11 / 32
第11話 実はちょっとだけ暑いのです
しおりを挟む
「すまなかった。虐めのつもりはなかったが、安易にからかった俺が悪い。許してくれ」
「……どうして、からかったのです?」
カイルは顔を上げて、焚き火の前に座っているナナと目を合わせた。
「ナナと仲良くなりたかったんだよ。てっきり、からかうなと怒られると思ったからな。それで皆で笑えればいいかなってさ」
きちんと説明するのはとてつもなく恥ずかしいが、カイルのくだらないひと言のせいでナナが辛い思いをしていたのなら、そうも言っていられない。
理由をきちんと告げたあと、もう一度カイルは深く頭を下げてナナに謝罪した。
「本当に悪かった」
「……ナナはどらごんなので、人間と違って器が大きいのです。特別に許してあげるのです。それと……本当にナナと仲良くなりたいのです?」
尋ねられたカイルは「もちろん」と頷く。隣ではサレッタも同意する。
「私もだよ。友情の証に、ナナちゃんから頬擦りしてもいいんだよ」
「それは遠慮しておくのです」
きっぱりと断られたサレッタが、大げさに「そんなぁ」と言って涙目になる。その様子がおかしかったので、ナナが最初に笑った。続いてカイルが笑みを浮かべ、最後にサレッタが微笑んだ。
「二人はとても優しいのです。ええと……」
「ああ、そういえば自己紹介をまだしてなかったかもしれないな。知り合ってすぐ色々とあったから忘れてた。俺はカイルだ。カイル・ウィンズ。冒険者で戦士をしている」
「私はサレッタ・ミレアルよ。カイルとは同じ村で生まれ育った幼馴染なの。盗賊の技能を習得してるけど、冒険者で盗賊じゃないわよ」
カイルとサレッタの自己紹介が終わると、今度は自分の番とばかりにナナが肉球のついた右手を上げた。
すでに名前は知っているが、せっかくなのでナナのきちんとした自己紹介を待つ。
「ナナはナナなのです! どらごんなのです! ぐごー、なのです!」
立ち上がると同時に左手も上げて、何かに襲い掛かろうとするポーズを決める。火炎で盗賊を倒す場面を目の当たりにした今も、恐ろしさは感じない。
代わりにあるのは、有り余るほどの可愛らしさだ。サレッタの瞳にハートマークの輝きが宿っているような気もするが、巻き添えを食らうのは嫌なのでカイルはスルーを決め込む。
「カイルとサレッタは同じ村なのです?」
ポーズを決めて満足したのか、ちょこんと座り直したナナがサレッタに尋ねた。
「そうよ」微笑みを浮かべたままでサレッタは言った。
「羨ましいのです」
本心からそう思っているらしいのは、ナナの表情を見れば明らかだった。しかし、そんなことはない。どのようなイメージを持ってるかは不明だが、少なくともカイルにとっては胸を張って自慢できるような境遇ではなかった。
それはサレッタも同じだ。どうしようか迷ったみたいだが、やがて意を決して口を開いた。知り合ったばかりなのに、仲良くなったナナに隠し事をするのが嫌だったのかもしれない。
「確かに、私たちには両親がいた。でも、私たちの村はあまりにも貧乏だった。お腹を空かせて畑仕事を終えても、与えられる食事なんてほとんどなかったの。働き手となる大人が優先してご飯を食べて、子供には残り物だけ。村にいる間は、いつもお腹を空かせてたわ」
同情というより、ナナは不思議そうな顔をする。
「どうして貧乏だったのです?」
「私たちの故郷は大陸の中央に位置するここランゼルト王国から、ずっと北にいった場所にあるの。辺境国で戦力も乏しい、外交をすればいつも負けてばかり。なのに占領をされなかったのは、壊滅的に作物の実りが悪かったから。一年の大半で雪が降り、とても寒い。毎年、何人も凍死者が出るくらい」
村での生活を思い出したのか、サレッタが表情を暗くする。
「そんな国の中で、さらに北端に位置するのが私たちの村なの。環境はとても厳しくて、大人になる前に死んでしまう子供も珍しくなかったわ。だからでしょうね。私たちの両親を含め、村の大人たちは子供を積極的に育てなくなった。きっと子孫を残すのを諦めてしまったのね」
ここで初めて、ナナが悲しそうに頭を小さく左右に振った。
「子孫繁栄は大事なのです。じーじがいつも言っていたのです」
