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変化する呪いの文字
第9話
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――またしても校内で殺人事件が起きた。
事件があったのは西校舎三階の美術室で、殺されていたのは美術部三年の舟生桐絵だった。舟生桐絵は頸部を刃物で複数回刺されて死亡していた。死亡推定時刻は12時50分から13時40分の昼休みの間で、この時間、舟生はコンクールに出す為に制作していた絵を一人で描いていた。
そして、事件現場の美術室には一つ不可解な点があった。
室内に飾られていた石膏像が全て破壊されていたのである。それも、原型を留めないくらい粉々に砕かれていた。
「……さて、ここで問題です。犯人は何故こないな真似せェへんとあかんかったのか?」
白旗誠士郎は関係者を集めた美術室の中をぐるりと見回した。
「……ただ単に、犯人と被害者が揉み合ったときに偶然壊してしまったんじゃないんですか?」
美里ふみ香が怖ず怖ずと遠慮がちに指摘する。
「アホ言え。それやったら石膏像が粉々にされとることの説明がつかへん。偶然倒しただけなら、原型がわからなくなる程に砕けるわけがない。つまり、石膏像は犯人が確固たる意志を持って入念に破壊したっちゅうこっちゃ」
白旗は勝ち誇ったようにニヤリと笑う。
「そして、犯人ならもうわかっとる。薗原優樹菜、お前やッ!!」
白旗が指差した先には、髪の長い眼鏡をかけた大人しそうな少女がいた。上履きの色から三年生であることがわかる。薗原は三角巾で左腕を吊るしていた。
「……ど、どうして私が犯人なんですか?」
「そんなん簡単なこっちゃ。現場の石膏像が徹底的に壊されとる理由をよォ考えたらわかる。さっき美里が指摘した通り、犯人と被害者が揉み合った際、事故で石膏が壊れてしもたんやな」
「……え?」
ふみ香は聞き間違いだと思った。結局、石膏像は揉み合ったときに壊れたということなのか?
「美里、勘違いしとるようやけど、偶然壊れたんは石膏像やないで。石膏像の他にも石膏でできとるもんがあるやないか。せやな、たとえばギプス、とかな」
薗原の顔がさっと青ざめる。
「舟生桐絵に抵抗されて、犯人は自分の左腕を覆っとるギプスを壊してしもた。どの程度破片が飛び散ったかは想像するしかないけど、犯人はギプスの破片を拾い集めるより逆に石膏の破片を増やすことで痕跡を隠すことを思い付いたんや。木を隠すなら森の中。そして、幸い現場は美術室。石膏ならそこら中にある」
薗原優樹菜は柳のように項垂れて、膝から崩れ落ちる
「……し、仕方なかったんです!! 私、万引きしたところを舟生さんに見られて、それで強請られてて……!! こんなことが学校に知れたら、指定校推薦の話がなかったことにされるって思って……」
「詳しくは署で伺おうか」
鷲鼻の刑事が薗原を立たせて、ギプスで覆われていない方の腕に手錠をかける。
「……ま、俺の灰色の脳細胞にかかればざっとこんなもんや。これで一勝一敗の五分。次も勝たして貰うで小林ィ!!」
白旗はそう言って辺りをぐるりと見回した。が、小林の姿はどこにもない。
「…………あれ、小林は?」
「……小林先輩なら今日は朝から学校に来てないですよ」
事件があったのは西校舎三階の美術室で、殺されていたのは美術部三年の舟生桐絵だった。舟生桐絵は頸部を刃物で複数回刺されて死亡していた。死亡推定時刻は12時50分から13時40分の昼休みの間で、この時間、舟生はコンクールに出す為に制作していた絵を一人で描いていた。
そして、事件現場の美術室には一つ不可解な点があった。
室内に飾られていた石膏像が全て破壊されていたのである。それも、原型を留めないくらい粉々に砕かれていた。
「……さて、ここで問題です。犯人は何故こないな真似せェへんとあかんかったのか?」
白旗誠士郎は関係者を集めた美術室の中をぐるりと見回した。
「……ただ単に、犯人と被害者が揉み合ったときに偶然壊してしまったんじゃないんですか?」
美里ふみ香が怖ず怖ずと遠慮がちに指摘する。
「アホ言え。それやったら石膏像が粉々にされとることの説明がつかへん。偶然倒しただけなら、原型がわからなくなる程に砕けるわけがない。つまり、石膏像は犯人が確固たる意志を持って入念に破壊したっちゅうこっちゃ」
白旗は勝ち誇ったようにニヤリと笑う。
「そして、犯人ならもうわかっとる。薗原優樹菜、お前やッ!!」
白旗が指差した先には、髪の長い眼鏡をかけた大人しそうな少女がいた。上履きの色から三年生であることがわかる。薗原は三角巾で左腕を吊るしていた。
「……ど、どうして私が犯人なんですか?」
「そんなん簡単なこっちゃ。現場の石膏像が徹底的に壊されとる理由をよォ考えたらわかる。さっき美里が指摘した通り、犯人と被害者が揉み合った際、事故で石膏が壊れてしもたんやな」
「……え?」
ふみ香は聞き間違いだと思った。結局、石膏像は揉み合ったときに壊れたということなのか?
「美里、勘違いしとるようやけど、偶然壊れたんは石膏像やないで。石膏像の他にも石膏でできとるもんがあるやないか。せやな、たとえばギプス、とかな」
薗原の顔がさっと青ざめる。
「舟生桐絵に抵抗されて、犯人は自分の左腕を覆っとるギプスを壊してしもた。どの程度破片が飛び散ったかは想像するしかないけど、犯人はギプスの破片を拾い集めるより逆に石膏の破片を増やすことで痕跡を隠すことを思い付いたんや。木を隠すなら森の中。そして、幸い現場は美術室。石膏ならそこら中にある」
薗原優樹菜は柳のように項垂れて、膝から崩れ落ちる
「……し、仕方なかったんです!! 私、万引きしたところを舟生さんに見られて、それで強請られてて……!! こんなことが学校に知れたら、指定校推薦の話がなかったことにされるって思って……」
「詳しくは署で伺おうか」
鷲鼻の刑事が薗原を立たせて、ギプスで覆われていない方の腕に手錠をかける。
「……ま、俺の灰色の脳細胞にかかればざっとこんなもんや。これで一勝一敗の五分。次も勝たして貰うで小林ィ!!」
白旗はそう言って辺りをぐるりと見回した。が、小林の姿はどこにもない。
「…………あれ、小林は?」
「……小林先輩なら今日は朝から学校に来てないですよ」
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