諦めない俺の進む道【本編終了】

谷絵 ちぐり

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がんばれ!鷹野くん

クリスマスの約束

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太郎には目下、悩みがある。
その頭を占めているのは、以前ショッピングモールでたまたま見かけたチラシだった。
ここ三日程ずっとそれで頭を悩ませている。
しかし、もう時間がない。
行動を起こすなら早い方がいい。
そう思いながら手元をじっと見る。
そこには『クリスマスプレゼント引換券』が握られていた。

引換券というからには、プレゼントの代わりにこの券を渡すということだ。
けれど、それは嫌だと思う。
ずっとずっとお守りのように自分の財布に入っていたものだ。
きっちりと付いた折り目は少し力を入れただけで切れてしまいそうだ。

「いや、でも待てよ?」

無い頭を絞って太郎は考える。
鷹野は綺麗好きだしお世話好きだから、この引換券ももらったらもう用無しなので捨ててしまうのでは?
それをゴミ箱から拾ってまた自分のものにすればいい。

「・・・天才か」

太郎は自画自賛した。
これはいける!とソファから立ち上がり一人ふははははと笑う。
なぜか、えいえいおー!と拳も掲げたが、それを見ている者は誰もいない。


その日、鷹野が帰宅するとえらくご機嫌な太郎がいた。

「おっかえりぃー」

珍しく胸に飛び込んでくる。
なんか知らんが神様ありがとう!と鷹野は思った。

「良いことあったのか?」
「あーとーでー」

今がいい、今このご機嫌な太郎を甘やかしたい。

「エロいこともあとで」
「・・・はい」

考えを読まれた挙句、釘まで刺してきた。
俺の番は天才か?と鷹野は思った。

「ご飯は炊いた。天津飯の餡も作った。あとは鷹野が卵と餃子を焼くだけ」
「おぉ、すごいな」
「あのとろっとした卵は難しい」

眉間に皺を寄せて悔しそうな顔を見るときっと昼間に練習したんだろう、と鷹野は思う。
太郎はよく頑張る、その最たるものが料理だ。
びっくりするくらい下手くそだが、めげずに挑戦する姿に胸が熱くなる。

餃子は以前二人で包んだもので、太郎が包んだものと鷹野が包んだものは別々に冷凍してある。
お互いがお互いの包んだものを食べる。
太郎が包んだものは今では餡がはみ出ることはもうない。
ひだがよれて少し不格好なだけだ。


「「 いただきます 」」

おはようも、おやすみも、いただきますも、ごちそうさまも声を合わせる。
それだけで胸が躍る。


食後のリビングで太郎が恭しく出してきたのは『クリスマスプレゼント引換券』だった。
きっちりと二つ折りの折り目がついていて端の方だけ皺が寄っている。

「欲しいものできたか?」
「うん」

破顔した太郎が見せたのはスマホの画面でそこにはでっぷりと太ったサンタクロースが快活に笑っていた。

「この人に会いたい」
「お?おう、え?」
「あ、あぁ、わかってる!さすがにサンタ事情は俺だって知ってる」
「あ、うん」
「これね、いつも行くショッピングモールのクリスマスの催しなんだ。ここ見て?」

『本場北欧からサンタクロースがやって来る!!写真撮影会開催(抽選200名様)』

「これに応募して、当たったら一緒に行ってほしいんだけど」
「それが欲しいもの?」
「欲しいっていうか、その、サンタって商店街でケーキ売ってるサンタしか見たことないから」

恥ずかしそうに俯いてもじもじと指を絡ませ、ちゃんとしたやつが見てみたいと言う。

「わかった」
「ほんと?いいの?なんか高級なレストランとか予約してなかった?落ちたら一瞬で死にそうなビルのてっぺんの」

予約しようとしてた自分が恥ずかしくて、鷹野はひとつ咳払いをした。

「いや、してない」
「良かったー。あと、どっか伝手とかコネとかで当選させるのはルール違反だから」

まさに今、頭の中でコネを探していた鷹野は撃沈した。

「当たったら普通にスマホで撮ってくれたらいいから」

新しくカメラを買うことも牽制されてしまった。
やはり心が読めるのか。
すいすいと指を動かして応募フォームにたどり着き、つと太郎は指を止めた。

「鷹野太郎で応募していい?」
「・・・もちろん」

にぱぁと笑って画面を見る横顔に、ひと足先にクリスマスプレゼントをもらった気分だ。
ぷぷぷと笑いながら、字面が硬いなと太郎は言う。

「もっとかっこいい名前が良かったなぁ」
「例えばどんな?」

そうだなぁ、とうーんうーんと腕を組んで考えている。
さすがに名前を変えることは・・・いや、なんとかすればいけるか?と鷹野も考える。

「あんま思いつかないけど・・・もし、子どもができたら鷹野がかっこいい名前つけてやってよ」

ね?と言うのに目頭が熱くなった。

「泣くなよぉ」
「だって、だってそれはお前・・・反則だろ」

鷹野は太郎の腹を抱いておんおん泣いた。
大きなαが小さなΩに縋りついて泣く様はさぞや滑稽に見えるだろうと思うが止められない。

「・・・愛してる」

見上げると同じように見下ろした顔と目が合う。
好きだ、愛してると言う度にキュッと力が入っていた三白眼は今は柔く細められていた。

「うん。愛してる」

その言葉にまた鷹野は泣いた。





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