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第4章
64.目的の女オーガ①
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エイクは、ミュルミドンに言われたとおりに西へ向かって真っ直ぐに進んだ。
だが、洞窟に辿り着く前に、そこには目的の者はいないだろうと察した。西へ進んだ先よりも南にずれる場所に、自分にも匹敵する相当に強い人間大のオドを感知したからだ。
逆に、真っ直ぐ進んだ先には、特に気になるほどのオドは存在していない。
(人間大の大きさで、この強さのオドを持つなら並の存在ではない。まず間違いなく、目的の女オーガだろう。
洞窟ではなく、頻繁に姿を現すという湖のあたりにいるということかな。位置関係からしても、だいたいそんな感じだ)
エイクはそう判断した。だが、進路を変えることはなかった。
ここで進路を変えたりすれば、監視をしているだろうフィントリッドらに不審がられ、自分が何か特殊な感知能力を持っていると悟られてしまうかも知れないからだ。
(最初に洞窟を調べて、その後湖の方に下るのが自然だ。
それに、目的の相手がいないなら、その間に洞窟の様子を確認しておいた方がいい)
エイクは、そんな事も考えてそのまま進んだ。
やがて、傾斜がきつくなりミュルミドンが告げたとおり、山と言えるような場所に差し掛かった。
そして、簡単にその洞窟を見つけることが出来た。洞窟の入り口はかなり大きく、しかもその周囲は半径50m程度の範囲で木々が生えておらず開けていたからだ。
エイクには、その範囲はまるで整地されているように感じられた。或いは、その洞窟に住んでいたというコアトルが、木々をなぎ払っていたのかもしれない。
エイクは、周囲に気を配りつつ洞窟に近づいた。
エイクは野外における罠にはかなり詳しく、それを察知する事にも相当長けている。そのエイクが見る限り、罠が仕掛けられている様子はない。
洞窟の入り口の比較的近くに焚き火をした跡があった。肉などを焼いたにおいも残っており、ここで簡易な調理をしたのだろうと思われた。その場所に関しても特に不審な点はない。
エイクはそのまま洞窟の中へと進んだ。
中に入ってそれほど進んではいないところに、明らかに何者かの手が入った場所があった。そこは比較的平らで、地面の上に太さや大きさが揃った木の枝が、整然と敷き詰められている。
更に、その場所の中ほどに、蔓などを使って木の枝が組み合わされ一段高くされているところがある。そこには何枚もの毛皮が重ねて敷かれていた。それは、即席の寝台のように見えた。
その場所の周辺も意外なほど小奇麗に整えられていて、むしろ清潔な印象すらあった。
全体的に、案外快適そうな生活空間のように見える。
(ごく最近使われた跡もある。どうやら目的の者はここで寝泊りしているようだな)
エイクはそう判断した。
更に洞窟の奥へと向かったエイクだったが、最奥まで進むつもりはなかった。
オドの感知能力により、かなり奥まで生物がいる。即ち、洞窟がかなり深いことを既に把握していたからだ。
(仮に洞窟内で戦いになって、奥に進まれたら面倒だ。足止め程度の簡単な罠でも作っておこう)
エイクはそう考え、携帯していた紐や糸などを使って、数分程度で手早く罠を設置し、それ以上奥へ進む事は止めた。
そうしてから、強力なオドを感知していた南へと向かう事にした。
そのオドは、それなりに動きまわっていたのだが、今は最初に感知した場所からさほど遠くない所にあった。
エイクが歩みを進めて行くと、傾斜が緩やかになり、やがて前方の木々の間から湖面のきらめきが見えてきた。そこには確かに湖があった。
もう少し近づくと、それが清らかな水を湛えた美しい湖だという事も分かった。
そして、その湖に身を浸している女がいることにも気付いた。
その女もまた美しかった。
水浴びをしているらしく、一糸も纏わずに瑞々しい褐色の肌を晒している。
長身で、遠目にみても、平均的な人間の男性程度の身長はありそうだ。
引き締まった均整の取れた肢体によって、張りのある大きめの乳房が強調されている。
