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第壱拾話
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「あぁ糞ッ!!!」
異常な程に腹が立って俺は壁を思い切り蹴った。
「あんさんそんなに腹立てて、そんなに嫌だったんっすか?」
「嫌だとかの話じゃねぇだろ!!!」
そう言ってもう一度壁を思い切り蹴った。
何だってあいつが来てんだよ。
氷柱をあの社から連れ出す時、俺は細心の注意を払った。周囲には虫すら寄せ付けないようにもした。だから雀や鳩以外、氷柱が此処にいる事は知らない筈なんだよ。
だったら何で知ってる?雀や鳩が情報を流した?いや、あの二人はあいつを嫌ってるから情報を流すなんて事はしないし、そもそも近付く事すらしない。
考えても分からなくて、腹が立って仕方が無いから外に出た。
外に出たって気分が晴れる訳でも無く、俺は腹を立てたままその辺をほっつき歩いていた。
「如何してそんなにお怒りで?暁光さん。」
「!!」
すぐに振り返ると、其処に居たのは声からして何となく分かってたけど鴉だった。
「鴉!!」
「どうも暁光さん、お久しぶりですね。」
「何で手前ェが此処にいる!?」
「今日はとても天気が良い。この青い空はまるで彼女の瞳の様ですね。」
「人の質問に答えろ!!!」
こいつのこの態度は本当に嫌いなんだよ。
「それにしても、女性に手を上げるなんて、随分と乱暴なんですね。」
「煩ェよ!!!」
俺は鴉に殴り掛かると、大振りだったせいで鴉に簡単に避けられた。
「本当に乱暴な方だ、そう言う方は私は嫌いです。」
「俺は手前ェのその態度が死ぬ程嫌いだよ!!!」
「でしたら死んでも構いませんよ?その方が彼女を簡単に奪う事が出来ますから。」
やっぱり氷柱が目的だった。
「そんなにあいつを喰いたいか?」
「喰べる?いいえとんでもない、私は彼女を愛でたいだけですよ。永遠にね。」
「!!!」
すぐに蹴りを入れると鴉に腕で受け止められた。
足を戻すと地面を蹴って後ろに飛び、鴉と距離を取った。
「怖い方だ、とてもね。」
「帰れ、今すぐに帰れ!!!」
「そうですね、貴方の傍に居れば彼女と会えると思っていたのですが、一緒に居ないなら残念ですが一旦退く事にしますか。」
そう言った瞬間に鴉の周囲に黒い羽根が大量に舞うと、羽根が消えた時に鴉の姿は無かった。
「…………帰ったか。」
俺は大きく息を吐いた。
空を見上げて暫くその場に佇んでいた。澄んだ青色、氷柱の目とよく似た綺麗な青色だ。
あの日の青空は燃える赤色で塗り潰されていて、其れがどれだけ綺麗な青色かは分からなくなってしまっていた。
物が焼ける嫌な臭いが鼻を突いていた。
叫び声が周囲に響いていた。あれは、悲鳴だったのか、それとも何か別の叫び声だったのか、正直俺も分からない。
異常な程に腹が立って俺は壁を思い切り蹴った。
「あんさんそんなに腹立てて、そんなに嫌だったんっすか?」
「嫌だとかの話じゃねぇだろ!!!」
そう言ってもう一度壁を思い切り蹴った。
何だってあいつが来てんだよ。
氷柱をあの社から連れ出す時、俺は細心の注意を払った。周囲には虫すら寄せ付けないようにもした。だから雀や鳩以外、氷柱が此処にいる事は知らない筈なんだよ。
だったら何で知ってる?雀や鳩が情報を流した?いや、あの二人はあいつを嫌ってるから情報を流すなんて事はしないし、そもそも近付く事すらしない。
考えても分からなくて、腹が立って仕方が無いから外に出た。
外に出たって気分が晴れる訳でも無く、俺は腹を立てたままその辺をほっつき歩いていた。
「如何してそんなにお怒りで?暁光さん。」
「!!」
すぐに振り返ると、其処に居たのは声からして何となく分かってたけど鴉だった。
「鴉!!」
「どうも暁光さん、お久しぶりですね。」
「何で手前ェが此処にいる!?」
「今日はとても天気が良い。この青い空はまるで彼女の瞳の様ですね。」
「人の質問に答えろ!!!」
こいつのこの態度は本当に嫌いなんだよ。
「それにしても、女性に手を上げるなんて、随分と乱暴なんですね。」
「煩ェよ!!!」
俺は鴉に殴り掛かると、大振りだったせいで鴉に簡単に避けられた。
「本当に乱暴な方だ、そう言う方は私は嫌いです。」
「俺は手前ェのその態度が死ぬ程嫌いだよ!!!」
「でしたら死んでも構いませんよ?その方が彼女を簡単に奪う事が出来ますから。」
やっぱり氷柱が目的だった。
「そんなにあいつを喰いたいか?」
「喰べる?いいえとんでもない、私は彼女を愛でたいだけですよ。永遠にね。」
「!!!」
すぐに蹴りを入れると鴉に腕で受け止められた。
足を戻すと地面を蹴って後ろに飛び、鴉と距離を取った。
「怖い方だ、とてもね。」
「帰れ、今すぐに帰れ!!!」
「そうですね、貴方の傍に居れば彼女と会えると思っていたのですが、一緒に居ないなら残念ですが一旦退く事にしますか。」
そう言った瞬間に鴉の周囲に黒い羽根が大量に舞うと、羽根が消えた時に鴉の姿は無かった。
「…………帰ったか。」
俺は大きく息を吐いた。
空を見上げて暫くその場に佇んでいた。澄んだ青色、氷柱の目とよく似た綺麗な青色だ。
あの日の青空は燃える赤色で塗り潰されていて、其れがどれだけ綺麗な青色かは分からなくなってしまっていた。
物が焼ける嫌な臭いが鼻を突いていた。
叫び声が周囲に響いていた。あれは、悲鳴だったのか、それとも何か別の叫び声だったのか、正直俺も分からない。
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