造花楼園 ◇R-18◇

サバ無欲

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case2.泉の場合

09.泉の親友◆

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ユリは、私のものだった。


小さな頃からいつも一緒で、いつも2人で遊んでいた。昔は今よりも、他自治区との混血ハーフは奇異の目で見られたが、私の母は彼らに寛容だった。だから私も、ユリはユリだと特に疑問も持たなかった。

でも幼稚園を卒業し、小学校に上がる頃には、彼は一部の人間から忌み嫌われるようになった。それは同級生に限らず、先生ですら彼の敵だった。


私はそんなユリの、たった1人の味方になると決めた。


「ばかユリ!  泣いてんじゃないわよ!」

「なおちゃん……だって……」

「だってじゃない!  くやしいなら、もっと頑張んなさいよ!  アイツらを見返してやるの!」


子供の味方なんて迷惑なもので、私はユリをどうして慰めていいのかも分からず、ただ怒って鼓舞し続けた。

泣いているユリは西洋画の天使のように綺麗だったけど、その顔も男子からは女のようだとからかわれ、8歳の頃から前髪で隠すようになってしまった。


「奈緒……あの……」

「なによ。私じゃ出来ないって言うの?」

「そうじゃないけど……」


中学1年の頃、私は半ば奪うようにしてユリの童貞をいただいた。あの頃のユリはとても可愛くて、他の女に取られることを恐れた私は、それなら先にと彼に迫ったのだ。身体の関係を経て、私たちは晴れて付き合うようになった。


「なんで浮気なんかしてんのよ!」

「って!  やめろ、奈緒やめろって!」

「うるっさいこの浮気者!  しねバカユリ!  もう別れるっ!!」


高校2年、受験勉強真っ只中の時、ユリは初めて浮気をした。彼と綺麗目な後輩女子が2人でカラオケに入って行くところを見て、いてもたってもいられずその場に乗り込んで直訴した。

恐れていたことがついに起こってしまった。
彼は普段から顔を隠していたけど、髪を上げれば美術室の石膏のように綺麗でおまけに背も高い。飢えた女豹たちが彼に喰らいつくのは時間の問題だったのだ。


絶望のまま別れを告げ、家に帰って3日3晩泣き暮らした。4日目の朝、まぶたがパンパンに腫れた私の前にユリが現れた。


「奈緒、悪かった……別れないでほしい」

「……どうせ、あの子じゃうまくイケなかったんでしょ」

「っなんで知って……!  いってえ!!」

「バカユリ!  試してんじゃないわよ!」


何となく予想はついていた。
ユリは最初からかなり勃ちにくく、しかも超絶イきにくい。私だって5年付き合ってようやく彼のアソコとの付き合い方を覚えたのだ。そんじょそこらのポッと出の女に性技で負ける気はしなかった。

そうして、私たちは浮気したりされたりを繰り返しながら、結局元の鞘に収まった。ユリは勉強方面ですごく頑張って医者の道へ進んだ。彼が6年の大学生活を終えた時、私たちは結婚した。


彼は私のもの。だと思っていた。



「なあ奈緒。俺、リナリア行くわ」

「はっ?!  なんで?」

「先輩の紹介。今期で純資産ランクも上がるから住めるらしいし。お前らも来いよ。あと、次の嫁ももう呼んである」

「はぁあ?!」


すでに子供2人を授かり、このまま平穏無事に一生を過ごすのだと思っていた私にとって、それは晴天の霹靂だった。

ユリは小さな頃の苦い経験を糧にやたら向上心をつけていて、リナリアに憧れていたのは後から思えば当然のことだった。小学生時代、彼を鼓舞していた私自身を殴りたくなった。


そうして私たち一家はリナリアに移り住み、次の妻である繭香が家族になった。ユリはその後もどんどん地位を上げ、気づけば貴子と詩織というまた新しい妻を迎え、我が家は一気に大家族となった。

一番腹が立ったのは、彼が選んだ妻は皆クールな印象の美人だったということだ。それは私とは真逆の路線で、ユリは本当はこういう人が好みなのだとまざまざと見せつけられてショックだった。

なにせ彼らが並んで歩くと、一枚の絵のように完璧に仕上がるのだ。その隣で、私が歩いていればどうだろう。西洋画に混ざるタヌキなど、見るも無惨だ。


「っ……」


子供がいるから大っぴらに泣くこともできない。
ユリからの呼び出しも無く、子供たちを寝かしつけている夜、声を殺して泣くしか出来ない自分は本当に惨めだった。


「ねえ奈緒……ちょっと相談が……」

「ん?  どしたん?」

「旦那様のことなんだけど……」


ある時、繭香と詩織にユリとの性生活を相談され、あれやこれや言ってるうちに妻3人で夜を迎えることになった。やっぱりユリは未だに性交のことで悩んでいたようだが、さすがに歳を経て、私には相談しづらいらしかった。

