泡沫の如く儚い平和

第壱拾六話

　出掛けた先にいたのは、おいらの幼馴染の雉だった。

「あ、泡沫だ。」
「あ、じゃない。あんたがおいらを呼んだんだろ。」

　雉の前じゃ訛りを隠して喋ってた。雉は基本的にあちこち飛び回ってるから、口調は何処にでも合わせられるらしいけど、おいらは自分の口調が他とは違うと分かった時、恥ずかしくて、家族以外の前じゃ隠す事にしている。

「うーんとさ、実はオラ最近情報屋を初めてさ、取引しない?」
「しない。」
「即答。」

　別に自分には欲しい情報なんて物は無いし、そもそも取引が出来る程の金は持っていない。
　雉は少し不満そうな顔をしてから笑った。

「ま、何時かその内取引するかもしれないから、覚えといてよ。」

　それだけ言って雉は何処かへ行ってしまった。
　一人その場に残されたおいらは、暫くぼうっと空を眺めていた。青い空にゆっくりと流れる白い雲。もうそれだけで本当に平和だなと思えた。
　にしても今日は雉が何処かに連れて行くと思って一日予定開けたけど、たったこれだけの用事なら時間が余る。今帰っても槿花が煩いだろうし、本当に如何しようか。と、そんな事を考えていると空を一瞬、何か明るい物が飛んで行ったような気がした。

「ん?」

　あまりにも一瞬だったからよく分からなかったけど、何と無く鳥の形をしていた様な、そんな気がする。

「………………ま、良いか。」

　これ以上此処にいても何も無いから、おいらは帰る事にした。