「ナナちゃんの言うとおりよ。でも、私たちの村シノーロではそうではなかったの。食い扶持を減らすために子供を売るの。そうすれば幾ばくかのお金も入るしね」
辛そうに、サレッタはそこで一度言葉を切る。
いつも元気なサレッタの瞳に涙が滲みだすのを見て、カイルは「もういい」と告げた。
「だから俺たちは――俺は村を出ようと決めた。自動的に食い扶持が減れば、売られる奴も減るだろ。そう思ってな。死ぬまで働かせられたり、どこぞに売られるより、野垂れ死にする方がずっとマシだと思った。そこで以前に聞いて知ってた、冒険者ってやつになろうと決めたのさ」
冒険者ギルドは規模の大きい町には比較的支部が存在する。本部はランゼルト王国の王都にある。王国こそが冒険者ギルド発祥の地である証だった。
「私はカイルが村から出るのを知って、一緒にくっついてきたの。両親のためになるとはいっても、売られていくのは嫌だもの。嫁ぐならまだしも……売られた女の末路は悲惨だと聞いてたしね」
「人間も色々と大変なのです。なんだか親近感を覚えたのです」
「そういえば、ナナちゃんは村で虐められてたの?」
話が一段落したところで、サレッタがナナの事情を尋ねる。言いたくなければ無理に聞き出すつもりはなかったが、やや俯きながらもポツリポツリと話してくれる。
「村というより、ドラゴンの里なのです。大きな山と深い谷、それに濃い霧がある場所なのです」
「ドラゴンの里なんて存在するのか? それはどのあたりなんだ?」
「むー。信じていないのです。ドラゴンの里は……はうっ」
ドラゴンの里の場所を説明しかけたナナが、途中で何かに気づいたような反応をした。
盗賊の残党でも現れたのかとカイルは焦ったが、どうやらそうではなかったらしい。
「重要な質問をするのを忘れていたのです。ここはどこなのです?」
よもやの問いかけに、カイルとサレッタは唖然とする。
「どこって、ランゼルト王国だよ」
カイルが言うと、ナナは小首を傾げて「どこなのです?」と再び同じ質問をしてきた。
「まさか……ランゼルト王国を知らないのか? 大陸の中心に位置する騎士王国だぞ」
「騎士王国なのです? 里を追い出されて、気が付いたらこの町の近くに立っていたので、何もわからないのです」
「おいおい。それじゃあ、ドラゴンの里はこの近くにあるのか?」
わからないとナナは首を左右に振った。
「ナナはどらごんなのです。他のドラゴンとは見た目も全然違うのです。だから、仲間に入れてもらえないのです。いつも、ひとりぼっちだったのです」
容姿よりもずっと知識が豊富そうで、言葉遣いはともかく、言葉の選択は大人びている。理解力にしてもそうだ。カイルのナナに対する印象は、マセている子供というものだった。
けれど、こうして悲しそうにしている姿を見れば、やはり子供なのだと理解する。とてもドラゴンには思えない。
「同じ年頃のドラゴンに遊んでほしくても、話しかけると怒られるのです。じーじ以外、口も利いてくれなかったのです。でも、じーじがいれば幸せだったのです」
ぐしぐしと手の甲で両目に溜まった涙を拭い、なおもナナは言葉を続ける。
「でも、じーじはそのせいで村の皆から虐められだしたのです。ナナは里にいちゃいけない子だったのです。ドラゴンじゃなくて、どらごんだから……駄目だったのです。ナナ、ひとりだけ」
拭っても拭っても止まらない涙が、ボロボロとナナの体にこぼれ落ちる。
「だから、ナナ、じーじを嫌いって言ったのです。じーじに火を吐いたのです。ひとりぼっちになるのは……ナナだけでいいのです……」
「ナナちゃん……」
話を聞いているサレッタまで涙目になる。
「じーじはますたーなので、火を吐いたりしたら駄目なのです。ナナは恩知らずと言われ、皆に里から追い出されたのです。ナナは……ナナは……」
「もういいっ! ごめんね、ナナちゃん。辛いことを思い出させて」
「いいのです。おねーさんも話してくれたのです。お互いさまなのです。でも……ナナは恩知らずじゃないのです……!」
「わかってるよ。ナナちゃんは、じーじに迷惑をかけたくなかったのよね。自分から嫌われ者になって、里を追い出されるようにしたのよね。そうすれば、じーじは他の皆と仲良くできると思って」
