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大地の章
漆、龍王会談(後)
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漆、「龍王会談」(後)
海底竜宮に戻ったエイルから、ヤンジンの伝言を聞いた三人は、人払いをした執務室で頭を抱える。
「王、申し訳ありません。師匠を殴りに行ってもよろしいでしょうか?」
真面目な顔で短剣の柄を握るロンを、エイシャ王が「待て」と制する。
「落ち着け、ロン。あの腹黒――否、思慮深いと有名な策士である真君が東方王様と西王母様の御二方まで巻き込んで、捨て身の術に挑むとは思えぬ。彼ならば保険の秘策を誰にも明かさぬまま、事を進めるだろう」
エイシャの意見に同感だったのか、ロンは呆れながらも短剣から手を離した。エイシャはロンの姿にくすりと笑む。
「儂とて真君の言を鵜呑みにして、桜真珠を秘して会談には臨まぬ。あくまでリナリア王を殺してしまわぬよう秘宝の力を『鎮めて』いくつもりじゃ。おそらくは地上のルー・ソン王も同じ。セツカよ、桜真珠の力を最小限まで抑えるような術は可能か?」
「はい。では、王が念じられれば発動するように仕込むようにしておきましょう」
「頼んだ」とエイシャ王が発すると、セツカは一礼して執務室から出ていく。早速、桜真珠を奉じてある神域に行くのだろう。ロンとエイルには王から明日の警護についての話があった。
「テムはどうする? 其方は空の民。会談の場で空の方に向かうもよし。ロンとエイルにくっついていたいのならば、それも構わぬぞ」
「……エイシャ王様、ありがとう。でも、ボクは会談には行かない。どちら側にもなれないから、仙界まで付いていって、会談が終わるのを待ってる」
「それが其方の決意ならばよい。悩ましい思いをさせておるが、儂はそれを癒してやることもできぬ。三龍界の垣根を取っ払ってやりたいが……まだ時間がかかりそうだ」
「ボクが中途半端なだけだよ……!! 王様は、なにも悪くない」
テムもそれだけ言い残すと、部屋を出て行った。エイルが後を追おうとしたが、ロンに腕を掴まれた。
ロンはなにも言わずにエイルの腕を掴んで引き留めた。エイルは哀しそうにただうつむいた。
テムの心を理解してやれる者は、今は誰もいないのだ――。
その夜は、テムは黙ってロンの布団に潜り込んできた。ロンはふと笑ってテムを腹の上に乗せたまま眠った。
◇
翌日、仙界――東方王の居室の一角にある三十人以上を収容できる『松の間』にて、三龍王が集った。障子をすべて取り払われたこの部屋は、新鮮な藺草の匂いに包まれ、三龍大戦の講和会談が行われた場所だ。
中央に円卓が置かれ、三人の龍王と東方王だけが円卓につける。
四方の板張りの廊下には、それぞれの界の官僚と数人の精鋭が会談の様子を見守っている。
リナリアだけは、浮遊椅子に座って現れたが、誰もがその変わり果てた姿に唖然とした。黒々としていた長い髪は真っ白。両目は視力を失い、頬も身体も痩せこけて、かろうじて呼吸ができる有様だ。
東方王が円卓の三人の前に置いた小さな紗の座布団に秘宝を差し出すように命じた。
エイシャ王が桜真珠を差し出し、続いて新しい地平龍王ルー・ソン王が黄金色の球を座布団にそっと置く。
「私はこの体たらくですので、誠に申し訳もございませんが、左手を置くだけでご寛恕ください」
ひゅうひゅうと呼気が混じる話し声のリナリアは、老人のような左手を座布団の上に置いた。リナリアの生気を食らいつくして煌々と輝く空石が恐ろしかった。
東方王も「誰ぞ、異論は?」と問うが、異を唱える者はいない。
「では――これより三龍王会談を開始する」
東方王の澄み渡った声が『松の間』に響き、全員が頭を下げる姿は壮観だった。
「まずはこの集いの提唱者である海底龍王エイシャ殿、発言を許す」
エイシャは軽く会釈すると、ひとつ、咳ばらいをした。
「まずは皆に礼を述べよう。急な集いによくぞ応じてくれた――感謝致す。早速だが、リナリア女王の体調に配慮し、早々に本題に入る。海底龍王として、天空神龍族の武装解除及び地上への攻撃を即刻廃止して頂きたい。地上も同じく。迎撃としての最低限の防衛兵のみを残し、武装解除を願う」
