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第15話 彼女とテスト
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藤宮さんと少しずつ会話が成立するようになった。これは交換日記のお陰だろう。僕も最近は学習し、藤宮さんへのポエムは半分にしている。
そして最近の内容はこうだ。
僕『来週のテスト楽しみだね』(以下ポエム)
藤宮さん『別に……日頃の勉強の成果を試す場だろう』(以下余白)
僕『藤宮さんよりいい点採ったら付き合ってくれる?』(以下ポエム)
藤宮さん『勝てるもんならな! 言っとけど私は強いぞ?』(以下余白)
僕『やったー! 約束だよ、絶対だからね? 明日の土曜日は何時頃来るの?』(以下ポエム)
藤宮さん『用事済ませてからだから、昼の2時くらいかな』(以下余白)
こんな感じで楽しく続けている。そして楽しい時はあっという間で土曜日が来た。
カランカランッ
「いらっしゃいませー1名様ですか?」
「あ、はい……」
ホールスタッフの元気のいい声が厨房に響いてくる。案内を済ませたスタッフの女性が厨房に顔を出し、僕に向かって手招きをする。
「クロエくんの自称彼女さんが来たわよ! あの子の注文お願いね?」
「喜んで!」
僕はコック帽を被ったまま藤宮さんの所に行く。
「お待たせしました藤宮さん! メニューです」
「……これは?」
僕はメニュー表を渡しながらニコニコと答える。
「せいやくしょパートツー?」
「だからなんで疑問形なんだよっ」
「えへへっ」
今回の誓約書の内容は
『僕、黒江渚は来週のテストの総合点で藤宮折羽に勝った暁には正式に彼女とお付き合いします!』
はぁとため息を漏らす藤宮さん。
「いいから本物のメニュー持ってこい」
「はーい。でも僕はいつでも本気だからね!」
最後の言葉に一瞬藤宮さんが目を見開き驚いた表情をしていたが、軽く拳を当ててきてカウンターに追いやられた。
誓約書はまたしても……今度は藤宮さんの私用の鞄の中に消えていった。
もちろん僕がその事実を知ることはない。
そして、今日いい地鶏が入る日なので鶏肉を使った料理をおすすめした。
「藤宮さんごめん、唐揚げは作れるんだけど……油淋鶏はまだ僕には早いから店長に作ってもらうね?」
「……そっかわかった」
せっかく楽しみにしてくれてたのに少し申し訳なく思い、藤宮さんに正直に話した。藤宮さんは素っ気なく返事をしたが次の言葉は予想外の返しだった。
「は、初めて……油淋鶏作ったときに……その……1番に、く……」
「にく?」
「ちげーよばーか!」
藤宮さんは顔を赤くしてまくし立てる。
「お前が作ったやつ、1番に食わせろって言ってんの!」
「!!」
その言葉が僕にどれだけの温かみをくれたか藤宮さんはきっと知ることはないのだろう……
「うんっ約束ね! 絶対美味しいやつ作るから!」
それから藤宮さんは待ってる間はテスト勉強をしていた。
後からホールスタッフに聞いた話だが、藤宮さんは待ってる間は何かしらの勉強をしたり読書をしているみたいだ。
フードファイト以降、男性客が大勢来店してくることは周知の事実だが、意外なことに女性客の客足も伸びているのだとか。
なんでも、飾らない彼女達の姿が羨ましくて憧れた人がリピーターになり、その友達伝手でぐんぐん広がっているのだとか。
「うん、女の子はいっぱい食べた方が美しい! 周りなんて気にしてたら勿体ない」
僕の言葉にこの時ばかりは店内のスタッフ全員が共感してくれた。
「今度、おひとり様席つくったらどうですか?」
僕のこの提案は日を待たずして採用され、その後大反響を呼んだのはまた別のお話。
そして、試験期間が終了し返却の時。
「ふっふっふ、藤宮さん! とうとう年貢の納めどきだね」
「甘いな! この私を侮るなよ?」
僕は藤宮さんの机の前で仁王立ちをする。
負けじと藤宮さんも席を立ち腕を組む。
「じゃあいっせーので机に置こう」
「あぁいいだろう、吠えずら掻かせてやんよ! いくぞっ」