初めは複数でのセックスに抵抗感があったけど、やってみれば案外楽しいもので。さらに私の培った性技は、どうやら女性にも通用するらしかった。


「んっ、あ、奈緒ぉっ!」

「うそみたい……奈緒ってじょうず……」

「お前らなぁ……」


結局、夫をイかせる技など教えず、妻たちを満足させることに終始した。
なるほど、この手があった。これならユリを取られることもなく、なおかつ他の妻も満足できるじゃないか。

それに、女の身体というのは触っても舐めても不快感が少なく、男より気持ちのいいものだった。


そうして、私は私なりの地位を築いていった。



「奈緒、わたし、もう実家に帰ろうと思う。奈緒たちに会えなくなるのはさみしいけど、もう、むり……」


5人目の妻 泉が私に泣きついてきたのはユリのクリニックがオープンした夜だった。泉がこの日のために入念な準備してきたことは知っていたし、実際ユリにまだ一度も抱かれていないと知って驚いた。

恐らくは仕事が忙しくて勃ちにくいとか、フェラを見られて落ち込んでいるとか、くだらない理由だろう。

ユリはこういう事には案外繊細……というか、やっぱりバカなのだ。自分をよく見せたくて、つい意地や虚勢を張ってしまう。仕事では完璧を装えるのに、セックスとなると自信もないのだろう。まぁ、自信をつけさせてあげられなかったのは私の責任か。


私にはユリの考えが手に取るようにわかるけど、ここに来てまだ2ヶ月の新妻にその機微が理解できるわけはない。どうにかするのが、古参の妻の役目だった。


「……くっそ、全然勃つ気がしねぇ」

「言い訳しないっ!  さっさとする!」


いつもの調子でユリを鼓舞し、とりあえずは2人で絡ませるが、この状況で彼が勃つはずもない。それに泉はフェラの経験が乏しかったようで、見ていても下手くそだと分かった。

結局泉に哀願され、私も混ざることになる。こうなればもう、あとは私の手の内だ。ユリのモノを秒で勃て、濡れにくいという泉もイかせてあげると、彼女は次第に私の存在を必要不可欠だと感じていった。


「ほんと……むり……なお、こーたい……」

「よしよし。泉は可愛いなぁ。ん」


泉は2回イったあと、私に交代を求めてきた。あくまで仕方がないという風につとめつつ、ユリとのセックスに興じる。最近は口淫ばかりでこっちはご無沙汰だったから、多少荒くてもやっぱり気持ちよくなってしまう。


「ん、ふあ、いずみぃ……っ」

「……っざけんな泉、こっち来い」

「やだよ、ユリは腰でも振っとけば?」


泉が私を触ってキスして、さらに快感が高まってゆく。泉が夫のことをユリと呼んだのは多少腹が立ったが、彼女はもう私に夢中で、ユリより私を優先したから、許した。

乱暴な責め立てに慣れた身体はすぐイッてしまう。今日のメインはあくまで泉だから、私はそこでバトンタッチした。


妻同士の友好な関係は、こうして築かれていくのだ。


「だめ、だめだめ、もうだめ、……あっ、いやぁああー……ッ!」

「……ッ、は、まじ、もう無理……」


泉とユリがほぼ同時に果て、ほっとしたように笑う泉にキスしてあげた。


ユリはその後すぐ眠ってしまった。
正直、大変だったろうと思う。連日クリニックの準備に今日のパーティでユリの神経はすり減っていたはずだ。

このタイミングで泉を呼んだのも、クリニックを宣伝させるという思惑あってのものだ。
泉本人にはとても伝えられないが、ユリは他の妻も含めて打算のない結婚はしない。だから他の妻たちもユリの仕事を支える役割が必ずある。


打算のなかった結婚は、私だけ。


「ねえ奈緒ぉ、また一緒にしようよ?」

「あはは、いいよ。いつでも呼んで。今度は4人とか、いっそのこと、みんなでしちゃうか」

「たのしそう」

「わーいやらしい。ってか、いつまで揉んでんのよ」


泉は私との行為が気に入ったようだ。
こうなれば、簡単に離婚するとは言い出さないだろう。ユリのために働いてくれる彼女を逃してはいけない。実際、泉の宣伝は大きな集客力に繋がっていた。


「うりゃ、こうしてやる」

「あッ!  だめだよ奈緒っ」

「しーっ、ユリが起きちゃうよ。……いいじゃん、2人で楽しもう?」

「んもう……なおだってやらしい……んっ」


ふたつの獲物は、もう私のもの。
ユリの一番が私であるなら、他の妻ごと愛してあげる。


「ああ……もう、おかしくなっちゃうぅ……っ」

「いいよ泉、イカせてあげる」


泉の身体を愛撫して高めながら、私はにやりとほくそ笑んだ。

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