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第15話 止まぬ心音
しおりを挟む胸が脈打つ・・ドキドキが止まらない。
自分の部屋に戻り、冷静になろうとする。けど、だめだ・・・頭はさっきのことが駆け巡る。
麻樹緒は私になにをした?
後ろから抱きしめられて・・・首筋にキスされた・・・。
『うわーーっ』
ベッドに横たわりながら、思わず両手で顔を覆う。そんなこと初めてされた。しかも兄に。
冗談かもしれない。麻樹緒はポーカーフェイスだから・・・。そう肯定させよう。そうしよう。
ふと首筋に手を当てた。まだ残る唇の感触・・・。どうして麻樹緒はこんなことしたんだろう。
冗談だとしても驚かせすぎだし。クールな麻樹緒もああいうことするんだ。
”男の人”なんだ。
窓から覗く月を見ながら、鼓動を落ち着かせる。
あんな驚くことをされて、そんなに嫌な気持ちではないのは、なぜなんだろう。
”兄”と”妹”の関係が当たり前だと思ってきた。これからもそうだろうと思っていた。
———でも変わっていくのかもしれない。
そんな予感がした。
************************
やっぱりよく眠れなかった。
昨夜の麻樹緒とのことがぐるぐる頭を駆け回っていた。
ベッドから身を起こし、学校の制服に着替える。
どんな顔して会えばいいんだろう。
なにもなかったかのように、いつもどおり「おはよう」と挨拶するのか。
目も合わせず、朝食をとるのか。(感じ悪いな)
これからも一緒にひとつ屋根の下で暮らすんだし、普段通りに接するか。それによそよそしいと遼太郎に勘付かれるかもしれないし。
よし!
意気込んで部屋のドアを開けてダイニングへ向かう。するとすでに麻樹緒が朝食をとっている姿が目に入った。
うひゃー。なんか緊張する。なんて言ったらいい?どんな顔で接したらいい?
そんなことを考えながらダイニングの入り口前で足踏みするように躊躇していた。
「おはよ!凛那、どうかした?」
遼太郎が2階から下りてきた。
この挙動不審を見られてしまった!
「おはよう。べ、べつに~」
余計におかしい、私!
遼太郎に押し出されるようにダイニングへ入ると麻樹緒と目が合った。
どっきーん!どうしよ・・・
「おはよう凛那」
「おはよう!麻樹緒!」
動揺からか、いつもより元気な挨拶になってしまった。。
着席し、ゆで卵を取る。すると手からスルッと抜け、テーブルの上を転がった。
落ち着け!私。
「ほいよ」
隣に座る遼太郎が転がったゆで卵をお皿の上に置く。
「私、放課後部活だ~がんばろう」
動揺を途切れされるように話題をふる。
「コンクールに向けて練習が多くなるね」
麻樹緒はいつも通りの口調で言った。まるで何事もなかったかのように。表情だって冷静だ。もしかしてドキドキしたり、緊張したり、昨日のことグルグル考えてるのは私だけ??
麻樹緒にしたら、本当に冗談だったのかもしれない。。
「う、うん。私アルトサックスやるんだ」
麻樹緒の顔が直視できない。ウインナーをフォークで刺しながらチラ見していた。
「お、それは凄い。頑張れよ、応援してる」
「ありがと」
うん?視線を感じる。その先は横にいる遼太郎だ。
「おかしい」
「え?」
振り向くと頬杖をつきながらゆで卵を頬張り、私と麻樹緒を見比べるように見ている。
「2人の様子がおかしい。凛那はきょどってるし、麻樹緒は冷静を装ってる」
びくーーー!!
「おまえの気のせいだろ」
「そうなのかなー?」
「そう、だよ」
遼太郎の勘の鋭さにビクビクして、そう絞り出すように言うのが精いっぱいだった。
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