14 / 39
第壱拾四話
しおりを挟む
部屋の中に来てそっと降ろされて見事に腫れている右脚を見てくれた。鈍痛がしていて、正直結構辛い。
「鶴、これやった奴は?」
「妾が抹消しておいたぞ?」
「良くやった。」
サラッと怖い会話をされた。
「兎に角、治すのに集中するのでな、暁光、そなたは一度部屋から出ておれ。」
「あ?」
「気が散るのじゃ。」
「んだと手前ェ!!!」
「ほれ、早く治さんと何かしらの後遺症が残るぞ?」
鶴さんがそう言うと暁光さんは嫌だと言いつつも、結局部屋から出て行った。
暁光さんが部屋から出て行くと、鶴さんはふぅと息を吐いてから私の見事に腫れている右脚に手を翳した。そのまま目を瞑って深呼吸をすると、鶴さんの手から淡い光が放たれた。
最初はじくじくと痛んでいたけど、段々と痛みが引いていき、そして腫れも引いて行った。その頃には痛みも無くなっていた。
完全に治ると鶴さんは手を離して目を開いた。
「うむ、我ながら上出来じゃのう。」
「あ、あの、ありがとうございます。」
「終わったか!!?」
凄い勢いで暁光さんが扉を開けて部屋の中に入って来た。
「全く、大人しく出来ぬのかえ?」
「お前氷柱が大怪我負ってたのに落ち着いてられるか!!!」
そう言ってからぐるんと私の方を見てきた。
「お前本当に大丈夫か!?」
「あ、えっと、はい。」
「本当だろうな!?本当だな!!?」
私の肩を勢い良く掴むと、流石に痛かった。
「いっ!」
「暁光、そなたのせいでまた怪我をしたらどうするのかえ?」
「あ!!」
慌てて手を離すと、今度は肩を優しく擦ってくれた。
「ごめんな。」
「………………」
暖かい。
暁光さんは普段と怒った時の態度が全然違う。もう別人なんじゃないかって思うくらいに差が激しい。
私は暁光さんの手を掴んだ。
「氷柱?」
「ごめんなさい。」
「あ!?」
「心配ばっかり掛けてごめんなさい。」
私の言葉に暁光さんは驚いていた。
「暁光さんが怒る時、私の事心配してくれてたんですよね?」
「っ!!あ、えっと………………」
「そなたの愛情表現は相変らず分かり辛いのう。」
「煩ェ!!!」
「ふふふ、怖いのう。」
「本当に。ふっ、あはは!」
「!!………氷柱…………」
笑った。
随分と久しぶりに笑っちゃった。
あぁ、でも笑うって良いな。何かとっても楽しくて、幸せな気持ちになる。雀さんがいつも楽しそうにしている理由が分かった気がする。
私が笑っていると、暁光さんも笑って、私の頭を撫でて部屋から出て行った。
「全く、素直なんだか、素直じゃないんだか、分からん奴じゃのう。」
「そうですね。」
「さて、妾はそろそろ行くとするかのう。」
そう言って鶴さんは立ち上がった。
「行くって、何処にですか?」
「さて何処であろうな。妾は鶴、渡りをする鳥じゃ。気の向くまま風の向くまま、妾の行こうと思うた所へ行くだけじゃ。」
「何か、かっこいいですね。」
「じゃが、気になる事があるでの、暫し此処いらにいるとするかのう。」
「そうですか。なら、偶には会いに来て下さい。」
「うむ、暁光が入れてくれるなら、じゃがのう。」
そう言って鶴さんは部屋から出て行った。
私は暫く楽しい気持ちのまま布団の上に寝転がっていたけれど、何時の間にか眠気が襲って来て眠ってしまった。
「鶴、これやった奴は?」
「妾が抹消しておいたぞ?」
「良くやった。」
サラッと怖い会話をされた。
「兎に角、治すのに集中するのでな、暁光、そなたは一度部屋から出ておれ。」
「あ?」
「気が散るのじゃ。」
「んだと手前ェ!!!」
「ほれ、早く治さんと何かしらの後遺症が残るぞ?」
鶴さんがそう言うと暁光さんは嫌だと言いつつも、結局部屋から出て行った。
暁光さんが部屋から出て行くと、鶴さんはふぅと息を吐いてから私の見事に腫れている右脚に手を翳した。そのまま目を瞑って深呼吸をすると、鶴さんの手から淡い光が放たれた。
最初はじくじくと痛んでいたけど、段々と痛みが引いていき、そして腫れも引いて行った。その頃には痛みも無くなっていた。
完全に治ると鶴さんは手を離して目を開いた。
「うむ、我ながら上出来じゃのう。」
「あ、あの、ありがとうございます。」
「終わったか!!?」
凄い勢いで暁光さんが扉を開けて部屋の中に入って来た。
「全く、大人しく出来ぬのかえ?」
「お前氷柱が大怪我負ってたのに落ち着いてられるか!!!」
そう言ってからぐるんと私の方を見てきた。
「お前本当に大丈夫か!?」
「あ、えっと、はい。」
「本当だろうな!?本当だな!!?」
私の肩を勢い良く掴むと、流石に痛かった。
「いっ!」
「暁光、そなたのせいでまた怪我をしたらどうするのかえ?」
「あ!!」
慌てて手を離すと、今度は肩を優しく擦ってくれた。
「ごめんな。」
「………………」
暖かい。
暁光さんは普段と怒った時の態度が全然違う。もう別人なんじゃないかって思うくらいに差が激しい。
私は暁光さんの手を掴んだ。
「氷柱?」
「ごめんなさい。」
「あ!?」
「心配ばっかり掛けてごめんなさい。」
私の言葉に暁光さんは驚いていた。
「暁光さんが怒る時、私の事心配してくれてたんですよね?」
「っ!!あ、えっと………………」
「そなたの愛情表現は相変らず分かり辛いのう。」
「煩ェ!!!」
「ふふふ、怖いのう。」
「本当に。ふっ、あはは!」
「!!………氷柱…………」
笑った。
随分と久しぶりに笑っちゃった。
あぁ、でも笑うって良いな。何かとっても楽しくて、幸せな気持ちになる。雀さんがいつも楽しそうにしている理由が分かった気がする。
私が笑っていると、暁光さんも笑って、私の頭を撫でて部屋から出て行った。
「全く、素直なんだか、素直じゃないんだか、分からん奴じゃのう。」
「そうですね。」
「さて、妾はそろそろ行くとするかのう。」
そう言って鶴さんは立ち上がった。
「行くって、何処にですか?」
「さて何処であろうな。妾は鶴、渡りをする鳥じゃ。気の向くまま風の向くまま、妾の行こうと思うた所へ行くだけじゃ。」
「何か、かっこいいですね。」
「じゃが、気になる事があるでの、暫し此処いらにいるとするかのう。」
「そうですか。なら、偶には会いに来て下さい。」
「うむ、暁光が入れてくれるなら、じゃがのう。」
そう言って鶴さんは部屋から出て行った。
私は暫く楽しい気持ちのまま布団の上に寝転がっていたけれど、何時の間にか眠気が襲って来て眠ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる