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15話
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風呂に入っていたら、ブーケが探していましたー!と、入ってきたので驚いた。
あれ、さっき行った時は眠っていた気がするが……と、考えていたら、思ったより長い時間入ってしまっていた。
そのせいか少し逆上せていたので、顔が赤いらしく、物凄く心配された。
手を引かれて、キッチンで水を貰うと、アンヌがてこてこと入ってきていた。小腹が空いているらしく、腹辺りをさすりながらキョロキョロとしている。
「あ!おは……え!真っ赤、体調大丈夫!?熱!?お医者さん呼ぶ!?」
「ん。ピンピンしてるから良い」
「アンヌ王子は流石ですねー、お風呂入られてまして、逆上せちゃったらしいです」
「あっ、そうなんだ。よかった……」
ほっ、と胸を撫で下ろしたアンヌの耳をすぐに触りに行く。とりあえずさっき思った事を、忘れないうちに触っておこう。
「わわ、かわいいっ……じゃ無かった。何かついてた?」
「いや……触りたくなった」
「いいなぁ、良ければ私のおみみも触りません?」
「んー、ネズミ硬そうだからな……」
「艶とコシがある毛なんです!ご偏見なさらず、ささ!」
そう頭を差し出されたので、少し触ってみる。確かに少し柔らかいけどつるつるして、確かにコシがあるような……気もしなくない。
「ブーケよりアンヌの方がいいな、俺は」
「柔らかいほうが好きでしたかー、残念です」
「うう!かわいい、ガード君なら、好きに触っていいからね」
そういうと、俺の好きな顔になる。やっぱり、顔もやさしいところも好きだ。
二人とワイワイとしながら、キッチンを出ていく。この三人で行動しているところも嫌いじゃない。
□◇□◇□◇□
今日も服が違っていた。しかし、いつもの……というか、最近着ていた白と赤の服ではなく、深めの紫の布地に青糸で刺繍─薔薇がたくさん縫われている─がしてあり、青い裏地の立て襟。白いシャツとズボン。足元は黒いショートブーツだった。
「ガード様は何でも似合いますねー、これが似合う人はなかなかいません」
「褒められてる……よな?」
「褒めすぎてます。逆に何が似合わないんだろう……?」
うーん、と頭を悩ませてるブーケを見ていると扉がノックされる。返事をするとアンヌだった。
「ご飯できたって。ホットケーキだから、早く行ったほうがいいかも。暖かいうちがいいから」
「ホットケーキ……?」
「うん!シロップとバターをかけて食べるんだよ。じゅわって、美味しいんだ」
じゅわ、音だけで美味しそうだ。意外と俺は食べ物が好きらしく─まともなものを食べてなかったから、かとも思うが─美味しそうな物を聞いたり、見たりするとすぐに腹が減る。前までこんな事は無かったのだが、人間って、贅沢すると駄目だな……欲が次から次に出てくる。
「ふふ、これから毎日食べられるから、美味しくても我慢してね?食べ過ぎちゃうと屋台のご飯、食べられなくなるからね」
「……っ」
「屋台は今日しか食べられませんからねー、何か味が違うんですよね。料理自体はできるんですけどね」
「やっぱり空気とか、雰囲気があるんじゃない?ほら、うちで毎日ホットケーキ食べてるとさ、家の味……みたいなのに慣れるから」
「うーん、空気とか雰囲気は分かりますけど、毎日ホットケーキは分からないです」
「え!が、ガード君なら分かってくれるよね……美味しいものは、毎日食べたいよね?」
そう言いながら、腕をがしっ。と掴まれる、正直何でも美味いので、食べる物は同じじゃなくても良い……けど、そういう問題じゃないんだろうか。口を開くのがワンテンポ遅れ、ブーケが話を続けてくれる。
