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空の章
陸、空の試練 勿忘草に願いを(後)
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陸、「空の試練 勿忘草に願いを」(後)
ロン達の声に反応したのか、セツカは寝ぼけ眼をこすりながら目を覚ました。
「本物とご縁があるのか、姫様の性質をよく真似ているな」
まだぼんやりとしているセツカに、ロンが手を差し出すと彼女は嬉しそうにロンに飛びつき、肩の上のテムが危うく落ちかけた。
「これが海底にこの人ありと言われた龍王姫なのか?」
「厳密には『コレ』は仙界で頂いたエイルの武器だ。変幻自在で、所有者と場所によって形を変えるらしい。この霊廟に到着したら、何故か幼少期の姫様の姿になった」
「仙界……ああ、『無形』か。不思議な道具だらけの仙界に在って、なお有名な秘宝の一つだよ。東方王も西王母もよっぽどお前たちの旅が不安だったんだなあ。ボクには解る気がするけど」
「有名なのか? この『無形』とやらは」
ロンに猫のように抱き着いたままのセツカを指さしながら、ロンはテムの話に耳を傾ける。
「ずっとここから出ていないボクでも知ってる。そっか……この女の子は『無形』だったんだ。道理で龍の匂いも女仙の匂いもしないはずだ」
テムの話の途中であるが、セツカは思い出したようにロンの手を引く。「どうした?」と問えば、しきりに壁の一点を指さした。
セツカの示す方向に進めば、両手で一抱えほどの硝子箱に勿忘草色の牙があった。
「これか。リナリア王が持ち帰ってくれと言ったのは」
「俺ら、海底龍神が触っても大丈夫なのか?」
「箱に入っているし、危険だったらテムが教えてくれるだろう」
花畑で泣いていたロンの姿はもうどこにもなく、いつもどおりの冷静なのか、淡泊なのか、判じかねる平素の彼にエイルも気持ちが浮上する。ロンが『牙』の箱を持つのは危険だと判断したエイルが、硝子箱を持つ役を買って出た。
牙の箱に触れると、セツカは役目を終えたのか、また無骨な短剣の姿に戻ってしまった。
ロンは一抹の寂しさを覚えるが、また気まぐれにセツカの姿になるかもしれないと淡い期待を抱いている。
「じゃあ、さっさと持ち帰るか」
「そうだな。テム、久遠城に繋がる扉はどこだ?」
「……こっち」
エイルが元気を取り戻したのに、今度はテムの様子がおかしい。鱗に覆われた小さな背中が別れを惜しいと物語っている。
「テム、久遠城に到着したらリナリア王に直訴するか? お前は長い年月、孤独に生きてきた。もう解放されても構わぬだろう。俺達はこれから地上や海底に向かうが、もしも付いてきたいなら、付いてくるといい。もしも、駄目だと言われても代案がある。どうしたいのかはお前の口から王にお伝えしろ」
「い、いいのか……? 俺が居たら地上の交渉が困難になるかもしれないんだぞ?」
「元々、あそこは一筋縄でいくとは思っていない。気にするな」
テムは「へへへ」と照れ臭そうに笑った。「リナリア、許してくれるかなあ」と久遠城へ繋がる扉への案内もそこそこに飛び回っている。
「ちび、ちゃんと案内しろよ!!」
「ボクはテムだ!! 本当はちびじゃない。お前よりは断然年上だよーだ」
エイルと喧嘩をする姿は、ロンにしてみればどちらも子供だ。テムが付いてきてくれれば、賑やかな旅になる。セツカを想う空虚な心も忘れられるだろう。
ロンとエイルは、久遠城に帰還する為にテムが開いてくれた扉を潜った。
――悲恋に染まった霊廟に、ロンは少しだけ瞑目して祈りを捧げる。
◇
久遠城の正門前の雲を踏んだ二人と一匹に、急ぎフロン元帥とタオ老師が呼ばれた。霊廟内では時間の感覚が狂っていたようで、こちらではもう五日も経過していると聞かされたロンとエイルは驚愕する。
「試練に飲まれたかと案じていたんだよ……無事ならなによりさね。ところで、その仔龍はなんだえ?」
「第二の試練を任されていたテムという名の仔龍だ。約束通り持ち帰った『牙』とこやつの今後の処遇についてリナリア王に謁見願いたいのだが、可能だろうか?」
フロンは「しばし、待て」と言い残すと城に入った。ものの数分で戻ってきた彼女は、謁見の間へと案内してくれる。
「心なしか、筋斗雲の動きが鈍いな」
「三人と一匹が乗ればな……致し方あるまい」
どうやら積載量を軽く超えているらしい。筋斗雲には申し訳ないが、通常の三割増しの時間がかかって六十階に到着した。
