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第2章
22.厄介な虜囚③
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エイクに、高く評価してはいないと言われてしまったセレナだったが、彼女にも言い分はあった。
彼女は“猟犬の牙”の情報収集の長になった後、自分の能力を全く発揮出来ていなかったと思っていた。
もともと彼女は、3年前に当時ギルド長だったカルロスによって、僅か17歳にして情報収集の長に大抜擢されていた。
当然大きな反発があった。
彼女がカルロスの養女だったため、明らかな情実人事と思われたからだ。
当時セレナには、それらの反発を実力で跳ね返す自信があった。
しかし、その直後にカルロスが倒れて意識不明になってしまったのはさすがに想定外だった。
以後彼女は、カルロスの身と自分の立場を守るために全ての力を費やすことになる。
そしてカルロスは、セレナたちの看病のかいもなく1年ほど前に息を引き取った。
カルロスの跡を継いだトティアは、あまりにも若くして幹部に抜擢されたセレナが気に食わなかったのか、それともセレナが、カルロスが生きている限り次の長の就任は認められないと強硬に主張していた事への意趣返しだったのか、情報収集部門から人を引き抜いたり予算を減らしたりといった嫌がらせを行った。
もちろんセレナは抗議した。
最終的には、自分が気に食わないならば、自分が役を降りて幹部から身を引くから、先代の頃と同じくらいの規模で情報収集を行うように進言した。
今のままでは目隠しをして馬車を全速力で走らせるほど危険だ、と訴えた。
しかし、セレナの訴えを泣き言と考え、彼女が苦悩するのを喜んでいたのか、進言は通らなかった。
他の幹部達もセレナを若輩者と侮りその言葉を真摯に聴こうとはしなかった。
その挙句の果てが、あの無様な最期だったわけだ。
セレナは“猟犬の牙”が“呑み干すもの”に敗れた最大の責任は、ギルド長トティアにあると思っていたし、自分の進言を無視した他の幹部らも同罪だと思っていた。
もしも彼らが目の前にいたならば、これを痛罵した事だろう。
しかし、実際に今目の前にいるエイクたちに、そのような事を言っても何の意味もない。
セレナは沈黙を守った。
エイクは話しを進めていた。
「だが、あなたの情報収集の能力がそれほど高くないとしても、少なくとも俺より上なのは間違いない。だったらそれだけでも意味はある。
それに、そうやって自分の失敗を自覚しているなら、成長する可能性はある。
カルロスという前のギルド長は中々の人物だったと聞いた。そのカルロスに見込まれていた才能に期待したい。
そして、情報収集を全部あなたに任せるつもりもない。
情報はすべての決断と行動の基礎になる生命線だ、それを今会ったばかりのあなただけに依存する気にはならない。他にも情報収集役を用意して、すりあわせを行って信憑性を確かめるつもりだ」
「……もし、その提案をお断りした場合、私にはどんな運命が待っているのかしら?」
セレナは慎重にそう確認した。
エイクは、そのセレナの声から、怯えの色を感じとりつつ答えた。
「何も非道な事をするつもりはない。
脅迫して無理やり働かせている人間の言葉なんてまるで信用できない。それじゃあさすがに意味がない。
一応、“猟犬の牙”の残党も残ってはいるから、そこに帰ってもらってもいい。ただ、その場合足を治してやる義理はないな」
「もうギルドには何の未練も思い入れもないわ。
それに残党というのが誰の事なのか大体想像はつくけれど、彼らが自分で動けなくなった私を保護するはずがない。
それどころか、また死んだ方がましという目に合わされるのが落ちでしょうね」
「そういうことなら、それは止めておこう。とはいっても、ずっと無駄飯を食べさせるつもりはないから、世話をしてもらえそうな貧民院でも探して、見つかり次第入ってもらうことにするか、そんなところだろう。そこから先のことまでは責任は持てない。