ますたーというのがどういうものかは知らないが、里長みたいなものであれば、他への示しも必要となる。反逆ともとれる行動をしたナナを、そのまま里へ置いておくのは難しい。
里から合法的に出て行きたいなら有効的な手段だが、ナナがいなくなればじーじが孤独になってしまうのではないか。そんな心配を覚えたが、カイルは口に出したりしない。小さな少女が決死ともいえるほどの覚悟で選んだのだ。第三者が軽々に口を挟んでいい問題じゃない。
素直にナナの決断を尊重してやるべきだろう。そう判断したカイルは、サレッタと抱き合っている少女の頭を優しく撫でた。
髪の毛に触れる感触はない。あくまで柔らかな、もこもことした着ぐるみの手触りがするだけだ。毛布のような感じで、保温性は抜群に思える。だが冬はまだしも夏――とりわけ太陽が姿を現す日中は辛いのではないか。そんな感想を覚えた。
頭を撫でられてくすぐったそうにするナナに、暑くないのかストレートに尋ねてみた。
「大丈夫なのです。でも、実はちょっとだけ暑いのです。里では丁度良かったのです」
ナナの説明どおり、ドラゴンの里が大きな山と深い谷の側にあるなら、きっと気温は低い。そこで暮らしていたのであれば、厚い毛布のごとき着ぐるみを常に着用していても、さほど暑いとは思わないだろう。むしろ若干の肌寒さを覚えてもおかしくはない。
「……どうして、からかったのです?」
カイルは顔を上げて、焚き火の前に座っているナナと目を合わせた。
「ナナと仲良くなりたかったんだよ。てっきり、からかうなと怒られると思ったからな。それで皆で笑えればいいかなってさ」
きちんと説明するのはとてつもなく恥ずかしいが、カイルのくだらないひと言のせいでナナが辛い思いをしていたのなら、そうも言っていられない。
理由をきちんと告げたあと、もう一度カイルは深く頭を下げてナナに謝罪した。
「本当に悪かった」
「……ナナはどらごんなので、人間と違って器が大きいのです。特別に許してあげるのです。それと……本当にナナと仲良くなりたいのです?」
尋ねられたカイルは「もちろん」と頷く。隣ではサレッタも同意する。
「私もだよ。友情の証に、ナナちゃんから頬擦りしてもいいんだよ」
「それは遠慮しておくのです」
きっぱりと断られたサレッタが、大げさに「そんなぁ」と言って涙目になる。その様子がおかしかったので、ナナが最初に笑った。続いてカイルが笑みを浮かべ、最後にサレッタが微笑んだ。
「二人はとても優しいのです。ええと……」
「ああ、そういえば自己紹介をまだしてなかったかもしれないな。知り合ってすぐ色々とあったから忘れてた。俺はカイルだ。カイル・ウィンズ。冒険者で戦士をしている」
「私はサレッタ・ミレアルよ。カイルとは同じ村で生まれ育った幼馴染なの。盗賊の技能を習得してるけど、冒険者で盗賊じゃないわよ」
カイルとサレッタの自己紹介が終わると、今度は自分の番とばかりにナナが肉球のついた右手を上げた。
すでに名前は知っているが、せっかくなのでナナのきちんとした自己紹介を待つ。
「ナナはナナなのです! どらごんなのです! ぐごー、なのです!」
立ち上がると同時に左手も上げて、何かに襲い掛かろうとするポーズを決める。火炎で盗賊を倒す場面を目の当たりにした今も、恐ろしさは感じない。
代わりにあるのは、有り余るほどの可愛らしさだ。サレッタの瞳にハートマークの輝きが宿っているような気もするが、巻き添えを食らうのは嫌なのでカイルはスルーを決め込む。
「カイルとサレッタは同じ村なのです?」
ポーズを決めて満足したのか、ちょこんと座り直したナナがサレッタに尋ねた。
「そうよ」微笑みを浮かべたままでサレッタは言った。
「羨ましいのです」
本心からそう思っているらしいのは、ナナの表情を見れば明らかだった。しかし、そんなことはない。どのようなイメージを持ってるかは不明だが、少なくともカイルにとっては胸を張って自慢できるような境遇ではなかった。
それはサレッタも同じだ。どうしようか迷ったみたいだが、やがて意を決して口を開いた。知り合ったばかりなのに、仲良くなったナナに隠し事をするのが嫌だったのかもしれない。