健康的で同時に性的な魅力にも富んだ美しい肉体だった。
濃い赤茶色の髪が肩まで伸びており、そして、その前髪の生え際あたりの額から二本の角が生え、後ろへ向かって湾曲して伸びている。その角の存在が、その女がオーガであることを証明している。
オーガの身体的な特徴は、角が生えている以外は人間と同じで、肌や髪の色そして体格・体形なども人間同様に千差万別である。
つまり、その魅力的な肉体は、この女オーガに固有のものだ。
そして、この女オーガが、最善からエイクが感知していた強力なオドの持ち主で間違いなかった。
エイクが見る限りでは、その女オーガは丹念に自らの身体を洗っているようである。
湖の岸には、狩りの獲物らしき二羽の鳥が置かれている事も見て取れる。
狩りをした後に身を清めているように見受けられた。
そして、エイクに見られていることに気付いた様子はない。
(奇襲を仕掛けるなら、今が絶好の機会だな)
エイクはそんな事を考えた。それは、魅力的な姿態を晒す女オーガへの欲望が湧き起こるのと共に想起された考えだった。
だが、その考えを実行するつもりはエイクにはない。なぜなら、目的は女オーガを倒す事はではなく、実戦経験を積む事だと自覚しているからだ。
敵を倒す事だけが目的なら、たとえ卑怯卑劣と罵られようと、隙を狙い策を凝らし、ただ勝利を目指すべきである。だが、今のエイクには、この女オーガを倒さなければならない理由は存在しない。
別に恨みもないし、かつてゴブリンなどを狩っていた頃のように日々の糧を得る手段という理由もない。
光の担い手の中には、相手が魔族というだけで、無条件で殺さなければならないと考える者も稀にいるが、エイクはそんな者ではなかった。
そして、フィントリッドから持ちかけられた話も、腕試しにそのオーガと戦ってはどうか、という提案であって、正確には討伐を依頼されたわけではないのである。
要するに今のエイクの目的は、純粋に強敵と戦って腕試しをし、実戦経験を積む事だけだ。そうであるならば、敵の弱みを突くなど矛盾した行いだ。
また、エイクはそういう相手に問答無用で襲い掛かる事に罪悪感を懐いてもいた。
(一般論としてまともな理由もなく戦いを仕掛けるのは悪だ。一応俺にも、それを悪と思う程度の社会性という奴は残っていたようだ。
それに、まず間違いはないと思うが、このオーガがあのコアトルの洞窟に住み着いた者だと確定したわけでもない。
どっちにしろ、そんな迷いがあると俺自身も戦いに集中できない)
エイクはそんな事も考え、この場で戦いを仕掛ける事をやめたのである。
(あの洞窟の前で待ち構えて、戻ってきたところで対峙するべきだ。
そうすれば言葉を交わす事も出来るかも知れない。結果、俺も踏ん切りがつくだろうし、他にもいろいろとあそこの方が都合がいい)
エイクはそう結論を出して、静かに、しかし出来る限り急いで洞窟への道を引き返した。
洞窟の前まで戻ったエイクは、急いでその周囲に即席の罠を仕掛けた。
それは、女オーガと有利に戦う為のものではなく、自分が逃走する場合の補助にする為のものだ。エイクは自分が女オーガに勝てない可能性も考慮していた。
(力及ばず敗れるのは構わない。敗北も経験として、もっと強くなればいいんだ。だから、敗北にも意味はある。
だが、死んでしまっては意味がない。
経験を積む為に、あえて隙を狙わず正面から敵と戦うのはいいが、その結果死ぬ事になる可能性は最小にするべきだ。そして、その為に最大限努力すべきだ。
実戦を戦う以上。死も覚悟する必要はある。だが、それ以上に、どんな事をしてでも生き残る覚悟も決めておく必要がある。
それこそ、恥も外聞もなく逃走し、場合によっては命乞いをしてでも生き残る。そのくらいの覚悟をしておかないといけない)
エイクはそう考えていた。
そして、腰のベルトに吊るした小袋に手を伸ばした。
(いざとなればこれを使おう、目くらまし位にはなる)
小袋の中に入っていたのは爆裂の魔石だ。それは、ゴルブロ一味がエイクを闘技場から逃げられなくするために使った爆裂の魔石の残りである。
エイクはシャルシャーラを通じてそれを入手していた。