「「いっせーので!」」
バンッ
「……」
「……」
「……おい」
「藤宮さん……これって」
そこには互いに驚愕の事実が記されていた。目に見える衝撃……数字として。
藤宮折羽【総合点:168点】
「……藤宮さんこれ5科目の総合点だよね?」
「……まぁそうなんだが……いやいやお前の方がありえないだろ? なんだその点数? 天才か!」
藤宮さんは僕の成績が記載された紙を見て、神を見るような目で見つめてくる。
そこには……
黒江渚【総合点:1点】
「んもぅ! 藤宮さんそんなに見つめられると照れちゃう!」
「照れる要素がどこにある? はぁ……まじかこれ」
藤宮さんは僕と紙を何度も見ながら口を開けている。
「クロエ……これ5科目の点数だよな?」
「そうだよ! ってかまた名前で呼んでくれた! うれしー」
「……いや私が聞きたいのはそこじゃないんだわ。……テストに1点って配当無かったよな?」
「うん!」
「じゃあこれは?」
その答えについては、見せた方が早いと思い鞄から解答用紙を出して藤宮さんに渡す。
「ん? これは現国か……」
ウチのクラス担任、園田先生のテストだ。そして僕の名前の下には1点の文字。
「どこにあるんだ? その解答?」
藤宮さんはテスト用紙をまじまじと見ている。だけど何処を探しても目立つのはペケ印ばかり。
「最後の記述問題の所を見てよ」
「んぁ? えーと……裏に続く……ん?」
藤宮さんはその文字に従い解答用紙の裏をめくる。
そして……
「ひぃやぁ……」
なんとも可愛らしい声をあげた、今まで聞いた中で最上級の推しボイスだ。
感無量……こういう時に近代兵器があれば。
解答用紙の裏には……藤宮さんを想って書いた僕の詩が永遠と描きつづられていた。
「この詩で今度曲を作ろうと思って!」
「絶対にやめろ!」
藤宮さんは僕の解答用紙でぺしぺし頭を叩いてくる。
「はぁ……おまけで1点貰ったってわけか……」
「そゆこと!」
「これは没収だ!」
「えー! ひどいよ! 藤宮さんのいけずー」
藤宮さんは自分の鞄に僕作詞の紙をねじ込み颯爽と帰って行った……帰り際。
「私の勝ちだから、おあずけな!」
そう笑う彼女はどこか楽しそうだった。
そして最近の内容はこうだ。
僕『来週のテスト楽しみだね』(以下ポエム)
藤宮さん『別に……日頃の勉強の成果を試す場だろう』(以下余白)
僕『藤宮さんよりいい点採ったら付き合ってくれる?』(以下ポエム)
藤宮さん『勝てるもんならな! 言っとけど私は強いぞ?』(以下余白)
僕『やったー! 約束だよ、絶対だからね? 明日の土曜日は何時頃来るの?』(以下ポエム)
藤宮さん『用事済ませてからだから、昼の2時くらいかな』(以下余白)
こんな感じで楽しく続けている。そして楽しい時はあっという間で土曜日が来た。
カランカランッ
「いらっしゃいませー1名様ですか?」
「あ、はい……」
ホールスタッフの元気のいい声が厨房に響いてくる。案内を済ませたスタッフの女性が厨房に顔を出し、僕に向かって手招きをする。
「クロエくんの自称彼女さんが来たわよ! あの子の注文お願いね?」
「喜んで!」
僕はコック帽を被ったまま藤宮さんの所に行く。
「お待たせしました藤宮さん! メニューです」
「……これは?」
僕はメニュー表を渡しながらニコニコと答える。
「せいやくしょパートツー?」
「だからなんで疑問形なんだよっ」
「えへへっ」
今回の誓約書の内容は
『僕、黒江渚は来週のテストの総合点で藤宮折羽に勝った暁には正式に彼女とお付き合いします!』
はぁとため息を漏らす藤宮さん。
「いいから本物のメニュー持ってこい」
「はーい。でも僕はいつでも本気だからね!」
最後の言葉に一瞬藤宮さんが目を見開き驚いた表情をしていたが、軽く拳を当ててきてカウンターに追いやられた。
誓約書はまたしても……今度は藤宮さんの私用の鞄の中に消えていった。
もちろん僕がその事実を知ることはない。
そして、今日いい地鶏が入る日なので鶏肉を使った料理をおすすめした。
「藤宮さんごめん、唐揚げは作れるんだけど……油淋鶏はまだ僕には早いから店長に作ってもらうね?」
