虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨

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第3章

第71話:守護心

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 魔石化の提案をあの夜、激昂と共に撥ねつけて以来、俺は彼とどう接すればいいのか、その正解を完全に見失っていた。 彼を失いたくない、あの温かな灯火のような命を冷たい石に閉じ込めたくないという一心で拒絶した。だが、その後に残ったのは、耐えがたいほどに気まずい沈黙と、日に日に痛々しくやつれていく彼の姿だった。

「……忙しいから」

 そんな、子供じみた、そして卑怯な言い訳を盾にして、俺は塔へ向かう時間を無理やり減らした。
  そうでもしなければ、今にも折れてしまいそうな彼の細い肩を力任せに抱きしめて、領主としての理性も、民を背負う重責も、そのすべてを窓の外へ投げ捨ててしまいそうだったからだ。彼を守りたいという欲望が、俺の中で怪物のように肥大し、制御不能になりつつあった。

 それに対し、館の従者や騎士たちは、俺の足が塔から遠のいたのを見て「閣下がやっとあの邪悪な魔法使いの呪縛から目を覚まされた」と、あからさまに、そして浅ましく安堵の表情を見せている。 それが、今の俺には何よりも反吐が出るほど不快で、吐き気を催すほどの嫌悪感を与えていた。

(俺は騙されてなどいない。この領地の、この街の、お前たちの平穏な生活が保たれているのは、他でもない。彼が毎月、その小さな命を削って捧げている魔石の恩恵があるからではないか。なぜ、誰一人として、そのあまりにも明白な真実を、彼の痛みを、理解しようとさえしない……!)

 塔という名の鳥籠から一歩も外へ出られず、理由も分からずただ恐れられ、冷たい石壁の中で息を潜めて生きる彼。その彼に押し付けられた「稀代の悪人」という理不尽なレッテルから、どうすれば彼を救い出し、その呪縛を解いてやれるのか。 過去の大罪を帳消しにするほどの功績を捏造すべきか、それとも。

 名誉を回復し、せめてこの館の陽の当たる庭くらいは、誰の視線も気にせず自由に歩かせてやりたい。 そんな、出口のない思考をぐるぐると、暗い海の底で泳ぐように巡らせ続ける毎日が、狂おしく続いていた。

 俺が彼の名誉を守る方法を必死に模索している裏で、彼を愛護することそのものが、民衆にとっての「裏切り」と映っていること。 そして、その歪んだ正義感が、一気に爆発しようとしていることに、俺はまだ気づけていなかった。
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