112 / 133
5章:エルフの国と軍師の策略
103:時空逆行
しおりを挟む
俺はクシャーナたちに連れられ、エルフの国の王城とも呼べる場所まで連れていかれた。
城に着くと、すぐに部屋に通された。
そこのソファーに座っていたのは、そわそわしてるクシャーナのお姉さん? が座っていた。
「あっ! クシャーナ。本当に無事でよかったわ」
ドアを開いては言ってきた俺たちの中からクシャーナを見つけると、ソファーから飛びつきクシャーナ抱きしめる。
「お、お母さま。く、苦しいです」
え? お母さん? おねぇさんだと思っていたんだが。
「えぇ、おねぇさんかと思ってました」
フロンが口に出して反応する。
だがクシャーナの母親はクシャーナをじっと見つめた。
「お、お母さま?」
「く、クシャーナ。あなた声が……も、戻ったのね」
クシャーナの母親の目から涙が頬を伝う。
そしてそのままクシャーナをぎゅっと抱きしめた。
俺たちはそのまま、母親が落ち着くまで見守ることにした。
「す、すみません。お見苦しいところをお見せして」
「い、いえしょうがないことだと思います」
ティナが頭をあげさせる。
「申し遅れました。クシャーナの母親のクリューナと申します」
「私はティナ・アカーシャ。こちらにいるのが」
「ユウ・ツキカゲだ。敬語は苦手なんだ。勘弁してもらえると助かる」
「はい。大丈夫です。気軽にクリューナとお呼び下さい」
「わかった。俺もユウでいい」
そのあとフロンたちも自己紹介をした。
一通り終えると、ネルが俺たちの横に立ち、これまでの経緯を話し始めた。
帰国途中にオークに襲われた事。そこで俺たちに助けてもらった事。クシャーナの声を俺が戻したこと。そして盗賊に襲われた事。俺たちがここまでこの二人を護衛してきた事。
「申し訳ありません。私が不甲斐ないばかりにクシャーナ様を危険な目に……」
「いいのよ。こうして無事だったんだから。あなたが気負う前に助けてくれたユウさんたちにお礼をしなくちゃでしょ?」
「はい。本当にありがとう。助かった」
「いや、当然のことをしただけだ」
ネルは俺に向かって深く頭を下げる。
俺の返事を聞くと、もう一度だけお礼を言ってからネルは下がった。
次に俺に頭を下げたのはクリューナだった。
「ありがとうございます。ユウさん。クシャーナとネルを助けていただいて、クシャーナにいたっては声まで……」
「あっ、その事についてだが……」
俺は大事な事を伝えるのを忘れていた。
クシャーナの喉の病気は性格には治っていない。
時空の瞳の能力で、俺が使用したのは時空逆行。つまりは巻き戻しだ。
俺がクシャーナにしたのは病気を発病する前まで戻すということだけだ。だからこのままいけばクシャーナはまた声を失う。
だが、それは何もしなければ、だ。
ティナやここにいる回復術が使える者が治療すればいいだけの話だ。
まぁ、これだけの病気1日程度の治療じゃ治らないだろうけど。定期的に治療すれば問題ないだろう。
「えっとだな。クーシャの喉の病気はまだ治ったわけじゃない」
「「え?」」
声をあげたのはネルとクシャーナ本人。
「ですが、確かに声は元に戻って……」
「そうだな。ここで見たものを秘密にしていただけるのなら、理由を具体的に説明できるが……」
「それについては問題ありませんね?」
クリューナは周りの護衛を退出させネルとクシャーナを含めた3人が残る。
二人はクリューナの視線に頷いて答える。
「それじゃあどうしようか……。こうするか」
俺は立ち上がり、ムラクモを抜刀する。
「い、いったい何を……」
「まぁ、見ててください」
俺は自分の刀を持っていない手で刀の刀身を強めに握る。
「な、なにを!」
「お、お兄様!?」
慌てるネルとクシャーナ。だが二人はクリューナに止められ、行動を起こせない。
「ここに刀傷が出来た」
〝むぅ、私はユウを傷つけたくないのにこんな扱い方酷い〟
(こ、今度なんかしてやるから許せ)
〝ん。甘いものいっぱい食べる〟
それでいいのか……。
俺は切り傷が出来た左手を3人の方に向ける。
「じゃあ見とけよ」
俺は左眼に魔力を集める。
『時空の瞳』『時空逆行』
俺は自分の掌を対象に傷が出来る前まで掌の時間を巻き戻す。
すると、俺の手を伝う血は傷口から体内に戻っていく。そして見る見るうちに傷口が塞がっていく。
「これが、時空逆行リワインド。いわゆる、時間の巻き戻し」
