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3章:王都招集
閑話:アピールチャンス。後編★
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朝起きて私はすぐに出かける準備をする。今日は念願のユウ様とのデートだ。
そして、みんなは気を使ってか、朝早くどこかへ出かけてしまった。
私とユウ様は、昼前に宿を出た。
こんなことをするのは初めてだ。それはきっとユウ様も同じだろう。
隣を歩いていても会話がない。お互い何を話していいかわからないのだ。
すると、ユウ様から話しかけてきた。
「すまん。デートと言われても、どこに行けば分からない。ティナはどこか行きたい場所はあるか?」
「そうですね、とりあえず。市場でも見て回りましょうか」
ユウ様は頷き、私たちは一般区の市場へと足を進める。
市場にはいろいろなものが売っている。王都であるということもあり、かなり品ぞろえがいいほうだと思う。
私は修行とかが忙しく、こういうところがとても新鮮に見えた。
そんな私を見てユウ様はぷっと噴出した。
「ティナのそんな笑顔初めて見たかもな」
「え、そ、そうですか?」
「あぁ、目がキラキラしてる」
どうやら私は好奇心を抑えられていないようだ。
「へ、変ですか?」
「そんなことない。そんなティナもいいじゃないか」
ユウ様はこういってくれる。
なら、一日ぐらいはめを外してもいいよね?
「ユウ様! 早く行きますよ」
「え、ちょっと!」
私が走って、店に向かうと慌ててユウ様もついて来る。
私は二人横に並んで、市場を歩きだした。
「あれは、まさしくデート」
「でもティナとユウちゃんのせっかくのデートこうして覗き見ていいのかな?」
そう後ろで、ばれないようにユウとティナの様子を伺うのは、ムラクモ、エル、ヨリヒメ、ヒサメである。
フロンもついていきたそうにしていたが、案の定ラースに連れてかれていた。ノワールもシーナにつかまっている。
「私は反対です」
「とか言って、ちゃんと付いてきてるエルちゃんがこうして、デートの行く末が気になってるのおねぇーさんちゃんと知ってるよぉ?」
「今はそんなことどうでもいい……。見失うから早く追う」
ムラクモは3人を置いて、ユウを追いかける。
うまく人や物で隠れながらユウの動向を追う。
そして文句を言っていた。ヨリヒメ、エルもちゃんと付いてきている。ヒサメはさっきからムラクモと並走している。
「どうやら、あの店に入るようですよ」
ヒサメが指さす先は料理屋だった。
「とりあえず。何か食べようか」
ユウ様がそう切り出した。
実際私たちは昼ご飯をまだ食べていない。私もいい具合にお腹がすいたところだ。
「そうですね。ではあそこに行ってみましょう」
私は近くの料理屋を指さし、ユウ様と一緒にそこに向かった。
「いらっしゃいま……」
俺たちの目の前に立っていたのはウェイター姿のミラだった。
「え? え、なんで貴方達がここに……」
「いえ、ちょっと……」
私が、なんて言い訳しようか悩んだとき、ミラの後ろからあらに見知った顔が見えた。
「あれ? ユウさんにティナさんじゃないですか。いらっしゃいませ」
「なんだ、ミラもアーミルも昼間はどこにもいないなと思っていたら、こんなところで働いてたのか」
「えぇ、もうオークとかに襲われるのがいやになっちゃってね」
もうここで働いていることがバレ、諦めたミラがそう答える。
そして私とユウ様が二人でこんなところにいる理由を悟った、アーミルはニヤニヤし始めた。
「それでは、二名様ご案内です。どうぞこちらへ」
私たちがアーミルに案内されたのは窓側の席だった。
「今なら知り合いサービスしちゃいますよ。はい、こちらメニューです」
ユウ様が、メニューを受け取り頼むものを決めると、私にメニューを渡す。
「ご注文はお決まりですか?」
「あぁ、これとコーヒーを頼む」
「私はこれで」
メニューを聞いた、アーミルは店の奥へと下がる。