「確かに、私たちには両親がいた。でも、私たちの村はあまりにも貧乏だった。お腹を空かせて畑仕事を終えても、与えられる食事なんてほとんどなかったの。働き手となる大人が優先してご飯を食べて、子供には残り物だけ。村にいる間は、いつもお腹を空かせてたわ」
同情というより、ナナは不思議そうな顔をする。
「どうして貧乏だったのです?」
「私たちの故郷は大陸の中央に位置するここランゼルト王国から、ずっと北にいった場所にあるの。辺境国で戦力も乏しい、外交をすればいつも負けてばかり。なのに占領をされなかったのは、壊滅的に作物の実りが悪かったから。一年の大半で雪が降り、とても寒い。毎年、何人も凍死者が出るくらい」
村での生活を思い出したのか、サレッタが表情を暗くする。
「そんな国の中で、さらに北端に位置するのが私たちの村なの。環境はとても厳しくて、大人になる前に死んでしまう子供も珍しくなかったわ。だからでしょうね。私たちの両親を含め、村の大人たちは子供を積極的に育てなくなった。きっと子孫を残すのを諦めてしまったのね」
ここで初めて、ナナが悲しそうに頭を小さく左右に振った。
「子孫繁栄は大事なのです。じーじがいつも言っていたのです」
「ナナちゃんの言うとおりよ。でも、私たちの村シノーロではそうではなかったの。食い扶持を減らすために子供を売るの。そうすれば幾ばくかのお金も入るしね」
辛そうに、サレッタはそこで一度言葉を切る。
いつも元気なサレッタの瞳に涙が滲みだすのを見て、カイルは「もういい」と告げた。
「だから俺たちは――俺は村を出ようと決めた。自動的に食い扶持が減れば、売られる奴も減るだろ。そう思ってな。死ぬまで働かせられたり、どこぞに売られるより、野垂れ死にする方がずっとマシだと思った。そこで以前に聞いて知ってた、冒険者ってやつになろうと決めたのさ」
冒険者ギルドは規模の大きい町には比較的支部が存在する。本部はランゼルト王国の王都にある。王国こそが冒険者ギルド発祥の地である証だった。
「私はカイルが村から出るのを知って、一緒にくっついてきたの。両親のためになるとはいっても、売られていくのは嫌だもの。嫁ぐならまだしも……売られた女の末路は悲惨だと聞いてたしね」
「人間も色々と大変なのです。なんだか親近感を覚えたのです」
「そういえば、ナナちゃんは村で虐められてたの?」
話が一段落したところで、サレッタがナナの事情を尋ねる。言いたくなければ無理に聞き出すつもりはなかったが、やや俯きながらもポツリポツリと話してくれる。
「村というより、ドラゴンの里なのです。大きな山と深い谷、それに濃い霧がある場所なのです」
「ドラゴンの里なんて存在するのか? それはどのあたりなんだ?」
「むー。信じていないのです。ドラゴンの里は……はうっ」
ドラゴンの里の場所を説明しかけたナナが、途中で何かに気づいたような反応をした。
盗賊の残党でも現れたのかとカイルは焦ったが、どうやらそうではなかったらしい。
「重要な質問をするのを忘れていたのです。ここはどこなのです?」
よもやの問いかけに、カイルとサレッタは唖然とする。
「どこって、ランゼルト王国だよ」
カイルが言うと、ナナは小首を傾げて「どこなのです?」と再び同じ質問をしてきた。
「まさか……ランゼルト王国を知らないのか? 大陸の中心に位置する騎士王国だぞ」
「騎士王国なのです? 里を追い出されて、気が付いたらこの町の近くに立っていたので、何もわからないのです」
「おいおい。それじゃあ、ドラゴンの里はこの近くにあるのか?」
わからないとナナは首を左右に振った。
「ナナはどらごんなのです。他のドラゴンとは見た目も全然違うのです。だから、仲間に入れてもらえないのです。いつも、ひとりぼっちだったのです」
容姿よりもずっと知識が豊富そうで、言葉遣いはともかく、言葉の選択は大人びている。理解力にしてもそうだ。カイルのナナに対する印象は、マセている子供というものだった。
けれど、こうして悲しそうにしている姿を見れば、やはり子供なのだと理解する。とてもドラゴンには思えない。
「同じ年頃のドラゴンに遊んでほしくても、話しかけると怒られるのです。じーじ以外、口も利いてくれなかったのです。でも、じーじがいれば幸せだったのです」
ぐしぐしと手の甲で両目に溜まった涙を拭い、なおもナナは言葉を続ける。
