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微かな予感には蓋をしたままで
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しおりを挟む「うん、お盆休みに実家に帰省しようかなと思ってるんだけど、椿くんは予定とかあるのかなって」
「うーん、俺は特にないかなぁ」
「そっか。……あのね、椿くんさえ良ければなんだけど……」
「うん?」
いつか提案してみようと考えていたことを、今なら言えるかもしれないと、思いきって口にしてみる。
「……一緒に、ウチに遊びにこない?」
「え? 百合子さんの地元にってことだよね? ……俺も付いていっていいの?」
「うん。その、椿くんさえ嫌じゃなければ、両親にも会ってもらえたらなって、思ってたんだけど……」
――さすがに嫌かな? 付き合ってるだけの関係で、家族に会ってほしいとか……重いとか思われたらどうしよう。
一瞬、ネガティブな考えが脳裏を過ぎったけど、椿くんの顔を見たら、そんな考えはすぐに吹き飛んでしまった。
「……うん、行きたい。百合子さんのご両親にも、ぜひ挨拶したいな」
椿くんは、すごく嬉しそうに笑っている。その表情から、嫌がるどころか、両親に会うのを楽しみにしてくれていることが伝わってくる、
「ありがとう。……ふふ、でも、こんなカッコいい男の子を連れて帰ったら、お母さんたちびっくりするだろうな」
「本当? 百合子さんに相応しい彼氏だって認めてもらえたらいいけど……俺が世界で一番百合子さんを愛してます、一生かけて幸せにしますって伝えてもいい?」
「そ、れは別にいいけど……そんなこと言ったら、結婚詐欺とか疑われちゃいそう」
だって、今まで浮いた話の一つもなかった娘が、こんなカッコいい年下彼氏を連れ帰ってきて、しかもそんな甘い言葉を吐こうものなら……騙されてるんじゃないかって、ウチの親なら絶対に心配してくると思う。
「ふは、結婚詐欺って……!」
何かツボに入ったのか、椿くんはクスクスと笑っているけれど、これは冗談で言ってるわけじゃないからね。
「……まぁ、大丈夫だよ。もし疑われても、ご両親に信じてもらえるまで、何度だって気持ちを伝えるから。百合子さんを幸せにするのは俺でありたいし、俺を幸せにしてくれるのも、世界で百合子さんだけですって」
優しい顔で笑う椿くんの台詞が、まるでプロポーズみたいに聞こえてしまって、私は嬉しさと恥ずかしさで熱を持った顔を逸らす。――まぁ、私が照れていることなんて、当然椿くんにはお見通しだったので、いつものように揶揄われてしまったんだけど。
「本番はこんなもんじゃないから、楽しみにしててね」って。
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