ミラがこちらをたまにチラ見してくる。
そして、料理が届き二人でのんびり食べる。実際これだけでも幸せだ。
私たちが料理を食べ終わると同時に、アーミルが大きめのコップを持ってくる。
そのコップにはハート形で交差しているストローが2本あった。
「なんで、この世界にまでこんなものがあるんだよ」
「え? どうかしました? こちら当店特別サービス。|カップル(・・・・)ジュースでございまーす」
「おい!」
「それでは~」
アーミルはユウ様の言葉を無視して店の奥へと戻っていく・
「これは何ですか?」
「これはだな、恋人同士が同時にジュースを飲むものだ」
「こ、恋人……。ごくりっ」
私はようやくこのハートの意味が分かった。
「飲みたいなら、飲んでもいいぞ」
「え? ユウ様は一緒に飲んでくれないのですか?」
「俺も飲むのか?」
私はずるいと分かっていながらも、ユウ様に視線を送り続ける。
ユウ様はこういう目を裏切れない。それを知っているから。
「わかったよ。で、デートだもんな」
「はい♪」
私はストローに口をつける。すると目の前にユウ様の顔が迫ってくる。
もう少しで、鼻が当たる。そんな距離だ。
こんなことをしていたら当然周りから視線が集まる。それは好機の目と嫉妬の目線。
だが今はそれもいいかなと思えた。
「ありがとうございました~。またのお越しをお待ちしておりま~す」
「もう二度と来なくていいわよ」
私たちは二人の真逆のセリフを聞き、店を後にした。
私たちは残りの時間を、いろんな店を見て回った。
その中で、私はアクセサリーのところで、月の紋様が描かれたタリスマンを見つけた。
だが、今の私にこれを買うだけのお金はない。
私はそれをあきらめ、店を出た。
「なんか、とても甘酸っぱいわね」
「ん。」
ムラクモ率いる4人はいまだに二人を追いかけていた。
「そろそろボク、お腹すいてきたんだけど」
「魂鬼(コンキ)のくせに何を言ってるのですか?」
「おいしいものからは逃れられないんだよ」
エルは、ため息をついた。
「私もユウとあのジュース飲みたい」
「おねぇーさんも」
「ボ、ボクは別に……」
「私も、別に羨ましいわけでは……」
素直な二人と素直になれない二人は遠く離れたユウたちを追った。
俺もデートなんてものは初めてだ。
まさかこの世界に、カップルジュースがあったことには驚きだが、楽しい一日を過ごせたと思う。
俺はティナには特にお世話になっている。
なにか、プレゼントしてやりたい。なんてことも思っていた。
だから俺はティナが何かを、物欲しそうに見ていたのを見逃さなかった。
「これは世話になった分だからな」
俺はティナが見ていないうちにそのタリスマンをもって会計へと向かった。
「さぁ、もう日も暮れそうですし、宿に戻りますか?」
「いや、最後によりたいところがある」
ユウはそう言ってティナをある場所へと連れて行った。
その場所は王都の中でも高い位置にある、展望台だった。
ユウははここをレジーナに教えてもらっていた。夕陽を見るにはおすすめだと。
ユウとティナはベンチに座り、夕日を見つめていた。
「きれいですね」
「あぁ、きれいだな」
「今日はありがとうございました。私のわがままに付き合っていただいて」
「いや、いい。俺も楽しかったしな。他ならぬティナの頼みだ。俺ができることなんでもとは言えないが、付き合ってやる」
「私はそんなユウ様が大好きなんです……よ?」
ティナの口からはすらっとそんな言葉が出てきた。
それを聞いたユウの顔は赤く染まる。
それと同時にユウはずっと付けてきていた、|4人(・・)の気配が去っていくのに気が付いた。
「ふっ、そうか」
気を使われていることに気が付いたユウはふっと笑ってどう答えた。
「な、なんで笑うんですか!」
そんなユウを見て、ティナは頬を膨らませる。
「いや、何でもない。それで、だな」
「はい?」
「ちょっとティナに渡したいものがある」
「わ、私にですか?」
「ちょっと、目を閉じてくれないか?」