「いくら美味しくても、流石にホットケーキ毎日は、飽きちゃいますよねー、ブーケがサンドイッチとか作ってあげますからね!ガード様限定で」
「えー!ずるいよ、僕も食べたい!」
「アンヌ王子は食べ飽きてると思うので、料理長のサンドイッチ食べてください。料理長が泣く前に」
「飽きてないよー!もう、僕がブーケのハニーたまごサンド好きなの知ってるくせに!」
二人のやり取りが心を突く。そうか、朝食も最後か……ホットケーキ、は心惜しいがこのあとのパレードの食べ物は、思い出として多くの種類を食べたいと思っていたし、少し、我慢しよう。
「ガード様は辛い物などは食べられますか?」
「ん?まあ、多少は……」
「それでしたら、私の腕が存分に振るえますね!明後日辺りに、サンドイッチパーティーしましょうか」
「あぁ、母様が『図書館に一緒に行って絵本で文字を教えてあげたいのにー!いつガードちゃんはお暇になるのー!』ってぷんぷんしてたよ、その時に作ってあげてよ。食べながら読めるから、母様喜ぶよ」
「あぁ、確かに。そのときにお作りしましょうか」
この二人は、いや、この王国の人は、俺がずっといると思ってくれている。今日の夕方以降には、俺は居なくなる─まだ、可能性の話だと信じたいが─というのに。
きゃっきゃと今後の予定を楽しそうに話す二人。そんな二人に微笑んでしまい、聞いてる予定だけでも楽しくなってくる。まず俺に文字を教える、という建前で図書館や舞台を見たいとか、俺と踊ってみたいとか、俺を連れて王国をしっかりと見て回りたいとか……
本当に、その予定ができたら……幸せなのに。
この国に来て、いろいろな事が分かった。俺は意外と心が脆いし、食いしん坊だし、貪欲だ。
でも、勇気がない。出せない。
「あ!冷めちゃう、ほら早く早く!」
アンヌが手を引いて引っ張り、ブーケが背中を押してくれる。今日も一緒に仲良く食べてくれるんだろう。
__二人に何も言い出せないまま、時刻はあっという間に昼になっていた。
あれ、さっき行った時は眠っていた気がするが……と、考えていたら、思ったより長い時間入ってしまっていた。
そのせいか少し逆上せていたので、顔が赤いらしく、物凄く心配された。
手を引かれて、キッチンで水を貰うと、アンヌがてこてこと入ってきていた。小腹が空いているらしく、腹辺りをさすりながらキョロキョロとしている。
「あ!おは……え!真っ赤、体調大丈夫!?熱!?お医者さん呼ぶ!?」
「ん。ピンピンしてるから良い」
「アンヌ王子は流石ですねー、お風呂入られてまして、逆上せちゃったらしいです」
「あっ、そうなんだ。よかった……」
ほっ、と胸を撫で下ろしたアンヌの耳をすぐに触りに行く。とりあえずさっき思った事を、忘れないうちに触っておこう。
「わわ、かわいいっ……じゃ無かった。何かついてた?」
「いや……触りたくなった」
「いいなぁ、良ければ私のおみみも触りません?」
「んー、ネズミ硬そうだからな……」
「艶とコシがある毛なんです!ご偏見なさらず、ささ!」
そう頭を差し出されたので、少し触ってみる。確かに少し柔らかいけどつるつるして、確かにコシがあるような……気もしなくない。
「ブーケよりアンヌの方がいいな、俺は」
「柔らかいほうが好きでしたかー、残念です」
「うう!かわいい、ガード君なら、好きに触っていいからね」
そういうと、俺の好きな顔になる。やっぱり、顔もやさしいところも好きだ。
二人とワイワイとしながら、キッチンを出ていく。この三人で行動しているところも嫌いじゃない。
□◇□◇□◇□
今日も服が違っていた。しかし、いつもの……というか、最近着ていた白と赤の服ではなく、深めの紫の布地に青糸で刺繍─薔薇がたくさん縫われている─がしてあり、青い裏地の立て襟。白いシャツとズボン。足元は黒いショートブーツだった。
