妖刀使いがチートスキルをもって異世界放浪 ~生まれ持ったチートは最強!!~

創伽夢勾

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3章:王都招集

85:別れと約束

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 俺がソルロスの宿に着いたときは日は暮れかけていた時間だった。
 宿のドアを開けると、俺以外の全員が見える。そして丁度ご飯が出来ていた。
 俺が帰ってくるタイミングで、このやけに豪華な料理。

(お前らの内誰か仕掛けやがったな?)
“ふふーんふふーん”
(お前か、ヨリヒメ)
“しょうがないじゃん。ティナちゃんに頼まれちゃったんだから”

 俺はむっとティナを見る。すると、ティナは俺に笑顔を向けた。
 そんな笑顔を向けられたら何も言えじゃないか。

「ユウさん。明日には王都を出るんですよね?」
「あぁ、そのつもりだ」

 俺にそう聞いて来たのは、アーミルだ。

「あんたとあの衝撃的な出会いをしてからもう結構立つのね」
「なんだ? 寂しいのか?」

 俺がそう煽ると、ミラはプイっと違う方向を向いた。その顔は少し赤くなっていた。

「ふふ、ミラったら照れちゃって」
「なっ!? て、照れてないし! もう早く食べるわよ」

 そのミラの一言で、みんなが料理に手を出し始めた。
 俺たちは料理を食べた後、明日の移動のため早くに就寝する。
 もちろん俺は寝れない。アイリスとの約束があるからだ。
 そして俺はムラクモを鞘ごと縮め、腰の後ろに付ける。
 ヒサメは置いていく。そして、なぜか実体化して寝ているヨリヒメも置いていく
 フロンとティナ、ノワールは自分のベットで寝ている。
 俺は部屋の窓を開ける。

『変形モード:魔法士』

 黒霧のコートをローブに変え、フードを深めに被る。
 最後に部屋をもう一度確認し、俺は窓の縁に足をかけ、隣の屋根に飛び移った。
 そのまま屋根伝いを走り、俺は王城を目指した。



 俺はあのまま屋根を伝って、今は王城の近くまで来ている。
 こんな時間だ、出歩くやつはほとんどいない。
 だが、王城の門には兵士がいた。まぁ、至極当たり前なことだが、ちょっと面倒だ。

 俺は外周を回り、人が周りにいないことを確認する。

『月詠ノ瞳』

 俺は王城のそれもアイリスの部屋の窓に直に転移する。
 窓の前には少しスペースがあった。
 そこに足を置き、手は上の方で、掴む。左手で、窓をノックする。
 ただ、反応はない。その代わりにノックした反動で、窓がそっと開いた。

「はいるぞ?」

 俺は小声でそう言いながら、窓に手をかけた。
 中に入るとそこには一つのベット、それは女の子の部屋だが、明らかに俺の知っているアイリスの部屋ではない。

「ちっ、窓一個分ずれたか」

 俺はこの部屋の主が起きる前に、再び窓から外に出ようとする。
 すると、窓を開けるときに、ギギィと音が鳴った。
 俺が振り返ると、ベットには柊がいた。

「きゃ、きゃっん!?」

 俺はとっさにベットに近づき、柊を押し倒す形で、柊の口を手で抑える。
 その至近距離にいる柊の女の子らしい香りが俺の鼻をくすぐる。

「すまん。部屋を間違えたんだ。頼むから声をあげるのはやめてくれ」
んんっんん~っんん!わかったから手を退けなさい

 俺は柊の口を塞いでいた右手を退かす。

「ぷはっー。ちょっと剣馬鹿、あんた何してんのよ」
「むっ、アイリスに呼ばれてきたんだが、どうやら部屋を間違えたみたいだ」
「そうね、姫様の部屋はこの右隣。反対は雛乃よ?」
「あぁ、わかった。それじゃ……」

 俺はすぐに柊の上を退き、扉へと向かおうとする。
 だが、そううまくはいかず。俺のローブの裾を柊に捕まれていた。

「あんた、仮にも女の子の部屋に不法侵入しといて、手も出さずそのまま帰るの?」

 ちょっとその言い方だと……。

「おい、その言い方だと……」
「はっ!? あのいやその何でもないわけじゃないんだけど……そう意味じゃないわ!」
「いや、あれはそう意味以外とれんぞ」
「だから違うの、んっ!?」

