薔薇の死神と神殺しの聖女

紺坂紫乃

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epilogue

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ep.

 酸素吸入器のマスクを当てられながら、彼女は笑っていた。彼は皺だらけのその右手を恭しくとった。皺の中にあっても変わらない白十字を、自身の頬に当てて彼も笑みを返す。

『――なあ、いつだったか受け取った、青い封筒を覚えているか? もしも覚えているなら、お前の最期の瞬間に執行してくれ。そうすれば、俺はお前と共に逝けるだろ』

 冷たい手を当てている部分から、彼はさらさらと金の発行体を生んで、徐々に砂になって行く。彼女の眦から雫が零れ、彼女の手もまた音もなく白いベッドの上に落ちた。――金色の砂の上に。

 ――ヴィンセント・シルバ、妻・リリィ=アンジェと共にここに眠る。

 ペール・ラシェーズ墓地に新たに建てられた墓碑にはそう刻まれていた。


end
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