「ガード様は何でも似合いますねー、これが似合う人はなかなかいません」
「褒められてる……よな?」
「褒めすぎてます。逆に何が似合わないんだろう……?」
うーん、と頭を悩ませてるブーケを見ていると扉がノックされる。返事をするとアンヌだった。
「ご飯できたって。ホットケーキだから、早く行ったほうがいいかも。暖かいうちがいいから」
「ホットケーキ……?」
「うん!シロップとバターをかけて食べるんだよ。じゅわって、美味しいんだ」
じゅわ、音だけで美味しそうだ。意外と俺は食べ物が好きらしく─まともなものを食べてなかったから、かとも思うが─美味しそうな物を聞いたり、見たりするとすぐに腹が減る。前までこんな事は無かったのだが、人間って、贅沢すると駄目だな……欲が次から次に出てくる。
「ふふ、これから毎日食べられるから、美味しくても我慢してね?食べ過ぎちゃうと屋台のご飯、食べられなくなるからね」
「……っ」
「屋台は今日しか食べられませんからねー、何か味が違うんですよね。料理自体はできるんですけどね」
「やっぱり空気とか、雰囲気があるんじゃない?ほら、うちで毎日ホットケーキ食べてるとさ、家の味……みたいなのに慣れるから」
「うーん、空気とか雰囲気は分かりますけど、毎日ホットケーキは分からないです」
「え!が、ガード君なら分かってくれるよね……美味しいものは、毎日食べたいよね?」
そう言いながら、腕をがしっ。と掴まれる、正直何でも美味いので、食べる物は同じじゃなくても良い……けど、そういう問題じゃないんだろうか。口を開くのがワンテンポ遅れ、ブーケが話を続けてくれる。
「いくら美味しくても、流石にホットケーキ毎日は、飽きちゃいますよねー、ブーケがサンドイッチとか作ってあげますからね!ガード様限定で」
「えー!ずるいよ、僕も食べたい!」
「アンヌ王子は食べ飽きてると思うので、料理長のサンドイッチ食べてください。料理長が泣く前に」
「飽きてないよー!もう、僕がブーケのハニーたまごサンド好きなの知ってるくせに!」
二人のやり取りが心を突く。そうか、朝食も最後か……ホットケーキ、は心惜しいがこのあとのパレードの食べ物は、思い出として多くの種類を食べたいと思っていたし、少し、我慢しよう。
「ガード様は辛い物などは食べられますか?」
「ん?まあ、多少は……」
「それでしたら、私の腕が存分に振るえますね!明後日辺りに、サンドイッチパーティーしましょうか」
「あぁ、母様が『図書館に一緒に行って絵本で文字を教えてあげたいのにー!いつガードちゃんはお暇になるのー!』ってぷんぷんしてたよ、その時に作ってあげてよ。食べながら読めるから、母様喜ぶよ」
「あぁ、確かに。そのときにお作りしましょうか」
この二人は、いや、この王国の人は、俺がずっといると思ってくれている。今日の夕方以降には、俺は居なくなる─まだ、可能性の話だと信じたいが─というのに。
きゃっきゃと今後の予定を楽しそうに話す二人。そんな二人に微笑んでしまい、聞いてる予定だけでも楽しくなってくる。まず俺に文字を教える、という建前で図書館や舞台を見たいとか、俺と踊ってみたいとか、俺を連れて王国をしっかりと見て回りたいとか……
本当に、その予定ができたら……幸せなのに。
この国に来て、いろいろな事が分かった。俺は意外と心が脆いし、食いしん坊だし、貪欲だ。
でも、勇気がない。出せない。
「あ!冷めちゃう、ほら早く早く!」
アンヌが手を引いて引っ張り、ブーケが背中を押してくれる。今日も一緒に仲良く食べてくれるんだろう。
__二人に何も言い出せないまま、時刻はあっという間に昼になっていた。
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