「え?」
そういったユウの言葉を聞いたティナの顔は真っ赤に染まる。
そして、ユウはベンチに手を突き、ティナに迫っていく。
「あの、いやその……んっ」
ティナは目を閉じてユウがしようとしていることを待つ。
そして、ティナの肩にユウの手が置かれる。
「ん、もういいぞ」
ティナが思っていたことはされず、ユウから目を開けてもいいと言われてしまった。
そして、ティナが何をされたのかと、自分の体を見ると、首にはさっき見ていた、月の模様が入ったタリスマンがあった。
「あの、これって……」
「あぁさっきの店で買っておいたんだ。悪い魔法から身を守ってくれる効果があるみたいだ。ティナにはお世話になってるからな、そのお礼だ」
ユウは頬を書きながらそう答えた。
「でも、これ結構高い……」
「ティナには傷ついてほしくない。だから、これからも俺と一緒にいてくれ」
ユウから出た言葉はプロポーズにも聞こえる言葉だった。
「え、あっはい。もちろんです! ユウ様が嫌がっても傍に居ます! だからこれは大切にしますね。ユウ様ありがとうございます」
「あぁ、喜んでもらえたなら何よりだ」
ティナはタリスマンをギュッと抱きしめて、意を決したかのようにユウにこういった。
「私からもユウ様にプレゼントと言うかその……目を瞑ってください!」
「え? あ、俺もか?」
「はい!」
ティナがそう言うとユウはしぶしぶ目を閉じる。
ティナはユウの腰の横に手を突きそのまま、
ユウの唇に自分の唇を重ねた。
「んっ!?」
ユウが目を開くと、目の前には目を瞑ったティナの顔があった。
そして、唇が離れると、お互いに顔を赤く染める。
「こ、これがプレゼント?」
「は……い。これで二回目ですね。えへへ」
ティナはベンチから立ち上がり、気を紛らわさせるために走り出す。
「ユウ様~! 宿まで競争です!」
「は!? ちょっティナ! せこいぞ!」
ユウは慌ててティナを追いかける。
こうして、ティナのアピールチャンスは終わった。
宿に帰り部屋に向かうと、案の定ムラクモ、ヒサメ、エル、ヨリヒメが待っていた。
ティナは下で、アーナの仕事の手伝いをしている。
「おい、お前ら? 今日つけてたの気づいてるからな?」
「ん。そうだと思った」
ユウは4人の頭をグリグリしながら、ご飯を呼ばれるのを待つことにした。
その頃ティナは、庭で一人、タリスマンをぎゅっと抱いていた。
私は、結構大胆なことをしたなと、そう思っていた。だけど後悔はしていない。
ユウ様とカップルジュースに、贈り物までもらって、最後はキスまで。アピールには十分すぎる結果だった。
私の頭の中には、ユウ様が言ってくれたプロポーズまがいの言葉が流れていた。それを思い出すたび、顔が熱くなる。
「これだから、私は、いや私たちはユウ様から離れられないんだろうな」
私はそう思いながら、アーナ手伝いをするために宿の中へと戻った。
そして、みんなは気を使ってか、朝早くどこかへ出かけてしまった。
私とユウ様は、昼前に宿を出た。
こんなことをするのは初めてだ。それはきっとユウ様も同じだろう。
隣を歩いていても会話がない。お互い何を話していいかわからないのだ。
すると、ユウ様から話しかけてきた。
「すまん。デートと言われても、どこに行けば分からない。ティナはどこか行きたい場所はあるか?」
「そうですね、とりあえず。市場でも見て回りましょうか」
ユウ様は頷き、私たちは一般区の市場へと足を進める。
市場にはいろいろなものが売っている。王都であるということもあり、かなり品ぞろえがいいほうだと思う。
私は修行とかが忙しく、こういうところがとても新鮮に見えた。
そんな私を見てユウ様はぷっと噴出した。
「ティナのそんな笑顔初めて見たかもな」
「え、そ、そうですか?」
「あぁ、目がキラキラしてる」
どうやら私は好奇心を抑えられていないようだ。
「へ、変ですか?」
「そんなことない。そんなティナもいいじゃないか」
ユウ様はこういってくれる。
なら、一日ぐらいはめを外してもいいよね?
