アニ’ズ

塔野 瑞香

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第14話 想い

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どのくらいの沈黙があったのだろう。

公園に佇む俺と五十嵐いがらしの周囲を子供達がはしゃぎ声を上げながら駆け回る。

「…あ、あの答えられなかったらいいの」

五十嵐が沈黙を遮るように切り出した。

「じゃあ電車来るから行くね!」

そう言って足早に公園を抜け駅へ向かって行った。

五十嵐の質問に何も答えられなかった。
どうしてだ?
凛那りんなの顔は確かに浮かんだ。
それは妹としてなのか、それともーー。

答えはたぶんとてもシンプル。
だけどそれには気付きたくない自分がいる。

出会ってから今まで兄と妹という関係を築いてきた。
その関係性を壊すわけにはいかない。


*********

自室から1階へ降りると、脱衣所の方からドライヤーの音が聞こえる。一番最後に入浴するのは、だいたい凛那だ。きっと髪の毛を乾かしているのだろう。

冷蔵庫から水のペットボトルを取り出し飲みながら、いつも以上に脱衣所が気になった。凛那がいる時は、気を遣って行かないようにしている。それなのに足はそっちへ向かう。

だめだ・・・

そっと脱衣所を見やると案の定、パジャマを着た凛那がドライヤー片手に髪を乾かしていた。
すると視線に気付いたのか、そろそろとこっちへ視線を移す。

まずい。

麻樹緒まきお!びっくりした。なに?歯みがきするの?」

驚いてはいたが、怒られなかった。

「あ、そうそう」

俺はとっさに嘘を言った。

「どうぞ」

凛那はドライヤーのスイッチを切って、立ち去ろうとした。

あぁ、もう理性が効かない。

とっさに俺は凛那を背後から抱きしめてしまっていた。シャンプーのいい香りがする。
凛那は固まっているのか動かない。

「・・・麻・・樹緒?」

か細く凛那が呟いた。

長年、気付かないふりフリをしていた気持ちは、もう限界なのか・・・。
このままでいたい。

肩まである髪の毛に指を通し、その先にある首筋にキスをした。

「っ麻樹・・・!?」

凛那は身をよじり腕の中から離れた。困惑し驚いた表情。それはそうだ。

「・・・凛那、ごめん」


『好きだよ』

そう喉まで出かかった。
素直にそう言えたらいいのに。

凛那は無言のまま顔を赤らめ、俺と視線は合わせず、足早に2階へ上がって行った。


なんてことをしてしまった・・・。
冷静沈着なこの俺が。
明日から顔を合わせてくれないかもしれない。

自分の行いで、これまでの”兄”と“妹”の形が崩れていく予感がした。

そして自分の想いが明確にされた日だった。


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