姉の代わりに嫁いだけど、可愛いうさぎの王子に溺愛されるなんて聞いてない─欠点は性欲が強すぎる所だけ─

無能歌

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28話 アンヌSide

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お風呂の後にも少しだけ、突然の仕事があって、お腹がペコペコだ。結局食事を食べ逃してしまった─今日はガードと、二人きりの予定だったのに─ので、ミーナさんとの話し合いは、もっと早く済ませる事にしよう。早くご飯を食べて、残りの時間で出来るだけガードと一緒にいたい。

ネグリジェのままで、そそくさと彼女の元へ向かう。こちらから話すことは、今度話すことを除いて、三つ。なぜ僕とそんなに会いたがっていたのか?という事と、ガードにはこれから会わせられない─相手の言い分的には必然的に、会わなくなるんだけど─と言う事、そして水晶を用意する。ということだ。

水晶、人間と獣人では違うらしく、わざわざ使者に買いにいってもらうことになった。まぁまぁな値段だし、手切れ金には少ないけど、やってきた事を考えれば程よい……と、僕は思ったが、彼女らはそうは思わないかもな。

□◇□◇□◇□

到着すると、ご飯をもぐもぐと食べている、カルーに会う。美味しそうな匂いからして、シチューやパン、ハンバーグなどのようだ。……って事は、もっと上は豪華だったんだろうな。ちゃんとガードは母様や父様と食べられたかな。一人で食べるのは絶対に寂しいだろうから、一緒に仲睦まじく食べられてると良いんだけど……

 「お疲れ様、美味しそうだね」
 「あ、おふは、おふ、んぐ、お疲れ様です!すっごい美味しいですよ!」

ニコニコと笑うカルーの顔は、ガードと通じるものがある。いや、猫みたいな顔だし似てな……いや、雰囲気は似てる、かな?でも、幸せオーラというものが、似ているのかも。幸せな人は幸せな顔をするんだな。

 「早く食べたいから、早くお話を済ませてくるよ。鍵もらえる?」
 「あれ、食べてないんですか?」
 「あはは、ちょっと緊急の仕事が入っちゃってね。終わったら食べるんだ」
 「国王になったばかりですのに、大変ですね。どうぞ!何かありましたらすぐにお呼びください!」

カルーから鍵を貰い、さっさとミーナさんの部屋……いや、牢屋に入る。
中に入ると、食べ物を机の上に広げ、水を飲んでいるミーナさんがいた。まだお風呂に入っていないようで、普段の服のままだ。頭にヘアキャップは被っていない。

 「やだ、レディが食事中なんだから、ノックして欲しかったですけれど……早く会いたくて仕方なかったとか?」
 「僕はまだご飯食べられてなくて、急いでるので。お伝えしたい事だけお伝えに来ました」
 「そんな急がないで、お話していきましょうよ!ほら、お隣に座って?」
 「遠慮します」

出入り口の扉に体重を掛けて立つ、近付きたくないし、不意を打たれて抜け出されたく無いし。
ぷく、と口を膨らませたミーナさんを、ちょっとだけまじまじと見てみる。ほんの少しだけ、ガードとの血縁を感じる顔をしている。怒っているんだぞ、と伝えてくるような顔と、少しサラッと頭にかかっている髪の毛の感じが似ている……気がする。

でも性格も、見た目も全く似てない。もしガードより先に出会ったとして、恋に落ちることは無かっただろうな。ガードの事は見た目も好きだが、何より中身が好きなのだ。

 「先に伝える事は、聖女の特訓は許可を出します。遅くとも明後日には水晶が届くと思うので、それからは好きに特訓して下さい」
 「嬉しい!許可をくれるなんて優しいのね」

にこやかに笑っているが、なんらかの裏が見える。何か裏で考えて、表面上は取り繕っているようにしか見えない。

 「次のお知らせは、もうガードには会わせられない。僕が会いに来たことだし、良いですよね?」
 「あら、寂しい。やっと姉弟として仲良くなれたと思ったのに」
 「……彼はそう思わなかったみたいだからね、君の思い違いだよ」

この事を話してくれていたガードは、ものすごく不安そうな顔をしていた。ガードの事を考えて、如何考えてもこの人の思い違いだ。
結構思い込みが激しいところがあるらしい、より一層ガードから離してあげないと、大きな怪我を負わされるかもしれない。

そう伝えると、彼女は気持ちの悪い顔をした。いや、本当に表現の通りという物。ニタ、と聞こえそうなほど口角を吊り上げていた。
正直、怪物。なんて思ってしまう程の顔はすぐに元に戻り、人当たりのいい顔に変わっていた。

