わない」

律は部屋の中を見回しながら入ってきた。

「すごいな、この部屋」

「祖父が持ってる部屋よ。ソファに座ってて」

「ありがとう」

冷蔵庫には昨日の残り物しかなかったけど、ビールと冷凍食品をアレンジして出してみる。久しぶりの料理が少し楽しい。

「お待たせ~。残り物だけど、どうぞ」

「十分すごいよ。ビールでいい?」

「うん、ありがとう。先に食べてて。着替えてくる。律もスーツ脱いで楽にして」

「勝手にさせてもらうよ」

私が着替えてリビングに戻ると、律は私のつまみを美味しそうに食べていた。

「お待たせ。乾杯しようか」

「乾杯~」

「香の料理をこれから毎日食べられると思うと、嬉しいな」

「だから、その相手は私じゃないでしょ」

「その話だけどさ、香が勝手に妄想してるだけだよ。彩葉とはちゃんと別れてるし、結婚の話もしてない。彩葉には彼氏がいる」

「ふ~ん、そうなんだ」

「……興味なさそうだな」

「興味ないというか、二人のことは私には関係ないし」

「そう? じゃあ、結婚しよう」

「……は? 意味がわからない」

「香、俺、どれだけ待ったと思ってる? 入社した時からずっと好きだった」

「嘘ばっかり」

「本当だよ。嘘じゃない。俺は香の家業のことも知ってる。俺の家も似たようなもんだし。そんな家に“婚約者がいますが不倫してます”ってなったら、どうなる? 香のおじいさんに海に沈められるよ。元夫もそうだったんだろ? 金を借りに来て、怒られたって聞いたよ」

「おじいちゃんと話したの?」

「香が帰った後に、そういう話になってな。そこで全部知った」

「……そうだったんだ。律の気持ち、わかった。ありがとう」

「え? 振られる流れ?」

「お互いよく知らないままじゃ結婚はできないよ」

「だったら付き合おうよ。俺、ここに住むから」

「いきなり何を……?」

「そうしないとまた逃げるだろ。どれだけ俺を待たせるんだよ。そんな格好して、ブラもしてないし」

「えっ、バレた? 和也といた時はいつもこうだったから、つい……」

「俺は嬉しいけどな」

「長谷川さんのバディはすごそうだよね」

「またその話? 気になるならお前だって大和とやってたじゃん」

「うん、やった。でも私に対して愛情はなかった」
「……あ、もしかして子供ができたとか?」

「違うし。結婚は考えてなかった」

「ふーん。なんか酔ってきた。眠くなってきたし、ベッドルームに布団あるから勝手に寝て。おやすみ~」

ベッドルームに入ると、律もついてきた。

「クイーンサイズか」

「うん。結婚してた時も同じサイズだった」

「俺も一緒に寝る」

「勝手にして。おやすみ~」

酔いが回って、私はそのまま眠ってしまった。

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