ちなみに、ゴルブロ一味が、相応に貴重な品である爆裂の魔石をあのように大量に使えたのは、シャルシャーラが多数所有していたからである。そうでなければ、爆裂の魔石は、それほど簡単に手に入れることは出来ない。
エイクも一つだけ残っていたこの爆裂の魔石を使ってしまえば、次に入手できる目途はない。
だが、当然ながら自分が生き残る方が優先である。
エイクは必要ならば迷わず使うつもりだった。
そうこうする内に、あの女オーガのオドがこちらへ向かって動き始めた。
やはり、あの女オーガが、この洞窟に住み着いた者で間違いないようだ。
エイクは出来る限りギリギリまで罠の設置を続け、そしてその後、洞窟の入り口の前に立って女オーガを待ち構えた。
やがて、女オーガが洞窟の周辺の開けた場所に姿を現した。
女オーガは真っ直ぐ洞窟の方を向いており、間違いなくエイクの姿を認めている。だが、全く動きをとめず、悠然と歩みを進めて来る。
女オーガは、上半身は辛うじて胸を布で覆うだけ、下半身は下着の上に長けの短い腰布を纏っただけの姿だった。足には革製の履物を履いている。
身に付けた布は細緻な模様なども織り込まれた綺麗なもので、野蛮な印象はない。しかし、露出は激しく、その健康的な褐色の肌が大きく露わになっている。
そして、狩りの獲物らしい水鳥を二羽、右手に下げていた。
エイクは、その立ち居振る舞いから、この女オーガがやはり油断ならない強者である事を感じとった。しかし、自分の方が少しは強いのではないか、という心象も得ていた。
女オーガは、エイクを正面から見据えて悠然と歩き、20mほどの距離をとって歩みを止める。
そして、両足を肩幅程度に開き、左手を腰にあて、やや胸を張るような姿勢をとる。
しなやかに引き締まった肢体と、形の良い乳房が強調される体勢だった。
近くで見る女オーガは、その目鼻立ちも美しかった。
千年もの寿命を誇るというオーガ故に実年齢は窺い知れないが、見た目は人間で言えば20歳になるかどうか位に見える。
そして、その勝気そうな美貌には恐れや警戒心を懐いている様子はなく、むしろ薄い笑みすら浮かんでいた。
その美しい女オーガが、エイクに向かって口を開いた。
「一応聞いておこう。何者だ?」
「エイク・ファインド。人間の冒険者だ」
エイクは厳しい表情と口調でそう答えた。
だが、洞窟に辿り着く前に、そこには目的の者はいないだろうと察した。西へ進んだ先よりも南にずれる場所に、自分にも匹敵する相当に強い人間大のオドを感知したからだ。
逆に、真っ直ぐ進んだ先には、特に気になるほどのオドは存在していない。
(人間大の大きさで、この強さのオドを持つなら並の存在ではない。まず間違いなく、目的の女オーガだろう。
洞窟ではなく、頻繁に姿を現すという湖のあたりにいるということかな。位置関係からしても、だいたいそんな感じだ)
エイクはそう判断した。だが、進路を変えることはなかった。
ここで進路を変えたりすれば、監視をしているだろうフィントリッドらに不審がられ、自分が何か特殊な感知能力を持っていると悟られてしまうかも知れないからだ。
(最初に洞窟を調べて、その後湖の方に下るのが自然だ。
それに、目的の相手がいないなら、その間に洞窟の様子を確認しておいた方がいい)
エイクは、そんな事も考えてそのまま進んだ。
やがて、傾斜がきつくなりミュルミドンが告げたとおり、山と言えるような場所に差し掛かった。
そして、簡単にその洞窟を見つけることが出来た。洞窟の入り口はかなり大きく、しかもその周囲は半径50m程度の範囲で木々が生えておらず開けていたからだ。
エイクには、その範囲はまるで整地されているように感じられた。或いは、その洞窟に住んでいたというコアトルが、木々をなぎ払っていたのかもしれない。
エイクは、周囲に気を配りつつ洞窟に近づいた。
エイクは野外における罠にはかなり詳しく、それを察知する事にも相当長けている。そのエイクが見る限り、罠が仕掛けられている様子はない。
洞窟の入り口の比較的近くに焚き火をした跡があった。肉などを焼いたにおいも残っており、ここで簡易な調理をしたのだろうと思われた。その場所に関しても特に不審な点はない。
エイクはそのまま洞窟の中へと進んだ。
