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第二章 切断された首についての考察
探索①
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12月26日。
午後1時10分。
わたしは再び館の中を調査していた。
昨日、城ヶ崎と散々調べ回ったものの、わたしとしてはまだ館から脱出することを諦めきれなかったのだ。
外に出れさえすれば、助けを呼ぶことも出来る。
「付き合いきれんな。そんな無駄なことに時間を費やすくらいなら、部屋で詰将棋でもしていた方が余程マシだ」
城ヶ崎はそう言って同行を固辞したが、他に何か良い手があるわけでもない。
ならば、ダメ元でもやってみる価値はある。
それに何より、次は自分が殺されるかもしれない状況で、部屋でただじっとしていることが出来なかったのだ。
※
残酷館の玄関は三階までの吹き抜けになっている。つまり、三階の手すりから下を覗けば一階の玄関を一望出来る構造だ。
わたしは手すりから身を乗り出すようにして一階を覗き込む。するとファラリスの雄牛のちょうど正面の辺りに、不破の銀髪が見えた。
四つん這いになって、何かを探しているようだ。
「不破さん」
わたしが上から声をかけると、不破は一度大きく肩を震わせ、慌てた様子で立ち上がった。
「何を探していたんですか?」
わたしは大階段を降りて、ゆっくりと一階へと移動した。
「いやはや、これは参りましたな」
不破は頭を掻いて、照れたようにはにかんだ。まるで悪戯がバレた小学生のような素振りだ。
「どうもコンタクトレンズを落としてしまったようでして。お恥ずかしいところをお見せしてしまいました」
「お手伝いしましょうか?」
「いいえ、結構。ちょうど見つけたところですので」
不破はそう言い残して、そそくさとその場を立ち去ろうとする。
明らかに挙動が不審だ。
「不破さん、ちょっと持って下さい」
「はい?」
慌てて呼び止めてはみたものの、何を話せばいいのか分からない。
不破は怪訝そうにわたしを見ている。
「用がなければもう行きますが?」
拙い。
何となく、このまま行かせてはいけないような気がする。根拠はないが、わたしの直感がそう言っている。
早く何かを話しかけなくては。
「……あの、ええと、不破さんは『寿司アンルーレット』のとき、何の寿司を選んだんでしたっけ?」
わたしは苦し紛れの質問をした。
昨日、城ケ崎が言ったことを思い出してのことだ。
「確かマグロの赤身だったと思いますが、それが何か?」
「いえ、別に」
しかし、後が続かない。
「では、失礼」
不破は大きく息をついて、足早に自分の部屋へと戻っていった。
結局、揺さぶりをかけることは失敗に終わる。
だが不破が何かを隠していることは間違いないだろう。
わたしは不破が立ち去った後、ファラリスの雄牛の周辺を入念に調べてみるが、何も見つけることは出来なかった。
不破は一体何を探していたのか?
すると突然、美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐる。
カレーの匂いだ。
匂いがするのは食堂側の通路からだった。
「…………」
気が付くと、ゴクリと唾を飲み込んでいた。
わたしは匂いにつられるように、ふらふらと厨房へと足を進めた。
午後1時10分。
わたしは再び館の中を調査していた。
昨日、城ヶ崎と散々調べ回ったものの、わたしとしてはまだ館から脱出することを諦めきれなかったのだ。
外に出れさえすれば、助けを呼ぶことも出来る。
「付き合いきれんな。そんな無駄なことに時間を費やすくらいなら、部屋で詰将棋でもしていた方が余程マシだ」
城ヶ崎はそう言って同行を固辞したが、他に何か良い手があるわけでもない。
ならば、ダメ元でもやってみる価値はある。
それに何より、次は自分が殺されるかもしれない状況で、部屋でただじっとしていることが出来なかったのだ。
※
残酷館の玄関は三階までの吹き抜けになっている。つまり、三階の手すりから下を覗けば一階の玄関を一望出来る構造だ。
わたしは手すりから身を乗り出すようにして一階を覗き込む。するとファラリスの雄牛のちょうど正面の辺りに、不破の銀髪が見えた。
四つん這いになって、何かを探しているようだ。
「不破さん」
わたしが上から声をかけると、不破は一度大きく肩を震わせ、慌てた様子で立ち上がった。
「何を探していたんですか?」
わたしは大階段を降りて、ゆっくりと一階へと移動した。
「いやはや、これは参りましたな」
不破は頭を掻いて、照れたようにはにかんだ。まるで悪戯がバレた小学生のような素振りだ。
「どうもコンタクトレンズを落としてしまったようでして。お恥ずかしいところをお見せしてしまいました」
「お手伝いしましょうか?」
「いいえ、結構。ちょうど見つけたところですので」
不破はそう言い残して、そそくさとその場を立ち去ろうとする。
明らかに挙動が不審だ。
「不破さん、ちょっと持って下さい」
「はい?」
慌てて呼び止めてはみたものの、何を話せばいいのか分からない。
不破は怪訝そうにわたしを見ている。
「用がなければもう行きますが?」
拙い。
何となく、このまま行かせてはいけないような気がする。根拠はないが、わたしの直感がそう言っている。
早く何かを話しかけなくては。
「……あの、ええと、不破さんは『寿司アンルーレット』のとき、何の寿司を選んだんでしたっけ?」
わたしは苦し紛れの質問をした。
昨日、城ケ崎が言ったことを思い出してのことだ。
「確かマグロの赤身だったと思いますが、それが何か?」
「いえ、別に」
しかし、後が続かない。
「では、失礼」
不破は大きく息をついて、足早に自分の部屋へと戻っていった。
結局、揺さぶりをかけることは失敗に終わる。
だが不破が何かを隠していることは間違いないだろう。
わたしは不破が立ち去った後、ファラリスの雄牛の周辺を入念に調べてみるが、何も見つけることは出来なかった。
不破は一体何を探していたのか?
すると突然、美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐる。
カレーの匂いだ。
匂いがするのは食堂側の通路からだった。
「…………」
気が付くと、ゴクリと唾を飲み込んでいた。
わたしは匂いにつられるように、ふらふらと厨房へと足を進めた。
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