逆に、提案を受けてもらえれば、共通の敵と協力して戦えるという利点もある」
意味が分からず首をかしげるセレナに、エイクが説明を続けた。
「“呑み干すもの”の幹部の中で、レイダーという男だけ逃がしてしまった。
しかもその男は、まだこの街に留まっていて、“呑み干すもの”の残党を率いて盗賊ギルドの長の地位についているらしい。
俺はこいつも許すつもりはない。
奴はあなたにとっても敵だろ?」
その名を聞いたセレナは、表情を歪め、また両手の拳にきつく力を入れた。
エイクは少し間をおいてから続けた。
「許すつもりはない、とはいったが、絶対に自分の手で殺したいというほど思い入れが強いわけでもない。
誰か奴を憎む人間が奴を殺しても、別に構わないと思っている」
エイクは、今までに見せたセレナの態度から考えて、この提案は彼女に対して有効に働くのではないかと思っていた。
「……少しだけ、考えさせて」
そう言うと、セレナはしばし沈黙した。
エイクはその様子に僅かに苛立った。
彼は話しをしているうちにあることを思いつき、そのために直ぐに行動したいと思っていたからだ。
「どうしても今すぐ答えろとは言わない。返答は後で聞きに来る」
そう言って腰を上げたエイクに、セレナが告げる。
「いえ、そのお話しを受ける事に異存はないわ。
足を治してもらえるというだけで、ありがたいことだし、それだけでも選択の余地はないもの。
ただ、出来れば、他の報酬も検討して欲しいの。
もちろん、私があなたの役に立った場合の成功報酬でかまわないから」
エイクは席に座り、セレナに先を促す。
「あなたは、あの男、テオドリックより強いのよね」
「ああ、はるかに強い。奴と一対一で殺し合いをしたなら、千回やって千回とも俺が勝つ」
「それなら、私に戦い方を教えて欲しい」
訝しげに首をかしげるエイクに向かってセレナは続けた。
「私の身に起こった事を考えれば、私がもっと強くなりたいと思ったとしても、何もおかしい事はないでしょう?」
確かにその通りだった。
「そうか。俺は強くなりたいと思う事は、大切なことだと考えている。
強くなるための、手助けしてやりたいという気持ちもある。だが、俺は人に戦い方を教えた経験はない。
それに俺のような戦士の戦い方と、あなた方のような軽戦士の戦い方は違う。
俺では役に立たないだろう」
「私が教えて欲しいのは、戦士としての戦い方ではないわ。戦士に勝てる戦い方よ」
「……なら、俺の鍛錬に付き合うだけでも何か得るものはあるかもしれないな。俺も父の剣技をみるだけでも良い経験になっていた。俺の鍛錬に付き合う程度の事でよければ、了承する」
「十分よ。それでお願いするわ」
セレナは一呼吸おいてから、改めてエイクに尋ねた。
「それで、具体的にはどんな情報を必要としているのかしら」
彼女の様子は、大分落ち着いて来ているようだ。
「当面必要としているのは、王都の裏社会の動向だ。
この娼館の庇護者って立場になったおかげで、それを無視する事は出来なくなってしまった。
特に今言ったレイダーは、俺にとって都合の悪い行動を取る可能性が高い。こちらから攻めるにしても、とりあえず守りを固めるにしても、レイダーの動きには注意したい。
だが、俺が最も求めている情報は、父の死の真相だ。これについては、今は具体的な目標として、ローリンゲン侯爵家に近づいて情報を収集したいと思っている。
いきなりこれについて探れと言うつもりはないが、常にその事は意識しておいて欲しい。
それから、これはついで程度でいいが、強い武器や防具の情報もあれば助かる」
「分かったわ」
少しだけ言いよどんでから、セレナがまた話し始めた。
「……ご要望の情報とは違う内容だし、そもそも今更意味のないものでしょうけれど、今すぐ伝えられる情報が一つだけあるわ。聞いてもらえるかしら」