中に入ってそれほど進んではいないところに、明らかに何者かの手が入った場所があった。そこは比較的平らで、地面の上に太さや大きさが揃った木の枝が、整然と敷き詰められている。
更に、その場所の中ほどに、蔓などを使って木の枝が組み合わされ一段高くされているところがある。そこには何枚もの毛皮が重ねて敷かれていた。それは、即席の寝台のように見えた。
その場所の周辺も意外なほど小奇麗に整えられていて、むしろ清潔な印象すらあった。
全体的に、案外快適そうな生活空間のように見える。
(ごく最近使われた跡もある。どうやら目的の者はここで寝泊りしているようだな)
エイクはそう判断した。
更に洞窟の奥へと向かったエイクだったが、最奥まで進むつもりはなかった。
オドの感知能力により、かなり奥まで生物がいる。即ち、洞窟がかなり深いことを既に把握していたからだ。
(仮に洞窟内で戦いになって、奥に進まれたら面倒だ。足止め程度の簡単な罠でも作っておこう)
エイクはそう考え、携帯していた紐や糸などを使って、数分程度で手早く罠を設置し、それ以上奥へ進む事は止めた。
そうしてから、強力なオドを感知していた南へと向かう事にした。
そのオドは、それなりに動きまわっていたのだが、今は最初に感知した場所からさほど遠くない所にあった。
エイクが歩みを進めて行くと、傾斜が緩やかになり、やがて前方の木々の間から湖面のきらめきが見えてきた。そこには確かに湖があった。
もう少し近づくと、それが清らかな水を湛えた美しい湖だという事も分かった。
そして、その湖に身を浸している女がいることにも気付いた。
その女もまた美しかった。
水浴びをしているらしく、一糸も纏わずに瑞々しい褐色の肌を晒している。
長身で、遠目にみても、平均的な人間の男性程度の身長はありそうだ。
引き締まった均整の取れた肢体によって、張りのある大きめの乳房が強調されている。
健康的で同時に性的な魅力にも富んだ美しい肉体だった。
濃い赤茶色の髪が肩まで伸びており、そして、その前髪の生え際あたりの額から二本の角が生え、後ろへ向かって湾曲して伸びている。その角の存在が、その女がオーガであることを証明している。
オーガの身体的な特徴は、角が生えている以外は人間と同じで、肌や髪の色そして体格・体形なども人間同様に千差万別である。
つまり、その魅力的な肉体は、この女オーガに固有のものだ。
そして、この女オーガが、最善からエイクが感知していた強力なオドの持ち主で間違いなかった。
エイクが見る限りでは、その女オーガは丹念に自らの身体を洗っているようである。
湖の岸には、狩りの獲物らしき二羽の鳥が置かれている事も見て取れる。
狩りをした後に身を清めているように見受けられた。
そして、エイクに見られていることに気付いた様子はない。
(奇襲を仕掛けるなら、今が絶好の機会だな)
エイクはそんな事を考えた。それは、魅力的な姿態を晒す女オーガへの欲望が湧き起こるのと共に想起された考えだった。
だが、その考えを実行するつもりはエイクにはない。なぜなら、目的は女オーガを倒す事はではなく、実戦経験を積む事だと自覚しているからだ。
敵を倒す事だけが目的なら、たとえ卑怯卑劣と罵られようと、隙を狙い策を凝らし、ただ勝利を目指すべきである。だが、今のエイクには、この女オーガを倒さなければならない理由は存在しない。
別に恨みもないし、かつてゴブリンなどを狩っていた頃のように日々の糧を得る手段という理由もない。
光の担い手の中には、相手が魔族というだけで、無条件で殺さなければならないと考える者も稀にいるが、エイクはそんな者ではなかった。
そして、フィントリッドから持ちかけられた話も、腕試しにそのオーガと戦ってはどうか、という提案であって、正確には討伐を依頼されたわけではないのである。
要するに今のエイクの目的は、純粋に強敵と戦って腕試しをし、実戦経験を積む事だけだ。そうであるならば、敵の弱みを突くなど矛盾した行いだ。
また、エイクはそういう相手に問答無用で襲い掛かる事に罪悪感を懐いてもいた。
(一般論としてまともな理由もなく戦いを仕掛けるのは悪だ。一応俺にも、それを悪と思う程度の社会性という奴は残っていたようだ。
それに、まず間違いはないと思うが、このオーガがあのコアトルの洞窟に住み着いた者だと確定したわけでもない。
