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第4章
第112話:崩れゆく少年
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そして、レリルの心は、僕たちが気づかないうちに、とうの昔に限界を迎えていた。 魔法の授業の後も一人で冷たい地下室に残され、薬物投与や魔術刻印の実験に近い過酷な訓練を強制されているという噂を耳にしたとき、僕は自分の無力さに吐き気がした。
読み書きを教えるために久しぶりに向き合ったレリルの瞳からは、かつての純粋な輝きが完全に失われ、その目元には消えない深い隈が、まるで死の影のように刻まれていた。
「レリル……今日はもう、読み書きはやめておこう。少しだけ、僕に寄りかかって目を閉じて休んだほうがいい」
僕が心の底から心配して、震える彼の手をそっと握ろうとした、その瞬間だった。
レリルは弾かれたように僕の手を激しく振り払った。その瞳に宿っていたのは、僕が今まで一度も見たことのない、剥き出しの「拒絶」と、逃げ場を失った獣のような「恐怖」だった。
「……触るな! ……僕に、これ以上構わないでくれ!」
「レリル……? どうしたんだ、僕はただ……」
「ルクシオ、君はいいよな。……時間が来れば、温かい食事が待つ自分の家に帰れるんだから。僕みたいに、暗い部屋で死ぬまで魔力を搾り出せと、心臓を握り潰されるような思いをすることもない。……君にとっての魔法は、才能を褒めてもらうための『遊び』だろうけど、僕にとっては……僕を焼き尽くすだけの『呪い』なんだ!」
その声は激しく震え、僕への憎しみと、どうしようもない自己嫌悪、そして悲しみが泥沼のように混ざり合っていた。
彼は気づいてしまった。自分に注がれる大人たちの熱い眼差しが、決して愛情などではなく、効率の良い「家畜」や「兵器」を値踏みするような、醜悪な欲望であることを。そして、その絶望を共有できない僕が、彼にとって一番残酷な存在になってしまったことを。
それからのレリルは、壊れかけた自分を守るために、必死に鋭い「牙」を剥くようになった。
誰に対しても高圧的で、触れるものすべてを傷つけるような攻撃的な態度を取ることで、剥き出しになった内側の脆い心を隠そうとしているように見えた。
急速に孤立していく彼を、どうしても救い出したくて、僕は取り憑かれたように魔法工学の研究に没頭し始めた。
(僕が、僕がもっと魔法の研究をして、レリルに並ぶ魔力を生み出せるような、あるいは彼の力を危険じゃないことに利用する価値が見出されるような魔道具を作れば……。そうすれば、レリルはもう魔力を出さなくて済む。レリルが「兵器」として扱われることもなくなるはず。また、一緒に文字を書いて笑える日が来るかもしれない)
読み書きを教えるために久しぶりに向き合ったレリルの瞳からは、かつての純粋な輝きが完全に失われ、その目元には消えない深い隈が、まるで死の影のように刻まれていた。
「レリル……今日はもう、読み書きはやめておこう。少しだけ、僕に寄りかかって目を閉じて休んだほうがいい」
僕が心の底から心配して、震える彼の手をそっと握ろうとした、その瞬間だった。
レリルは弾かれたように僕の手を激しく振り払った。その瞳に宿っていたのは、僕が今まで一度も見たことのない、剥き出しの「拒絶」と、逃げ場を失った獣のような「恐怖」だった。
「……触るな! ……僕に、これ以上構わないでくれ!」
「レリル……? どうしたんだ、僕はただ……」
「ルクシオ、君はいいよな。……時間が来れば、温かい食事が待つ自分の家に帰れるんだから。僕みたいに、暗い部屋で死ぬまで魔力を搾り出せと、心臓を握り潰されるような思いをすることもない。……君にとっての魔法は、才能を褒めてもらうための『遊び』だろうけど、僕にとっては……僕を焼き尽くすだけの『呪い』なんだ!」
その声は激しく震え、僕への憎しみと、どうしようもない自己嫌悪、そして悲しみが泥沼のように混ざり合っていた。
彼は気づいてしまった。自分に注がれる大人たちの熱い眼差しが、決して愛情などではなく、効率の良い「家畜」や「兵器」を値踏みするような、醜悪な欲望であることを。そして、その絶望を共有できない僕が、彼にとって一番残酷な存在になってしまったことを。
それからのレリルは、壊れかけた自分を守るために、必死に鋭い「牙」を剥くようになった。
誰に対しても高圧的で、触れるものすべてを傷つけるような攻撃的な態度を取ることで、剥き出しになった内側の脆い心を隠そうとしているように見えた。
急速に孤立していく彼を、どうしても救い出したくて、僕は取り憑かれたように魔法工学の研究に没頭し始めた。
(僕が、僕がもっと魔法の研究をして、レリルに並ぶ魔力を生み出せるような、あるいは彼の力を危険じゃないことに利用する価値が見出されるような魔道具を作れば……。そうすれば、レリルはもう魔力を出さなくて済む。レリルが「兵器」として扱われることもなくなるはず。また、一緒に文字を書いて笑える日が来るかもしれない)
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