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第17話 彼と後押し
しおりを挟む僕はクラスを飛び出した後バイト先に来ていた。まだ朝早い時間だが、裏口の扉をノックすると店長が不信を含んだ瞳で扉の隙間から僕を見てくる。
訪問者が僕だと気がつくと驚いた声を上げて扉を開けてくれた。
「クロエか? こんな時間にどうした、学校は?」
「あはは……いやぁちょっと店長の料理が食べたくて……」
その一言に店長はなんとなく状況を理解したのだろう店の中に入れてくれた。そして普段休憩室として利用している場所に僕は座る。
一時して店長がホットサンドと熱々のコーヒーを用意して僕の前にコトリと置いてくれた。
「……まずは食べろ。話はそれからだ」
「はい、いただきます」
僕は店長が作ってくれたホットサンドを一口かじる。
中にはハムと卵、トマトとレタスのシンプルな作りだったがなぜかとてと優しい味がした。
「……おいしい……です」
僕はその味に感動したのか、店長の優しさに充てられたのか、またしても頬に一筋の滴が落ちるのを止められなかった。
「それで、言いたくない事は言わなくていいが……何があったんだ?」
「……はい、実は」
僕は今日あった事を店長にありのままに話した。それを聞き終えると店長は一言
「お前は何も間違っちゃいねぇよ、きっとあの嬢ちゃんもそう思ってるだろう」
「だといいんですけど……」
「要約すると、嬢ちゃんは今まで外見だけで判断されてたんだろ?」
「……みたいですね」
「そこに内面を見てくれるお前が現れた」
ふむふむと頷く僕。
「嬢ちゃんからしたら青天の霹靂ってやつよ!」
「えっ……せい……?」
「まぁ要は……ハートにズキューンだ!」
「ハートにズキューン……つまり僕に惚れたって事ですか?」
「まぁ、まだ最初のジャブかもしれねぇがな」
なるほど、と納得する僕。
「最近の嬢ちゃんとお前を見てたらなんとなくな。少し嬢ちゃんが柔らかくなったように見えたんだよ」
「可能性はあるかな?」
「お前の努力次第だな」
それに……
「いつかしっかりあの事は言えよ?」
「……」
僕は店長のその真剣な表情に一瞬黙ってしまった。僕はいつか言えるのだろうか……
「……いつか、言い……ます」
震えながらではあるが、なんとか口に出す事が出来た。
「おう! 上出来だ!」
店長はニッコリと笑うと、今日はどうする?昼から働くかと聞いてきたので僕はお願いしますと返した。午前中はなんとなく藤宮さんの真似をして教科書を開いて勉強をしてみたが……さっぱり分からなかった。
そしてお昼になると店は混み始め忙しさを増していった。途中昼からのバイトの人が僕を見て「サボりか?」とニッコリしたかお顔を向けるので僕もニッコリと「そうです!」と返した。
時間が経って夕方になり、もうそろそろ学校も終わる頃になる。
店もこの時間はだいぶ落ち着いてきたので、のんびりした時間が流れる。
カランカランッ
「いらっしゃいませー1名様ですか?」
「あ、あぁ……その」
「はい?」
「クロエは……いますか?」
店内に入ってきたのは金髪のポニーテール、少し息が上がっているのでもしかしたら走って来たのだろう。
僕の大好きな藤宮さんがそこには立っていた。
「え、えーと……」
ホールスタッフのお姉さんはどうしたものかと困っていたが、その様子を見ていた店長が僕の所に来て。
「今日はあがれ。そして行って来い」
と背中を押してくれた。
僕は店長に押されるがまま着替えて藤宮さんの元まで追いやられた。
「っ!」
「……えっと、藤宮さん?」
僕は凄くバツが悪く藤宮さんと目を合わせられない。そんな様子の僕を藤宮さんは真正面から見つめて来る。
「……あの、えっと何か食べる?」
やっと出た僕の言葉に藤宮さんは首を横に振る。そして衝撃的な事を言い出した。
「今日は……ちょっと別の所に行こう」
「えっ?」
「……わ、私の……」
藤宮さんはどこか恥ずかしそうに体をモジモジしている。そして若干頬も紅い。
しばらくその状態が続き僕も黙って藤宮さんを見つめる。意を決した藤宮さんから放たれたのは……
「わた、わたしの家に……き、来て」
僕はたっぷりと数分間その場から動けずにいた。
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