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スークニキ

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地域貢献型 壁尻部・年中無休で営業中! 目指せ、社会貢献ポイント全国No.1!

地域貢献型 壁尻部・年中無休で営業中! 目指せ、社会貢献ポイント全国No.1!起

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俺―――不知火 隼人(しらぬい はやと)の人生は、白球を投げるためにあると、本気でそう信じていた。

硬いマウンドの感触、指先に神経を集中させて握り込むボールの縫い目、そして俺のサインに頷く女房役・智也(ともや)の頼もしいミット、それら全てが俺の世界を構成していて、150キロに迫る俺のストレートがバッターの手元でホップして空を切らせる、その瞬間のためだけに俺は血の滲むような努力を続けてきたんだ。

名門・日の本(ひのもと)高校野球部、不動のエース。それが俺のアイデンティティであり、誇りそのものだった。

キャプテンで四番の剛(ごう)さんが、俺の投げたボールを軽々とフェンスの向こうまで運ぶ豪快なバッティング音を聞きながら、ああ、このチームなら、この仲間となら、間違いなく今年の夏は甲子園に行けるって、確信にも似た予感が身体の芯を熱くさせていたんだ。

―――そう、ほんの数日前までは。

「……というわけで、本日より、野球部は無期限の活動停止とする」

教頭の冷たい声が、整列した俺たちの頭上から容赦なく降り注いだ瞬間、俺の頭の中は完全に真っ白になった。
活動停止? 無期限? なんで? 俺たちの夏は? 甲子園は? 疑問符ばかりがぐるぐると渦を巻いて、目の前の現実がまるで出来の悪い冗談みたいに感じられた。

原因は、あまりにも馬鹿げていた。
先日、部室で行われた「新発売のストロベリー風味プロテイン、誰が一番早く一気飲みできるか選手権」。
ただの部員内の悪ふざけ、筋肉バカの剛さんが発起人となったくだらないお祭り。それが運悪く巡回中の教頭に見つかり、「たるんどる!」「神聖なる部活動をなんだと思っているんだ!」と大問題に発展しちまったってわけ。

馬鹿らしい、くだらなすぎる。でも、現実は非情だった。
俺たちが汗と涙を染み込ませてきたグラウンドには、無情にも「関係者以外立ち入り禁止」のテープが張られ、俺の右腕は、その有り余るエネルギーのやり場を失って、虚しく疼くだけだった。

「……これから、どうすんだよ…」

活気を失い、どんよりと澱んだ空気が漂う部室。誰もが下を向いて、絞り出すような声すら上げられないでいた。
俺も、ただ窓の外に広がる、誰もいないグラウンドを眺めることしかできない。あそこが、俺の立つべき場所だったのに。今すぐにでもマウンドに駆け出して、思い切りボールを投げ込みたい衝動を、奥歯を噛み締めて必死に堪える。

「俺のせいで…すまん…」

絞り出した剛さんの声は、いつもの自信に満ちたものとは似ても似つかないほど弱々しくて、その声が、俺たちの絶望をさらに深く抉った。

その、重苦しい沈黙を切り裂いたのは、勢いよく開け放たれた部室のドアの音だった。

「うっす! 全員いるな!」

そこに立っていたのは、俺たちの監督、鬼瓦(おにがわら)先生。その名の通り、鬼のように厳しく、そして誰よりも野球を愛する熱血漢だ。
いつもなら檄の一つや二つが飛んでくるところだけど、今日の監督は、その険しい顔の中に、どこか奇妙な光を宿していた。

「お前たちに、朗報だ」
「「「!?」」」

朗報、という言葉に、死んだ魚のような目をしていた部員たちの顔が一斉に上がる。

「活動停止を、解除する方法が見つかった」

監督のその一言は、暗闇に差し込んだ一筋の光だった。
「ほ、本当ですか監督!」「どうすればいいんですか!?」
前のめりになる部員たちを、監督は太い腕を組んで制する。

「うむ。そのためには、地域への『社会貢献ポイント』を、一定数稼がねばならん」
「社会貢献…ポイント?」
隣にいた智也が、冷静な声で聞き返した。こいつはいつもそうだ。どんな時でも状況を分析しようとする、俺の頼れる女房役。

「そうだ。ゴミ拾い、老人ホームの慰問、地域の見回り…そういった奉仕活動を行うことでポイントが加算され、目標値に達すれば、お前たちの活動停止処分も解かれるというシステムだ。学校側と交渉し、この条件を取り付けてきた」
「おお…!」と、部室に希望のどよめきが広がる。

なんだ、そんなことか。ゴミ拾いだろうが何だろうが、いくらでもやってやる。それで俺たちの夏が戻ってくるなら、安いもんだ。
誰もがそう思った、その時だった。

「だが、ゴミ拾いなんぞをチマチマやっていては、夏の予選には到底間に合わん」
監督はそう言うと、持っていた分厚いファイルをバサリと机の上に広げた。
「そこでだ。俺が、最も効率よく、かつ地域への貢献度が絶大とされる、究極の社会貢献活動を見つけてきたぞ!」

自信満々に、監督が指し示したパンフレット。
そこには、爽やかな青空と笑顔の地域住民たちの写真を背景に、デカデカと、力強い明朝体でこう書かれていた。

『地域貢献型 公衆便所サービスのご案内』

……は?
公衆便所? サービス?
俺の思考が、完全にフリーズした。部員たちの間にも、さっきまでの希望に満ちた空気とは全く違う、困惑と疑念に満ちたざわめきが広がる。

「か、監督…これって、どういう…?」
剛さんが、恐る恐る尋ねる。
監督は、フンッ、と誇らしげに鼻を鳴らした。

「言葉の通りだ!地域の公衆衛生に貢献するため、ボランティアが『便所』そのものを提供する、画期的なシステムだ!今や全国的に有名な社会貢献活動だからな、知らんのかお前ら!」

いや、知らねえよ。生まれてこの方、聞いたこともねえよ。
パンフレットをよく見ると、小さな文字で説明が添えられていた。

『ご自宅や施設の壁に専用の穴を設置し、ボランティアの方がその穴を通して臀部を提供することで、簡易的な男性用便所として機能します。プライバシーは完全に保護され、安全かつ衛生的に地域へ貢献できます』

臀部を提供…?
簡易的な、男性用便所…?

