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3.彼らの関係
その7、お友だちには助けてもらおう①
しおりを挟む……気まずい。
非常に気まずい。
茉実のばかやろう。同窓会に出ないなら出ないってちゃんと言え。来るもんだと思ってたから今回出席にしたのに何? 『会いたいのはA子だけだったから』とか言っちゃってさー馬鹿なのかな私も愛してる! でもやっぱり言って欲しかった!!
というわけで田中A子、26歳、独身。
窮地に立たされています。
「うそー! ふたり別れたの?!」
「ウン、ソウナンダー」
「えーやだ、お似合いだったのになんで」
「私、今年こそ結婚式呼ばれると思ってたのにぃー」
「ってかこの歳で! この付き合いの長さで! 別れるかね普通」
あ。違うなこれ。
窮地はむしろ、向こうか。
「いやー……ははは」
ハハハじゃねえよ何笑ってんだ。ちったぁ周りに責められろ。適齢期の女フッといてこんな場所に来て穏便に済むと思うなよ。……うん? 私、お口チャックしたほうがいい?
同窓会会場の和風個室居酒屋にて。
ゼミ生二十五人のうち半分以上が女子だから、こういう話は格好の酒の肴だ。むしろもう肴というより餌食ばりの食いつきになってるけど、私ぁ知らん。鶏軟骨をぐび、とビールで流し込む。
三ヶ月ぶりの元カレUくんは、これまたまったく変わりなかった。眼鏡・ネルシャツ・ジーパンの三拍子。
そもそも彼は知り合ってから一切変化というものがない。
ガラパゴスのイグアナなのかなーって疑いたくなるくらいだから、色恋沙汰で変わるような人ではないとわかり切っていた。ってか、変わっててもそれはそれで腹立つし。なんか。
質問責めにあっているUくんは時々私に視線をよこしてくる。助け舟? 出さないよバーカ。こちらはあくまで静観の姿勢、だった、けど。
「え、何? フッたの?! うわなんで!」
「ちょっとあり得ない。五年引っ張っててそれはない」
「ちょっとお! A子はそれで良いわけ?! 言ってやんなよ!」
……あーダメだこれ。面倒くさい。
なんとなくこうなる気はしてた。だから気まずかったんだ。女の子って結束するとすごくお節介になるの、なんでだろう。酔いも相まって遠慮もクソもない。こうなると普段仲良くしてても嫌いになっちゃいそう。
ちら、と目線が合う。Uくんはすぐに目を逸らして、片手でこっそり携帯を操作していて……
揺れ光るものが、見えてしまった。
「うーん……まぁ、ふたりで納得して別れたから、もういいの」
「えー、A子優しすぎ~!」
……こちらとしては別れる時に言ったことが全てだし、もう蒸し返したくもない。ガチトーンで説教してこの場が凍りつくのも避けたい。となれば、助け舟を出さないわけにはいかなかった。
でも。
「でも……元カノと一緒に買ったキーホルダーは、いい加減やめといた方がいいと思うけど」
「……」
「え、それって」
「ごめーんちょっとトイレ行ってくるー」
早口で言って、携帯持って、即退室。
往年の競歩選手を彷彿とさせるスピードでトイレに入って鍵を! 閉めにくい! 閉まった。あー緊張した。なんで私って自分が正論言おうとしたときにドキドキしちゃうんだろう。我ながら損な性格だ。しんどい。
一度便座で落ち着いてしまうともうダメだった。帰りたい。バッグも一緒に持ってくるんだった。手持ち無沙汰に携帯画面を開くとラインが一件……雑種犬アイコンから。
『同窓会がんばってる?』
狭いトイレの個室の中でなんだか泣きそうだった。うん。がんばってる。今度会ったらうんと甘やかしてほしい。ただのセフレくんにこんなの求めるなんて違うと思うけど、でも彼は、うなぎを食べようって言ってくれた。高くてもいいって。
うん。大丈夫、わたし。
冷静になると馬鹿馬鹿しかった。いくらガラパゴス・イグアナだからって、元カノとお揃いの数年前のキーホルダーをずっと付けるかねフツー。無いわー。今カノからなにか言われないのかな。私だったら絶対イヤだけど。でもUくんと付き合うくらいだから、ちょっと変わってるのかもしれない。うわ、特大ブーメラン。
返信はしなかった。帰ってからでいいと思って、既読のままぼんやり過ごす。いくらか時間が経ったころ、ゼミ生のうちでも特に世話焼きな一人が心配して見に来てくれた。天照大御神か私は。さっさと出よう。
「あーごめんごめん。ちょっと」
「A子、A子!」
「な、なになにどうしたの」
「Uくん、あんたとやり直したいって言ってるよ!」
え?
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