 「やだ、聞いてないんですの?とても……仲良くしていまして。ほら、ここにアンヌって書いて?って言ったら……アだけだけど。書いてくれたのよ。中々上手でしょ?」

そう言って一枚の紙を見せてくる。グニャグニャと曲がった文字で、ガードが練習中の文字、ということがよく分かる。正直その紙はすごく欲しい、ガードの僕の名前を書こうとしてくれた紙なんて、最高に可愛い。その状況を考えるだけでもっと好きになる。いや、その時ガードは怖がっていたかもしれない。甘んじてはいけない……

 「よろしければ……近くでご覧なられます?ほら、ここに置きますわ」

立ち上がってベッドの端に置くと、また食事の場所へ帰り、パクパクとシチューを頬張り始めた。
取りに行くか悩んだが、少し距離があるし、物凄く正直言えば欲しい。恐る恐る取りに行くが、意外とこちらへ目を向けないで食事に集中している。

そっと紙を取ると、ア。だけだが頑張って書いたという感じがわかる。少しだけ、嬉しい。僕の名前の一文字でも書けるようになってくれているのだと。

 「ね、仲良くなったのわかるでしょ?前のガードなら、書いてくれなかったと思うわ」
 「……それは、どうとも言えるから参考にはしないよ」

少しインクが飛び散った痕が見えるが、何か焦っていたのだろうか?文字の書き順がわからない……とか?いや、普通に苦手な姉と一緒にいるのが無理だったのかも。
一応、もしかしたらガードが会いたいと言うかもしれないから、それだけは許可してあげよう。

 「一応、ガードが望む場合のみは許可します……が、基本僕を通してからじゃないと、会わせられませんから」
 「あら、仲良しなのに。ひどい王様ね」
 「……貴女、ここにどうして入ったか覚えてます?」

入った理由は、侮辱罪で、ガードの事を毛嫌いしているのを、通り越した程の嫌悪を感じた。それなのに、何故ガードに対して優しい、仲良し。という行為をしているのか?それに、僕に対してベッタリとしてきていない感じが気になる。
初めてあった時とは全然違うし、前あった時はもっと赤ん坊のように、わあわあと叫んでいたと思うが。

 「ま、会えるならいっか。明日会いたいんだけど?」
 「……ガードに聞いてからにします」

なぜそんなに会いたがるのか、物凄く怪しい。だから、その事を説明してからガードに伝えるべきだろう。判断は……できるだけ任せるけど。
本当に、本当にガードは優しいので姉を許すか、悩んでいる可能性は捨てきれないし。

話をしていると、軽くお腹が鳴る。前のガードの照れた顔を思い出し、早くご飯を食べたくなる。屋台の食べ物を頬張るガードは、可愛かったなぁ……

 「最後に。質問だけど……なんで僕に会いたがっていたの?僕は君に会いたい理由はなかったけど」
 「あら、あなたの事が好き……は、冗談で、ガードと仲直りしようかと思って。そうしたら、旦那様の貴方とも仲良くならないと、ね?私一応義姉になるもの。それに……」

ぼそぼそと最後の方は発したので、何も聞こえなかったが、質問の答えにはなっていない気がする。
しかし、何かを企んでいるということは分かった。もう会わないようにした方がいいと考える。ガードが願うなら会わせてあげるし、会うかもしれないけど……僕から会いに来ることはないだろう。

 「まぁいいよ、僕からはもう会いに来ません」
 「えぇ、寂しい!意地悪ね」
 「さようなら、うちのシェフの食事を楽しんで」

面倒になったので紙を持ったまま外へ出た。
なんの企みがあるんだろう?やっぱり、支援の希望か、僕やガードに対して反撃する狙いだろうか?そこが一番疑える場所だが……何か回りくどい。彼女の両親が来て、バッサリと切り捨てれば反撃なんて、出来なくなるような遠回りの仕方をしている。

 「カルー、ありがとう。食べるの早いね」
 「何かあった時に対処できるようにするのが、大切なので!美味しいですしね~」

鍵を渡して、軽く手を振って食事を食べに行く。やっぱり、慣れない人と話すのは結構疲れる。
思わぬ報酬もあった─ガードが、まだ書きなれてない文字をゲットした、というのはとても良い─し、何か企んでいることを感じられたので、結果オーライ……かな?

この疲労を癒やしてもらうために、食事後は直ぐにガードに会いに行こう。少しだけ長い階段を歩きながら、僕は食事へ向かった。
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