「もちろん。今言った事の他にも、伝えるべきだと思った情報は全て伝えて欲しい。意味があるかどうかはこちらで判断して、不要ならそう指示させてもらうだけだから、なんら問題はない」
「そう。それなら、あなたは“夜明けの翼”のジャックとテオドリックが、ネメトの神聖魔法を使えた事を知っていた?」
「……いや、知らなかった。もしそれが本当なら、何で奴らは俺との戦いでそれを使わなかったんだ?」
「初級程度の腕前しかなかったからでしょうね。
攻撃の手を止めてまでして、回復の魔法を使っても、回復量が少なくては意味がない。
攻撃魔法も技量が低ければ効果も薄い、相手の抵抗を打ち破らなければ、やはりほとんど意味がない。
それに彼らは、魔法を使いながら敵の攻撃を回避する技術も体得していなかったみたいだから、実戦で使える技量ではなかったのでしょう。
実際、彼らが私たちのギルドを襲ってきた時も、彼らは、戦闘中は神聖魔法を使っていなかったわ。でも、彼らが神聖魔法を使えたのは間違いのない事実よ。
つまり、“夜明けの翼”の連中は、少なくともその中のテオドリックとジャックは、利害関係だけでグロチウスたちとつるんでいたのではなくて、自分自身もネメトを信仰していた、というわけ。
でも、どっちにしても、もう終わってしまった事に意味はないわね」
エイクは、少し考えてから答えた。
「……いや、終わった事と言い切れるのか、まだ分からない。
“夜明けの翼”の事や“呑み干すもの”の事も可能なら調べてくれ」
「分かったわ」
その後、エイクとロアンは、セレナが捕らえられた後に起こったことを、改めて彼女に説明した。
更に具体的な報酬の額や経費の話になると、エイクは「細かい事はロアンと詰めてくれ」と言ってロアンに投げた。
そして、ロアンに向き直って告げた。
「俺に回せる金の3分の1までなら使うのを認める。それを踏まえて、具体的な活動の案をまとめて、後で報告してくれ。認められないと思う内容があったら訂正させてもらう。
とりあえず、話しがついたら、これを彼女に渡してくれ」
そう言ってエイクは、目を丸くしているロアンに身体欠損回復の霊薬を渡し、その場を後にした。
彼女は“猟犬の牙”の情報収集の長になった後、自分の能力を全く発揮出来ていなかったと思っていた。
もともと彼女は、3年前に当時ギルド長だったカルロスによって、僅か17歳にして情報収集の長に大抜擢されていた。
当然大きな反発があった。
彼女がカルロスの養女だったため、明らかな情実人事と思われたからだ。
当時セレナには、それらの反発を実力で跳ね返す自信があった。
しかし、その直後にカルロスが倒れて意識不明になってしまったのはさすがに想定外だった。
以後彼女は、カルロスの身と自分の立場を守るために全ての力を費やすことになる。
そしてカルロスは、セレナたちの看病のかいもなく1年ほど前に息を引き取った。
カルロスの跡を継いだトティアは、あまりにも若くして幹部に抜擢されたセレナが気に食わなかったのか、それともセレナが、カルロスが生きている限り次の長の就任は認められないと強硬に主張していた事への意趣返しだったのか、情報収集部門から人を引き抜いたり予算を減らしたりといった嫌がらせを行った。
もちろんセレナは抗議した。
最終的には、自分が気に食わないならば、自分が役を降りて幹部から身を引くから、先代の頃と同じくらいの規模で情報収集を行うように進言した。
今のままでは目隠しをして馬車を全速力で走らせるほど危険だ、と訴えた。
しかし、セレナの訴えを泣き言と考え、彼女が苦悩するのを喜んでいたのか、進言は通らなかった。
他の幹部達もセレナを若輩者と侮りその言葉を真摯に聴こうとはしなかった。
その挙句の果てが、あの無様な最期だったわけだ。
セレナは“猟犬の牙”が“呑み干すもの”に敗れた最大の責任は、ギルド長トティアにあると思っていたし、自分の進言を無視した他の幹部らも同罪だと思っていた。
