この指灯せ

コトハナリユキ

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いっこずつ

不安材料

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「はは…図星かぁ。…結局、こういう人たちばかりなんだよ。」

 高柳さんは、僕らに背を向けた。

「バイバイ川出くん。」

 隅で転がっていた二人を起こすこともなく、ついでのように蹴り殺してしまった。…さっきの中学時代の話の中で出て来た名前だったような…?
 高柳さんはヤケになっているようにも見えた。生きる意味を見失ったようにも見えたんだ。

「なぁ、あんたさ。」

 谷崎が侠山くんを抱えたまま、高柳さんに問いかけた。高柳さんは黙ってこちらを振り向き、黙っている。

「…どうして、殺したやつの指を家に送りつけたりしたんだ?…趣味わりぃよ。」
「あぁ、あれのことか。…あれはほんのメッセージのつもりだったんだよ。」

 とぼけたように高柳さんは応える。

「メッセージ?」
「僕たち被害者を苦しめた害悪…この世にゴミクズを産み落としたのは"お前たち親だ"と不良学生の両親に伝えたかったんだ。」
「…。」

 高柳さんは人差し指を立て、見つめた。

「だから…人差し指だったんですか。」

 言葉の出ない谷崎の代わりに僕が尋ねた。

「…そうだよ空也くん。君たちの家にも、これから指を送らないといけない…。」

 僕ら3人を見渡し高柳さんは無表情で呟いた。
 もう僕らは、この部屋で死んでしまうのかもしれない…。そんな考えが頭の中をよぎったと思ったら、僕はもう言葉を吐き出していた。

「…こ、これからも、この殺人を続けるんですか?」
「そうだね。まだこれは、ほんの序章だと…僕は思ってる。」
「いじめの加害者たちを殺し続けるんですか?」
「いじめに限らないよ。考えてみてほしいんだ。」

 高柳さんは両腕を広げながら、頭をかしげて僕を見つめる。

「喧嘩、暴走行為、カツアゲ、レイプ、強盗、リンチ…言葉だけでも気分が悪くなる。これは大体が世に言う不良たちが行っている犯罪行為だ。被害者はほとんどが一般人だ。平和な生活を願う人々。彼らが安心して暮らしていく為には、君たちのような犯罪者予備軍は一掃しておく必要がある。」
「だから、まだ犯罪を犯していないような学生までも、高柳さんは殺していくっていうんですか?」
「不安材料なら…ない方が、この世界の為だよ。」
「…。」

 理路整然と並べられる言葉には、今まで彼自身が背負わされて来た大きな傷が感じられて、僕は言葉が出なくなってしまった。

「なにが不安材料だ!」

 谷崎が割って入った。

「確かに今後、迷惑をかける人も居るだろうよ。でも、それはナイフを隠し持ってる一般人にだって同じことが言えるじゃねぇか。それも不安材料だろ!」
「…。」

 高柳さんは黙ってこちらを見ている。

「…あんたへのいじめ行為は常軌を逸している。本当に酷いと思う。…けどよ、あの3人以外の不良たちがあんたになんかしたかよ!?あんたが殺した不良たちが、どこでどんな事件を今後起こさないとも言い切れないけど、必ず起こすとも言い切れねーじゃねぇか!」
「何が言いたいんだ、谷崎くん…?」
「結局、あんたがやったことは、あの3人と…なんら変わらない!あんたは、ただの殺人鬼だよ!」
「…なに?」

 高柳さんの目つきが変わった。

 "ちがう…僕は、この売人に罰を与えた。そうだ…この人は気弱そうな子供を捕まえて薬を売りつけようとした男だ。…僕はただの殺人犯なんかじゃない。”
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