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1章 目撃者
一話
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カフカな俺は入学して早々に根暗な友達が出来ていた。
「おはよ。藤澤くん」
コイツは命革高校1年生の大池励仁
授業が終わると、俺は美術室へ向かった。
「兼氏先生、持ってきました。これ」
部活申請の紙を渡す。
「ありがとう、美術部に決めたのね。美術の先生として嬉しいわ。早速部活に参加しましょうか」
美術室の中はガラーンとして物音ひとつしていない。
寂しささえ感じてしまう。
「ああ、藤澤くん!なんだ同じ部だったんだな」元気に、且つボソボソと喋るその声は大池だった。
コイツは気配という物を持ち合わせていないのか?全く気づかなかったぞ。
お、座らないの?と言われたので美術室の隅にあった椅子を持ってきて座る。
「藤澤は絵とか描くの?」
「俺はあんまり描かないけど、兄が美術の大学目指してたんだ」
「そうなんだ。じゃあ藤澤君もセンスあるね」
「そうかな」
「うん、、」
3年前、兄は美術系の大学を目指していた。しかし試験に落ちた。
次の年も受けたが落ち、今は「三度目の正直」と意気込んでいるらしいが本当だろうか?という疑問の気持ちが大きい。
何しろ兄は引きこもっているのだ。
食事と風呂以外、自室から出ているのを見た事がない。兄とは生活リズムが違うので1日も見ない日もある。
最早生きているのかどうかさえ疑ってしまう。
前に1度、こっそり部屋を覗いたことがある。絵を描いていた。画家とまではいかないが、それなりに上手い絵だった。
そういえばここ1年程、ほとんど彼の生活音を聞いていない。部屋にいて激しく動かないとしても、歩いたり物を落としたりすれば物音はする筈だ。
それなのに、「1度も」だ。
ここ1年全く気配がしない。
本当にずっと家に居るのだろうか?
だが、週一回のランニング以外は外に出ているのを見た事がない。
「藤澤。ふ、藤澤くん?」
大池は筆を止めてこっちを見ていた。
「何?」
「何って、1分くらい静止して考え事に浸ってたから」
「そうか、ああごめん。なんでもないよ」
こんな重い、というか家庭の問題を話したくはない。
「あ、何かあったら俺が相談聞くよ。友達だから」
「友達」
「そう、友達」
それから雑談をしていたら、6時になっていた。
俺はいつもの道を通って帰宅する事にした。
「友達、か」
友達が成立する瞬間を垣間見た気がして何故か嬉しくなった。
思わず足を止める。
「お、赤信号か」
ボーッと歩いていたので横断歩道を赤信号で渡りそうになっていた。
ブオォォンと大きな加速音が左側から聞こえて来た。それは警察でも救急車でもスポーツカーでもなかった。
軽自動車だ。
不幸中の幸いか、車の通りは少なかった。
車は他の車とぶつかる事無く直進する。
バコン
それを境に車は止まった。
肉を地面に叩きつけた様な鈍い音が耳に響いた。その後何か動物を轢いたのかアスファルトに血が飛び散っているのが見えた俺は俺は、目を疑った。
俺は目がいいから見間違えるとかそういう事は無いだろうそして、俺は数メートル先でも誰だかわかる程に目がいい。だからこの光景がハッキリと見えた。
10メートル先だろうか15メートル先だろうか。その車が人を轢いていたのがハッキリと目に映った。
いや、どうでもいいそんないや、え、何?が、起こっている?理解が追いつかない俺は見たのか、見えたのか?間違いなくそれは兄だった。
車の窓から覗けるそれは兄の顔だった。
車が動き出した。
後ろにバックしようとしている。
一部始終を見ていた数人が悲鳴をあげているのが聞こえた。
車は何事も無かったかのように走って行った。
「、、、兄ちゃん?」
まさか俺の兄が車で人を轢くだとは思いもしなかった。しかもそのまま逃げていった。
警察が捕まえられるのかどうかは分からないが、少なくとも目撃者は数名いる訳だから逮捕される可能性だってゼロではない。