地平龍王ルー・ソンが「発言をよろしいでしょうか」と東方王に尋ねる。「よろしい」と許可が下りれば、ルー・ソンは張り付けた笑顔でリナリアに相対した。
「こちらは天空龍王様が兵装の解除と攻撃停止を、加えて三龍界の停戦状態を終戦とし、各国の領域を明確にしてくださるのであれば、エイシャ王の提案に賛同致します――天空龍王様、如何でしょう?」
ルー・ソンがリナリアに明るく尋ねると、リナリアは「まあ」と袖で口を覆って笑い始めた。
思わずロンが身を固くする。
フロン元帥も、地上の新たな官僚たちもぞくりと身の毛がよだつ。
「罪もない母と幼子を計画的に焼き殺しておいて、なんて厚顔無恥な要求をなさるのかしら。王があの忌々しいジュウゼンでなくなっても、やはり地平民の首はすべて風で刎ねてしまえばよかった」
リナリアは能面のような気味の悪い笑みを浮かべる。抜け落ちた歯が余計に恐ろしい。
ロンが身構えようとすると大気が震えて対面の廊下に座るヤンジンの声が『待て』と言った。
『しばし待て。リナリアが空石を使ったら時空遡行術が発動する。これが上手く働けば、局地的に空石とリナリアが同化する前まで時間を巻き戻せる――お前はまだ見守ってろ』
ヤンジンの言葉に、ロンは気を張り詰めたまま腰を下ろした。
「……ロン」
「姫様、如何なさいましたか?」
「真君の術は読めました。万が一、失敗してもあなたは王を御守りしてください。わたくしは――もう一つの殺気を止めます……!!」
もう一つの殺気――セツカの小さな声が指摘したそれをロンは探した。見つけた時の胸の痛みは言葉にはできなかった。
リナリアの呪詛は続く。
「ルー・ソン王、地上は賢王を選ばれた。ですが、よもや五百年、宝を奪われた空の民の怨嗟の声は誰にも止められませんの――!!」
リナリアの白濁した両眼から一筋の涙が流れた。
途端に、空石が目も眩むほどの光を放つ――それを合図に東方王様、西王母様、ヤンジンの三者がそれぞれ異なる剣印を組んだ。
リナリアの左手は光を放ったまま、大きく震えだす。
「――な、なに……――?」
『天地殺界、理に反し、始祖に反して、これ願い候』
三仙人の唱える呪文に呼応して、空石は震えを激しくする。
「陛下!!」
フロン元帥が飛び出そうとした。それよりも早く浮遊椅子と空石の光の影から小さな塊が、ルー・ソンに向かった。
今度はセツカが合掌し、印を組むと仙界を覆う霧が大量に集まり、水球となって『それ』を包んだ。同時にロンが、エイルが、ヤンジンが飛び出す。
ルー・ソン王の真横で浮遊する水球には短剣を握って突き出したまま水に閉じ込められたタオ老師が絶望を浮かべていた。
「タオ!?」
「……リナリア……失敗しちまったよ……ごめんねえ、そんな身体にまでなっちまったのに、ごめんねえ……」
水球に浮遊する老婆は短剣を落として泣いていた。
「タオ、諦めてはいけません!! 私は、まだ――!!」
「いや、すべて終わらせる。恨みは何も産まねえよ」
ヤンジンの低い声がリナリアの耳元で囁かれた――ヤンジンは懐から取り出した剣を空石の座布団に突き立てる。
『陽、めいめいをあまねく照らし、陰、音を殺して陽に交わる。ゆえ、須らくかの者より解き放たれるべし――疾!!』
ヤンジンが剣印を払うと、リナリアは「きゃあ!!」と叫び声を上げて、浮遊椅子に倒れ掛かった。その姿は、ロン達が出逢った時の姿であり、左手に空石はない。
「――くそっ、時空魔術は成功したのに空石は変わらんのか!!」
リナリアから離れても輝き続ける空石を封じようと、エイシャが桜真珠に触れ、ルー・ソンも急いで肉石に手を置いた。
桜真珠も肉石も、空石に負けない輝きを放つが、三つの光は宙でぶつかりあったまま滞空している。
「悪いな、ロン……」
ヤンジンがそう呟くと、エイシャ王をかばっていたロンの眼帯を外し、隠していた呪符を光に投げ入れた。
「真君、いけません!! それは呪いを冗長するだけです!! ――ロン、離れて!!」
セツカの叫びも虚しく三龍の秘宝は、呪符を焼いて、露わになったロンの左眼の中に吸い込まれていった――。
「やめてええええ!!」
泣き叫ぶセツカ。両手が焼けただれたヤンジン。王を護るエイル――『松の間』の時間が止まった。
誰もが天を仰いだままのロンを見つめていた――。
「――……世を恨み、我が身を恨んで幾星霜……――」