どっちにしろ、そんな迷いがあると俺自身も戦いに集中できない)
エイクはそんな事も考え、この場で戦いを仕掛ける事をやめたのである。
(あの洞窟の前で待ち構えて、戻ってきたところで対峙するべきだ。
そうすれば言葉を交わす事も出来るかも知れない。結果、俺も踏ん切りがつくだろうし、他にもいろいろとあそこの方が都合がいい)
エイクはそう結論を出して、静かに、しかし出来る限り急いで洞窟への道を引き返した。
洞窟の前まで戻ったエイクは、急いでその周囲に即席の罠を仕掛けた。
それは、女オーガと有利に戦う為のものではなく、自分が逃走する場合の補助にする為のものだ。エイクは自分が女オーガに勝てない可能性も考慮していた。
(力及ばず敗れるのは構わない。敗北も経験として、もっと強くなればいいんだ。だから、敗北にも意味はある。
だが、死んでしまっては意味がない。
経験を積む為に、あえて隙を狙わず正面から敵と戦うのはいいが、その結果死ぬ事になる可能性は最小にするべきだ。そして、その為に最大限努力すべきだ。
実戦を戦う以上。死も覚悟する必要はある。だが、それ以上に、どんな事をしてでも生き残る覚悟も決めておく必要がある。
それこそ、恥も外聞もなく逃走し、場合によっては命乞いをしてでも生き残る。そのくらいの覚悟をしておかないといけない)
エイクはそう考えていた。
そして、腰のベルトに吊るした小袋に手を伸ばした。
(いざとなればこれを使おう、目くらまし位にはなる)
小袋の中に入っていたのは爆裂の魔石だ。それは、ゴルブロ一味がエイクを闘技場から逃げられなくするために使った爆裂の魔石の残りである。
エイクはシャルシャーラを通じてそれを入手していた。
ちなみに、ゴルブロ一味が、相応に貴重な品である爆裂の魔石をあのように大量に使えたのは、シャルシャーラが多数所有していたからである。そうでなければ、爆裂の魔石は、それほど簡単に手に入れることは出来ない。
エイクも一つだけ残っていたこの爆裂の魔石を使ってしまえば、次に入手できる目途はない。
だが、当然ながら自分が生き残る方が優先である。
エイクは必要ならば迷わず使うつもりだった。
そうこうする内に、あの女オーガのオドがこちらへ向かって動き始めた。
やはり、あの女オーガが、この洞窟に住み着いた者で間違いないようだ。
エイクは出来る限りギリギリまで罠の設置を続け、そしてその後、洞窟の入り口の前に立って女オーガを待ち構えた。
やがて、女オーガが洞窟の周辺の開けた場所に姿を現した。
女オーガは真っ直ぐ洞窟の方を向いており、間違いなくエイクの姿を認めている。だが、全く動きをとめず、悠然と歩みを進めて来る。
女オーガは、上半身は辛うじて胸を布で覆うだけ、下半身は下着の上に長けの短い腰布を纏っただけの姿だった。足には革製の履物を履いている。
身に付けた布は細緻な模様なども織り込まれた綺麗なもので、野蛮な印象はない。しかし、露出は激しく、その健康的な褐色の肌が大きく露わになっている。
そして、狩りの獲物らしい水鳥を二羽、右手に下げていた。
エイクは、その立ち居振る舞いから、この女オーガがやはり油断ならない強者である事を感じとった。しかし、自分の方が少しは強いのではないか、という心象も得ていた。
女オーガは、エイクを正面から見据えて悠然と歩き、20mほどの距離をとって歩みを止める。
そして、両足を肩幅程度に開き、左手を腰にあて、やや胸を張るような姿勢をとる。
しなやかに引き締まった肢体と、形の良い乳房が強調される体勢だった。
近くで見る女オーガは、その目鼻立ちも美しかった。
千年もの寿命を誇るというオーガ故に実年齢は窺い知れないが、見た目は人間で言えば20歳になるかどうか位に見える。
そして、その勝気そうな美貌には恐れや警戒心を懐いている様子はなく、むしろ薄い笑みすら浮かんでいた。
その美しい女オーガが、エイクに向かって口を開いた。
「一応聞いておこう。何者だ?」
「エイク・ファインド。人間の冒険者だ」
エイクは厳しい表情と口調でそう答えた。
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