もしも彼らが目の前にいたならば、これを痛罵した事だろう。
しかし、実際に今目の前にいるエイクたちに、そのような事を言っても何の意味もない。
セレナは沈黙を守った。
エイクは話しを進めていた。
「だが、あなたの情報収集の能力がそれほど高くないとしても、少なくとも俺より上なのは間違いない。だったらそれだけでも意味はある。
それに、そうやって自分の失敗を自覚しているなら、成長する可能性はある。
カルロスという前のギルド長は中々の人物だったと聞いた。そのカルロスに見込まれていた才能に期待したい。
そして、情報収集を全部あなたに任せるつもりもない。
情報はすべての決断と行動の基礎になる生命線だ、それを今会ったばかりのあなただけに依存する気にはならない。他にも情報収集役を用意して、すりあわせを行って信憑性を確かめるつもりだ」
「……もし、その提案をお断りした場合、私にはどんな運命が待っているのかしら?」
セレナは慎重にそう確認した。
エイクは、そのセレナの声から、怯えの色を感じとりつつ答えた。
「何も非道な事をするつもりはない。
脅迫して無理やり働かせている人間の言葉なんてまるで信用できない。それじゃあさすがに意味がない。
一応、“猟犬の牙”の残党も残ってはいるから、そこに帰ってもらってもいい。ただ、その場合足を治してやる義理はないな」
「もうギルドには何の未練も思い入れもないわ。
それに残党というのが誰の事なのか大体想像はつくけれど、彼らが自分で動けなくなった私を保護するはずがない。
それどころか、また死んだ方がましという目に合わされるのが落ちでしょうね」
「そういうことなら、それは止めておこう。とはいっても、ずっと無駄飯を食べさせるつもりはないから、世話をしてもらえそうな貧民院でも探して、見つかり次第入ってもらうことにするか、そんなところだろう。そこから先のことまでは責任は持てない。
逆に、提案を受けてもらえれば、共通の敵と協力して戦えるという利点もある」
意味が分からず首をかしげるセレナに、エイクが説明を続けた。
「“呑み干すもの”の幹部の中で、レイダーという男だけ逃がしてしまった。
しかもその男は、まだこの街に留まっていて、“呑み干すもの”の残党を率いて盗賊ギルドの長の地位についているらしい。
俺はこいつも許すつもりはない。
奴はあなたにとっても敵だろ?」
その名を聞いたセレナは、表情を歪め、また両手の拳にきつく力を入れた。
エイクは少し間をおいてから続けた。
「許すつもりはない、とはいったが、絶対に自分の手で殺したいというほど思い入れが強いわけでもない。
誰か奴を憎む人間が奴を殺しても、別に構わないと思っている」
エイクは、今までに見せたセレナの態度から考えて、この提案は彼女に対して有効に働くのではないかと思っていた。
「……少しだけ、考えさせて」
そう言うと、セレナはしばし沈黙した。
エイクはその様子に僅かに苛立った。
彼は話しをしているうちにあることを思いつき、そのために直ぐに行動したいと思っていたからだ。
「どうしても今すぐ答えろとは言わない。返答は後で聞きに来る」
そう言って腰を上げたエイクに、セレナが告げる。
「いえ、そのお話しを受ける事に異存はないわ。
足を治してもらえるというだけで、ありがたいことだし、それだけでも選択の余地はないもの。
ただ、出来れば、他の報酬も検討して欲しいの。
もちろん、私があなたの役に立った場合の成功報酬でかまわないから」
エイクは席に座り、セレナに先を促す。
「あなたは、あの男、テオドリックより強いのよね」
「ああ、はるかに強い。奴と一対一で殺し合いをしたなら、千回やって千回とも俺が勝つ」
「それなら、私に戦い方を教えて欲しい」
訝しげに首をかしげるエイクに向かってセレナは続けた。
「私の身に起こった事を考えれば、私がもっと強くなりたいと思ったとしても、何もおかしい事はないでしょう?」