「……そっかわかった」
せっかく楽しみにしてくれてたのに少し申し訳なく思い、藤宮さんに正直に話した。藤宮さんは素っ気なく返事をしたが次の言葉は予想外の返しだった。
「は、初めて……油淋鶏作ったときに……その……1番に、く……」
「にく?」
「ちげーよばーか!」
藤宮さんは顔を赤くしてまくし立てる。
「お前が作ったやつ、1番に食わせろって言ってんの!」
「!!」
その言葉が僕にどれだけの温かみをくれたか藤宮さんはきっと知ることはないのだろう……
「うんっ約束ね! 絶対美味しいやつ作るから!」
それから藤宮さんは待ってる間はテスト勉強をしていた。
後からホールスタッフに聞いた話だが、藤宮さんは待ってる間は何かしらの勉強をしたり読書をしているみたいだ。
フードファイト以降、男性客が大勢来店してくることは周知の事実だが、意外なことに女性客の客足も伸びているのだとか。
なんでも、飾らない彼女達の姿が羨ましくて憧れた人がリピーターになり、その友達伝手でぐんぐん広がっているのだとか。
「うん、女の子はいっぱい食べた方が美しい! 周りなんて気にしてたら勿体ない」
僕の言葉にこの時ばかりは店内のスタッフ全員が共感してくれた。
「今度、おひとり様席つくったらどうですか?」
僕のこの提案は日を待たずして採用され、その後大反響を呼んだのはまた別のお話。
そして、試験期間が終了し返却の時。
「ふっふっふ、藤宮さん! とうとう年貢の納めどきだね」
「甘いな! この私を侮るなよ?」
僕は藤宮さんの机の前で仁王立ちをする。
負けじと藤宮さんも席を立ち腕を組む。
「じゃあいっせーので机に置こう」
「あぁいいだろう、吠えずら掻かせてやんよ! いくぞっ」
「「いっせーので!」」
バンッ
「……」
「……」
「……おい」
「藤宮さん……これって」
そこには互いに驚愕の事実が記されていた。目に見える衝撃……数字として。
藤宮折羽【総合点:168点】
「……藤宮さんこれ5科目の総合点だよね?」
「……まぁそうなんだが……いやいやお前の方がありえないだろ? なんだその点数? 天才か!」
藤宮さんは僕の成績が記載された紙を見て、神を見るような目で見つめてくる。
そこには……
黒江渚【総合点:1点】
「んもぅ! 藤宮さんそんなに見つめられると照れちゃう!」
「照れる要素がどこにある? はぁ……まじかこれ」
藤宮さんは僕と紙を何度も見ながら口を開けている。
「クロエ……これ5科目の点数だよな?」
「そうだよ! ってかまた名前で呼んでくれた! うれしー」
「……いや私が聞きたいのはそこじゃないんだわ。……テストに1点って配当無かったよな?」
「うん!」
「じゃあこれは?」
その答えについては、見せた方が早いと思い鞄から解答用紙を出して藤宮さんに渡す。
「ん? これは現国か……」
ウチのクラス担任、園田先生のテストだ。そして僕の名前の下には1点の文字。
「どこにあるんだ? その解答?」
藤宮さんはテスト用紙をまじまじと見ている。だけど何処を探しても目立つのはペケ印ばかり。
「最後の記述問題の所を見てよ」
「んぁ? えーと……裏に続く……ん?」
藤宮さんはその文字に従い解答用紙の裏をめくる。
そして……
「ひぃやぁ……」
なんとも可愛らしい声をあげた、今まで聞いた中で最上級の推しボイスだ。
感無量……こういう時に近代兵器があれば。
解答用紙の裏には……藤宮さんを想って書いた僕の詩が永遠と描きつづられていた。
「この詩で今度曲を作ろうと思って!」
「絶対にやめろ!」
藤宮さんは僕の解答用紙でぺしぺし頭を叩いてくる。
「はぁ……おまけで1点貰ったってわけか……」
「そゆこと!」
「これは没収だ!」
「えー! ひどいよ! 藤宮さんのいけずー」
藤宮さんは自分の鞄に僕作詞の紙をねじ込み颯爽と帰って行った……帰り際。
「私の勝ちだから、おあずけな!」
そう笑う彼女はどこか楽しそうだった。
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