 俺はまた大声をあげそうになった柊の口を右手で塞ぐ。

「大声は出すなよ、兵士とか飛んできても説明だるいからな」

 俺がそう言うと柊はコクコクと頷く。

「まぁ、俺はもう行くから」

 俺はそう言って手を外し、部屋の扉を静かに開け、隣の部屋の扉をノックした。

 ガチャッ

 そんな音共に、扉が開く。

「ユウさん、どうぞ入ってください」

 俺は部屋に入り、扉を閉める。そして、アイリスに向き直ると、その恰好はネグリジェと呼べるものだった。

「お、おいアイリス」
「お、おねがい。それ以上は言わないで下さい、私も恥ずかしくなります」

 俺は「なら、なんでそんな格好してるんだよ」と言いたい気持ちを抑え込む。
 アイリスはベットに腰掛け、なざか俺もその隣に座ることに。

「ユウさんなら、窓からはいってくる。ぐらいのことはするだろうと思ってました・
「あはは」

 俺は、そう笑うことしかできなかった。さっき、そのせいで女の子を押し倒す羽目になったのだ。

「まぁ、それはいいです。今日、この後この国を出るんですよね?」
「あぁ、やることがいっぱいあるからな」
「戻ってこられる予定は?」
「用事が済めば戻ってくるかもしれないが、それでもここにずっといるわけではないと思う」
「そうですか」

 アイリスは、息を吐き出す。そして意を決したかのように俺の顔を見た。

「あの、ユウさん。わ、私と、正式に、こ、婚約を結んでくれませんか?」
「……は?」

 俺は間をあけて、呟いた。

「私ははっきり言えば、ユウさんに一目惚れしてました。まぁそれに気づくのに少し時間がかかりましたが」
「つまり?」
「私はユウさんが好きです。結婚してくだ……さい?」

 アイリスは途中で言っているのが恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤に染まる。

「アイリス、俺は……」

 俺が、その続きを言い終わる前に、アイリスに肩を持たれ、ベットに押し倒される。

「その続きは聞きたくありません。私はあなたが好きです。私はこの黒髪のせいで、周りとは違う扱いを受けて、もううんざりです。私はあなたと一緒に居たい。私はあなたを支えたい。守られたい。ただそれだけなのです」
「あぁ、俺もお前を守りたい」
「なら!」
「でも、俺が守りたいのはアイリスだけじゃない。他にも守りたい奴がいっぱいいる。俺はそのために力をつけたい。だから待ってとは言えない。だから、その気持ちは受け取れない」

 気づくと、俺の頬に雫が滴る。それは紛れもなく、アイリスの涙だった。

「わ、私は待ちます。あなたがここに帰ってくるのを。強い人にはたくさんのお嫁さんがいても問題ありません。私は受け入れられます。ただ、私を疎かにはしないでください。私を支えて、私にあなたを支えさせてください。今、この気持ちを抑えるために……」

 アイリスはありったけの思いを俺にぶつけ、目を閉じ唇を少し突き出す。

「お前が、それで気が済むなら……」

 俺はそっと口を近づけ、アイリスと唇を合わせた。
 大丈夫だ。まだ誰とも付き合ってるわけでもない。そう俺は言い訳しながら、アイリスとのキスを続けた。俺からは離さない。アイリスが自分から口を離すまでは。
 そのキスは唇を触れ合わせるだけのキス。だがそれは何分間も続いた。

「ユウさんは乗ってこないかと思いました」
「あぁ、俺も乗るつもりはなかったんだがな、あんな、熱烈な思いを聞かされれば……な?」

 すると、アイリスの顔は再び赤く染まる。

「それはいいですから、どうか気を付けて無事に帰ってきてくださいね。だ・ん・な・さ・ま?」
「!? おう。お任せとけ、力をつけて、戻ってくるよ。ただその呼び方はやめてくれ、じゃあ行ってくる」
「はい。行ってらっしゃい」

 俺はそのまま、窓の縁に足をかけ、ソルロスの宿に戻るべく、王城を飛び出した。
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