「ユウ様! 早く行きますよ」
「え、ちょっと!」
私が走って、店に向かうと慌ててユウ様もついて来る。
私は二人横に並んで、市場を歩きだした。
「あれは、まさしくデート」
「でもティナとユウちゃんのせっかくのデートこうして覗き見ていいのかな?」
そう後ろで、ばれないようにユウとティナの様子を伺うのは、ムラクモ、エル、ヨリヒメ、ヒサメである。
フロンもついていきたそうにしていたが、案の定ラースに連れてかれていた。ノワールもシーナにつかまっている。
「私は反対です」
「とか言って、ちゃんと付いてきてるエルちゃんがこうして、デートの行く末が気になってるのおねぇーさんちゃんと知ってるよぉ?」
「今はそんなことどうでもいい……。見失うから早く追う」
ムラクモは3人を置いて、ユウを追いかける。
うまく人や物で隠れながらユウの動向を追う。
そして文句を言っていた。ヨリヒメ、エルもちゃんと付いてきている。ヒサメはさっきからムラクモと並走している。
「どうやら、あの店に入るようですよ」
ヒサメが指さす先は料理屋だった。
「とりあえず。何か食べようか」
ユウ様がそう切り出した。
実際私たちは昼ご飯をまだ食べていない。私もいい具合にお腹がすいたところだ。
「そうですね。ではあそこに行ってみましょう」
私は近くの料理屋を指さし、ユウ様と一緒にそこに向かった。
「いらっしゃいま……」
俺たちの目の前に立っていたのはウェイター姿のミラだった。
「え? え、なんで貴方達がここに……」
「いえ、ちょっと……」
私が、なんて言い訳しようか悩んだとき、ミラの後ろからあらに見知った顔が見えた。
「あれ? ユウさんにティナさんじゃないですか。いらっしゃいませ」
「なんだ、ミラもアーミルも昼間はどこにもいないなと思っていたら、こんなところで働いてたのか」
「えぇ、もうオークとかに襲われるのがいやになっちゃってね」
もうここで働いていることがバレ、諦めたミラがそう答える。
そして私とユウ様が二人でこんなところにいる理由を悟った、アーミルはニヤニヤし始めた。
「それでは、二名様ご案内です。どうぞこちらへ」
私たちがアーミルに案内されたのは窓側の席だった。
「今なら知り合いサービスしちゃいますよ。はい、こちらメニューです」
ユウ様が、メニューを受け取り頼むものを決めると、私にメニューを渡す。
「ご注文はお決まりですか?」
「あぁ、これとコーヒーを頼む」
「私はこれで」
メニューを聞いた、アーミルは店の奥へと下がる。
ミラがこちらをたまにチラ見してくる。
そして、料理が届き二人でのんびり食べる。実際これだけでも幸せだ。
私たちが料理を食べ終わると同時に、アーミルが大きめのコップを持ってくる。
そのコップにはハート形で交差しているストローが2本あった。
「なんで、この世界にまでこんなものがあるんだよ」
「え? どうかしました? こちら当店特別サービス。|カップル(・・・・)ジュースでございまーす」
「おい!」
「それでは~」
アーミルはユウ様の言葉を無視して店の奥へと戻っていく・
「これは何ですか?」
「これはだな、恋人同士が同時にジュースを飲むものだ」
「こ、恋人……。ごくりっ」
私はようやくこのハートの意味が分かった。
「飲みたいなら、飲んでもいいぞ」
「え? ユウ様は一緒に飲んでくれないのですか?」
「俺も飲むのか?」
私はずるいと分かっていながらも、ユウ様に視線を送り続ける。
ユウ様はこういう目を裏切れない。それを知っているから。
「わかったよ。で、デートだもんな」
「はい♪」
私はストローに口をつける。すると目の前にユウ様の顔が迫ってくる。
もう少しで、鼻が当たる。そんな距離だ。
こんなことをしていたら当然周りから視線が集まる。それは好機の目と嫉妬の目線。
だが今はそれもいいかなと思えた。
「ありがとうございました~。またのお越しをお待ちしておりま~す」
「もう二度と来なくていいわよ」
私たちは二人の真逆のセリフを聞き、店を後にした。
私たちは残りの時間を、いろんな店を見て回った。
その中で、私はアクセサリーのところで、月の紋様が描かれたタリスマンを見つけた。
だが、今の私にこれを買うだけのお金はない。
私はそれをあきらめ、店を出た。
「なんか、とても甘酸っぱいわね」
「ん。」
ムラクモ率いる4人はいまだに二人を追いかけていた。
「そろそろボク、お腹すいてきたんだけど」
「魂鬼(コンキ)のくせに何を言ってるのですか?」
「おいしいものからは逃れられないんだよ」
エルは、ため息をついた。
「私もユウとあのジュース飲みたい」
「おねぇーさんも」
「ボ、ボクは別に……」
「私も、別に羨ましいわけでは……」
素直な二人と素直になれない二人は遠く離れたユウたちを追った。