俺の脳が、ようやくその言葉の意味を理解し始めた瞬間、全身の血の気が引いていくのを感じた。
つまり、アレだ。壁に開いた穴から、ケツを突き出して、見ず知らずの男の、その…ちんぽを、自分のアナルに受け入れろってことか…?

「なっ…!?」
「冗談だろ…!?」
「ケツを…便器に…?」

部室は、阿鼻叫喚の渦に包まれた。
無理だ。絶対に無理だ。俺は、甲子園を目指すエースピッチャーだぞ? 全てを懸けて鍛え上げてきたこの身体を、そんな、そんな屈辱的な行為のために使えるわけがない…!

俺のプライドが、自尊心が、警鐘を乱れ打ちにする。
剛さんも顔面蒼白でワナワナと震えているし、冷静なはずの智也でさえ、眼鏡の奥の瞳を大きく見開いて絶句している。

だが、そんな俺たちの絶望をよそに、鬼瓦監督は一人で燃え上がっていた。

「いいか、よく聞け!この『壁便所』は、利用者一人当たりの社会貢献ポイントが非常に高い!他の奉仕活動とは比べ物にならん!部員全員でローテーションを組んで提供すれば、計算上、たったの二週間で目標ポイントに到達できる!」
「に、二週間…!?」

その言葉は、悪魔の囁きだった。
二週間。たった二週間の我慢で、俺たちの夏が、甲子聞への道が、再び開かれる…?

「考えてみろ!お前たちのその鍛え抜かれた尻!その臀筋は、並のボランティアのそれとは比べ物にならんはずだ!お前たちの引き締まった極上の尻(べんき)は、必ずや地域住民から絶大な支持を得られるに違いない!これはもはや、お前たちにしかできない社会貢献なのだ!」

監督、もう「便器」って言っちゃってるじゃねえか…!
しかも何だよ、極上の尻って…!

でも、監督の熱弁は、絶望に沈んでいた俺たちの心に、ほんの少し、ほんの少しだけ、おかしな光を灯し始めていた。
そうだ…このまま何もしなければ、俺たちの夏は、確実に終わる。
甲子園のマウンドに立つことも、剛さんのホームランに沸くことも、智也とバッテリーを組むことも、もう二度とできないんだ。
それと、二週間の「壁便所」とを、天秤にかける…?

「……やるしか、ねえのか…」

誰かが、ぽつりと呟いた。
その声に、みんながハッとする。

そうだ。選択肢なんて、もうないのかもしれない。
目の前には、二つの道。
プライドを守って、夢を諦める道。
プライドを捨てて、ケツを差し出して、夢を掴みに行く道。

「……俺たちの夏を…」
キャプテンの剛さんが、震える声で、しかしはっきりと顔を上げた。その目には、いつもの闘志に近い光が戻っていた。
「俺たちの夏を、こんなくだらないことで、終わらせてたまるかよ…!」

その声が、起爆剤だった。
「そう…だよな…」
「甲子園に、行きたい…!」
「ケツの一つや二つ…!」

部員たちの間で、徐々に、しかし確実に、覚悟が決まっていく。
俺は、まだ迷っていた。
俺の、この身体は、野球のためにある。最高のピッチングをするために、ストイックに管理してきた、いわば聖域だ。
その聖域に、見ず知らずの男の汚らわしいモノを受け入れる…?
想像しただけで、吐き気がした。

だが、その時。
脳裏に、マウンドから見た光景が鮮やかに蘇った。
満員のスタンド、鳴り響くサイレン、突き刺さるような打者の視線、そして、俺の右腕から放たれる、魂を込めた一球。
あの場所に、もう一度立ちたい。
いや、立たなければ、俺が俺である意味がない。

「……甲子園に…」
俺の口から、無意識に言葉が漏れた。
「甲子園に行けるなら…俺は…」

俺の呟きは、最後のダメ押しになったようだった。
全員の視線が、俺に集まる。エースである俺の決断を、みんなが待っていた。

俺は、一度強く目を閉じ、そして、開いた。

「…やります」

俺のその一言で、全てが決まった。
キャプテンの剛さんが、ぐっと拳を握りしめ、まるで試合前の円陣のように、叫んだ。

「よし、決まりだ!いいかお前ら!俺たちの目標は一つ!」
剛さんは、部室に掲げられた『目指せ!甲子園制覇!』というスローガンを、バッと指差す。
そして、今度は自分自身の尻を、バンッ!と力強く叩いた。

「俺たちのケツで、夏を取り戻すんだ!」

その、あまりにも馬鹿げていて、情けなくて、でもどこか悲壮な決意に満ちた雄叫びに、俺たちは、力なく、しかし確かに、頷き返した。

こうして、俺たち日の本高校野球部の、前代未聞の、そして最高に淫らな社会貢献活動が、静かに幕を開けたのだった。


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