「でも、じーじはそのせいで村の皆から虐められだしたのです。ナナは里にいちゃいけない子だったのです。ドラゴンじゃなくて、どらごんだから……駄目だったのです。ナナ、ひとりだけ」
拭っても拭っても止まらない涙が、ボロボロとナナの体にこぼれ落ちる。
「だから、ナナ、じーじを嫌いって言ったのです。じーじに火を吐いたのです。ひとりぼっちになるのは……ナナだけでいいのです……」
「ナナちゃん……」
話を聞いているサレッタまで涙目になる。
「じーじはますたーなので、火を吐いたりしたら駄目なのです。ナナは恩知らずと言われ、皆に里から追い出されたのです。ナナは……ナナは……」
「もういいっ! ごめんね、ナナちゃん。辛いことを思い出させて」
「いいのです。おねーさんも話してくれたのです。お互いさまなのです。でも……ナナは恩知らずじゃないのです……!」
「わかってるよ。ナナちゃんは、じーじに迷惑をかけたくなかったのよね。自分から嫌われ者になって、里を追い出されるようにしたのよね。そうすれば、じーじは他の皆と仲良くできると思って」
ますたーというのがどういうものかは知らないが、里長みたいなものであれば、他への示しも必要となる。反逆ともとれる行動をしたナナを、そのまま里へ置いておくのは難しい。
里から合法的に出て行きたいなら有効的な手段だが、ナナがいなくなればじーじが孤独になってしまうのではないか。そんな心配を覚えたが、カイルは口に出したりしない。小さな少女が決死ともいえるほどの覚悟で選んだのだ。第三者が軽々に口を挟んでいい問題じゃない。
素直にナナの決断を尊重してやるべきだろう。そう判断したカイルは、サレッタと抱き合っている少女の頭を優しく撫でた。
髪の毛に触れる感触はない。あくまで柔らかな、もこもことした着ぐるみの手触りがするだけだ。毛布のような感じで、保温性は抜群に思える。だが冬はまだしも夏――とりわけ太陽が姿を現す日中は辛いのではないか。そんな感想を覚えた。
頭を撫でられてくすぐったそうにするナナに、暑くないのかストレートに尋ねてみた。
「大丈夫なのです。でも、実はちょっとだけ暑いのです。里では丁度良かったのです」
ナナの説明どおり、ドラゴンの里が大きな山と深い谷の側にあるなら、きっと気温は低い。そこで暮らしていたのであれば、厚い毛布のごとき着ぐるみを常に着用していても、さほど暑いとは思わないだろう。むしろ若干の肌寒さを覚えてもおかしくはない。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」
魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。
――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。
「ここ……どこ?」
現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。
救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。
「ほら、食え」
「……いいの?」
焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。
行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。
旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。
「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」
「ウチの子は天才か!?」
ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。
これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。
※若干の百合風味を含みます。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる