朝餉添えの贄

第九話

「……………………」

　如何したら良いのか分からず膝を抱えた。

「如何して怒ってるんだろう。」
「暁光ってホントに独占欲強いな。」
「!!」

　知らない内に真後ろに灰色の髪をした男の子が立っていた。雀さんよりは背が高いけど、見た目は普通に子供。

「あ、あの、貴方は……………」
「おいらは鳩。まぁ一応暁光の知り合いの情報屋だ。」
「そ、そうですか。」
「にしても随分と怒鳴ってたな、あれだけの大声は久々に聞いた。あんた、鴉に会ってただろ。」
「あの、鴉さんって悪い人なんですか?」

　私が質問すると鳩さんは数回頷いた。

「悪いと聞かれれば、まぁ悪いって答えるだろうな。」
「話しをした感じだと、悪い人には見えなかったんですが。」
「そんなの初めて会った奴には分からないだろ。」

　確かにそうかもしれないけど、でも鴉さんは優しそうな人だし、暁光さんはとっても怖そうな人だし。

「ま、あんまり暁光の気に障る様な事はしない方が良いだろうな。」
「其れが分かったら苦労しません。」
「だよなー。」

　お手上げと言った感じで鳩さんは手を軽く上げた。
　暁光さんが怒った理由は分からないけど、でも今は暁光さんが怖くて仕方が無い。
　数日の内に暁光さんは何度も豹変している。理由は全部私。全部私が悪い。何時だって悪いのは私だった。

「あの、鳩さん。」
「ん?」
「私元々生贄だったんですけど。」
「知ってる。」
「え!?」
「だから言っただろ?おいらは情報屋、あんたの事も調べ済み。」

　と言う事は私の住んでいた村の事も、もしかしたら知っているのかもしれない。だとしたら私が此処に居る事がどんな事か、きっと分かっている。

「あの、私村に帰らないといけないんですけど、どうしたら……………」
「普段は暁光のやる事に対して基本的には肯定はしないが、今回ばっかりは暁光に賛成だ。」
「え?」
「あの村には厄神が住み付いてる、そんな奴の居る所に戻したって碌な事にはならない。」
「あの村には守り神様が………………」
「そんな奴、あの村には居ない。」

　そんな、だったら村に伝わるあの言い伝えは一体何だったの?
　私はそれをそのまま鳩さんに聞いた。

「…………あの言い伝えはあの村に住み付く厄神が作った物だ。」
「い、一体何の為にですか?」
「あんたみたいな奴を確実に喰う為だよ。」
「!?」
「暁光はあんな奴だけど、この家の中にいる限りは安全だ。だから暁光はあんたを此処に連れて来たんだと思うけど。」

　そう言われて私は俯いた。
　今の鳩さんのお話が本当なら、暁光さんは私を守る為に。でも如何して?あの時初めて会っただけの人が、どうして私を助けるの?

「別においらはあんたの事調べた事以外何も知らないから、あんたが村に帰りたいって言っても大して止めない。でもな、少なくとも暁光はあんたに死んでほしくないから此処に連れて来たって事は頭に入れといた方が良いからな。」

　そう言って鳩さんは部屋から出て行ってしまった。
　一人残された私は布団の上で横になった。