嘘つきは泥棒の始まり〜裏切りの代償〜

HARUKA

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第22章

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翌朝、アラームの音で目が覚めた。

体が重くて動けない。

横を見ると、律が私を抱きしめたまま眠っていた。しかも、上半身は裸。

「……嘘でしょ」

慌てて自分の服を確認すると、ちゃんと着ていた。ほっとする。

そうだよね。律は私にそんな興味ないはず。

ベッドからそっと抜け出し、朝食の準備と出勤の支度を始める。

「起きて。おはよう」

大きなあくびをして伸びをする律。……寝起きまでかっこいいなんてずるい。

「朝ごはん作ったけど、食べる?」

「食べる。香、会社間に合うの?」

「大丈夫。今日は午後からだから」

「香って、何も聞かないんだな」

「何を?」

「いや、いいや。シャワー借りていい?」

「うん。下着、弟の新品があるから、それ使って」

「サンキュー」

やっぱり、律って女慣れしてる。もしかして、誰かと同棲してたことあるのかな。

そんなことを考えてしまう自分が嫌になる。全部、大和のせい……いや、気づかなかった私が悪い。

だから、次に付き合う人は慎重に選びたい。律は無理だよね。

ぼんやりとコーヒーを飲んでいると、律が上半身裸のまま下着姿で出てきた。

……いい体。腹筋も割れてるし、鍛えてるんだな。

「何見てんの?」

「鍛えてるんだなって思って」

「ジム通ってるからな」

「ドライヤー、洗面台にあるよ」

「ありがと」

長谷川さんとも、こんな感じだったのかな。

髪を乾かした律が戻ってきて、朝食を見てにっこりする。

「うまそう。カフェみたいだな」

「パンで良かった? 家で作ってるの。ホームベーカリーで簡単にね。米粉とかちょっとだけこだわってるけど」

「手作りか。いいな、こういうの」

「手作りってほどでもないけどね。材料入れるだけだし」

「……長谷川さん、料理しないんだっけ?」

「うん。俺もしないけど」

「でも、してくれたんじゃないの?」

「またその話? 疑ってるの?」

「疑ってないよ」

それは嘘。でも、今はそう言っておこう。

「そんなに気になる? 彩葉は料理そんなに得意じゃないし、俺もあんまり彼女の家には行ってない。基本、外で会ってた」

「へぇ……そうなんだ」

「これで満足?」

なんで怒ってるの? 大和もよく怒ってたな。

「香、聞いてる?」

「聞いてるよ。大丈夫」

そう言って、ピースしてみた。

「なんでピース?」

「なんとなく」

「昨日の話、覚えてるよな? ここで同棲するってやつ。香のお父さんには俺から連絡しておくから」

「ちょっと待って! そんな話してないよ!」

「サインしてるだろ?」

「え、何これ……ぐちゃぐちゃの字。いつ書いたの?」

「ベッドの中で話しただろ? 抱きついてきたのは香のほうだし、なかったことにはできないよ」

「……まさか、したの?」

「途中までな。鏡見てみな」

急いでバスルームへ駆け込み、鏡を見ると、首元と胸に……いくつもキスマーク。

「嘘……でしょ……」

「律、なんでこんなこと……!」

「俺が本気って、わからせるため」

「合鍵、出してくれ」

「脅し?」

「怖いこと言うなよ。さすが極道の娘だな」

「ちょっと! 私は関係ないから!」

「関係あるだろ。その血が入ってる。俺も同じ。だから、男としてちゃんと行動してる」

「……怖いよ」

「それくらい香が好きなんだ。突然転職して、和也君に調べさせた。全部わかってた」

「和也のヤツ……!」

「昨日は我慢したけど、今日はしない。俺、我慢できない」

律、変わった……付き合うと、こうなるの?

……ダメだ。名探偵コナンのように、勘ぐる思考が止まらない。あんなひどいことされたら、男不信にもなるよ。

「香に紳士ぶっても伝わらないんだな」

もしかして、律も終わったら背を向けて寝るのかな……

「香? ボーっとしてる。何か考えてた?」

「……律、会社と全然違うね」

「そりゃそうだろ。会社の顔でいろってのか?」

「ううん、違うよ。私、シャワー浴びないと間に合わないから。律も準備して」

律は黙って、私の作った朝ごはんを食べている。

私の頭の中はぐちゃぐちゃで、もうパンク寸前。

やっぱり、律のこと、信じられない。

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