確かにその通りだった。
「そうか。俺は強くなりたいと思う事は、大切なことだと考えている。
強くなるための、手助けしてやりたいという気持ちもある。だが、俺は人に戦い方を教えた経験はない。
それに俺のような戦士の戦い方と、あなた方のような軽戦士の戦い方は違う。
俺では役に立たないだろう」
「私が教えて欲しいのは、戦士としての戦い方ではないわ。戦士に勝てる戦い方よ」
「……なら、俺の鍛錬に付き合うだけでも何か得るものはあるかもしれないな。俺も父の剣技をみるだけでも良い経験になっていた。俺の鍛錬に付き合う程度の事でよければ、了承する」
「十分よ。それでお願いするわ」
セレナは一呼吸おいてから、改めてエイクに尋ねた。
「それで、具体的にはどんな情報を必要としているのかしら」
彼女の様子は、大分落ち着いて来ているようだ。
「当面必要としているのは、王都の裏社会の動向だ。
この娼館の庇護者って立場になったおかげで、それを無視する事は出来なくなってしまった。
特に今言ったレイダーは、俺にとって都合の悪い行動を取る可能性が高い。こちらから攻めるにしても、とりあえず守りを固めるにしても、レイダーの動きには注意したい。
だが、俺が最も求めている情報は、父の死の真相だ。これについては、今は具体的な目標として、ローリンゲン侯爵家に近づいて情報を収集したいと思っている。
いきなりこれについて探れと言うつもりはないが、常にその事は意識しておいて欲しい。
それから、これはついで程度でいいが、強い武器や防具の情報もあれば助かる」
「分かったわ」
少しだけ言いよどんでから、セレナがまた話し始めた。
「……ご要望の情報とは違う内容だし、そもそも今更意味のないものでしょうけれど、今すぐ伝えられる情報が一つだけあるわ。聞いてもらえるかしら」
「もちろん。今言った事の他にも、伝えるべきだと思った情報は全て伝えて欲しい。意味があるかどうかはこちらで判断して、不要ならそう指示させてもらうだけだから、なんら問題はない」
「そう。それなら、あなたは“夜明けの翼”のジャックとテオドリックが、ネメトの神聖魔法を使えた事を知っていた?」
「……いや、知らなかった。もしそれが本当なら、何で奴らは俺との戦いでそれを使わなかったんだ?」
「初級程度の腕前しかなかったからでしょうね。
攻撃の手を止めてまでして、回復の魔法を使っても、回復量が少なくては意味がない。
攻撃魔法も技量が低ければ効果も薄い、相手の抵抗を打ち破らなければ、やはりほとんど意味がない。
それに彼らは、魔法を使いながら敵の攻撃を回避する技術も体得していなかったみたいだから、実戦で使える技量ではなかったのでしょう。
実際、彼らが私たちのギルドを襲ってきた時も、彼らは、戦闘中は神聖魔法を使っていなかったわ。でも、彼らが神聖魔法を使えたのは間違いのない事実よ。
つまり、“夜明けの翼”の連中は、少なくともその中のテオドリックとジャックは、利害関係だけでグロチウスたちとつるんでいたのではなくて、自分自身もネメトを信仰していた、というわけ。
でも、どっちにしても、もう終わってしまった事に意味はないわね」
エイクは、少し考えてから答えた。
「……いや、終わった事と言い切れるのか、まだ分からない。
“夜明けの翼”の事や“呑み干すもの”の事も可能なら調べてくれ」
「分かったわ」
その後、エイクとロアンは、セレナが捕らえられた後に起こったことを、改めて彼女に説明した。
更に具体的な報酬の額や経費の話になると、エイクは「細かい事はロアンと詰めてくれ」と言ってロアンに投げた。
そして、ロアンに向き直って告げた。
「俺に回せる金の3分の1までなら使うのを認める。それを踏まえて、具体的な活動の案をまとめて、後で報告してくれ。認められないと思う内容があったら訂正させてもらう。
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