謁見の間に進むと既にリナリアとタオが待っていた。人払いを命じたのか、他に人の姿はない。
「よくぞ戻ってきてくれました。五日もよく試練に耐えてくれましたね。他国の方に無茶な願いを致しましたこと、感謝と共にお詫び申し上げます」
「リナリア王、少々こずるい手で気が引けるのだが、このテムという仔龍、第二の試練を任されていたのだが、私が引き受けたく存じます。霊廟を護る防衛機能の一つだが、太古の昔より働き続けてきた。解放してやりたいのです。この『勿忘草の牙』をお渡しする代わりに、どうか――」
リナリアは「まあ」とロンの後ろから顔を覗かせて警戒している仔龍に「先代が亡くなった時に、逢いましたね」とテムに話しかける。
「あの時の私はまだ本当に子供でしたが」
「……ボクを覚えているのか?」
「参列者に子供は私だけでしたから、話しかけてくれたのを覚えていますよ。同じ年ごろの男の子の姿でしたが、尻尾が隠せていなくて……でも、其方の心使いが嬉しかった」
「石像以外の変化は苦手なんだ」とテムは頬を赤くしてロンの後ろに隠れてしまった。リナリアは微笑ましい様子に穏やかに笑った。
「いいでしょう。他ならぬ恩人の頼みです。テム、其方を霊廟防衛の任から解放致しましょう」
テムはもじもじとしながらも、「やった!!」と尻尾を激しく振っていた。思わずロンとエイルにも笑みが伝染する。
「では、将軍。『牙』を頂けますか?」
ロンは布を被せてあった硝子箱をリナリアの前に、恭しく差し出した。
リナリアが左手に埋め込んだ空石を『牙』にかざすと、両者が激しく呼応して、鳥肌が立つ。絶大な力は空石にみるみると収束して、パチンと弾けた。
リナリアの左手に埋め込まれた空石は、もう明滅せず、煌々と空に浮かぶ満月のように光を放ち続けていた。
「……ああ、よかった。これで空の民も安心して暮らせます。王子と将軍には重ねて感謝を申し上げます……ありがとう。今夜はゆっくり休まれませ」
「ご厚意ありがたく。明日にはここを発とうとかと思っています」
「そうですか。急ぐ旅ですものね――タオ、あれを」
リナリアが傍で控えていたタオに命じると、タオ老師は白い絹の小さな衾に乗せられた茶色い縦筋がいくつも入った根元が蒼い『爪』をロンに差し出した。
「それが『蒼龍の爪』です。魔力では空石に劣りますが、セツカ姫ならば封印を解くのに十分な魔力変換に使えるかと存じます。一日も早く、姫様がお目覚めになる日を願っておりますわ」
「ありがとうございます。我らも陛下の恩情をしかと受け取り、海底に戻る所存です」
ロンとエイルは跪き、拳を掲げてリナリアに礼をとった。
◇
「明日に出立とは随分と急なのだな」と言ったのは、また同じ客間に案内してくれたフロンだった。宴会で少々酒気が入っているせいか、ロンの顔は赤い。エイルとテムは早々につぶれた。
「空の秘宝を持ったまま地上には行けぬゆえ、一度仙界と海底竜宮に戻ろうと思っている。地上は通常でさえ訪れるのは難しいと聞く。情報を集めてからでも遅くはない」
「そうか。ところで、宴会の席で王子から聞いたが、霊廟には和王と『勿忘草の君』の残像が残っているそうだな……」
ロンは一気に酒気が飛んだ。思い出すのも少々つらい。ロンは前髪を掻き上げて、ため息を吐いた。
「侵入者である俺達だから見えたのか、はたまた王家ゆかりの方にも見えるのかは定かではないが……テムの口ぶりでは、もう霊廟全体に和王の残留思念に覆われているそうだ」
「……和王には申し訳ないが、どんな美しい悲恋であっても、姦通罪――不倫とも言うが、一族の汚点である以上は早々に霊廟の浄化に移るつもりだ。幸いにも空石に力が戻った。貴殿らがここを離れたら、王は霊廟浄化の儀に着手されるはずだ」
「……和王の想いが昇華されるよう祈るしか、もう俺にはできぬな」
「ああ。長話をしたな。すまない。では、失礼する」
「おやすみ、元帥」
和王は『牙』に恋しい相手への強い思念を移したときく。空石に異常は見受けられなかったが、リナリアの身体には問題が生じなければいいのだが、とロンは寝台に入って考えた。
うつらうつらとしていると、夢には小さなセツカと大人になったセツカの両方が浮かんでは消える。
「……セツカ……」
彼女が二人きりの時だけ、名前で呼ぶことを許してくれたのは大戦の数年前だったはずだ。
『このあたりがこそばゆいわ』
そう言って、心の臓の上を押さえた彼女は霊廟で逢った時分のような愛想笑いではなく、困ったように笑ってロンの胸に飛び込んできたのを覚えている――。
続...
