彼女の理想に近づく為に、僕は何度でも繰返す

トン之助

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第3話 彼女はよく食べる

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 僕の意識が覚醒すると、すでに昼休み前だった。

 どうやら初日の授業をほとんど聞けていない事になる。前の席のやつに聞くと、ゆすっても叩いても起きなかったらしい…寝言で

「ふじみやしゃ~ん」

 と言った時にはマッハの速さで顔が机にめり込んだとの情報。どおりで痛いわけだ。

 キーンコーンカーンコーン

 チャイムと共に皆一斉に席を立つ、学食に行く者、隣の人と席をくっつける者と様々。

「ふむ……お昼か」

 僕は自分の弁当をとり出して立ち上がる。周りでは藤宮さんの元に人が集まっている。

「藤宮さん一緒に食べよう?」
「学食? それともお弁当?」
「藤宮さん!  俺が愛を込めたこの弁当を受け取ってくれたまへ」

「いやいや……俺のこのペンギンウインナーを」

 ペンギンウインナーってなんだよ。

 そんなガヤガヤした中、藤宮さんは……

「一人で静かに食べたいんで」

 その一言は表情も相まって氷のように冷たく周りを圧倒していた。

「そ、そうだよね……」
「ご、ごめんなさい」
「せめてこのペンギンウイン……」

「いらない……」


 藤宮さんの周りからどんどん人が消えていく。誰も近寄れない近寄らない……彼女の他を拒絶する態度は今後の人付き合いの中でもしかしたらマイナスに働くかもしれない。

 恨み、妬み、嫉妬、憎悪……彼女を取り巻く空気がまさしくその前兆を予感させていた。藤宮さんを見る周りの目は徐々に光を失いつつあった。

「はっはー!  さては藤宮さん、人に見られて食べるのに慣れてないよね?  その目を見れば僕にはわかる!」

 ただ一人を除いて……僕の方を振り向く視線がとても痛い。それでも喋り続ける。

「僕なんて一人のときは鏡の前で自分自身と喋りながら食べてるよ!」


「うわ……」
「クロエ……正気か」
「どんなプレイだよ」
「やっぱり黒江くん、変だよ」

 予想通りの反応、そして僕は自分の椅子と弁当を持って藤宮さんの席の前に移動する。そして、席を向かい合わせて正面に堂々と座る。

「藤宮さん一緒に食べよう!」

「クロエお前ってやつは……」
「勇者」
「どんだけポジティブなんだよ」

 周りの言葉は気にしない、僕は藤宮さんとご飯が食べたいのだ!

「藤宮さん断った方がいいよ」
「そうだよそんな変態と一緒に食べたら藤宮さんも変態になっちゃう」

 うん、最後のは意味がわからない。女子達の声掛けに男子達も頷く。しかし、意外だったのは当の本人の答えだ

「別に……」

 その言葉は肯定の意味だった!

「キターーーーーーー! 僕の時代がとうとうキターーーーーーー!」

 大絶叫をする僕。

「なんでだよ~」
「うそだろ?」
「ちきしょー」

「藤宮さんうそでしょ」
「変態になっちゃう」

 大混乱していたが、僕は早速弁当箱を開けて食べ始めようとする。

「……待って」

 藤宮さんがストップをかける。

「どうしたの藤宮さん?  あっ!  この卵焼きが欲しいんだね!  もぅ言ってくれればいいのに~。はい、あ~ん」

 ドコンッ

 拳骨が空から降ってきた、しかし今回は男子達からの攻撃だった。


「なんだよ邪魔するなよ!  せっかくのカップルイベントを」

「「「誰がカップルだっ」」」

 見事なハーモニー。

「ごめん藤宮さんなんだっけ?」

「……勝負」
「えっ?勝負?」
「……うん」

 藤宮さんから意外な提案が飛んできた。
 首を傾げていると……

「私が勝ったら……二度と話しかけるな」

 ヒュゥっと冷たい風が流れた気がした


「僕が勝ったら付き合うって事で!」
「いいよ」

 その一言にクラスメイト達は。

「「「「うぉぉぉぉぉ!」」」」

 僕だけじゃなくてクラス全体がうねりをあげた。

「藤宮さん約束は絶対だよ? それで勝負の内容は?」

「……フードファイト」
「はっ?」

 僕はもう一度聞き直す。

「……フードファイト」

 どうやら間違いじゃないようだ。

「OK藤宮さん! その勝負ノッた。後悔しても知らないよ? 僕の胃袋は宇宙だからね」
「……早く」

 僕と藤宮さんは学食へと移動した。その後ろをゾロゾロとクラスメイトも着いてくる。

まぁお弁当は夜食べればいいか……


「この学校の学食にチャレンジメニューがある」
「よく知ってるね。まだ二日目なのに」
「調べた」

 幸い今日はまだ上級生がいない為、比較的空いている。それでも十分広いなぁ、吹き抜けの天井と二階席もある。


 そして、チャレンジメニューの内容は。

『鬼盛りカレーライス~愛がカツかチキンはキミか?~』

 皆の目が死んでいる。
 なんでメニューにサブタイがあるんだよ。


「えーと……なになに。これで千円? そして30分以内で完食するとタダになる? しかも食券一ヶ月分?」


 これは決まりだな!  ただ、総重量が二キロか……だいぶヘビーだ。

 そして食堂の……おば……おね……元お兄さんに千円ずつ支払って作ってもらう。

「あら~二人共可愛いわねぇ、特に君のようなボーイは好みよ! うふっ」

 インパクト大の顔をしてそんな事言ってきた。

「早く作って下さい」
「んもぅ! わかったわよん」

 待ってる間、藤宮さんは元お兄さんと何か話していた。元お兄さんは凄く目を見開いていたがやがて厨房へと消えていった。

 そしてついに鬼カレーが姿を表す!

「こいつはやべぇな」
「あんなの見たことない」
「カツとチキンで」
「鬼ヶ島を作ってやがる」

 見た目のインパクトは凄まじく、食堂の人達曰く、過去数える程しか成功してないらしい。

「藤宮さん、辞退するなら今だよ」
「……結構だ。負けるつもりないから」
「この勝負が終わったら、僕結婚するんだ!」

 いいフラグを立ていよいよ開始の合図が鳴る。

「それでは愛がカツかチキンは君か?よーいスタート!」

「うぉぉぉぉぉぉぉ! トラ○ザム」





 ピピピピッ

 キッチンタイマーが終了の合図を告げる。

「二人共お疲れ様~! お姉さん感激っ!」


 食堂の元お兄さん……いやもうお姉さんでいいや、は手を叩いて拍手をしている。その周りで見物人は言葉もなく唖然としている。

 僕は時間内に完食したのだ、チャレンジに成功したのだ! それは間違いない。

 ただ流石に二キロは堪えた……机に伏して一歩も動けない。

 隣を見ると、ハンカチで口元を拭い何事も無かったかのようにケロっとしている彼女がいる。

 そして野次馬の視線の先……藤宮さんの目の前には……

 二枚の大皿が置かれていた

「私の勝ちね!  一生話しかけるなチ・キ・ンくん」

 ニヤリッ

 あれっ? 内容変わってない? いや気のせいかな?

 彼女が初めて見せた笑い顔は、悪魔のように楽しそうだった
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