「じ、時間の巻き戻し!?」
「そうだ。そこまで大規模な範囲は無理だ。俺がクーシャにしたのは喉の病気が発病する前まで病気自体の時間を巻き戻しただけだ。だからこのままいけばいずれクーシャはまた声を失う」
俺の言葉に3人は驚愕の表情を浮かべる。
「だが、それも何もしなければの話だ。回復術を定期的に施せばいいだけだ。俺もそこまで無責任じゃない。ここにいるティナが回復術が使える。ティナがクーシャを定期的に見てくれる」
「えっ!? あっはい!」
急に話を振られ、ティナは驚きながらもそれを受け入れる。
「お願いします。ティナおねぇ様」
うるうるとした表情でクシャーナがティナを見つめる。
ティナはその愛らしさにめけたのか、クシャーナをギュッと抱きしめていた。
「あっ、すみません」
自分が何をしたのか理解したティナはすぐにクシャーナを話す。
「ぷはっ。てぃ、ティナおねぇ様はでかくて柔らかくて。気持ちいです」
ティナの胸によって抱きしめられていたクシャーナは、離されてもすぐにティナに抱き着いた。
そんなクシャーナをティナは優しく撫でていた。
「ふふっ微笑ましいですね」
「そ、そうだな」
「ユウさんもどうです?」
クリューナが、おいでと言わんばかりに両手を開く。
「「「「なっ!?」」」」
「ふみゅ?」
俺とクシャーナ以外の全員が反応する。ネルも含めてだ。
クシャーナだけはティナの胸の中で状況を理解できていなかった。
「か、からかうのはやめてくれ」
「ふふっ、からかってはいませんが、まぁ残念です」
クリューナは両手を下げる。
それを見て俺は息をつく。
俺は立ち上がる。
「それじゃあ俺らはこの辺で、ネル。約束通りどこか滞在できそうな場所を教えてくれ」
「あ、あぁ支度をしてくる。入口で待っていてくれ」
エルはあわただしくも部屋から出ていく。
「お、お兄様……」
クシャーナがコートの裾を引っ張ってくる。
「あぁ、また明日な」
「え? 明日も来てくれるの?」
「最初だしティナの付き添いで来るよ。……それに用事があるし」
俺はあのエクトとか言うやつに渡された、騎士紋章入りの手紙をぺらぺらしてる。
あーめんどくさいなぁ~。
俺はそう思いながらも、ティナたちを引き連れ城の入り口を目指した。
城に着くと、すぐに部屋に通された。
そこのソファーに座っていたのは、そわそわしてるクシャーナのお姉さん? が座っていた。
「あっ! クシャーナ。本当に無事でよかったわ」
ドアを開いては言ってきた俺たちの中からクシャーナを見つけると、ソファーから飛びつきクシャーナ抱きしめる。
「お、お母さま。く、苦しいです」
え? お母さん? おねぇさんだと思っていたんだが。
「えぇ、おねぇさんかと思ってました」
フロンが口に出して反応する。
だがクシャーナの母親はクシャーナをじっと見つめた。
「お、お母さま?」
「く、クシャーナ。あなた声が……も、戻ったのね」
クシャーナの母親の目から涙が頬を伝う。
そしてそのままクシャーナをぎゅっと抱きしめた。
俺たちはそのまま、母親が落ち着くまで見守ることにした。
「す、すみません。お見苦しいところをお見せして」
「い、いえしょうがないことだと思います」
ティナが頭をあげさせる。
「申し遅れました。クシャーナの母親のクリューナと申します」
「私はティナ・アカーシャ。こちらにいるのが」
「ユウ・ツキカゲだ。敬語は苦手なんだ。勘弁してもらえると助かる」
「はい。大丈夫です。気軽にクリューナとお呼び下さい」
「わかった。俺もユウでいい」
そのあとフロンたちも自己紹介をした。
一通り終えると、ネルが俺たちの横に立ち、これまでの経緯を話し始めた。
帰国途中にオークに襲われた事。そこで俺たちに助けてもらった事。クシャーナの声を俺が戻したこと。そして盗賊に襲われた事。俺たちがここまでこの二人を護衛してきた事。
「申し訳ありません。私が不甲斐ないばかりにクシャーナ様を危険な目に……」
「いいのよ。こうして無事だったんだから。あなたが気負う前に助けてくれたユウさんたちにお礼をしなくちゃでしょ?」
「はい。本当にありがとう。助かった」
「いや、当然のことをしただけだ」
ネルは俺に向かって深く頭を下げる。
俺の返事を聞くと、もう一度だけお礼を言ってからネルは下がった。
次に俺に頭を下げたのはクリューナだった。
「ありがとうございます。ユウさん。クシャーナとネルを助けていただいて、クシャーナにいたっては声まで……」
「あっ、その事についてだが……」
俺は大事な事を伝えるのを忘れていた。
クシャーナの喉の病気は性格には治っていない。
時空の瞳の能力で、俺が使用したのは時空逆行。つまりは巻き戻しだ。
俺がクシャーナにしたのは病気を発病する前まで戻すということだけだ。だからこのままいけばクシャーナはまた声を失う。
だが、それは何もしなければ、だ。
ティナやここにいる回復術が使える者が治療すればいいだけの話だ。
まぁ、これだけの病気1日程度の治療じゃ治らないだろうけど。定期的に治療すれば問題ないだろう。
「えっとだな。クーシャの喉の病気はまだ治ったわけじゃない」
「「え?」」
声をあげたのはネルとクシャーナ本人。
「ですが、確かに声は元に戻って……」
「そうだな。ここで見たものを秘密にしていただけるのなら、理由を具体的に説明できるが……」
「それについては問題ありませんね?」
クリューナは周りの護衛を退出させネルとクシャーナを含めた3人が残る。
二人はクリューナの視線に頷いて答える。
「それじゃあどうしようか……。こうするか」
俺は立ち上がり、ムラクモを抜刀する。
「い、いったい何を……」
「まぁ、見ててください」
俺は自分の刀を持っていない手で刀の刀身を強めに握る。
「な、なにを!」
「お、お兄様!?」
慌てるネルとクシャーナ。だが二人はクリューナに止められ、行動を起こせない。
「ここに刀傷が出来た」
〝むぅ、私はユウを傷つけたくないのにこんな扱い方酷い〟
(こ、今度なんかしてやるから許せ)
〝ん。甘いものいっぱい食べる〟
それでいいのか……。
俺は切り傷が出来た左手を3人の方に向ける。
「じゃあ見とけよ」
俺は左眼に魔力を集める。
『時空の瞳』『時空逆行』
俺は自分の掌を対象に傷が出来る前まで掌の時間を巻き戻す。
すると、俺の手を伝う血は傷口から体内に戻っていく。そして見る見るうちに傷口が塞がっていく。
「これが、時空逆行リワインド。いわゆる、時間の巻き戻し」
「じ、時間の巻き戻し!?」
「そうだ。そこまで大規模な範囲は無理だ。俺がクーシャにしたのは喉の病気が発病する前まで病気自体の時間を巻き戻しただけだ。だからこのままいけばいずれクーシャはまた声を失う」
俺の言葉に3人は驚愕の表情を浮かべる。
「だが、それも何もしなければの話だ。回復術を定期的に施せばいいだけだ。俺もそこまで無責任じゃない。ここにいるティナが回復術が使える。ティナがクーシャを定期的に見てくれる」
「えっ!? あっはい!」
急に話を振られ、ティナは驚きながらもそれを受け入れる。
「お願いします。ティナおねぇ様」
うるうるとした表情でクシャーナがティナを見つめる。
ティナはその愛らしさにめけたのか、クシャーナをギュッと抱きしめていた。
「あっ、すみません」
自分が何をしたのか理解したティナはすぐにクシャーナを話す。
「ぷはっ。てぃ、ティナおねぇ様はでかくて柔らかくて。気持ちいです」
ティナの胸によって抱きしめられていたクシャーナは、離されてもすぐにティナに抱き着いた。
そんなクシャーナをティナは優しく撫でていた。
「ふふっ微笑ましいですね」
「そ、そうだな」
「ユウさんもどうです?」
クリューナが、おいでと言わんばかりに両手を開く。
「「「「なっ!?」」」」
「ふみゅ?」
俺とクシャーナ以外の全員が反応する。ネルも含めてだ。
クシャーナだけはティナの胸の中で状況を理解できていなかった。
「か、からかうのはやめてくれ」
「ふふっ、からかってはいませんが、まぁ残念です」
クリューナは両手を下げる。
それを見て俺は息をつく。
俺は立ち上がる。
「それじゃあ俺らはこの辺で、ネル。約束通りどこか滞在できそうな場所を教えてくれ」
「あ、あぁ支度をしてくる。入口で待っていてくれ」
エルはあわただしくも部屋から出ていく。
「お、お兄様……」
クシャーナがコートの裾を引っ張ってくる。
「あぁ、また明日な」
「え? 明日も来てくれるの?」
「最初だしティナの付き添いで来るよ。……それに用事があるし」
俺はあのエクトとか言うやつに渡された、騎士紋章入りの手紙をぺらぺらしてる。
あーめんどくさいなぁ~。
俺はそう思いながらも、ティナたちを引き連れ城の入り口を目指した。
21
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる