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1.モブの心得
その6、モブたるもの平均点を超えるな①
しおりを挟むイケメンにしてほしいことランキング堂々3位の壁ドンをされたA子の気持ちを300字以内で述べよ。
死への恐怖を感じる。(10文字)
少女漫画だともっとこう、キュン、とかドキッ、みたいな擬音がつくだろうけどそれは彼らが先天性ヒロインだからだ。あるがままの状況を素直に受け止めるなんてこと、圧倒的モブこと田中A子には荷が重すぎる。私にあてられる擬音と言えばキリキリ(胃が痛む音)、ビクビク(怯える音)、キョドキョド(キョドる音)あたり。
恐ろしい。何もかもが恐ろしい。
正体不明のイケメンが話しかけてくるのもそうだし、周囲の女豹様たちの目も恐ろしい。それに会場スタッフたちに『うわぁ、勘違いしちゃってカワイソー。絶対あれ結婚詐欺だよ』なんて思われてそうなのも恐い。とにかく恐怖。
「あの」
「ん?」
「私、貯金ナイデス」
言った途端にイケメンは顔をそむけてぶほ、と笑いを噛み殺した。あれ? お金が目当てじゃないのか。いやいや油断ならんぞ。それにしても、嗤いをこらえる顔すらイケメン。というかこれはもう美形の域に入るのかな。爽やか王子顔のまま、12番さんは笑顔を続ける。あの、1万くらいなら出しましょうか?
「そっか。じゃあ、お金は俺が持つよ」
「ハァ。ン? アリガトウゴザイマス?」
「どういたしまして。じゃ、ちょっとついてきて」
「ハイハ……えっ、ちょっ」
「しー、静かに。あんまり目立つとスタッフに怒られるから」
モブ的にはもう十二分に目立ってますけど?!
これが主人公格イケメンの図々しさなのか、12番さんは私の腰に手を回して、そのまま出口へ直行した。近い近い! プリーズ、パーソナルスペース!
会場出口では当然スタッフに呼び止められるものの、12番さんが二言三言ことばを交わすと、私の分まで荷物やコートが返ってきた。
ハハァン、なるほど。みえてきたぞ。それにしても、本来なら途中退場は禁止のはずなのに、イケメンは何しても許されるんだなあ。
「あぁ、疲れた」
「おつかれさまです、疲れましたね」
「うん、巻き込んじゃってごめんね。もしかして誰か狙ってた?」
「いえ、大丈夫です」
「なら良かった」
つまりは逃げたかった、ということ。
一見ハーレムのあの状況、ほかの参加者からすれば羨ましい限りだろうが、きっと12番さんは慣れてるんだ。慣れすぎて、女が群がることは当たり前で、面倒だと感じている。
でもだからって一人で帰るとスタッフからの勧誘がくるかもしれない。かといって女豹たちから誰かを選べば、選ばれた子は有頂天になってしまう。うわぁ大変。
なるほど、なるほど。だからモブだったんだ!
「じゃ、私はこれで」
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