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第七章
マルチューと違和感(2)
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「いいから、教えて! どこで手に入れた、なんていう花?! この、白い花のほう!」
「なに、もう変な子ね。それはさっき、裏の奥さんにもらったのよ。お庭に生えてたお花なんだって。白いのは……名前はわからないって言ってたけど」
「そ、その庭、もしかしてジギタリスとか植わってないよね……?!」
「ジギタリス……? ああ、あるある。ピンクっていうか紫っぽい色の、大きな立派なのが……でも、なんで? あんた、花なんて詳しかったっけ?」
庭に生えた、名前のわからない花。しかも、ジギタリスと一緒……?!
オレは花瓶を抱いたまま自分の部屋に戻り、バッグに入れっぱなしだったスマホを手に取った。
希望をなくした悲しみも、失恋のような空しさも、頭からすっ飛んだ。湧き上がる興奮で、身体中が火照る。キッチンと自室を急いで往復したせいか、軽く、めまいもした。
だけど、いてもたってもいられない。
だって、これがあれば薬が作れる。もっと研究ができる……!
はやる気持ちを抑えつつ、残っていた着信履歴からマルカさんに電話をかける。
今、どうしてるかな? 出てくれるといいけど……三度、四度コールして、繋がった。
「……風音寺さん?」
「あ、あの、マルカさん? 見つけたんです、あの花……!」
オレは前置きもなく、事の顛末をマルカさんに話した。マルカさんは終始冷静な声で、相槌を打っていた。
「……というわけなんですけど……でもこの花、もう切り花になってるんです。このまま、花瓶に入れてて大丈夫ですか? 社長います? とりあえずの保存法とか教えてもらえれば……」
「社長は今、眠っています。昨夜から睡眠もとらず鬱々としていたので、お茶に睡眠導入剤を混ぜて強引に飲ませ、眠らせました」
「えっ……?!」
「あのままでは、今夜も眠らず過ごしたはずです。そうなると、社長もわたしも休めませんから……花は、そのままにしておいてください。今から、わたしがそちらに向かいます」
そう告げられた後、一方的に電話は切られた。
睡眠導入剤を無理やり、なんて、相変わらず恐ろしい。けれど、そうするほかなかったのかもしれないとも思う。社長の状態を一瞬しか見てないオレには、なんとも言えない話だ。
オレは台所に行き、両親に「今から友達が来るから、ちょっと出てくる」と伝えた。
自分に用意されていたとんかつを、ふた切れだけ口に詰め込んだ。冷蔵庫を開け、父親用のエナジードリンクを勝手にいただく。どうにか飲み干し、玄関を出た。花瓶を抱え、家の門扉の前に座る。そこでじっと、マルカさんを待った。
十数分後、マルカさんの車が家の前に着いた。運転席の窓が開く。
「どうされたのですか。こんなところで待っているなんて。お部屋まで、うかがいましたのに」
案の定だ。マルカさんは、白衣で来た。白衣姿の女性を家に呼び付けたとなれば、オレは家族から変態の烙印を押されること間違いない。外で待っていて正解だったな、うん。
「今日は、家に家族がいるんで……とりあえず、乗っていいですか?」
オレは助手席側に回り、車に乗り込んだ。そのまま近所のスーパーに向かってもらい、駐車場の端っこに車を停めてもらった。辺りは薄暗く、スーパーの看板をライトが照らしている。
「あの、これなんですけど」
着くなりさっそく、オレは抱きしめていた花瓶をマルカさんに差し出した。
「なに、もう変な子ね。それはさっき、裏の奥さんにもらったのよ。お庭に生えてたお花なんだって。白いのは……名前はわからないって言ってたけど」
「そ、その庭、もしかしてジギタリスとか植わってないよね……?!」
「ジギタリス……? ああ、あるある。ピンクっていうか紫っぽい色の、大きな立派なのが……でも、なんで? あんた、花なんて詳しかったっけ?」
庭に生えた、名前のわからない花。しかも、ジギタリスと一緒……?!
オレは花瓶を抱いたまま自分の部屋に戻り、バッグに入れっぱなしだったスマホを手に取った。
希望をなくした悲しみも、失恋のような空しさも、頭からすっ飛んだ。湧き上がる興奮で、身体中が火照る。キッチンと自室を急いで往復したせいか、軽く、めまいもした。
だけど、いてもたってもいられない。
だって、これがあれば薬が作れる。もっと研究ができる……!
はやる気持ちを抑えつつ、残っていた着信履歴からマルカさんに電話をかける。
今、どうしてるかな? 出てくれるといいけど……三度、四度コールして、繋がった。
「……風音寺さん?」
「あ、あの、マルカさん? 見つけたんです、あの花……!」
オレは前置きもなく、事の顛末をマルカさんに話した。マルカさんは終始冷静な声で、相槌を打っていた。
「……というわけなんですけど……でもこの花、もう切り花になってるんです。このまま、花瓶に入れてて大丈夫ですか? 社長います? とりあえずの保存法とか教えてもらえれば……」
「社長は今、眠っています。昨夜から睡眠もとらず鬱々としていたので、お茶に睡眠導入剤を混ぜて強引に飲ませ、眠らせました」
「えっ……?!」
「あのままでは、今夜も眠らず過ごしたはずです。そうなると、社長もわたしも休めませんから……花は、そのままにしておいてください。今から、わたしがそちらに向かいます」
そう告げられた後、一方的に電話は切られた。
睡眠導入剤を無理やり、なんて、相変わらず恐ろしい。けれど、そうするほかなかったのかもしれないとも思う。社長の状態を一瞬しか見てないオレには、なんとも言えない話だ。
オレは台所に行き、両親に「今から友達が来るから、ちょっと出てくる」と伝えた。
自分に用意されていたとんかつを、ふた切れだけ口に詰め込んだ。冷蔵庫を開け、父親用のエナジードリンクを勝手にいただく。どうにか飲み干し、玄関を出た。花瓶を抱え、家の門扉の前に座る。そこでじっと、マルカさんを待った。
十数分後、マルカさんの車が家の前に着いた。運転席の窓が開く。
「どうされたのですか。こんなところで待っているなんて。お部屋まで、うかがいましたのに」
案の定だ。マルカさんは、白衣で来た。白衣姿の女性を家に呼び付けたとなれば、オレは家族から変態の烙印を押されること間違いない。外で待っていて正解だったな、うん。
「今日は、家に家族がいるんで……とりあえず、乗っていいですか?」
オレは助手席側に回り、車に乗り込んだ。そのまま近所のスーパーに向かってもらい、駐車場の端っこに車を停めてもらった。辺りは薄暗く、スーパーの看板をライトが照らしている。
「あの、これなんですけど」
着くなりさっそく、オレは抱きしめていた花瓶をマルカさんに差し出した。
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