ロン達の声に反応したのか、セツカは寝ぼけ眼をこすりながら目を覚ました。
「本物とご縁があるのか、姫様の性質をよく真似ているな」
まだぼんやりとしているセツカに、ロンが手を差し出すと彼女は嬉しそうにロンに飛びつき、肩の上のテムが危うく落ちかけた。
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「厳密には『コレ』は仙界で頂いたエイルの武器だ。変幻自在で、所有者と場所によって形を変えるらしい。この霊廟に到着したら、何故か幼少期の姫様の姿になった」
「仙界……ああ、『無形』か。不思議な道具だらけの仙界に在って、なお有名な秘宝の一つだよ。東方王も西王母もよっぽどお前たちの旅が不安だったんだなあ。ボクには解る気がするけど」
「有名なのか? この『無形』とやらは」
ロンに猫のように抱き着いたままのセツカを指さしながら、ロンはテムの話に耳を傾ける。
「ずっとここから出ていないボクでも知ってる。そっか……この女の子は『無形』だったんだ。道理で龍の匂いも女仙の匂いもしないはずだ」
テムの話の途中であるが、セツカは思い出したようにロンの手を引く。「どうした?」と問えば、しきりに壁の一点を指さした。
セツカの示す方向に進めば、両手で一抱えほどの硝子箱に勿忘草色の牙があった。
「これか。リナリア王が持ち帰ってくれと言ったのは」
「俺ら、海底龍神が触っても大丈夫なのか?」
「箱に入っているし、危険だったらテムが教えてくれるだろう」
花畑で泣いていたロンの姿はもうどこにもなく、いつもどおりの冷静なのか、淡泊なのか、判じかねる平素の彼にエイルも気持ちが浮上する。ロンが『牙』の箱を持つのは危険だと判断したエイルが、硝子箱を持つ役を買って出た。
牙の箱に触れると、セツカは役目を終えたのか、また無骨な短剣の姿に戻ってしまった。
ロンは一抹の寂しさを覚えるが、また気まぐれにセツカの姿になるかもしれないと淡い期待を抱いている。
「じゃあ、さっさと持ち帰るか」
「そうだな。テム、久遠城に繋がる扉はどこだ?」
「……こっち」
エイルが元気を取り戻したのに、今度はテムの様子がおかしい。鱗に覆われた小さな背中が別れを惜しいと物語っている。
「テム、久遠城に到着したらリナリア王に直訴するか? お前は長い年月、孤独に生きてきた。もう解放されても構わぬだろう。俺達はこれから地上や海底に向かうが、もしも付いてきたいなら、付いてくるといい。もしも、駄目だと言われても代案がある。どうしたいのかはお前の口から王にお伝えしろ」
「い、いいのか……? 俺が居たら地上の交渉が困難になるかもしれないんだぞ?」
「元々、あそこは一筋縄でいくとは思っていない。気にするな」
テムは「へへへ」と照れ臭そうに笑った。「リナリア、許してくれるかなあ」と久遠城へ繋がる扉への案内もそこそこに飛び回っている。
「ちび、ちゃんと案内しろよ!!」
「ボクはテムだ!! 本当はちびじゃない。お前よりは断然年上だよーだ」
エイルと喧嘩をする姿は、ロンにしてみればどちらも子供だ。テムが付いてきてくれれば、賑やかな旅になる。セツカを想う空虚な心も忘れられるだろう。
ロンとエイルは、久遠城に帰還する為にテムが開いてくれた扉を潜った。
――悲恋に染まった霊廟に、ロンは少しだけ瞑目して祈りを捧げる。
◇
久遠城の正門前の雲を踏んだ二人と一匹に、急ぎフロン元帥とタオ老師が呼ばれた。霊廟内では時間の感覚が狂っていたようで、こちらではもう五日も経過していると聞かされたロンとエイルは驚愕する。
「試練に飲まれたかと案じていたんだよ……無事ならなによりさね。ところで、その仔龍はなんだえ?」
「第二の試練を任されていたテムという名の仔龍だ。約束通り持ち帰った『牙』とこやつの今後の処遇についてリナリア王に謁見願いたいのだが、可能だろうか?」
フロンは「しばし、待て」と言い残すと城に入った。ものの数分で戻ってきた彼女は、謁見の間へと案内してくれる。
「心なしか、筋斗雲の動きが鈍いな」
「三人と一匹が乗ればな……致し方あるまい」
どうやら積載量を軽く超えているらしい。筋斗雲には申し訳ないが、通常の三割増しの時間がかかって六十階に到着した。
謁見の間に進むと既にリナリアとタオが待っていた。人払いを命じたのか、他に人の姿はない。
