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第2章
第53話:無力感と芽生え
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三度目となる魔力提供。
それは、俺にとって「義務」という言葉では到底拭いきれない、魂を削るような責め苦の時間となった。相変わらず、レリルは死線を彷徨うような凄絶な苦しみを見せ、全身を震わせ、最後には俺の腕の中で、糸の切れた人形のように力なく意識を失った。
ソファのクッションに深く沈み込む彼の体は、俺が毎日運び込んだ栄養のある食材のおかげで、以前よりは幾分か肉がついたように見える。だが、それでも抱き上げれば驚くほどに軽く、まるで中身をすべて吸い取られた空蝉のようだ。
魔石への膨大な魔力注入。それは、魔物の脅威からこの過酷な極北の領地を守り抜くために、決して欠かすことのできない神聖かつ不可避な儀式だ。だが、その代償として、目の前のたった一人の男がこれほどまでに削り取られ、ボロ布のように成り果てる姿を特等席で見せつけられていると、自分がこの世で最も卑劣で、救いようのない残虐なことをしているような、耐え難い自己嫌悪が津波のように押し寄せてくる。
「……俺は、この地の領主でありながら。お前に、これほどの苦痛を与えること以外、何一つ救いを与えてやれないのか」
最近の彼は、少しずつではあるが、俺に対して多彩な表情を見せてくれるようになっていた。
呆れるほど毎日のように通いつめる俺に、困ったような溜息をつきながらも、窓の外を見つめて帰りを待ち、不器用ながらに夕食を用意して待っていてくれるあの細い背中。俺のとりとめのない話に、ふっと雪解けの春のように儚げに笑う、あの奇跡のような瞬間。
それらを目に焼き付けるたびに、俺は自分の中の凍てついていた心臓の最奥が、柔らかな、けれど鮮烈な光で満たされていくのを感じていた。
だが、現実はどこまでも冷酷で無慈悲だ。俺がどれほど彼に尽くそうとも、この手で贅沢な品を与えようとも、月に一度、俺自身の手で彼から命の輝きを強引に奪い取らなければならない。守りたいと願うこの手で、彼を壊し続けている。その耐え難い矛盾が、俺の正気をじりじりと、音を立てて焼き焦がしていく。
俺は眠り続けるレリルを、今一度、自分の胸の中に押し潰さんばかりの力で強く抱きしめた。
腕の中に収まる、この折れそうなほど小さな、けれど確かに拍動している温もりを、何が何でも守り抜きたい。二度と、誰の手にも、この不条理な運命にさえも渡したくない。
(……これは、もう「庇護欲」などという、生ぬるい言葉では到底片付けられない)
自らの指先が、彼の透き通るような銀糸の髪に触れる。
出会った当初、この肌の下に流れる魔力だけを資源として求め、感じていたはずの「邪魔者」という蔑みや、不毛な不信感は、もう今の俺の心には一欠片も、塵ほども残っていなかった。
俺は、世界から大罪人と糾弾されるこの孤独な男に、もはや救いようのないほど深く、狂おしいほどに惹かれている。その魂を、その存在のすべてを、渇愛している。
その熱い自覚が、夜の静まり返った塔の中で、激しい鼓動と共に確かな熱を帯びて、俺の心臓に深く深く、消えない呪いのように、あるいは祝福のように刻み込まれていった。
レリル、お前を連れ出し、この塔ごと、お前を憎む世界すべてから隠してしまいたい。そんな危険で甘美な衝動が、俺の理性という堤防を今にも決壊させようとしていた。
それは、俺にとって「義務」という言葉では到底拭いきれない、魂を削るような責め苦の時間となった。相変わらず、レリルは死線を彷徨うような凄絶な苦しみを見せ、全身を震わせ、最後には俺の腕の中で、糸の切れた人形のように力なく意識を失った。
ソファのクッションに深く沈み込む彼の体は、俺が毎日運び込んだ栄養のある食材のおかげで、以前よりは幾分か肉がついたように見える。だが、それでも抱き上げれば驚くほどに軽く、まるで中身をすべて吸い取られた空蝉のようだ。
魔石への膨大な魔力注入。それは、魔物の脅威からこの過酷な極北の領地を守り抜くために、決して欠かすことのできない神聖かつ不可避な儀式だ。だが、その代償として、目の前のたった一人の男がこれほどまでに削り取られ、ボロ布のように成り果てる姿を特等席で見せつけられていると、自分がこの世で最も卑劣で、救いようのない残虐なことをしているような、耐え難い自己嫌悪が津波のように押し寄せてくる。
「……俺は、この地の領主でありながら。お前に、これほどの苦痛を与えること以外、何一つ救いを与えてやれないのか」
最近の彼は、少しずつではあるが、俺に対して多彩な表情を見せてくれるようになっていた。
呆れるほど毎日のように通いつめる俺に、困ったような溜息をつきながらも、窓の外を見つめて帰りを待ち、不器用ながらに夕食を用意して待っていてくれるあの細い背中。俺のとりとめのない話に、ふっと雪解けの春のように儚げに笑う、あの奇跡のような瞬間。
それらを目に焼き付けるたびに、俺は自分の中の凍てついていた心臓の最奥が、柔らかな、けれど鮮烈な光で満たされていくのを感じていた。
だが、現実はどこまでも冷酷で無慈悲だ。俺がどれほど彼に尽くそうとも、この手で贅沢な品を与えようとも、月に一度、俺自身の手で彼から命の輝きを強引に奪い取らなければならない。守りたいと願うこの手で、彼を壊し続けている。その耐え難い矛盾が、俺の正気をじりじりと、音を立てて焼き焦がしていく。
俺は眠り続けるレリルを、今一度、自分の胸の中に押し潰さんばかりの力で強く抱きしめた。
腕の中に収まる、この折れそうなほど小さな、けれど確かに拍動している温もりを、何が何でも守り抜きたい。二度と、誰の手にも、この不条理な運命にさえも渡したくない。
(……これは、もう「庇護欲」などという、生ぬるい言葉では到底片付けられない)
自らの指先が、彼の透き通るような銀糸の髪に触れる。
出会った当初、この肌の下に流れる魔力だけを資源として求め、感じていたはずの「邪魔者」という蔑みや、不毛な不信感は、もう今の俺の心には一欠片も、塵ほども残っていなかった。
俺は、世界から大罪人と糾弾されるこの孤独な男に、もはや救いようのないほど深く、狂おしいほどに惹かれている。その魂を、その存在のすべてを、渇愛している。
その熱い自覚が、夜の静まり返った塔の中で、激しい鼓動と共に確かな熱を帯びて、俺の心臓に深く深く、消えない呪いのように、あるいは祝福のように刻み込まれていった。
レリル、お前を連れ出し、この塔ごと、お前を憎む世界すべてから隠してしまいたい。そんな危険で甘美な衝動が、俺の理性という堤防を今にも決壊させようとしていた。
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