彼女の理想に近づく為に、僕は何度でも繰返す

トン之助

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第4話 彼女はよく寝る

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 鬼ヶ島の決戦から一夜明け、僕の本格的な授業は今日からになる。


「おはよう藤宮さんいい朝だね!」
「……」

 当然無反応。

 昨日の今日で勝負に負けたのに話しかけるやつがあるか!  周りはそんな視線を投げかけてくる。

 まだチャンスはある!

 そして一時間目の授業が始まり教師が入ってくる。

 藤宮さんはまだ寝ている。

 新しく始まった高校生活は緊張と興奮に包まれてとても新鮮だ。その空気感のまま授業は進んでいく。まだ序盤だから、そんなに難しくなかった。

 そのまま時間が過ぎて放課後。
 藤宮さんはまだ寝ていた。

 お昼の時に一回起きて、そそくさとどこかに行ってしまった。起きてるのを見たのはそれっきりだ。ちなみに午後も寝ていた。

 チャンス無いじゃん!

 僕は放課後残っていたクラスメイトに昨日僕が気絶した後の事を教えてもらった。

「藤宮さん、昨日も寝てたよ」
「うん、黒江と一緒で一回も起きなかった」
「何しに学校に来てんのかね?」
「可愛いからって……」

 おっとこれ以上は陰口になる。その前にインターセプトだ!

「なるほど納得した!」

「は?」
「何がだよ?」
「黒江くん、またおかしくなったの?」

 残っているクラスメイトは僕の性格をわかってきたようだ。

「で、何が納得したんだよ?」

 早く先を言えと目が訴える。

「藤宮さんがなぜ美しいのかだ!」
「は?」

「いやだからなぜ藤宮さんが……」
「いやそうじゃない。何言ってんの?」

「黒江くん…いやもうクロエ、あんた何言ってんの?  美しい?  何それ?」


「まぁ落ち着け皆の衆!  まず美しいの定義とはなんだ?
「そんなの……ねぇ」
「あ、あぁ……見た目とか容姿とか」
「そ、そうだよギャップとか仕草とか」

 クラスの連中は何もわかっていない


「0点だ。いや正確にはマイナスだ。それは彼女の表面しか見ていない」

 クラスメイトは押し黙る。そして続く反論。

「そんな事言ったって、他にどこを見ろってんだよ。内面なんて二日やそこらじゃわかんねぇだろ?」

 そうだそうだ!  と周りは便乗する。


「黙らっしゃい負け犬め!」

「「「「お前に言われたくねぇよ!」」」」

 見事なハーモニー、そして四重奏

「二日見てればわかる!」
「……なんだよ?」


 僕の言葉に注目する。なぜ美しいか?  そんなの決まっている。

「それは……よく寝る事だぁぁぁぁぁ!!」

 ぁぁぁぁぁ
 ぁぁぁ
 ぁぁ

「すまんクロエもう一回言ってくれ……」

「何度でも言おう!よく寝る事だ!!」
「……」
「もう一つ付け加えるなら、よく食べる事だ!」
「なぜ?」

 当然の質問だろう!だが答えは簡単だ。

「人間の三大欲求の内、二つも彼女はコンプリートしている。それが彼女の美人の秘訣だ!」

 僕は堂々と宣言する。それを聞いたクラスメイトの反応は……

「撤収!!」

「「「オー!」」」

 僕の宣言と共にクラスメイトは霧散する。集団行動に一切の乱れがなく素晴らしい。

 僕はさらに饒舌に語り出す。

「そもそも君達は、藤宮さんの外見しか見ていない。そんなの彼女の魅力のほんの一部だ!  彼女の真髄はそのブレない心・何者にも動じない精神・他者を寄せ付けないオーラ。その全てが美しい」

 まだ語る。

「そもそも外見だって、磨けば光るし怠れば曇る。常に光り輝いている彼女が何も努力してない訳ないじゃないか。光っている表面だけで判断したら彼女が可哀想だ!費やしてきた時間と労力、金銭その全てを慈しみ内包してこそ本気の賞賛があるのではない……か」

 僕は黒板に一人で喋っていたようだ。

「帰るか……」

 鞄を持ち教室のドアから出ていく。随分熱く語ったものだ。


 その後に反対側の扉が開いた音など僕には聞こえなかった。




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