「よくぞ戻ってきてくれました。五日もよく試練に耐えてくれましたね。他国の方に無茶な願いを致しましたこと、感謝と共にお詫び申し上げます」
「リナリア王、少々こずるい手で気が引けるのだが、このテムという仔龍、第二の試練を任されていたのだが、私が引き受けたく存じます。霊廟を護る防衛機能の一つだが、太古の昔より働き続けてきた。解放してやりたいのです。この『勿忘草の牙』をお渡しする代わりに、どうか――」
リナリアは「まあ」とロンの後ろから顔を覗かせて警戒している仔龍に「先代が亡くなった時に、逢いましたね」とテムに話しかける。
「あの時の私はまだ本当に子供でしたが」
「……ボクを覚えているのか?」
「参列者に子供は私だけでしたから、話しかけてくれたのを覚えていますよ。同じ年ごろの男の子の姿でしたが、尻尾が隠せていなくて……でも、其方の心使いが嬉しかった」
「石像以外の変化は苦手なんだ」とテムは頬を赤くしてロンの後ろに隠れてしまった。リナリアは微笑ましい様子に穏やかに笑った。
「いいでしょう。他ならぬ恩人の頼みです。テム、其方を霊廟防衛の任から解放致しましょう」
テムはもじもじとしながらも、「やった!!」と尻尾を激しく振っていた。思わずロンとエイルにも笑みが伝染する。
「では、将軍。『牙』を頂けますか?」
ロンは布を被せてあった硝子箱をリナリアの前に、恭しく差し出した。
リナリアが左手に埋め込んだ空石を『牙』にかざすと、両者が激しく呼応して、鳥肌が立つ。絶大な力は空石にみるみると収束して、パチンと弾けた。
リナリアの左手に埋め込まれた空石は、もう明滅せず、煌々と空に浮かぶ満月のように光を放ち続けていた。
「……ああ、よかった。これで空の民も安心して暮らせます。王子と将軍には重ねて感謝を申し上げます……ありがとう。今夜はゆっくり休まれませ」
「ご厚意ありがたく。明日にはここを発とうとかと思っています」
「そうですか。急ぐ旅ですものね――タオ、あれを」
リナリアが傍で控えていたタオに命じると、タオ老師は白い絹の小さな衾に乗せられた茶色い縦筋がいくつも入った根元が蒼い『爪』をロンに差し出した。
「それが『蒼龍の爪』です。魔力では空石に劣りますが、セツカ姫ならば封印を解くのに十分な魔力変換に使えるかと存じます。一日も早く、姫様がお目覚めになる日を願っておりますわ」
「ありがとうございます。我らも陛下の恩情をしかと受け取り、海底に戻る所存です」
ロンとエイルは跪き、拳を掲げてリナリアに礼をとった。
◇
「明日に出立とは随分と急なのだな」と言ったのは、また同じ客間に案内してくれたフロンだった。宴会で少々酒気が入っているせいか、ロンの顔は赤い。エイルとテムは早々につぶれた。
「空の秘宝を持ったまま地上には行けぬゆえ、一度仙界と海底竜宮に戻ろうと思っている。地上は通常でさえ訪れるのは難しいと聞く。情報を集めてからでも遅くはない」
「そうか。ところで、宴会の席で王子から聞いたが、霊廟には和王と『勿忘草の君』の残像が残っているそうだな……」
ロンは一気に酒気が飛んだ。思い出すのも少々つらい。ロンは前髪を掻き上げて、ため息を吐いた。
「侵入者である俺達だから見えたのか、はたまた王家ゆかりの方にも見えるのかは定かではないが……テムの口ぶりでは、もう霊廟全体に和王の残留思念に覆われているそうだ」
「……和王には申し訳ないが、どんな美しい悲恋であっても、姦通罪――不倫とも言うが、一族の汚点である以上は早々に霊廟の浄化に移るつもりだ。幸いにも空石に力が戻った。貴殿らがここを離れたら、王は霊廟浄化の儀に着手されるはずだ」
「……和王の想いが昇華されるよう祈るしか、もう俺にはできぬな」
「ああ。長話をしたな。すまない。では、失礼する」
「おやすみ、元帥」
和王は『牙』に恋しい相手への強い思念を移したときく。空石に異常は見受けられなかったが、リナリアの身体には問題が生じなければいいのだが、とロンは寝台に入って考えた。
うつらうつらとしていると、夢には小さなセツカと大人になったセツカの両方が浮かんでは消える。
「……セツカ……」
彼女が二人きりの時だけ、名前で呼ぶことを許してくれたのは大戦の数年前だったはずだ。
『このあたりがこそばゆいわ』
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