17 / 21
第16話 彼女と激情
しおりを挟むテスト返却の翌日、僕達は朝のホームルームでクラスメイト達と話していた。
「クロエ、そう言えばテスト何点だった?」
「ん? 1点」
「は?」
「1点」
「マジで?」
「まじで」
こちらは男子サイド
「ねぇねぇ藤宮さん、テストどうだったの?」
「もしかして全教科満点?」
「キャーすごい藤宮さん! 流石委員長!」
「いや……ちが」
「藤宮さんはやっぱり見た目だけじゃなくて頭もいいんだ!」
「いや、だから」
藤宮さんが女子達に押されてる。
「すげーな委員長は! 流石俺達の理想だぜ!」
「全教科満点とか」
男子達も混ざり始めた。
「流石、私達の理想の藤宮さん!」
藤宮さんもいい加減鬱陶しくなったのか、ここで少し語気を強めて反論する。
「満点じゃない! 168点だ! いい加減しつこい!」
「えっ?」
「……168」
藤宮さんの言葉にクラス中が固まる。
「あはは、藤宮さん冗談だよね?」
「5教科で?」
まさかというクラスメイトの声を。その声を受け藤宮さんは少し悲しそうな表情で呟く。
「……悪いかよ」
その表情と言葉が本気だと悟るとクラス中は声を潜めて周りとヒソヒソ話している。
「えっうそ? マジで委員長が?」
「流石に……ありえないよね」
「クラスの代表が赤点なんて……」
「俺達の「私達の」理想が……」
藤宮さんはどこかバツが悪そうに下を俯きプルプル震えている。
その光景に担任の園田先生が口を開きかける。
「おい、おまえら……」
「ねぇ……君たちは何を言ってるの?」
園田先生の声を遮る程の声……正確には威圧と冷酷さを持った言葉にクラス中が振り向き戦慄している。
声の主、僕の顔を見て。
「えっ、クロエ?」
「クロエくん?」
「さっきから聞いてたけど、君たちは何を言ってるの?」
僕は続ける。
「何って……」
「だってなぁ……」
「委員長が赤点なんて……」
「クラスの恥……」
その言葉に僕の感情の決壊は簡単に崩壊した。
「点数がとれない事がそんなに悪い事なの?」
「いやだって……」
「なぁ?」
周りに同意を求め出す。
「そもそも僕はともかく、藤宮さんは皆から推されて委員長になったんだよ? だったらその理屈なら1番頭がいい人が委員長になればいいんじゃないの? このクラスで1番は誰?」
僕の発言にクラス中は静まり返る。
「それにさ理想って何? なんでそんな事を藤宮さんに押し付けてるの? 理想って自分で目指すから意味があるんだよ? なんで他人にその理想を押し付けてるわけ?」
僕の言葉に誰も何も言えない、先生さえも。
この時初めてクラス中が理解した……クロエが怒っている事に。その事実に呆気に取られ何も言えないでいるのだ。
「だいだいさぁ! 君たちは藤宮さんを全然理解してないよ! そんな上っ面ばかりみて、表面ばかりみて、藤宮さんの内面を全然見てないじゃないかっ!」
藤宮さんは僕の方を真っ直ぐに見つめている。どこか潤んだ瞳で……
「藤宮さんが勉強してないとでも思ったか! 藤宮さんはな……藤宮さんは、食事の時も放課後も必死で勉強してんだよ! いっつも遅くまで頭を抱えながら! その努力も知らないで、何が理想だ! 何が委員長だ!! 藤宮さんの事を知ったような口を聞くなぁぁぁぁ!!」
はぁ……はぁ……と僕の息遣いだけが教室に響く。
静まり返る教室、激情と緊張の渦で誰も何も言えない……辺りに静寂が訪れる。唯一時計の音だけがその中に無機質に響き渡る。
「……クロエ……お前」
それを破ったのは藤宮さんだ。そして次の言葉に僕は息を呑む。
「泣いてるのか……」
「えっ……」
僕の方を見た藤宮さんは驚いた表情で呟いた。
僕は気づいていなかった……自分の頬を一筋の雫が流れている事に。
「ご、ごめん」
僕は袖で涙を拭うと足早に教室を出ていく。去り際に先生に「今日は帰ります」とだけ告げる。先生はどこか寂しそうに「わかった」とだけ告げて送り出してくれた。
あとに残された人達はその光景を黙って見つめる事しかできなかった。
0
あなたにおすすめの小説
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい
沢尻夏芽
恋愛
自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。
それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。
『様子がおかしい』
※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。
現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。
他サイトでも掲載中。
姉の引き立て役の私は
ぴぴみ
恋愛
アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。
「どうしたら、お姉様のようになれるの?」
「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」
姉は優しい。でもあるとき気づいて─
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる