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変わらぬ執着と近づく悪意
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しおりを挟む「あれ、この前のお姉さんじゃん。また会ったね」
「……」
ひらひらと手を振られる。それを黙って見つめていれば、私の目の前で、何かがブチリと切れたような音がした。
「椿、アンタねぇ……ふざけんじゃないわよ」
「……え、何? 何で美代さんはブチ切れてるわけ?」
「……テメェが何処で野垂れ死のうがこっちは知ったこっちゃねえがな、テメェの勝手で好きな女悲しませてんじゃねーぞ」
前にゲームセンターでホッケーをした時と同じオーラを纏っている美代さんは、怖い顔をして椿くんの胸倉を掴む。そんな美代さんを窘めるように「まぁまぁ、一旦落ち着きなって。素が出ちゃってるから」と、萌黄さんがやんわり肩を叩いた。
胸倉を掴まれた椿くんは、訳が分からないといった顔をして小首を傾げながら、美代さんの隣に立つ萌黄さんに視線を向けている。
「本当に何なの? 意味がわからないんだけど」
「いやー、それは自分の胸に手を当てて、よ~く考えてみた方がいいんじゃない?」
「……はぁ?」
眉根を寄せた椿くんは、やっぱり不思議そうな顔をして首を傾げながら、掴まれている美代さんの手をそっと払った。そして、近くにあった椅子を引いてきたかと思えば――何故か私の真横に腰掛ける。
「というかお姉さんさ、やっぱり美代さんたちの知り合いだったんだ。それであの時、俺に声を掛けてきたんだよね?」
「っ、私は……」
「それならそうと、初めから言ってくれたらよかったのに。身体目的の女だって勘違いしちゃったじゃん」
軽薄な笑みを湛えてそんなことを言われてしまえば、やっぱり、胸がツキリと痛む。
だけど次の瞬間、椿くんは、派手な音を立てて地面に倒れ込んでいた。
「っ、慎二さん!?」
いつもの可愛らしい声に戻った美代さんの、悲鳴じみた声が響く。
私は目の前の光景に、口許を抑えて固まってしまった。
「言ったよな。泣かせるような真似はすんなって。嬢ちゃんにとって、オマエのそばにいることが一番の幸せだと思ってたんだが……これ以上傷つけるような真似すんなら、もう遠慮はしねーぞ」
そう言った皇さんは、ぎらついた目で椿くんを見下ろしている。
「いった……皇さんもさぁ、さっきから何言ってるわけ? 嬢ちゃんって、そこにいるお姉さんのことを言ってんの?」
口の端が切れて滲んだ血を手の甲で拭った椿くんは、座りこんだままの体勢で、私を見上げてくる。
「ふーん、そっか。皇さんはこのお姉さんのことが好きなんだ?」
「……だったらどうすんだ」
「別にいいんじゃない? 俺には関係ないことだし」
「っ、オマエなぁ……!」
「あ、あの!」
再び殴りかかりそうな雰囲気の皇さんの腕を掴んで、止めに入る。
「私は、何も気にしてないです。大丈夫なので」
「嬢ちゃん……」
物言いたげな顔をした皇さんだったけど、私の顔を見て、握っていた拳を下ろしてくれた。
ホッと安堵の息を漏らしていれば、座りこんでいた椿くんが立ち上がる。そして、おもむろに距離を詰めてきたかと思えば、顔を近づけられた。
反射で一歩下がるけど、椿くんは開いた距離を縮めるようにまた顔を近づけてくる。
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