ロンが左眼から血を流しながら、口が裂けるほどに笑って呪いの言葉を吐いた――。
海の章へ…
海底竜宮に戻ったエイルから、ヤンジンの伝言を聞いた三人は、人払いをした執務室で頭を抱える。
「王、申し訳ありません。師匠を殴りに行ってもよろしいでしょうか?」
真面目な顔で短剣の柄を握るロンを、エイシャ王が「待て」と制する。
「落ち着け、ロン。あの腹黒――否、思慮深いと有名な策士である真君が東方王様と西王母様の御二方まで巻き込んで、捨て身の術に挑むとは思えぬ。彼ならば保険の秘策を誰にも明かさぬまま、事を進めるだろう」
エイシャの意見に同感だったのか、ロンは呆れながらも短剣から手を離した。エイシャはロンの姿にくすりと笑む。
「儂とて真君の言を鵜呑みにして、桜真珠を秘して会談には臨まぬ。あくまでリナリア王を殺してしまわぬよう秘宝の力を『鎮めて』いくつもりじゃ。おそらくは地上のルー・ソン王も同じ。セツカよ、桜真珠の力を最小限まで抑えるような術は可能か?」
「はい。では、王が念じられれば発動するように仕込むようにしておきましょう」
「頼んだ」とエイシャ王が発すると、セツカは一礼して執務室から出ていく。早速、桜真珠を奉じてある神域に行くのだろう。ロンとエイルには王から明日の警護についての話があった。
「テムはどうする? 其方は空の民。会談の場で空の方に向かうもよし。ロンとエイルにくっついていたいのならば、それも構わぬぞ」
「……エイシャ王様、ありがとう。でも、ボクは会談には行かない。どちら側にもなれないから、仙界まで付いていって、会談が終わるのを待ってる」
「それが其方の決意ならばよい。悩ましい思いをさせておるが、儂はそれを癒してやることもできぬ。三龍界の垣根を取っ払ってやりたいが……まだ時間がかかりそうだ」
「ボクが中途半端なだけだよ……!! 王様は、なにも悪くない」
テムもそれだけ言い残すと、部屋を出て行った。エイルが後を追おうとしたが、ロンに腕を掴まれた。
ロンはなにも言わずにエイルの腕を掴んで引き留めた。エイルは哀しそうにただうつむいた。
テムの心を理解してやれる者は、今は誰もいないのだ――。
その夜は、テムは黙ってロンの布団に潜り込んできた。ロンはふと笑ってテムを腹の上に乗せたまま眠った。
◇
翌日、仙界――東方王の居室の一角にある三十人以上を収容できる『松の間』にて、三龍王が集った。障子をすべて取り払われたこの部屋は、新鮮な藺草の匂いに包まれ、三龍大戦の講和会談が行われた場所だ。
中央に円卓が置かれ、三人の龍王と東方王だけが円卓につける。
四方の板張りの廊下には、それぞれの界の官僚と数人の精鋭が会談の様子を見守っている。
リナリアだけは、浮遊椅子に座って現れたが、誰もがその変わり果てた姿に唖然とした。黒々としていた長い髪は真っ白。両目は視力を失い、頬も身体も痩せこけて、かろうじて呼吸ができる有様だ。
東方王が円卓の三人の前に置いた小さな紗の座布団に秘宝を差し出すように命じた。
エイシャ王が桜真珠を差し出し、続いて新しい地平龍王ルー・ソン王が黄金色の球を座布団にそっと置く。
「私はこの体たらくですので、誠に申し訳もございませんが、左手を置くだけでご寛恕ください」
ひゅうひゅうと呼気が混じる話し声のリナリアは、老人のような左手を座布団の上に置いた。リナリアの生気を食らいつくして煌々と輝く空石が恐ろしかった。
東方王も「誰ぞ、異論は?」と問うが、異を唱える者はいない。
「では――これより三龍王会談を開始する」
東方王の澄み渡った声が『松の間』に響き、全員が頭を下げる姿は壮観だった。
「まずはこの集いの提唱者である海底龍王エイシャ殿、発言を許す」
エイシャは軽く会釈すると、ひとつ、咳ばらいをした。
「まずは皆に礼を述べよう。急な集いによくぞ応じてくれた――感謝致す。早速だが、リナリア女王の体調に配慮し、早々に本題に入る。海底龍王として、天空神龍族の武装解除及び地上への攻撃を即刻廃止して頂きたい。地上も同じく。迎撃としての最低限の防衛兵のみを残し、武装解除を願う」
地平龍王ルー・ソンが「発言をよろしいでしょうか」と東方王に尋ねる。「よろしい」と許可が下りれば、ルー・ソンは張り付けた笑顔でリナリアに相対した。
「こちらは天空龍王様が兵装の解除と攻撃停止を、加えて三龍界の停戦状態を終戦とし、各国の領域を明確にしてくださるのであれば、エイシャ王の提案に賛同致します――天空龍王様、如何でしょう?」
ルー・ソンがリナリアに明るく尋ねると、リナリアは「まあ」と袖で口を覆って笑い始めた。
思わずロンが身を固くする。
フロン元帥も、地上の新たな官僚たちもぞくりと身の毛がよだつ。
「罪もない母と幼子を計画的に焼き殺しておいて、なんて厚顔無恥な要求をなさるのかしら。王があの忌々しいジュウゼンでなくなっても、やはり地平民の首はすべて風で刎ねてしまえばよかった」
リナリアは能面のような気味の悪い笑みを浮かべる。抜け落ちた歯が余計に恐ろしい。
ロンが身構えようとすると大気が震えて対面の廊下に座るヤンジンの声が『待て』と言った。
『しばし待て。リナリアが空石を使ったら時空遡行術が発動する。これが上手く働けば、局地的に空石とリナリアが同化する前まで時間を巻き戻せる――お前はまだ見守ってろ』
ヤンジンの言葉に、ロンは気を張り詰めたまま腰を下ろした。
「……ロン」
「姫様、如何なさいましたか?」
「真君の術は読めました。万が一、失敗してもあなたは王を御守りしてください。わたくしは――もう一つの殺気を止めます……!!」
もう一つの殺気――セツカの小さな声が指摘したそれをロンは探した。見つけた時の胸の痛みは言葉にはできなかった。
リナリアの呪詛は続く。
「ルー・ソン王、地上は賢王を選ばれた。ですが、よもや五百年、宝を奪われた空の民の怨嗟の声は誰にも止められませんの――!!」
リナリアの白濁した両眼から一筋の涙が流れた。
途端に、空石が目も眩むほどの光を放つ――それを合図に東方王様、西王母様、ヤンジンの三者がそれぞれ異なる剣印を組んだ。
リナリアの左手は光を放ったまま、大きく震えだす。
「――な、なに……――?」
『天地殺界、理に反し、始祖に反して、これ願い候』
三仙人の唱える呪文に呼応して、空石は震えを激しくする。
「陛下!!」
フロン元帥が飛び出そうとした。それよりも早く浮遊椅子と空石の光の影から小さな塊が、ルー・ソンに向かった。
今度はセツカが合掌し、印を組むと仙界を覆う霧が大量に集まり、水球となって『それ』を包んだ。同時にロンが、エイルが、ヤンジンが飛び出す。
ルー・ソン王の真横で浮遊する水球には短剣を握って突き出したまま水に閉じ込められたタオ老師が絶望を浮かべていた。
「タオ!?」
「……リナリア……失敗しちまったよ……ごめんねえ、そんな身体にまでなっちまったのに、ごめんねえ……」
水球に浮遊する老婆は短剣を落として泣いていた。
「タオ、諦めてはいけません!! 私は、まだ――!!」
「いや、すべて終わらせる。恨みは何も産まねえよ」
ヤンジンの低い声がリナリアの耳元で囁かれた――ヤンジンは懐から取り出した剣を空石の座布団に突き立てる。
『陽、めいめいをあまねく照らし、陰、音を殺して陽に交わる。ゆえ、須らくかの者より解き放たれるべし――疾!!』
ヤンジンが剣印を払うと、リナリアは「きゃあ!!」と叫び声を上げて、浮遊椅子に倒れ掛かった。その姿は、ロン達が出逢った時の姿であり、左手に空石はない。
「――くそっ、時空魔術は成功したのに空石は変わらんのか!!」
リナリアから離れても輝き続ける空石を封じようと、エイシャが桜真珠に触れ、ルー・ソンも急いで肉石に手を置いた。
桜真珠も肉石も、空石に負けない輝きを放つが、三つの光は宙でぶつかりあったまま滞空している。
「悪いな、ロン……」
ヤンジンがそう呟くと、エイシャ王をかばっていたロンの眼帯を外し、隠していた呪符を光に投げ入れた。
「真君、いけません!! それは呪いを冗長するだけです!! ――ロン、離れて!!」
セツカの叫びも虚しく三龍の秘宝は、呪符を焼いて、露わになったロンの左眼の中に吸い込まれていった――。
「やめてええええ!!」
泣き叫ぶセツカ。両手が焼けただれたヤンジン。王を護るエイル――『松の間』の時間が止まった。
誰もが天を仰いだままのロンを見つめていた――。
「――……世を恨み、我が身を恨んで幾星霜……――」
ロンが左眼から血を流しながら、口が裂けるほどに笑って呪いの言葉を吐いた――。
海の章へ…
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