そもそもなんで兄が車を運転するのだ。
息を切らして自宅へと着いた。
俺は兄の部屋を見てみる事にした。
「おはよ。藤澤くん」
コイツは命革高校1年生の大池励仁
授業が終わると、俺は美術室へ向かった。
「兼氏先生、持ってきました。これ」
部活申請の紙を渡す。
「ありがとう、美術部に決めたのね。美術の先生として嬉しいわ。早速部活に参加しましょうか」
美術室の中はガラーンとして物音ひとつしていない。
寂しささえ感じてしまう。
「ああ、藤澤くん!なんだ同じ部だったんだな」元気に、且つボソボソと喋るその声は大池だった。
コイツは気配という物を持ち合わせていないのか?全く気づかなかったぞ。
お、座らないの?と言われたので美術室の隅にあった椅子を持ってきて座る。
「藤澤は絵とか描くの?」
「俺はあんまり描かないけど、兄が美術の大学目指してたんだ」
「そうなんだ。じゃあ藤澤君もセンスあるね」
「そうかな」
「うん、、」
3年前、兄は美術系の大学を目指していた。しかし試験に落ちた。
次の年も受けたが落ち、今は「三度目の正直」と意気込んでいるらしいが本当だろうか?という疑問の気持ちが大きい。
何しろ兄は引きこもっているのだ。
食事と風呂以外、自室から出ているのを見た事がない。兄とは生活リズムが違うので1日も見ない日もある。
最早生きているのかどうかさえ疑ってしまう。
前に1度、こっそり部屋を覗いたことがある。絵を描いていた。画家とまではいかないが、それなりに上手い絵だった。
そういえばここ1年程、ほとんど彼の生活音を聞いていない。部屋にいて激しく動かないとしても、歩いたり物を落としたりすれば物音はする筈だ。
それなのに、「1度も」だ。
ここ1年全く気配がしない。
本当にずっと家に居るのだろうか?
だが、週一回のランニング以外は外に出ているのを見た事がない。
「藤澤。ふ、藤澤くん?」
大池は筆を止めてこっちを見ていた。
「何?」
「何って、1分くらい静止して考え事に浸ってたから」
「そうか、ああごめん。なんでもないよ」
こんな重い、というか家庭の問題を話したくはない。
「あ、何かあったら俺が相談聞くよ。友達だから」
「友達」
「そう、友達」
それから雑談をしていたら、6時になっていた。
俺はいつもの道を通って帰宅する事にした。
「友達、か」
友達が成立する瞬間を垣間見た気がして何故か嬉しくなった。
思わず足を止める。
「お、赤信号か」
ボーッと歩いていたので横断歩道を赤信号で渡りそうになっていた。
ブオォォンと大きな加速音が左側から聞こえて来た。それは警察でも救急車でもスポーツカーでもなかった。
軽自動車だ。
不幸中の幸いか、車の通りは少なかった。
車は他の車とぶつかる事無く直進する。
バコン
それを境に車は止まった。
肉を地面に叩きつけた様な鈍い音が耳に響いた。その後何か動物を轢いたのかアスファルトに血が飛び散っているのが見えた俺は俺は、目を疑った。
俺は目がいいから見間違えるとかそういう事は無いだろうそして、俺は数メートル先でも誰だかわかる程に目がいい。だからこの光景がハッキリと見えた。
10メートル先だろうか15メートル先だろうか。その車が人を轢いていたのがハッキリと目に映った。
いや、どうでもいいそんないや、え、何?が、起こっている?理解が追いつかない俺は見たのか、見えたのか?間違いなくそれは兄だった。
車の窓から覗けるそれは兄の顔だった。
車が動き出した。
後ろにバックしようとしている。
一部始終を見ていた数人が悲鳴をあげているのが聞こえた。
車は何事も無かったかのように走って行った。
「、、、兄ちゃん?」
まさか俺の兄が車で人を轢くだとは思いもしなかった。しかもそのまま逃げていった。
警察が捕まえられるのかどうかは分からないが、少なくとも目撃者は数名いる訳だから逮捕される可能性だってゼロではない。
そもそもなんで兄が車を運転するのだ。
息を切らして自宅へと着いた。
俺は兄の部屋を見てみる事にした。
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