俺もデートなんてものは初めてだ。
まさかこの世界に、カップルジュースがあったことには驚きだが、楽しい一日を過ごせたと思う。
俺はティナには特にお世話になっている。
なにか、プレゼントしてやりたい。なんてことも思っていた。
だから俺はティナが何かを、物欲しそうに見ていたのを見逃さなかった。
「これは世話になった分だからな」
俺はティナが見ていないうちにそのタリスマンをもって会計へと向かった。
「さぁ、もう日も暮れそうですし、宿に戻りますか?」
「いや、最後によりたいところがある」
ユウはそう言ってティナをある場所へと連れて行った。
その場所は王都の中でも高い位置にある、展望台だった。
ユウははここをレジーナに教えてもらっていた。夕陽を見るにはおすすめだと。
ユウとティナはベンチに座り、夕日を見つめていた。
「きれいですね」
「あぁ、きれいだな」
「今日はありがとうございました。私のわがままに付き合っていただいて」
「いや、いい。俺も楽しかったしな。他ならぬティナの頼みだ。俺ができることなんでもとは言えないが、付き合ってやる」
「私はそんなユウ様が大好きなんです……よ?」
ティナの口からはすらっとそんな言葉が出てきた。
それを聞いたユウの顔は赤く染まる。
それと同時にユウはずっと付けてきていた、|4人(・・)の気配が去っていくのに気が付いた。
「ふっ、そうか」
気を使われていることに気が付いたユウはふっと笑ってどう答えた。
「な、なんで笑うんですか!」
そんなユウを見て、ティナは頬を膨らませる。
「いや、何でもない。それで、だな」
「はい?」
「ちょっとティナに渡したいものがある」
「わ、私にですか?」
「ちょっと、目を閉じてくれないか?」
「え?」
そういったユウの言葉を聞いたティナの顔は真っ赤に染まる。
そして、ユウはベンチに手を突き、ティナに迫っていく。
「あの、いやその……んっ」
ティナは目を閉じてユウがしようとしていることを待つ。
そして、ティナの肩にユウの手が置かれる。
「ん、もういいぞ」
ティナが思っていたことはされず、ユウから目を開けてもいいと言われてしまった。
そして、ティナが何をされたのかと、自分の体を見ると、首にはさっき見ていた、月の模様が入ったタリスマンがあった。
「あの、これって……」
「あぁさっきの店で買っておいたんだ。悪い魔法から身を守ってくれる効果があるみたいだ。ティナにはお世話になってるからな、そのお礼だ」
ユウは頬を書きながらそう答えた。
「でも、これ結構高い……」
「ティナには傷ついてほしくない。だから、これからも俺と一緒にいてくれ」
ユウから出た言葉はプロポーズにも聞こえる言葉だった。
「え、あっはい。もちろんです! ユウ様が嫌がっても傍に居ます! だからこれは大切にしますね。ユウ様ありがとうございます」
「あぁ、喜んでもらえたなら何よりだ」
ティナはタリスマンをギュッと抱きしめて、意を決したかのようにユウにこういった。
「私からもユウ様にプレゼントと言うかその……目を瞑ってください!」
「え? あ、俺もか?」
「はい!」
ティナがそう言うとユウはしぶしぶ目を閉じる。
ティナはユウの腰の横に手を突きそのまま、
ユウの唇に自分の唇を重ねた。
「んっ!?」
ユウが目を開くと、目の前には目を瞑ったティナの顔があった。
そして、唇が離れると、お互いに顔を赤く染める。
「こ、これがプレゼント?」
「は……い。これで二回目ですね。えへへ」
ティナはベンチから立ち上がり、気を紛らわさせるために走り出す。
「ユウ様~! 宿まで競争です!」
「は!? ちょっティナ! せこいぞ!」
ユウは慌ててティナを追いかける。
こうして、ティナのアピールチャンスは終わった。
宿に帰り部屋に向かうと、案の定ムラクモ、ヒサメ、エル、ヨリヒメが待っていた。
ティナは下で、アーナの仕事の手伝いをしている。
「おい、お前ら? 今日つけてたの気づいてるからな?」
「ん。そうだと思った」
ユウは4人の頭をグリグリしながら、ご飯を呼ばれるのを待つことにした。
その頃ティナは、庭で一人、タリスマンをぎゅっと抱いていた。
私は、結構大胆なことをしたなと、そう思っていた。だけど後悔はしていない。
ユウ様とカップルジュースに、贈り物までもらって、最後はキスまで。アピールには十分すぎる結果だった。
私の頭の中には、ユウ様が言ってくれたプロポーズまがいの言葉が流れていた。それを思い出すたび、顔が熱くなる。
「これだから、私は、いや私たちはユウ様から離れられないんだろうな」
私はそう思いながら、アーナ手伝いをするために宿の中へと戻った。
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