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〈桜井 琴子 side〉

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本郷さんの彼女を見てから本郷さんとは話し合えていない。

あれから1ヶ月も経っている。
相変わらず顔を合わさない偽装結婚だ。

帰ってきてるのはわかっている。
いつも冷蔵庫の作り置きは食べてあるからだ。

食べてくれるのは嬉しい。

また張り切って作ってしまう。仕事が落ち着いて泊まりはなくなっていた。

本郷さんと顔を合わない生活は快適だ。

休みの日には祐希とご飯を食べたり、好きな映画を見たりとゆっくり!過ごせている。

新居も広い庭があり、庭師さんが綺麗なお花を置いてくれている。

庭を眺めながら仕事をしている。

本郷さんに彼女がいるのは都合がいい。
祐希は呆れていたけど、私はこの生活でいい。

今日も仕事から早く帰る事が出来た。
家に着くと女性が立っていた。


「うちに何か?」

「奥様ですか?」

「はい、そうです」

「私は要さんの秘書をしていますす鈴木 朱莉です」

「何かご用意でしょうか?」

「私達は付き合っています。奥様とは形だけですよね?」

「そう本郷が言っていたのですか?」

「はい、お爺様に言われた結婚だと」

「そうですか。私は何も出来ません。2人が付き合いたなら勝手にして下さい。私に関係ありません。ですが、2人の関係がバレた場合はあなたも覚悟が必要ですよ。お互いの祖父が決めた事は何があっても断われません。うちの祖父はきっとあなたのご家族に膨大な慰謝料を請求するでしょう。あなたもお嬢様ならわかりますよね。勝手にこうやってこられるのは困ります」

「要さんと同じ事を言うんですね。私は諦めません」

「わかりました。どうぞご勝手に」

「近々海外出張がありますので、では」


ハア~ もう疲れるわ。うちまで来られるのは迷惑よ。秘書と言っていたけど、ドラマじゃないんだから。

ベタな関係なんて笑っちゃうわ。

本郷さんはだらしない下半身なのね。
気持ち悪い。

とりあえず、うちに来るのはやめてもらいたいわ。

本郷さんに電話をしてみよう。


「琴音? 珍しいしいな。どうした?」

「あのですね·····」

「何だよ。言えよ」

「秘書の鈴木さんがうちに来ました。彼女にも伝えたのすが、うちに来るのは止めていただきたい。本郷さんと鈴木さんが付き合うのは構いませんが、お互いの祖父にバレるのはまずいです。バレたら鈴木さんのご実家に膨大な慰謝料を請求すると思います。祖父は孫たちを溺愛してるので」

「············」

「聞こえてますか? うちに彼女をこさせないようにして下さい。ご近所の目もありますから。よろしくお願いします。それでは」


無言だったけど聞いてたのかしら?
結婚しようと話してるのね。勘弁してほしいわ。

若いお嬢さんで彼女の方がお似合いね。
3年だけ我慢するわ。

その間に祐希の知り合いを紹介してもらおう。

さてと、今日は何にしようかな。
料理すればすべて忘れられる。

海外出張もあると言ってたわよね?
うちで柚子たちとパーティーでもしようかしら。

楽しみだわ。
結婚してるのに独身生活が送れるなんてね。

私は食事を済ませてから、また新たなプロジェクトを考えていた。

自分の部屋も快適で過ごしやすい。
煩わしい男たちからの束縛もない。

祐希のような彼氏がいいのだけど、家族と他人は違うわよね。

お風呂に入浴剤を入れてゆっくりと浸かり、ベッドの中に潜り込んだ。

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